日輪を宿す暁   作:狼ルプス

42 / 66
新年あけましておめでとうございます!

2021年初投稿です。

未だコロナ禍でもありますが、これからも頑張っていきましょう!!

今年もよろしくお願いします!


日の音

 

 

ーー血鬼術・飛び血鎌

薄い刃のような血の斬撃は、鎌鬼の意のままに軌道が変わり、何かに当たるまで追いかけ続けるのだ。

 

「ちっ!しつこい鎌だなぁ!」

 

ーー音の呼吸 弐ノ型・玲瓏音車

 

空中で血鎌を回転させながら弾き、一気に妓夫太郎の頭に向けて叩き下ろす。

 

しかし妓夫太郎は、血の斬撃で防御壁を作り天元の剣を受け止め防いだ。

 

 

「(術の発動が早い!流石上弦だけのことはあるわこれは…煉獄のやつ、こんな化け物と一人同等に戦ったのか…………四年前無傷で倒したイチはなんなの、いや、マジで)」

 

「んな攻撃じゃぁ俺にはとどかねぇよぉ」

 

妓夫太郎が放った鎌の斬撃を天元は受け流していくが、距離も距離だったため手足にかすり傷を負ってしまう。

 

距離を取る天元だが一瞬だけふらついてしまった。

 

天元の様子に、妓夫太郎が勘づいた。

 

 

「…くらったなぁ俺の鎌を、お前は段々毒に侵され死んでいくだろうし、こうしてる間にも、俺たちはじわじわと勝ってるんだよなぁ」

 

妓夫太郎はボリボリと自身を掻き毟りながら挑発してきた。けれど、その言葉を否定するように……

 

 

「それはどうかな!?俺を忘れちゃいけねぇぜ、この伊之助様と、その手下がいるんだぜ!!」

 

ドンドンボムボムが止んだため、ここぞとばかりに、伊之助と寝ている善逸が、その場に飛び出した。

 

 

「なんだァ?てめェら・・・」

 

 

 そんな中、天元は上からパラパラと破片が降ってきた事にいち早く気づいた。

 

二階から、炭治郎が降りてきたのだ。天元の前に着地した炭治郎は妓夫太郎達を見据えた。

 

「遅くなりました、宇髄さん!」

 

 

そう言いながら、炭治郎は日輪刀を構え、ギッと妓夫太郎達を睨み付ける。外では、まきを達が避難誘導をしている声が聞こえる。この状況には、さすがに妓夫太郎も苛々を募らせる。

 

 

「下っぱが何人来たところで、幸せな未来なんて待ってねぇからなぁ、全員死ぬのに、そうやって瞳をきらきらさすなよなあぁ」

 

 

 この様子に、先ほどまで堕姫と対峙していた炭治郎は、息を整えながら日輪刀を構え直した。

 

 

「(鬼が二人になってる、どういうことだ?そして、帯鬼も死んでない…どっちも上弦の伍なのか?分裂している?だとしたら…本体は、間違いなくこっちの男だ。匂いが違う、匂いの重みが・・・喉の奥が麻痺するようだ。手が震える…疲労からだろうか、それとも…恐れ、いやそれでも、俺は…俺たちは…)」

 

 

「勝つぜ、俺たち鬼殺隊は」

 

 

 後押しするような、力強い天元の声に、震えていた炭治郎の手が止まった。

 

 けれど、その言葉を堕姫が遮る。

 

 

「勝てないわよ!頼みの綱の柱の一人が、毒にやられてちゃあね!!」

 

 

「(毒……!?)」

 

「よそ見をしている暇があるのか?」

 

 

ーー日の呼吸改・炎舞疾風

 

一夏は、一気に堕姫へ接近し、神速の速さで移動して帯を斬り裂き、振り下しつつ堕姫を斬りつけるがギリギリの所で躱された。一夏に背後を取られた堕姫は帯の防御の甲斐なく頬に斬り傷が生まれた。

 

 

「再生しない?再生しない!再生しない!?あんた…やってくれたわね!私の顔に!アタシのカオにィッ!」

 

一夏の赫刀で出来た傷は死ぬまで治らない。堕姫の自負する誇りを二つの意味で傷つけたのだ、その怒りはかくの如し。

 

 

「(今は違和感なんて考えるな!この鬼兄妹を倒すことだけを考えるんだ…)」

 

一夏は炭治郎達と合流し天元の隣に立つ。堕姫の言葉に、炭治郎は天元を見た。けれど、そんな不安を天元は一掃させる。

 

 

「一夏に斬撃喰らっておいてよく言うぜ、俺達は余裕で勝つわボケ雑魚がぁ!!毒回ってるくらいの足枷あってトントンなんだよ、人間様を舐めんじゃねぇ!!」

 

「宇髄さん……」

 

さらに天元は言葉を続ける。

 

 

「こいつらは三人共、優秀な俺の“継子”だ!逃げねぇ根性がある!」

 

 

 その言葉に、伊之助が気を良くする。

 

 

「フハハ、まぁな!」

 

「(俺は一夏さんの継子なんですけど、今は言わないでおこう。)」

 

「(うち一人は俺の継子なんですが……)」

 

 

空気を読みあえて沈黙した一夏と炭治郎を他所に、妓夫太郎へ視線を戻した天元は、余裕の笑みを浮かべる。

 

「手足が千切れても喰らいつくぜ!!そして、てめぇらの倒し方は、既に俺が看破した!」

 

 

「「(杏寿郎/煉獄さん)」」

 

 その堂々たる態度を見ていた一夏と炭治郎は、天元の姿に、揺るがない杏寿郎の姿が重なって見えた気がした。

 

「同時に頸を斬ることだ、二人同時にな、そうだろ!!そうじゃなけりゃ、それぞれに能力を分散させて、弱い妹を取り込まねぇ理由がねぇ!!ハァーッハッハ、チョロいぜお前ら!!」

 

 

 その言葉には、伊之助も高笑いを浮かべる。

 

 

「グワハハハ、なるほどな簡単だぜ。俺たちが勝ったも同然だな!!」

 

 

 それに対し、妓夫太郎も負けずにニヤリと笑った。

 

 

「その“簡単なこと”ができねぇで、鬼狩りたちは死んでったからなぁ…柱もなぁ、俺が十五で妹が七、喰ってるからなぁ」

 

「そうよ、夜が明けるまで生きてた奴はいないわ。長い夜はいつもアタシたちを味方するから、どいつもこいつも死になさいよ!!特に“痣柱”は、五体引き裂かれて内蔵引き千切られて血反吐撒き散らしてのたうち回って死に晒せ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 そう言うと、帯の攻撃で撹乱し、二手に別れようと屋根へと移動する堕姫を、瞬時に気づいた善逸が追う。

 

 

「善逸!!」

 

そこに、すかさず一夏が対応する。

 

「帯鬼は俺と嘴平、我妻に任せろ!炭治郎は、天さんと鎌鬼を倒せ、わかったな!!」

 

「派手に気をつけろよ!」

 

「わかりました!そちらも気をつけて!」

 

「了解!」

 

 

 それだけ言うと、一夏は善逸の後を追って堕姫の方へと向かった。

 

 

「……妹はやらせねぇよ」

 

 

 距離を取ろうとしていた堕姫は、善逸に追い付かれ、屋根の上へと着地した。

 

 

「お前…!! あの時の!!」

 

 

「(これは…寝ているのか?しかし、普段の我妻と雰囲気も違う)」

 

 一夏も善逸に追いつき、いつでも対処できるように構えるが、善逸の今の状態が気になって仕方なかった。

 

 

 

 

「俺は君に言いたいことかある。耳を引っ張って怪我をさせた子に謝れ」

 

 

 

その言葉に、堕姫はきょとんとする。

 

 

「たとえ君が稼いだ金で衣食住与えていたのだとしても、あの子たちは君の所有物じゃない。何をしても許されるわけじゃない」

 

善逸の言葉に、堕姫は眉間にシワを寄せる。

 

 

「つまらない説教を垂れるんじゃないわよ、お前みたいな不細工が、アタシと対等に口を利けると思ってるの?この街じゃ女は商品なのよ。物と同じ。売ったり買ったり壊されたり、持ち主が好きにしていいのよ。不細工は飯を食う資格ないわ。何もできない奴は人間扱いしない」

 

 

「…ある人が言っていた。『全ての女性は等しく美しい』と、対等なんて関係ない… 自分がされて嫌だったことは、人にしてはいけない。お前の過去がどうかは知らないが、お前もわかるんじゃないのか?その気持ちが……」

 

 

そんな堕姫へ、一夏は正論を返す。すると、堕姫の口調が変わった。

 

 

「……知ったような事言ってんじゃないよ、人にされて嫌だったこと、苦しかったことを、人にやって返して取り立てる。自分が不幸だった分は、幸せな奴から取り立てねぇと、取り返せねぇ」

 

顔をあげる堕姫の額に『伍』の目が逆さに浮き出る。

 

 

「それが俺たちの生き方だからなぁ、言いがかりをつけてくる奴は、皆、殺してきたんだよなぁ。お前らも喉笛掻き切ってやるからなああ……!」

 

 

妓夫太郎と対峙する炭治郎は、その殺気に当てられていた。

 

 

「(すごい殺気だ!!肘から首まで鳥肌が立つ…当たり前だろ、相手は上弦の伍だぞ! しっかりしろ、宇髄さんは毒を喰らってる。俺が守らないと…アイツが動いた瞬間に刀を振れ!ほんの少しでも、動いた瞬間に…!)」

 

 

 そんな炭治郎へ、まばたきする間も与えず、妓夫太郎が間合いを詰める。喉元に鎌が迫る。

 

 

「(っ!ヒノカミ神楽・幻日虹!)」

 

炭治郎はヒノカミ神楽の技でなんとか迫る鎌を回避し天元が攻撃を仕掛ける。

 

 

「へぇ、今の攻撃をよく避けたなぁ」

 

「当たり前だ!俺の継子ならこんな事容易い事だ!」

 

 

瞬時に天元の攻撃を妓夫太郎は鎌で止める。攻撃を避けた炭治郎は避けられたものの、屋根から離れた為、地面までバランスを取りつつ着地する。

 

 

「(何をしてるんだ。このままじゃ逆に足を引っ張ってる……!!)」

 

 

 そんな炭治郎は、背筋がゾクッとして宙を見上げた。

 

「……!!」

 

 

「(上から…無数の帯が…)」

 

 

炭治郎たちの真上で、堕姫の高笑いが響く。

 

 

「アハハハハッ!あんたら二人の動きが全部見えるわ、あんたたちの動き……兄さんが起きたからね、これがアタシの本当の力なのよ!!」

 

 

 帯の攻撃によって 無数の斬り傷を負った善逸,伊之助の姿が見えた。

 

 

「うるせぇ!! キンキン声で喋るんじゃねぇ!!」

 

 

 この状況には、妓夫太郎も笑った。

 

 

「クククッ、継子ってのは嘘だなあ。お前らの動きは統制が取れてねぇ、全然だめだなぁ…」

 

 

 そして、統制の取れてない一夏達とは違い、一心同体の鬼兄妹の連携攻撃は凄まじく、堕姫の帯と妓夫太郎の血鎌の攻撃が炸裂する。

 

 

 

 帯の攻撃と血鎌の攻撃を躱すほど、受け流された攻撃によって、家屋が悲鳴をあげる。

 

 

「(倒壊する!!瓦礫で周囲が見えない…)」

 

 

「くそっ!面倒な事を!」

 

咄嗟に天元は、火薬玉を使って瓦礫を吹き飛ばす。その隙を狙う妓夫太郎だが、天元はすぐさま攻撃を受け止める。

 

 

「(速い、本当に蟷螂みたいな奴だ、なんだこの太刀筋は…)」

 

 

 そんな天元の背後から迫る血鎌の攻撃が襲う。

 

 

「(不味い!この攻撃は避けられねぇ…)」

 

逃げ道を塞がれた 天元の背中に迫る血鎌にもう無理だと悟った瞬間……

 

 

ーー日の呼吸改・輝輝恩光・緋空斬

 

 

「(…炎の斬撃波?…こ、胡蝶?)」

 

迫る血の鎌は火の斬撃により弾き飛ばされる。天元が見たのは、鞘に手を添えながら日輪刀を振り抜いた一夏の姿だった。髪が長いのもあったのか、天元はその姿が元花柱のカナエと重なって見えた気がした。

 

輝輝恩光・緋空斬は輝輝恩光に花の呼吸の要素を取り入れた技である。渦を巻くように回転して斬撃波を放つのだ。天元はこの好機を見逃さず技を出す。

 

 

「音の呼吸 伍ノ型・鳴弦奏々」

 

斬撃と爆撃で、妓夫太郎へ猛攻する天元に対して、妓夫太郎は絶えず笑みを浮かべる。

 

 

「(騒がしい技で押してきた所で意味がねぇんだよなあ)」

 

 

今度は、堕姫の帯で行く手を阻む。その攻撃を、炭治郎が最初に対峙した時の方法で、帯を一纏めにし、杭のように日輪刀で刺し止めた。

 

 

「(役に立て!!少しでも攻撃を減らせ、勝利の糸口を見つけろ!!)」

 

 

 炭治郎の思わぬ動きに、天元も目を見張る。

 

 

「(アイツ、もうやべぇぞ…動けているのが不思議なくらいだ……多分、肩の傷が相当深い、止血はしてるようだがギリギリだ…俺も毒を喰らってあまり長くはもたねぇ!早くカタをつけなけねぇと、イチ一人に負担をかけちまう!!)」

 

 

天元達が兄鬼と対峙してる一方で、一夏達は、

 

 

「アハハハハッ、死ね不細工共!!」

 

 

「日の呼吸黒式 弐ノ型・炎陽紅焔」

 

 

帯による攻撃と血鎌の斬撃を赫刀で受け流していた。

 

血の鎌と帯の連携攻撃によって妹鬼に近づくことが難しい。これには、意気込んでいた伊之助も苛々し出す。

 

 

「ぐおおおおおっ!帯に加えて、血の刃が飛んでくるぞ、何じゃこれ!! 蚯蚓女に全然近づけねぇ!!」

 

「落ち着け嘴平、冷静に動けば避けられない攻撃じゃない」

 

「わかってるわ!んな事!」

 

「(…しかし、これは不味いな、上手く連携が取れない。このままでは奴の思う壺だ)」

 

攻め手に欠けた状態が続くのは、精神的な焦りを生む。

 

 

「くそォォォ!!特に血の刃は やべぇ!! 掠っただけでも死ぬってのをビンビン感じるぜ」

 

 

「(あの血の刃の色…この世の物とは思えないくらいの邪気に覆われている。まずくらったらアウトだ。一瞬の油断も隙も許されない)」

 

 

「ちっ!いい加減にくたばりな、不細工共!!」

 

ーー血鬼術・八重帯斬り

先ほどよりも早く、帯には鎌による斬撃も混じっている。

 

 

「日の呼吸 肆ノ型・ 灼骨炎陽」

 

一夏は堕姫の血鬼術を難なく無力化する。

 

「くっ!痛い!(今の斬撃…さっきの不細工が使っていた技…けど、さっきのやつより桁違いの威力)」

 

 

「(距離があるから同時に頸を斬るのは至難の技。なんとか天さん達に合わせて頸を切らなければ)」

 

 血の刃と帯の攻撃を躱しながら連携して戦うのは、流石の一夏でも、初めて組む二人だと骨が折れるのだ。ましてや鬼二体の頸を同時に斬るとなるとタイミングもあり様子を窺いながら戦わなければならない。

 

 

 

 

 

そして、迫る帯と血鎌の攻撃に、炭治郎も限界が迫っていた。

 

 

「(苦しい、猛攻で息が続かない…意識が飛びそうだ…!回復の呼吸を…なんとか、呼吸を…!!)」

 

 

 そんな時、雛鶴がクナイを仕込んだ銃のような武器を放つ。クナイの雨が、妓夫太郎に降り注いだ。

 

 

「(柱を前にこの数全て捌くのは面倒だなぁ、ちまちまと鬱陶しいぜ…ヒヨコの鬼狩りも三人いるしなあ…まぁ、当たった所でこんなもの…)」

 

 

 そう思いかけた妓夫太郎は、とある綻びに気づく。

 

 

「(いや、そんな無意味な攻撃、今するか?)」

 

 

 嫌な予感を感じた妓夫太郎は、血鬼術を放つ。

 

 

「血鬼術─跋弧跳粱」

 

その血鬼術に、雛鶴は息を飲んだ。

 

 

「(斬撃で天蓋を作ってる!!)」

 

 

 そんな雛鶴の切り開いた隙を狙う。

 

 

「(オイオイオイ、何だ何だコイツは、突っ込んで来るぞ、刺さってんじゃねぇかテメェにもクナイが…)」

 

 

 そこで妓夫太郎は、あることを思い出す。

 

 

「(そうか、忍だ。剣士じゃない、元々コイツは…感覚がまともじゃねぇ)」

 

 

 天元へ斬りかかった妓夫太郎だが、天元はしゃがんで避け、そのまま鎌鬼の両足を切断した。天元に気をとられてる隙に、クナイが刺さる。このクナイの意味を、妓夫太郎はすぐに理解した。

 

 

「(足が上手く再生しない…やはり何か塗られていた、このクナイ…おそらく藤の花から抽出されたもの、体が痺れ…)」

 

 

 

「(好機!)

 

ーー音の呼吸 参ノ型・爆烈遠声

 

 

天元は距離を取り、刀を地面に叩きつける。刀から放たれた衝撃は地割れを起こしながら同心円状に拡散していく。

 

そして妓夫太郎の真下を通った所で爆裂が起きダメージを与える。

 

 

「ヒノカミ神楽・円舞!」

 

 

すかさず炭治郎も追撃する。

 

「(やるじゃねぇかよ、短時間で統制がとれ始めた…おもしれぇなぁあ)」

 

 

天元の爆破斬撃を受けるがすぐには再生せず、雛鶴の使った藤の花から抽出した毒は、数字を持たない鬼なら半日、下弦の鬼ですら動きを封じることを可能にする。

 

 

「(お願い効いて、ほんの僅かな間でいいの。そうしたら、誰かが必ず頸を斬れる!!)」

 

 

 天元と炭治郎の刃が、妓夫太郎へと迫る。

 

 

あと少しで刃が届く…そんな僅かな時間すら、待ってはくれない。

 

 

「(っ!もう再生して…!)」

 

「(傷と足が再生!!畜生、もう毒を分解しやがった!!)」

 

 

「いやぁ、効いたぜ、さっきの爆撃とこの毒は……。血鬼術 円斬旋回・飛び血鎌!!」

 

 

 

腕の振りも無しに血の刃が発生した。

天元は、炭治郎を蹴り飛ばして庇い、すぐに技を切り返す。

 

 

「音の呼吸 肆ノ型・響斬無間」

 

 

 

 すると、天元の目の前から、妓夫太郎の気配が消えた。

 

 

(消え・・・)

 

 

 天元は、すぐに屋根の上へと目を向ける。

 

 

 

「雛……」

 

「天…元様、私に構わず鬼を、斬ってくだ…」

 

 

 雛鶴が最後まで言葉を発することは出来なかった。妓夫太郎によって首を絞められていたからだ

 

 

「雛鶴さん!」

 

「お兄ちゃんのところへ行かせないよ、痣柱!」

 

 

堕姫と戦っていた一夏もすかさず雛鶴の救援に向かおうとするが、堕姫の帯により阻まれる。

 

 

「よくもやってくれたなあ、俺はお前に構うからなあ」

 

「雛鶴ーーーーっ!!」

 

「(不味い!この距離じゃ間に合わ……)」

 

 

助けに行こうにも、帯が邪魔して、雛鶴の所まで行けない。

 

 

そんな中、必死に炭治郎が足を動かす、もう二度と、目の前で人の命を奪わせないために。

 

 己の体力の限界と思考の狭間で、炭治郎は何とか雛鶴を救うために、道を切り開こうと頭を働かせる。

 

そして、今の俺に出来ることは──・・・。

 

「ヒノカミ神楽・陽華突・虚空!」

炭治郎は柄を両手で握り、突きの虚空を放ち、妓夫太郎の腕を貫き斬り離した。

 

「(いっ…たい!!一夏さん自身も制限するほどの技!ここまで負担が大きいとは!今の状態で放ったから…間違いなく骨にヒビが入った!)」

 

 

 

 

『日の呼吸改・陽華突・虚空』

一夏が炭治郎に日の呼吸と改の技を教えていた時のこと。場所は山の中、一夏が放った虚空は大岩に風穴を開けた。

 

『今の技は、無限列車の時の…』

 

『陽華突・虚空、見ての通り…突き技というよりは大砲に近いな。ただしこの技は腕に大きな負担がかかる。その為、両手含め三発が限界だ』

『さ、三発…合計六発、もしそれ以上使ったら…』

 

『間違いなく自分の骨が砕ける。三発打ったら激しい筋肉痛に襲われる』

炭治郎は顔を青くし、使い所を考えなければと思う。

 

『今の炭治郎だと、両手で柄を握って放つのが精一杯だ。万全な状態を考えて…二発が限界ってところだな。戦いで怪我を負ったのを含めると、一発だけでも相当な負担がかかるはずだ。取り敢えず覚えておいて損はないと思う。いざと言う場面で役に立つ技だ』

その後、しばらく、一夏は腕を中心に鍛えた後、虚空を教えるが一回も成功することはなかった。つまり、今回、土壇場で成功させたのだ。

 

 

妓夫太郎は、腕を斬られた怒りから、炭治郎へ向かって攻撃に転じる。

 

その時だった。

 

 

「竈門炭治郎、お前に感謝する!!」

 

「(炭治郎の奴、今の技で骨にヒビが…)」

 

 

一夏は透き通る世界で腕の骨にヒビが入ったのを確認した後、堕姫に集中し、その隙をついて、天元が妓夫太郎の背後から、刃を振るった。

 

 

 

そして堕姫を相手にしている一夏達は、

 

 

「だあああ、クソ!!向こうは頸斬りそうだぜ!」

 

なかなか攻撃へと転じられない。

 

 

「ぐわあっ!」

 

「伊之助!」

 

伊之助は持ち前の身のこなしで、帯を躱す。

 

「チクショオ、合わせて斬らなきゃ倒せねぇのによ」

 

そんな焦る伊之助に、一夏は声をかける。

 

 

「落ち着け、全く同時に頸を斬る必要はない。二人の鬼の頸が繋がってない状態にすればいい。向こうが頸を斬った後でも、諦めず攻めていこう」

 

 

「はん!言われなくてもわかってるわ!蜥蜴野郎が再生出来なくなるまで食い千切るまでだ!」

 

 

「その意気だ。いくぞ… “伊之助” 、“善逸”!」

 

「おうよ/はい!」

 

 

  

 

 

一方、あと一歩で妓夫太郎の頸を斬れそうだった炭治郎達は、兄鬼の鎌に刃を阻まれていた。

 

 

「今のお前らが俺の頸を斬るなんて、無理な話なんだよなあ」

 

 

 炭治郎の刃が、妓夫太郎の鎌に取り込まれたように動かなくなる。

 

 

「(刃が動かない!!)」

 

すかさず背後から天元が頸を狙う。けれど、頸をねじって、歯で刃を受け止めた。

 

 

「(頸を真後ろにぶん回すんじゃねぇよ、バカタレェ!)」

 

 

 そんな妓夫太郎は、血鬼術を放つ色を纏う。

 

 

「(またアレか!)」

 

 

「竈門、踏ん張れ!!」

 

 

その瞬間、血鬼術を放った妓夫太郎は、天元ごと吹き飛ぶ。

 

 

「宇髄さん!!」

 

助太刀に入る余裕もなく、血の刃で阻まれる。そんな炭治郎の元へ、伊之助の声が響く。

 

 

「あぶねぇぞおおお!!」

 

「!!」

 

 

「日の呼吸黒式 肆ノ型・日影」

 

炭治郎と雛鶴の前に、放たれた帯の攻撃を、一夏が防ぐ。

 

 

 

「すみません!!」

 

 

そんな中、伊之助が炭治郎に状況を説明する。

 

 

「作戦変更!!蚯蚓女に全然近づけねぇ!!こっち四人で蟷螂男をオッサンに頑張ってもらうしかねぇ!!」

 

「鎌の男よりも、まだこちらの方が弱い。まずこっちの頸を斬ろう。炭治郎、まだ動けるか」

 

 

「動ける!!ただ宇髄さんは敵の毒にやられているから危険な状態だ、一刻も早く決着をつけなければ…」

 

「わかってる、少しでも早く頸を斬って宇髄さんに加勢しよう!」

 

 

 とはいえ、堕姫もそう簡単にはいかせない。

 

 

「アハハハハ、段々動きが鈍くなってきてるわね、誰が最初に潰れるのかしら?」

 

 

 そんな中、先に堕姫と対峙していた炭治郎が叫ぶ。

 

 

「この鬼の頸は柔らかすぎて斬れない!!相当な速度、もしくは複数の方向から斬らなくちゃ駄目だ!!」

 

 

 すると、伊之助が名乗り出た。

 

 

「複数の方向なら、二刀流の俺様に任せておけ、コラァ! 四人なら勝てるゼェェェエ!!」

 

「そう言う事なら、俺もやらないわけにはいかないな。俺が道を切り開く…お前達三人は奴の頸を斬れ…いいな?」

 

 

「了解です!」

 

「わかりました!」

 

今の俺がやる事は…天さんを信じて、三人の道を切り開く事……!

 

 

 

立ちはだかる帯を断ち切りながら進む。

 

 

「獣の呼吸 捌ノ型・爆裂猛進!!」

 

「ヒノカミ神楽・日暈の龍・頭舞い!」

 

「雷の呼吸 壱ノ型・霹靂一閃・八連!!」

 

 

その後ろを、伊之助と炭治郎、善逸が猛進する。

 

 

「日の呼吸改・円舞回天」

 

 

一夏が、横からの帯の攻撃を受け流しながら斬る。そして一夏は初めて見る雷の呼吸に感心していた。

 

「(あれが雷の呼吸、まさに雷鳴の如し、だな。)」

 

 

「(コイツ、防御を一切せず直進のみに集中してる!)」

 

 

 そして、鬼の前で伊之助達に道を空けた。

 

 

「今度は決めるぜ、陸ノ牙・乱杭咬み!」

 

「ヒノカミ神楽・碧羅の天!」

 

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・神速!」

 

 

炭治郎は炎の円の斬撃を描き、伊之助の放った刃はノコギリのように削り、善逸は雷の一閃で、堕姫の頸を斬り落とした。

 

「よし!」

 

「やった!!」

 

「やった、伊之助!!」

 

伊之助はそのまま、堕姫の頸を掴む。

 

 

「頸、頸、頸!!くっ付けらんねぇように 持って遠くへ走るぞ!!」

 

 

 そう言うと伊之助は、体から引き離すように持って走り出した。

 

 

「とりあえず俺は頸持って逃げるからな!!赤羽織達はオッサンに、加勢しろ!!」

 

「ありがとう伊之助!」

 

「気を付けろ伊之助!頸を斬ったとはいえその鬼の本体は生きてるからな!」

 

「おうよ!!」

 

これには堕姫も黙っちゃいない。

 

「糞猪、離しなさいよ!!」

 

「!!」

 

 

 体のない堕姫は、髪の毛を操り、伊之助に絡み付こうと抵抗するが、伊之助に髪を切り刻まれた。

 

「グワハハハ!攻撃にキレがねぇぜ!!」

 

「何ですって!?」

 

「死なねぇとはいえ、急所の頸を斬られてちゃあ、弱体化するようだな、グハハハ!」

 

次の瞬間、風が揺らいだ。何が起きたのか、分からなかった。

 

 

分かるのは、いつの間にか伊之助の真後ろに兄鬼がいることと、妹鬼の頸を取られ、倒れる伊之助の姿であった。

 

 

 嫌な感覚がよみがえる。

 

 

 

「伊之助ぇっ!!」

 

「伊之助ーーーーッ!!」

 

どうして!? なんで兄鬼が…っ兄鬼は宇髄さんが……。

 

 

炭治郎は天元の姿を探す。そして、振り返った先に、大量に血を流し、倒れ込んだ天元の姿があった。

 

「伊之助!天さん!」

 

一夏は仲間が目の前でやられる姿を見るが直ぐに切り替えようと視線を堕姫に変えようとした時…

 

 

「あ………?」

 

そして一夏は天元の様子に違和感を持ち、すぐに切り替え炭治郎に告げる。

 

 

「……炭治郎、善逸、今すぐ伊之助を連れてここから退け…伊之助はまだ生きてる、急げばまだ間に合う」

 

「い、一夏さん、でも!」

 

「行け!今の伊之助を助けられるのはお前達だけだ。それに炭治郎、お前はもう…限界のはずだろ?」

一夏の言葉に炭治郎は二の句を継げなかった。今の炭治郎は誰がどう見ても重症でいつ倒れてもおかしくなかった。

 

一夏が確認できたのは疲労、出血や斬撃による傷に加え、禰豆子の暴走を止めた時に出来た打撲、両腕の骨のヒビ、もはやここまで戦っていたのが奇跡というくらいだ。

 

 

「わかったか…今すぐ禰豆子も一緒に連れてここから離れろ。前にも言った筈だ… 『鬼を殺すことよりも、戦場で生き抜くことを第一とする。決して無理はしない事だ』と、お前らは充分よくやったさ、流石俺の継子だ。善逸達も含めて、誇りに思う」

 

「一夏さん…」

 

「後は“俺達”に任せろ…まきをさん達と合流して避難誘導を頼む、避難誘導よりも…炭治郎はまずは手当を受けろ、いいな?」

 

「っ!はい!……ご武運を!」

 

「無茶はしないでくださいよ!」

 

「…ああ、任せろ」

 

炭治郎は善逸と一緒に、倒れている伊之助と箱の中に眠っている禰豆子の回収に向かおうとするが、

 

「逃がすわけないだろぉ…!」

妓夫太郎は炭治郎達に向けて、血鎌の斬撃を放つ。

 

炭治郎達に直撃すると思われた瞬間、一夏が一瞬にして炭治郎の後に立っていた。

 

 

「日の呼吸改・飛輪陽炎・業炎撃」

 

一夏は日輪刀を強力に振り下ろし、血鎌の斬撃を一刀両断し燃やし尽くした。

飛輪陽炎に炎の呼吸を取り入れた技、飛輪陽炎をより強力に振り下ろし、焼き尽くす。

 

「嘘!お兄ちゃんの血鎌の斬撃を…たった一振りで、燃やしやがった…!?」

頭がくっついた堕姫は信じられないような表情だった。

 

「悪いな、ここから先へは行かせない」

 

「まさかお前ぇ、俺達兄妹を一人で相手をするってのかぁ?俺達は一心同体、頸を同時に断たれなければ死なねぇんだよなぁ」

 

 

「一人?勘違いしてもらったら困る。俺は一人じゃない」

すると隣にもう一人の剣士が一夏の隣に立つ。

 

「おうよ、俺達二人が…テメェらの頸を派手にぶった斬るんだよ!」

すると隣に傷だらけの天元が一夏の隣に立ち鬼兄妹に強く告げる。

 

「天さん、本当に大丈夫なんですか?」

 

「テメェが持っていた解毒剤のおかげでなんとかって所だが、長くはもたねぇよ」

天元の容体を透き通る世界で見ると、止血の呼吸で出血は止め、致命傷は避けてはいるものの毒によりあまり長くは動けないだろう。今回の鬼の毒は濃度が高く、一時的にしか効かないと察せられる。

 

「その顔、完成したんですね?」

 

「ああ、『譜面』が完成した!! 勝ちに行くぞ…イチ!!」

 

「はい!」

 

 

「そんな状態で何ができるって言うのよ?どう足掻いても私達には勝てはしないのよ!」

 

 

「イチ、よく聞け、勝つためには一撃で決める。俺に合わせることはできるか?」

 

「出来ますけど、まさか天さん……終ノ型を?」

 

「ああ、これしか方法はねぇ、頼めるか?」

 

「……わかりました。今はそれしか奴らを同時に斬る方法はないですからね。」

 

 

「そうかい、お前にも出来ないことがあってホッとしたぜ。さぁて、この一撃が勝負だ!ド派手にいくぜ!!」

 

 

ーー音の呼吸 終ノ型・鳴動爆心!

 

天元は音の呼吸によって限界以上に心臓の心拍数を上げて身体能力を爆発的に上昇させる

 

「(チャンスは一度きり、これで決める)」

 

一夏は日輪刀を刀を頭の右脇に構える。

 

「いくぜ、イチ!」

 

「はい……ド派手に決めましょう!」

 

一夏も天元の言葉に賛同する様に同時に駆け出す。

 

音の呼吸 陸ノ型・音響交差!

 

「日の呼吸改・円舞鳳凰」

 

「っ⁉︎はや……」

 

「血鬼術・円斬旋回 飛び血鎌!」

 

堕姫と妓夫太郎は全力を込めた術を放つ。

 

天元は二刀の刀を交差させ、一夏は全てを燃やし尽くす鳳凰を飛ばし前進する。

 

そして全力を込めた血鬼術の無力化されるとは思ってもいなかった上弦の鬼兄妹は慌てて回避しようとするが、既に遅く二刀の刃が頸に迫り、

 

 

「「旭日衝天!」」

 

 

天に昇るような激しい勢いの合技が放たれ、兄妹鬼の頸は同時に宙高く舞い上がった。

 

産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか

  • させる
  • 原作通り
  • 作者に任せる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。