日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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懲りない音・繋ぐ日と違和感の正体

遊郭の任務から二週間が経過した頃、蝶屋敷の病室では

 

 

「宇髄さん、あなたは今何をしようとしていたのですか?私達の屋敷でここは病室ですよ?今すぐあなたをそのまま追い出してもいいんですよ?」

 

「(なんだろう、前にも似たようなことがあった気が…)」

 

説教が始まろうとしていた。

 

任務の際に自ら毒を飲んだ雛鶴は、様子見で一週間入院したが、身体に異常はなく退院した。そんな雛鶴は天元の見舞いに来ていたのだが、愛の営みを始めようとしたのが不味かった。経過を見に来たしのぶは、青筋を浮かべながら笑顔で苦言を呈する。その隣で立つ一夏は黙って様子を見守っていた。

 

「…も、申し訳ありません、胡蝶様」

 

「んだよ…夫婦同士なら別にいいだろ?」

 

「人目がないのならまだいいですが、私達が入室した途端に中断するのはやめてもらえませんか?あなた達なら私達が来る前に中断するくらいできたでしょう?」

 

「お前らだって派手にあんなことやそんなことしてるだろ?だからお互い様じゃね?」

 

「天元様!!あなたも反省してくだ「宇髄く〜ん」ひっ⁉︎」

 

 

「……え?」

ガシッと頭を掴まれる感覚がし、雛鶴の向かい側に強引に振り向かせられた先には、黒い笑みを浮かべ、天元の頭を鷲掴みしているカナエの姿があった。

 

「お、お前…いつそこに?」

 

「うふふ、こんにちは宇髄くん、話は聞かせてもらったけど、一夏としのぶはあなたと違ってちゃんと自重しているの。あなたは自分がやっていることに自覚があるのかしら?こうやって手当を受けて入院させてるのは誰のおかげかしらね?」

カナエは懇々と諭すが、その手に入った力はどんどん強くなっていく。

 

 

「イダダダダダッ!?こ、この痛みは…イチのやつと同じ…お前、引退したんじゃなかったのかよ⁉︎」

 

「あらあら、確かに引退はしたけど呼吸はまだ使えるのよ?そんなに長くは使えないけどね。」

 

「ちょ、オイ!どんどん地味に力を強くすんな⁉︎俺、怪我人だぞ⁉︎」

 

「うふふ、怪我人?アオイ達にあんな事しておいてよく言えるわね?本当は日輪刀で斬り刻みたいとこだけど、“奥さんの前では”やめておくわ。しのぶ、出番よ」

 

「うふふ、了解よ…姉さん」

しのぶはカナエの隣に立ち、懐から何かが入った紙袋を取り出す。

 

「お、オイ、コラ、胡蝶妹!…!?こっ、胡蝶大先生?そっ、そりゃあなんだ?」

 

「これですか?これは開発した新薬で、とてもニッガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イお薬です。効果は保証しますので大人しく口を開けてください…ね、派手柱?」

天元は顔を青くし冷や汗がどんどん流れる。雛鶴は二人を止めるどころか諦めている。二人がここまで天元に対し怒りを抱いているかは事情を聞いている為自業自得と思っているからだ

 

「お、オイ、イチ…助けぎいやぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~っ‼」

 

「(この二人だけは絶対に怒らせないようにしよう。さようなら天さん……どうか死なないで)」

 

一夏は胡蝶姉妹を絶対に怒らせてはいけないと心に誓う。天元の悲鳴と、頭から鳴ってはならない音が二重奏で響き渡った。脳天締めに加え薬を無理に飲まされた天元は……燃え尽きたように真っ白になって倒れ、一歩も動くことはなかった。

 

 

 

 

———————–––––

 

————————

 

—————

 

 

◇その夜

 

 

「ここは…」

一夏はふと目を覚ます。辺りは木々に囲まれていた。そして一夏は…この場所に覚えがあった。

 

「この場所、炭吉さんの……けど、どうしてこの場所に…」

久しぶりに見る夢の中で一夏は少し動揺していた。あの後、一夏は蝶屋敷の仕事を手伝った後、報告書をまとめてから、部屋で眠りについたのだが、いつのまにか炭吉の家の付近にいた。

 

「夢か…血鬼術ってわけでもなさそうだな…って、いけない。はぁ、夢だけでも血鬼術と疑うとは、情けない」

一夏は己の情けなさを反省する。そして再び辺りを見渡すと一軒家が目に入った。

 

「ん、誰かいる」

赤ん坊を背におぶった男性と隣に立って女の子を抱えている女性、そしてその先には…一夏が知っている人物がいた

 

「…縁壱さん」

一夏の内の世界にいる継国縁壱だった。そして赤ん坊を背負っている男性は竈門家先祖の炭吉だった。

 

縁壱は炭吉に何かを託した。それは、一夏には遠目だったが渡したものに見覚えがあった。

 

「あれは……炭治郎の耳飾り!そうか、この時に、耳飾りを…」

 

一夏は少しずつ今の夢の内容の記憶を思い出し始める。

 

縁壱はその後、軽く頭を下げ、何も言わず踵を返し歩き始め、一夏を透けて通る。

 

その後ろ姿は…何処か寂しくて悲しい感じがした。

 

『縁壱さん!後に繋ぎます。貴方に守られた命で…俺たちが!貴方は価値のない人なんかじゃない!!何も為せなかったなんて思わないで下さい!!そんなこと絶対誰にも言わせない!この耳飾りも日の呼吸も後世に伝える、約束します!!』

 

 

炭吉は涙を流しながら約束する、離れた場所から縁壱に聞こえるように。

 

 

そして縁壱は炭吉に振り返った。

 

 

『ありがとう』

 

 

一夏が見たのは、穏やかに微笑む縁壱の姿だった。

 

 

 

「……」

 

パチリと一夏は目を覚ます。視線だけを周りに向け確認する。周りは明るく日が昇っている

 

 

「……はは」

一夏は瞳から涙を流す。あの穏やかな微笑みの縁壱、一夏は炭吉との関係を全て思い出した。縁壱の心の底からの笑顔を見た途端に、流れ込んできたのだ。

 

 

「(縁壱さん…日の呼吸は、今もちゃんと伝えられてるよ。俺の時代じゃどうなってるかわからないけど、今も、しっかり受け継がれてる)」

 

一夏は意識をハッキリさせた後、自身を確認すると隣に一人の少女が眠っていたことに気づく。

 

「ふふっ、しのぶはまだ寝てるか…」

 

しのぶは顔を一夏の方に向けて添い寝をしていた。

 

 

 

「(そう言えば、那田蜘蛛山の時に言う事をなんでも聞くって約束してたな)」

 

あの時からだいぶ事が落ち着き、どんな事を頼まれるかと身構えたが、まさか「夜は一緒に寝て欲しい」と頼まれた時は驚いた。偶に一緒に寝ることはあったが、しのぶ自ら一緒に寝て欲しいと言われたのは初めてだったからだ。

 

「すぅ、すぅ」

 

「(……可愛い)」

 

一夏はしのぶの寝顔に表情を綻ばせる。

 

「しのぶには悪いけど…そろそろ起こさないとな、しのぶ、そろそろ起きろ…朝だぞ」

 

「う〜ん、姉さん…あと五分」

しのぶは起きる気配はなく毛布を頭を隠す様に潜ってしまい、起きる気配はない。どうやら二度寝をするようだ。

 

「カナ姉じゃないぞ俺は。起きろしのぶ、二度寝は良くないぞ」

一夏が強引に毛布を剥ぐと、しのぶは布団の中で蹲っていた。

 

「(……まるで猫みたいだな)起きろしのぶ……仕事に遅れるぞ?」

 

「あと一時間!」

 

「何故に時間が伸びる?起きないなら、こうするまでだ」

 

一夏はそのまましのぶに顔を近づけ、彼女の唇に自身の唇を重ねる。

 

「…ッ⁉︎」

しのぶは突然の感触に目をパッ!と見開き一気に顔を赤くする。一夏は十秒経つと唇を離し、しのぶをじっと見つめた。

 

「おはよう……やっと起きたか、俺は先に行くからな」

 俺は今日、杏寿郎と稽古の約束をしている。準備を始めるため、寝室から退室した。部屋の中でボン!と何かが破裂した様な音がしたが、気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ!」

 

ある場所で、二人の剣士が汗を流しながら木刀をぶつけ合っていた。そして互いに距離を取ると深く呼吸を行い、炎と日の技を放つ。

 

 

「炎の呼吸 壱ノ型・不知火!」

 

「日の呼吸改・炎舞疾風」

 

激しく燃え滾る斬り払いから生じた炎と灼熱の斬撃が交差する。

 

 

「(今の技、一夏の使っていた円舞一閃よりも早く威力が強い!透き通る世界の練度は上げたとはいえ、反応速度は一夏が断然上!)」

 

「(杏寿郎、無限列車の時よりも更に腕を上げている。透き通る世界での反応速度も早くなってきている。少しだけギアを上げてもいいかもしれないな、しかし、やはり違和感は感じるな…)」

 

遊郭での戦いから一ヶ月が経過したが、継子である炭治郎、そして伊之助はまだ目を覚ますことはなかった。善逸はと言うと、技の反動による足の骨折だけで済んだが、療養が必要なのは変わりない。故に、一夏は現在杏寿郎と木刀を打ち合っていた。

 

 

「炎の呼吸 伍ノ型・炎虎!」

 

「日の呼吸改・碧羅の天・残月」

一夏は居合の構えから抜刀するように、烈火の猛虎を斬り裂く。

 

日と炎の剣撃が繰り広げられ、二人の攻防はもはや異次元だった。互いに透き通る世界に至っているため、杏寿郎も筋肉組織の動きで何をするのか判断出来る様になっているが、一夏よりは未だ反応速度は遅い方だ。一夏は僅かな動きで対応できる。

 

 

 

「日の呼吸改・輝輝恩光・緋空斬」

 

「炎の呼吸 肆ノ型・盛炎のうねり!」

 

 

「日の呼吸改・陽華突・無想覇斬」

 

 

「炎の呼吸 拾ノ型・加具土命・焔星!」

 

 

 

一夏が火の斬撃を杏寿郎に向けて放つと、杏寿郎は自身を中心にして渦巻く炎のように前方広範囲を薙ぎ払い、炎の障壁を作り斬撃を防ぐ。

 

 

ーー日の呼吸改・烈日紅鏡・紅葉切り

 

一夏は炎の壁を突破し、すれ違いざまに杏寿郎を斬りつけようとするが、杏寿郎はなんとか斬撃を受け流し距離を取る。呼吸を整え、幻視するほどの炎が杏寿郎にまとわりつく。

 

 

「炎の呼吸 絶技! ─」

 

一夏はその気迫、杏寿郎から感じる闘気で、彼を見据える。

 

「(この感じ……無限列車の時の、いや、それ以上の…まさか杏寿郎、己の限界の殻を破ろうとしているのか?幻視するほどのこの炎の闘気……だが、なんだ…この高揚する気持ちは……合わせてはいけない。俺も、相手に応えないと!)」

 

ーー日の呼吸改ー

 

一夏も構えを取る。杏寿郎と一夏は互いに炎と火を纏い同時にその場から駆け出す。

 

 

玖ノ型 煉獄!!/炎舞鳳凰!)」

 

 

二人の一撃は進化した煉獄の炎龍と火の鳳凰の衝撃波と化し、土埃が舞う。

 

土埃が少しずつ薄れてゆき……そこに映ったのは、木刀を振り抜いていた一夏と杏寿郎の姿。

 

 

 

「………」

 

 

 

 

「…はは、限界の殻を破ったか……杏寿郎」

 

そう言うと、“一夏の木刀だけ”刀身が粉々に砕けてしまった。

 

 

「っ!……一夏、俺は」

 

「ああ、杏寿郎の勝ちだ」

 

「よもや!俺は…一夏に勝ったのか⁉︎」

 

「俺も杏寿郎に全力を込めて鳳凰を放った……杏寿郎はそれを上回った。俺もまだまだ精進しないとだな」

 

杏寿郎は一夏に模擬戦とは言え勝利したことに驚き、そして、心の底から笑みを浮かべた。

 

 

「(それに気のせいだろうか、炎の呼吸の奥義にしては別物だったような……一瞬だけ炎が青く見えた気が……)」

一夏は先程のぶつかり合いで杏寿郎が放った“煉獄”に違和感を持ったが、一夏は今回相談することがあった為、すぐ彼に問いかける。

 

 

「杏寿郎、さっきの打ち合いでおかしな点はなかったか?」

 

「む、一夏の言っていた七つの型か?特にない!動きに無駄がなく威力も申し分なし!それがどうしたのだ?」

 

「俺が独自で五大呼吸,花と虫,月を併用した改の技、螺旋撃,疾風,業炎撃,紅葉切り,残月,緋空斬,無想覇斬、この七つの技の違和感を感じてな」

 

「猗窩座の時にも使っていたな。よもや…違和感か、それはどのような感じだ?」

 

「その七つの技を使うとしっくりこなくてな…馴染まないと言うか……技の威力も精度も問題はない。だけど納得いくような気持ちにはなれなくてな…」

 

「うむ、成る程…となると、通常の刀ではその技は向いていないのかもしれぬな」

 

「向いていない?」

 

「ああ、呼吸のように、武器も人によっては合う合わないがある。悲鳴嶼殿は鎖で繋いだ斧、宇髄に伊黒と甘露寺の呼吸は特殊な日輪刀で独自に技を補っている。胡蝶妹が毒殺に長けた日輪刀を使っているようにもな」

 

「己の技に合う武器……か」

一夏は顎に手を当て考え込む。七つ以外の日の呼吸の技は問題なく使えているが、他の呼吸を併用した七つの型は違和感があったのも頷ける。

 

「一夏、少しここで待ってはくれぬか、すぐに戻る!」

 

「え、ちょっ… 杏寿ろ––––」

 

一夏が名前を呼ぶ前に杏寿郎は一気に駆け出し、一瞬にして姿が見えなくなってしまった。

 

 

「最後まで聞いてから行ってくれ……」

 

 

一夏は杏寿郎が戻るまで瞑想を始めた。しばらくすると周りには鳥や動物が集まってきた。

 

 

 

 

 

「待たせたな、一夏!」

杏寿郎の大声で一夏に集まっていた動物達は一斉に逃げ出し、一夏はゆっくり目を開け立ち上がる。

 

「杏寿郎、いったい何をしに「これを使ってみるといい!」おっと、これは……木刀か?いや、木刀にしては長いような」

杏寿郎が一夏に投げ渡した木刀は、普通の木刀にしては長かった。

 

「その木刀は太刀型の木刀だ。中には太刀を使う隊士もいる!試してみるといい、俺の推測が正しければおそらく…一夏の七つの型は太刀が適している筈だ!」

 

「……太刀」

一夏は太刀の木刀を握りしめ、杏寿郎から少し離れて深く呼吸を行う。

 

ーー日の呼吸改 円舞・螺旋撃

 

その一振りは灼熱の竜巻を発生させた。一夏は即座に構えを変え、

 

「炎舞・疾風」

 

神速のスピードで移動して斬り刻み、

 

「飛輪陽炎・業炎撃」

 

業炎を纏い両手で振り下ろし、

 

「烈日紅鏡・紅葉切り」

抜刀する様に斬り込む。その剣速は優れた精密精度で音をかき消すかのような太刀筋だ。そして、

 

「碧羅の天・残月」

居合の構えから抜刀する様に斬り上げ、

 

「輝輝恩光・緋空斬」

燃え盛る斬撃を直線にして放ち、

 

 

「日の呼吸改・陽華突・無想覇斬」

横一閃に振るい、業火を纏い一瞬の居合いで無数の斬撃を放つ。一夏の近くに落ちていた葉が全て斬り裂かれた。

 

全ての技を放った一夏は、

  

「………これは」

あまりの手応えに驚き、木刀を見つめる。

 

「うむ!どうやら手応えがあったようだな!」

 

「ああ、驚くくらいしっくり来た。この技は…太刀に向いた技だったみたいだ。杏寿郎…ありがとう、お前に相談して正解だった」

 

「うむ!力になれたようでよかった!」

 

 

その後、一夏は太刀で日輪ノ神楽を、問題なく技を繋げることが出来るのを確認した後、杏寿郎と一緒に夕食を済ませて、蝶屋敷に戻り、ある人物に手紙を送ったのであった。




杏寿郎が放った《煉獄》は、透き通る世界にいたり、更に腕を上げ、技も進化させています。

その為、煉獄は奥義から絶技へ進化しています

産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか

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