炭治郎達が刀鍛冶の里に赴いてから八日が経過した。現在、部屋では、竈門兄妹がぐっすり眠っている。
里に到着した初日を除いて、炭治郎は、刀鍛冶の里に存在する“縁壱零式”という六本腕の絡繰人形を使い鍛錬をしている。何でも、腕を六本装着しないと本人の剣技の再現が出来ないらしい。炭治郎は一夏を相手にしているような感覚で挑んだが傀儡に意思はなく、最初はやられているばかりだった。しかし、炭治郎はどんどん勘を取り戻しはじめ、動きについてこれるようになって来た。三日ほどで攻撃を受け流せるようになり、後の四日は全て鍛錬に当たった。
しかし、その傀儡は戦国時代から使用されている為、老朽化が進んでいて、炭治郎の鍛錬を最後に壊れた。
炭治郎が頭部を破壊すると、そこからは三百年前に使用されていたと思われる刀が埋め込まれていることが判明し、それを見た鋼鐵塚が現在研磨している。
「んがっ」
「鉄穴森っていう刀鍛冶知らない?」
眠っている炭治郎の鼻をつまみ、彼を眠りから呼び戻したのは無一郎であった。炭治郎は突然の事にガバッと目を覚ます。
「わぁ!時透君⁉︎今俺の鼻つまんだ?」
「つまんだ。反応が鈍すぎると思う」
「いやいや!敵意があれば気付きますよそんな」
「まあ敵意を持って鼻はつままないけど」
「鉄穴森さんは知ってるけど…どうしたの?」
「鉄穴森は僕の新しい刀鍛冶、君なら場所もわかると思って、鉄穴森はどこにいるの?」
無一郎が、ボーっとしながらそう呟く。すると、炭治郎が口を開く。
「鉄穴森さんなら、多分、鋼鐵塚さんと一緒にいるんじゃないかな?一緒に探そうか?」
と、無一郎に提案する。炭治郎は、筋骨隆々で姿で戻って来た鋼鐵塚に、絡繰人形の頭部から現れた刀をに渡した時のことである。鋼鐵塚は「鋼鐵塚家に代々伝わる研磨術で刀を研ぐ」と伝えると、共に居た鉄穴森と一緒に何処かに姿を消したのだ。
「……何でそんなに人を構うの?君には君のやるべきことがあるんじゃないの?」
無一郎は疑問に思う。炭治郎はお節介が過ぎると思ったのだ。
「人の為にすることは結局、巡り巡って自分の為にもなってるものだから。それに…俺も行こうと思ってたからちょうどいいんだよ」
無一郎は笑顔の炭治郎の言葉を聞いて、珍しく目を見開き丸くする。
「え?……何?今何て言ったの?今、今……?」
「へっ?ちょうどいいよってイデッ!」
「ウー!」
どうやら炭治郎の両膝の上で眠っていた禰豆子が目を覚まし、頭を上げると同時に、ゴンッと炭治郎の顎に直撃したようだ。
「禰豆子!起きたか」
「……」
炭治郎は顎を押さえながら元気な姿を見て笑顔になるが、無一郎は禰豆子の姿を見て首を傾げる。
「……その子、何か、凄く不思議な生き物だなぁ」
「えっ、変ですか?」
「うん、凄く変だよ。何だろう、うまく言えない。僕は前にもその子に会ってる。前もそうだったのかな…何だろう」
三人は同じポーズをとりながら考え込んだりしていた。炭治郎は茶々丸に禰豆子の血の変化を調べてもらっているため無一郎の前に出てくるのか心配だった。
そんなことを考えていると
「……(この感じ)」
「んっ?誰か来てます?」
「そうだね……そんなので誤魔化してるつもりなの?」
ーー霞の呼吸 肆ノ型・移流斬り
「ヒィィィ!!」
一瞬にして刀を抜いた無一郎が放った一太刀は、襖を斬り裂いた。すると、鬼が飛び上がり天井に張り付く。鬼は顔面半分を斬られていたが、すぐに再生させた。
「(速い…仕留められなかった)」
「(時透君が技を放つまで全く気づかなかった!それにこの鬼、上弦の鬼だ!鬼舞辻の匂いが濃い!大勢の人を殺している鬼だ!!そうでなきゃ柱の攻撃を避けられない!)」
鬼は涙を流し何か言っていたが、炭治郎は無一郎に少し遅れて日輪刀を抜刀する。
炭治郎が持っている日輪刀は鋼鐵塚が打った刀だ。縁壱零式の特訓で体力も遊郭の時の状態の近くまで回復しているため、何かあればすぐに行けるように準備をしていたのだ。
「(ヒノカミ神楽・陽華突!)」
「ヒィィィ!」
炭治郎の突きは鬼の左腕を貫くも、腕を犠牲にし攻撃を避け、畳の上に落ちる。
「(外した!だが、何で反撃してこない?)」
するとそれを見た禰豆子は姿を子供から大人の姿に変える。その姿は遊郭の時の姿と同じ姿だった。
「ムーっ!!」
禰豆子は鬼に強烈な蹴りをくらわすと、鬼はその威力に部屋の壁まで吹き飛ばされた。
「禰豆子!!その姿になるな!」
炭治郎は元の姿に戻るよう促している中、
「これで終わり…」
無一郎は鬼の頸を斬り落とした。
「ヒィィィ…斬られたぁぁ」
「(きっ、斬った!!上弦の鬼の頚を!!速い!!でも、あの時の上弦の兄妹みたいに死なない場合がある、何らかの条件がついたり!)時透君、油断しないで!」
無一郎が斬り飛ばした鬼の頸から、体が再生するようにもう一体の鬼を形作りはじめた。
「(分裂!!一方には頭が生え、もう一方には体が…!!)」
そして、頸から形成された鬼が草の団扇を振り上げる。
「後ろは俺が!!」
無一郎は団扇を持った鬼に刀を振り上げて、斬り込もうしたその寸前で団扇が煽られる。その瞬間、周囲の障害物を破壊し、無一郎を外へ飛ばしてしまった。ゆっくり煽られたのが信じられない威力であった。
「禰豆子……!!時透君っ!」
禰豆子は半壊した家の壁にしがみつき、炭治郎の左手を掴んだ為、襲ってくる暴風で吹き飛ばされることはなかった。
「カカカッ、楽しいのう…豆粒が遠くまでよく飛んだ、なぁ…積怒」
「何も楽しくはない、わしはただひたすら腹立たしい。可楽……お前と混ざっていたことも」
「そうかい、離れられて良かったのう」
「積怒」と呼ばれた錫杖を持った鬼は不機嫌そうに、「可楽」と呼ばれた鬼へ話す様子に炭治郎は刀を構える。すると、積怒が錫杖を床に突いた。その途端、積怒を中心に雷撃が放たれる。
「グゥッ!!(何っだこれは⁉︎あの錫杖……!!まずい、意識が……飛びそうだ!!)」
意思が飛びそうな中、炭治郎は屋根の上にいる人の姿を確認できた。
「(あ、れは……玄弥⁉︎)」
屋根の上にいたのは、南蛮銃を構えた、不死川玄弥の姿だった。
◇
「(かなり飛ばされた。早く戻らなければ)」
暴風に飛ばされた無一郎は、何事もなかったように地面に着地した。しかし飛ばされた家からここまでの距離はかなりあるため無一郎は急いでいた。
里に戻り、長の鉄珍の安全を確保しなければいけない。里での最高技術者の損失は、鬼殺隊にとっても刀鍛冶の里にとっても大打撃或いは致命的な損失に成りかねない。
「うわあああ!!」
里に戻る途中で無一郎は、異形の形をした金魚と、縦横無尽に刀を振り回す少年が目に入った。
「(鬼と子供?)」
無一郎は一目で状況を判断する。襲われている子供は刀鍛冶として未熟なので優先順位は低いと判断し、異形の鬼は術で生み出されたものと判断した。
無一郎は足を止めず、技術や能力の高いものを最優先にした矢先、
ーー人のためにすることは巡って自分のために
ーー人と人との繋がりは、何より大切な物なんだ。
無一郎の脳内に二人の言葉がよぎり、無一郎は少年の元に向かって飛び、異形の鬼の背中についている壺を切ると、鬼は消滅をはじめる。
「あっ!」
「大丈夫?」
すると無一郎を助けた子供が無一郎に抱きつく。抱きついている子供の名前は小鉄…炭治郎が修行をしている間、一緒にいた職人だ。
「うわあああ!ありがとう〜!!死んだと思った、俺死んだと…怖かった!うわあああ!!昆布頭とか言って悪かったよう!ごめんなさい〜〜!!」
無一郎は抱きつかれているにもボーっとしていた。
「昆布頭って僕のこと?」
「すみませぇん!嫌いだったんです!」
「こんなことしてる場合じゃないや、僕はもう行くから…あとは勝手にして」
小鉄は歩き出す無一郎を呼び止める。
「待って!!鉄穴森さんも襲われているんです!鋼鐵塚さんが刀の再生で不眠不休の研磨をしてるから…どうか助けてください!お願いします!」
小鉄は土下座をして嘆願する。そんな無一郎はと言うと、
「……いや、僕は」
──君は必ず自分を取り戻せる……無一郎
「……!(なんだ?)」
突如、頭痛が走り、頭を押さえると、霞かかった光景が晴れていく
──混乱しているだろうが、今は生きることだけを考えなさい。生きてさえいればどうにかなる。失った記憶は必ず戻る。心配いらない。きっかけを見落とさないことだ。ささいな事柄が始まりとなり、君の頭の中の霞を鮮やかに晒してくれるよ
「………」
「あ、あの…「行くよ」え?」
無一郎は小鉄を抱えると、駆け出し始める。小鉄はあまりの速さに驚き、大声を出してしまう
「うわああ!ちょっちょ…!!もうちょっとゆっくりで!!あともうちょっとだけゆっくりお願いします!!」
「喋ってると舌を噛むから黙っていたほうがいいよ」
「ヒィィィ!」
無一郎は小鉄を抱えながら、一緒に鉄穴森と鋼鐵塚の元に向かう。
「(これは正しいのかな?こんなことしてたら里全体を守れないんじゃ……いや、できる。僕はお館様から認められた……鬼殺隊霞柱・時透無一郎だから)」
無一郎は耀哉の言葉を胸に、小鉄を抱えながら鉄穴森を探して森を駆ける。
しばらくすると鉄穴森も小鉄と同じように鯉のような鬼に襲われているのが目についた。無一郎は小鉄を抱えながらも鬼の壺を斬り裂いた。
「鉄穴森さん!!」
「小鉄少年!!無事で良かった。時透殿も、ありがとうございます」
「あなたが鉄穴森というひと?俺の刀用意してる?早く出して」
「おやっ!これは酷い刃毀れだ!」
鉄穴森は無一郎が使っていた刀を見て驚いた。
「だから里に来てるんだよ」
「なるほどなるほど、では…刀をお渡ししましょう」
「……随分話が早いね」
「炭治郎君に頼まれていたんですよ。あなたの刀の事を、そしてあなたをわかってやってほしいと」
「……炭治郎が?」
「だから私は時透殿を最初に担当していた刀鍛冶を調べて…あっ、そうだ!鋼鐵塚!!」
鉄穴森は我にかえり鋼鐵塚の安否を確認するため、無一郎達と共に鋼鐵塚のいる小屋へと急いで向かう。
「良かった!!魚の化け物はいない!!あの小屋で作業していたんです!時透殿に渡す刀もあります!!それを持って長の所へ…「いや駄目だ」えっ、何でですげうっ!」
「痛ってぇ、腹立つ!!」
「来てる」
無一郎は二人を止め、茂みに視線を向けると、壺が一人勝手に現れた。
「ヒョッ、よくぞ気付いたなあ…さては貴様柱ではないか。そんなにこのあばら屋が大切かえ?こそこそと何をしているのだろうな?ヒョッヒョッ!」
中からヘビやミミズのような細長い体、本来両目がある部分に口、口がある部分と額に目がある鬼が出てきた。頭などから小さい腕が複数生えている。人の姿を保っている者が多い鬼においては、完全な人外の姿をした鬼だった。
そして眼球には、上弦肆と刻まれていた。
「うーわ!キッショ!!」
「キッショ!!絶対独身だよ…」
「………」
刀鍛冶の二人は異形の姿にゾワゾワしながら震えていたが、無一郎は無表情で上弦の鬼を見つめていた。
「ヒョッヒョッ……初めまして、私は玉壺と申す者。殺す前に少々よろしいか?今宵三方のお客様には是非とも私の作品を見ていただきたい!」
「作品?何を言っているのかな」
「では、まずこちら」
無一郎が問うと、玉壺の隣には別の壺が現れる。そして、壺が揺れると、中から赤い……血が溢れ出て来た。
「鍛人の断末魔で御座います!!」
その光景はおぞましかった。五人の里の刀鍛冶が繋がれており刀も刺さり、到底まとも作品などではない
「ご覧ください、まずはこの手!刀鍛冶特有の分厚い豆だらけの汚い手を!あえて私は前面に押し出しております!」
「金剛寺殿、鉄尾さん、鉄池さん、鋼太郎…」
「あああ、鉄広叔父さん…!!」
残酷な姿に変わり果てた職人達の姿を見た鉄穴森と小鉄は、震えながらも名を呼ぶが、既に生命の息吹はない。
「そう!おっしゃる通り!!この作品には刀鍛冶を贅沢に!!ふんだんに使っているのですよ!!それほど感動していただけるとは!!」
玉壺は手をパチパチ拍手させながら、刺さっている刀に手を触れる。
「この刀を捻っていただき「おい」……ヒョッ⁉︎」
「いい加減にしろよクソ野郎が」
「(はっ、はや…ッ⁉︎)」
作品の説明をする玉壺に、無一郎は神速で接近し刀を振るうが、玉壺は顔を半分斬られるものの、壺に潜り込み、小屋の屋根の上にあった壺に移動していた。
「まだ作品の説明は終わってない!最後まで聞か…「うるさいなあ」」
無一郎は一瞬にして飛び上がり、屋根の上にあった玉壺の頸を狙いながら壺を斬り裂く。
「(早いな、また逃げられた。そして次はあそこだ。気づくと壺がある。どうやって壺が出てくるんだ?)」
無一郎は玉壺の動きについて考察する中、視線の先にある壺から怒りをあらわにしらながら玉壺が出てきた。
「よくも私の頭と壺を斬りましたね!審美眼のない猿めが!!貴様らには私の作品を理解する力はないのだろう。それもまた良し!!」
玉壺は無一郎に斬られた頭の半分を一瞬にして再生させる。
「(これだけ逃げるってことは、こいつはさっきの分裂鬼とは違って頚を斬れば死ぬんだ)」
無一郎は玉壺の考察を終了した。そんな中、玉壺は手から壺を形成したと思うと、中から二匹の金魚が出てくる。
「(金魚?なんだ)」
──千本針・魚殺!!
二匹の金魚は口を膨らませ、その個体からはありえない数の針を発射してくる。
「わああ!!」
無一郎は反対の屋根に移動し攻撃を回避し、地面に降りるが、金魚の狙いが鉄穴森と小鉄に向く。金魚は二人に向け針を放つと、鉄穴森は小鉄を庇うように覆い被さった。
しかし二人にいつまで経っても痛みは来ない。鉄穴森が振り向くと、頬にかすり傷を負ったものの、無一郎が全ての針を弾いていた。
「邪魔だから隠れておいて」
「時透殿/さん!!」
金魚は再び針を放つが、無一郎は技を使わず針を全て相殺する。その間に鉄穴森は小鉄を抱えその場から離れた。
「ヒョヒョヒョ、全ての針を斬り落とすとは。やりますねぇ、しかしどうです?かすり傷でもそのうち毒が手足をじわじわと麻痺していくでしょう。本当に滑稽だ…つまらない命を救ってつまらない場所で命を落とす」
『いてもいなくても変わらないようなつまらねぇ命なんだからよ』
「(なんだ、誰だ?思い出せない、昔同じ事を言われた気がする。誰に…言われた?)」
無一郎の脳内に浮かんだのは夏の暑い日のだった。戸を開けており、気温が高く暑すぎたのか夜になっても蝉が鳴いていた。
玉壺は壺を形成し身構える。
「ヒョヒョッ、しかしあなたは柱ですからねぇ、どんな作品にしようか胸が「うるさい」……ッ⁉︎」
ーー血鬼術・水獄鉢
無一郎は玉壺の頚を跳ね飛ばす寸前、玉壺の生み出した壺の形をした水牢に閉じ込められてしまう。
「いやはや危ない、危うく頚を跳ね飛ばされる所でしたよ」
「(駄目だ、斬れない)」
無一郎は脱出を試みるが、剣は水の壁を貫く事ができず鬼殺隊の生命線である呼吸を塞がれてしまった。
「鬼狩りの最大の武器である呼吸を止めた。もがき苦しんで歪む顔を想像するとたまらないヒョヒョッ!里を壊滅させ、鬼狩りを弱体化させれば産屋敷の頚はすぐそこだ!ヒョッヒョッ」
月夜に照らすなか、玉壺の笑いが響く。
しかし里から離れた場所で、二羽の鎹鴉が二人の隊士を先導していた。
「まさか里に上弦の鬼が…炭治郎と時透君、里の皆も無事だといいけど」
「けど、私の担当してる地区から刀匠さん達の里がすごく近かったし、真菰ちゃんも帰る最中だったみたいだし、私びっくり!!」
「ええ、私もです。気を引き締めていきましょう…蜜璃さん!」
「うん!よーし…頑張るぞぉ!!」
恋柱と狐面を身につけた少女達は速度を上げ、森の中を駆け出し、里に向かっていた。
原作の時透無一郎の違い
未だ無一郎は物事を忘れがちですが、実力は一夏との鍛錬により原作の無限城の無一郎よりちょい上。完全に記憶を思い出したらさらにすごくなる予定
一夏ほどではないが、気配感知は一夏の次に鋭い
産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか
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させる
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原作通り
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作者に任せる