日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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無一郎と玉壺の戦いはこの話で終わらせます


無限の無

「(肺に残っている空気で、まだ何とか一撃だせる)」

 

──霞の呼吸 壱ノ型・垂天遠霞

 

無一郎は玉壺の血鬼術により水牢に閉じ込められ、脱出出来ずにいた。なんとか肺に残った酸素で技を繰り出し、垂直に一突きを放つが、破れる様子はなかった。

 

 

「(破れないか、こんな刃毀れした刀じゃ当然か。だめだな……終わった。応援が来てくれるといいけど、お館様……俺は死ぬからせめて二人の柱を頼みます)」

 

 

——どうしてそう思うんだ?先のことなんて誰にもわからないのに

 

 

「(炭治郎?違う、炭治郎にはこんなこと言われてない。言ったのは誰だ?)」

 

無一郎は、炭治郎らしき幻影が見え始めた。彼から言われた記憶のない呼びかけ、そして少し雰囲気が違うことに、無一郎は混乱していた。そして、無一郎の意識はどんどん落ち始めていく。

 

 

 

「(視界が狭窄してきた。死ぬ…空気が尽きた)」

 

 

 

——自分の終わりを自分で決めたらダメだ

 

 

「(君からそんなこと言われてないよ)」

 

 

炭治郎では無い別の誰かが言った励ましを炭治郎が言っていることに、無一郎は違和感しか覚えない。

 

 

——絶対どうにかなる、諦めるな。必ず誰かが助けてくれるから

 

 

「(何それ…結局人任せなの?そんなの一番ダメだろう)」

 

 

——一人で出来ることなんてほんのこれっぽっちだよ。だから人は力を合わせて頑張るんだ

 

 

「(誰も僕を助けられない。みんな僕より弱いから。僕がもっとちゃんとしなきゃいけなかったのに判断を間違えた。自分の力を過大評価していたんだ。柱だからって)」

 

 

——無一郎は間違ってない。大丈夫だよ

 

 

「(いくつも間違えたから僕は死ぬんだよ……)」

 

 

水牢に閉じ込められてから、炭治郎に似た幻と押し問答を続ける無一郎に助けの手を差し伸べようとしている者がいた。

 

 

「死なせない!!時透さん頑張って!!絶対出すから!!俺が助けるから!!くそォ!!なんだこれ!ぐにぐにして気持ち悪い!」

 

突如、水に刃物が突き立てられる。刃物を握っているのは小鉄だ。無一郎を救う為に水牢を破ろうとしていた。

 

  

「(僕が斬れないのに君に斬れるはずがない。僕なんかよりも優先すべきことがあるだろう。里長を守れ、いや、そんな事君には無理か……せめて持てるだけ刀を持って逃げろ)」

 

 

「このままじゃ息が……息、あっ、そうだ……!」

 

小鉄は夢中で刃を突きつけるが、水牢は破れる事はない。そんな中、何かを思いついた様子の小鉄だったが、背後に小さめの金魚の化け物が迫っていた。

 

 

「(何してる後ろだ!気づけ後ろに……!)」

 

 

化け物が小鉄に飛びかかり、刃を振るう。それに気づくことのなかった小鉄から鮮血が飛び散る。

 

 

「痛っ……!うわあ血だ!!」

 

 

「(何してる何してる!!早く逃げろ!!)」

 

 

無一郎の思いも虚しく、ハサミのようなものの先端が小鉄の胴体を捉える。

 

 

「(鳩尾、急所を刺された、死ぬ。君じゃダメなんだ、どうして分からない。傷口を押さえろ、早く逃げろ!僕のところに来るな!助けようとするな!君にできることはない!)」

 

 

小鉄はよろよろとしながら、力を振り絞り、水の塊に顔を寄せる。そして、小鉄は空気のない水牢に空気を送り込む。

 

 

「………」

 

——人のためにすることは巡り巡って自分の力になる

 

 

炭治郎の周りに霞がかかり、晴れていくと姿が変わりはじめる。それは、無一郎にとって見覚えのある人物だった。

 

 

 

——そして人は自分では無い誰かのために、信じられないような力を出せる生き物なんだよ、無一郎

 

 

小鉄が送った空気を無一郎が肺に取り込む。そして……

 

 

「(うん、知ってる)」

 

 

──霞の呼吸 弐ノ型・八重霞

 

 

 

小鉄が吹き込んだ空気で呼吸を行い、水の鉢から脱出する。

 

 

「ガハッ!ゴフッ!グッ……ゲホッゲホッ!」

 

しかし息は絶え絶えで、口から入り込んだ水を吐き出す。

 

「(くっ……痺れが酷い、擦り傷でもこの毒、水の鉢から出られた所で僕はもう……)」

 

 

——杓子定規にものを考えてはいけないよ無一郎、確固たる自分を取り戻した時、君はもっと強くなれる

 

無一郎はお館様の言葉を思い出して、すぐさま小鉄の元に駆け寄る。

 

「(お館様の顔だ…病が進行して痛ましい)こ……小鉄、くん」

 

小鉄を傷めつけた金魚の使い魔が襲いかかるが、無一郎は一撃で仕留める。

 

「時透さん……お、俺のことはいいから、鋼鐵塚さんを……助けて…刀を…守って……」

 

 

「(両親が死んだのは十歳の時、僕は一人に……いや、違う、一人になったのは十一歳の時だ。僕は……双子だった)」

 

 

無一郎は無くした記憶を全て思い出していた、

 

両親のこと、双子の兄である時透有一郎がいたこと、両親が亡くなってから兄と二人で暮らしていたこと、そこに産屋敷あまねがやってきて自分達は始まりの呼吸の剣士の子孫だと言われたことを。

 

そして、その双子の兄も鬼により殺されたことも兄の最期の言葉も……。

 

 

 

——分かっていたんだ…本当は……無一郎の無は…… “無限”の“無”なんだ

 

 

 

波打つ心拍、上昇する体温。

 

 

 ——お前は自分では無い誰かのために、無限の力を出せる選ばれた人間なんだ。

 

 

 

『無一郎の無はな、沢山の可能性を込められているんだ。人は大切な人の為なら、限界を超えて、無限に……どこまでも強くなれるから』

 

無一郎の額と両頬に浮かび上がる霞のような痣。無一郎は己の変化を感じ取っていた。

 

 

 

 

「(一夏さんの言っていた事、今ならわかるかも……こういう時こそ、高鳴る鼓動を落ち着かせろ)」

 

 

思い出される日々の記憶、一夏に鍛えられた日々、未来の事や、未来の知人の事を聞いた時の会話なども。

 

そして波打つ心拍を無意識心臓に意識を巡らせ、落ち着かせる。心拍を落ち着かせ、状態を維持したまま、刀を片手に駆け出す。向かう先は鋼鐵塚がいる小屋だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(此奴!!此奴!!この男!!この人間!!)」

 

 

小屋の中では先程から玉壺が暴虐の限りを尽くしていた。鋼鐵塚はそれを意に介さずに刀を研ぎ続けていた。普通の者から見れば異常の光景だった

 

 

「(これだけやってもまだ研ぐのをやめない!!片目を潰した時ですら声を出さず研ぎ続けるとは……!)」

 

 

鬼である玉壺も驚きを隠せなかった。ただの刀鍛冶に過ぎない人間がある程度加減しているとはいえ、上弦の肆たる自分の攻撃を耐え続けていた。

 

玉壺はなんとか鋼鐵塚の集中力を切らせたかった。芸術家としてのプライドが許さなかったからだ。ここまで攻撃を続け、片目を切っても声を上げる事なく、鋼鐵塚は手を止める事なく刀を研ぎ続けていた。

 

その姿は正に、一つの作業に没頭する職人の姿だった。

 

 

「う…ぐ…」

 

 

「(そうだ、あいつを殺すといえば…)」

 

 標的を壁側に倒れ込んでいる鉄穴森に目を向けたその時だった。玉壺の背後から迫って来た刃を間一髪で壺に潜り回避する。

 

 

「(“水獄鉢”を抜けている!!一体どうやって……わからぬ、間もなく死ぬと思った向こうには意識をやってなかった。いやしかしだ、逆に言えばそれだけ私が集中していたと言うことだ!!よし!!)」

 

 

ニヤリとする玉壺は無一郎と正面から向き合う、しかし無一郎に起こっていたその異変を玉壺は目にした。

 

 

「(ん?待て待て待てなんだあの痣は?無惨様からいただいた情報では耳飾りの柱と子供も似た痣があった)」

 

 

無一郎の顔に浮かぶ、先程までは無かったはずの痣……玉壺は日柱とその継子にも同じような痣があったということを思い出す。

 

 

「(それよりも、何を涼しい顔をして出て来てるんだ。お前は身体が麻痺しているはずだろうが。かすり傷でもかなりの毒の効き目があるはずだ、なぜさっきよりも尚早い動きで私に傷をつけた)」

 

 

──血鬼術・蛸壺地獄

 

無一郎は蛸足に刀を振るうが、限界が来たのか容易く折れてしまう。

 

「時透殿!!」

 

壺から巨大な蛸足が湧き出て、小屋は破壊された。

 

「ヒョヒョッ、どうだこの蛸の肉の弾力は!これは斬れまい!」

 

 

外に投げ出される鋼鐵塚は刀を手放すことなく、起き上がり作業を再開し、その手は刀を研ぐことをやめなかった。

 

「(まだ刀を研いでいる。馬鹿か?真面ではない……)」

 

 

流石の玉壺も鋼鐵塚の姿に引いている様子だっだ。玉壺は蛸足に視線を移す。無一郎と鉄穴森は蛸足に囚われていた。

 

 

「それもまたよし、あの刀鍛冶より先に柱だ。先程は少々手を抜きすぎた。今度は確実に潰して吸収するとしよう。」

 

 

が、その瞬間に蛸足が斬り刻まれる。着地する鉄穴森と無一郎……鉄穴森の持っていたのは刀を抜かれた鞘だけだった。

 

「俺のために刀を作ってくれてありがとう……鉄穴森さん」

 

 

無一郎の手には《悪鬼滅殺》の文字が彫られた新たな日輪刀が握られていた。

 

そして、刀の色は赫く染まり、月の光を浴びて反射していた。

 

 

「…!!いや、いや、私は…時透殿の最初の刀鍛冶の書きつけ通りに作っただけで…っ(と、時透殿の刀が…赫く染まって、そうか、鋼鐵塚さんが言っていた赫い日輪刀、この事だったのか…)」

 

 

「そうだったね。鉄井戸さんが最初に俺の刀を作ってくれた。心臓の病気で死んでしまった……」

 

 

 

無一郎は最初に刀を打った刀鍛冶、鉄井戸のことを思い出していた。

 

 

『儂はもう長くはない、命を惜しむ歳ではないが…どうにもお前さんが気がかりじゃ』

 

 

「(鉄井戸さん…ごめん、心配かけたなぁ)」

 

 

 

思い返せば、最後の最後まで心配されていたと、無一郎が心の中で感謝する。そして蛸足が迫り、無一郎は紅蓮に染まった日輪刀を手に駆け出す。

 

 

「(俺はもう、大丈夫だよ)」

 

 

──霞の呼吸 伍ノ型・霞雲の海

 

 

辺り一面を大量の霞で覆うように斬り裂き、迫る蛸足を捌いてみせた。

と同時に、玉壺は木の上にあった壺に移動する。

 

「素早いみじん切りだが、私の壺の高速移動にはついてこれまい」

 

「そうかな?随分感覚が鈍いみたいだね。何百年も生きてるからだよ」

 

「何?」

 

気がつくと、玉壺の腕は全て斬り落とされていた。

 

「(いつの間に!!それになんだこの焼けるような痛みは⁉︎腕が再生しない⁉︎どうなっている⁉︎)」

 

 

 

「今のは新しい刀の試し斬り、次でお前の頚確実に斬るから、お前のくだらない壷遊びにいつまでも付き合うくらいなら、一夏さんの話を聞いていた方がマシ」

 

 

「……舐めるなよ小僧」

 

 

「事実を言ってるだけ、どうせお前はすぐに消える。なんだか凄く調子がいいんだ、どうしてだろう?」

 

 

「その口の利き方が舐めていると言っているんだ糞餓鬼め、たかが十年やそこらしか生きてもいない分際で」

 

「そう言われても、君には尊敬できる所が一つもないからなぁ、見た目も喋り方もとにかく気持ち悪いし」

 

「私のこの美しさ、気品…優雅さが理解できないのはお前が無教養の貧乏人だからだ。便所虫に本を見せても読めないのと同じ」

 

 

「一夏さんの日輪ノ神楽のほうが綺麗で美しいよ、忘れがちな僕でも覚えてるくらいだったし。君の方が便所に住んでいそうだけど?」

 

「耳飾りの柱は目障りだ、いいから黙れ便所虫、お前のようなちんちくりんの刃は私の頚には届かない」

 

「言っただろ、さっきは試し斬りだって、お前の腕、再生してる気配がないけど?ああ、もしかして自分に対して言っている独り言だった?だったらごめんね、壺の鬼」

 

無一郎と地面の壺に移動した玉壺が煽り合いを繰り広げる。

 

「ヒョヒョッ、安い挑発だのう、この程度で玉壺様が取り乱すとでも?」

 

その煽り合いに終止符を打ったのは首を傾げている無一郎だった。

 

 

「うーん、うーん」

 

「ヒョヒョッ、何だ?」

 

 

「気になっちゃって……なんかその壺形歪んでない?左右対称に見えないよ、へったくそだなあ。」

 

 

「それは貴様の目が腐ってるからだろうがアアアア!!!私の壺のオオオオ!!何処が歪んでいるんだアアア!!!」

 

 

──血鬼術・一万滑空粘魚

 

 

玉壺の複数の壺から一万匹の魚が無一郎に襲いかかる。

 

 

「一万匹の刺客がお前を骨まで喰い尽くす!!私の作品の一部にしてやろう!!!」

 

 

 

「(遅いなぁ)」

 

 

──霞の呼吸 陸ノ型・月の霞消

 

 

無一郎は一瞬にして魚を覆うように斬り込む。一万匹の魚を一切討ち漏らすことなく仕留めた。

 

「(ぜ、全部斬りおった!!奴の太刀筋が全く見えん!それにあの赫い刀、無惨様を追い詰めた剣士と同じ刀⁉︎しかし、問題はない…粘魚が撒き散らす毒は経皮毒…浴びれば終わり…)」

 

 

斬られた魚は消滅する前に体液を撒き散らす。しかし無一郎は構わず技を放つ。

 

 

「(この液体…邪魔だなあ)」

 

 

──霞の呼吸 参ノ型・霞散の飛沫

 

 

円を描くように魚の体液は全て斬り払われる。

 

「(何ィィィ!!回転で全て弾き飛ばされた!!)」

 

 

驚く玉壺はすぐさま木の上に避難する。

 

 

「あーもう、面倒くさいな、さっさと斬られてくれないかな」

 

 

「お前には私の真の姿を見せてやる「はいはい」この姿を見せるのはお前で三人目「結構いるね」黙れ」

 

玉壺の身体の形がみるみるうちに変わりはじめる。

 

「私が本気を出した時、生きていられたものはいない「すごいねー」口を閉じてろ馬鹿餓鬼が!!」

 

そして先程の姿よりは若干の人間に近くなりはじめた。

 

 

「この透き通るような鱗は金剛石よりも尚堅く強い。私が壺の中で練り上げたこの完全なる美しき姿に平伏すがいい」

 

人の姿は上半身だけであるが、下半身は魚の尾のようになっている。一夏が玉壺の姿を見たら「魚人だ」と間違いなく口に出すだろう。魚人は一夏の時代では空想上の生物となっているからだ。

 

 

「…………………」

 

対して無一郎は無表情でボーッと玉壺を見つめていた。

 

「何とか言ったらどうなんだこの木偶の坊が!!!本当に人の神経を逆撫でする餓鬼だな!!!」

 

 

「いや、さっき黙ってろ言ったのはあんただろ?それにそんなに吃驚もしなかったし……」

 

玉壺は無一郎に殴り掛かる。無一郎が刀を振り上げた時、玉壺は攻撃を避けた。地面は玉壺の拳に触れた箇所が魚に変わる。

 

 

「木の上に逃げるなと己が言わなかったか?面倒な事だのう」

 

 

「……」

 

無一郎は無傷の状態で木の上に飛び上がっていた

 

 

「どうだねこの私のこの神の手の威力、拳で触れたものは全て愛くるしい鮮魚となる。そしてこの速さ!!この柔くも強靭なバネ、さらには鱗の波打ちにより縦横無尽ら自由自在よ。震えているな、恐ろしいか?先程の攻撃も本気ではない」

 

 

「あのさ、お前頚……もう斬ってるけど?」

 

 

「はっ、何を馬鹿な事……」

 

地面に着地し、無一郎がそう言い放った瞬間、玉壺の頚が地面へと落ちた。

 

──霞の呼吸 捌ノ型・霞隠れ

 

霞隠れは相手の視線が刀に向いてる隙に音を立てずに視覚外から素早く近づき頸を断つ技である。玉壺が殴り掛かる際、刀を振り一瞬視線が刀に向いていた時、無一郎は既に刃を頚に通していた。

 

 

「(は?何だ?何だ?天地が逆だ、何か起きている?感覚が消えた。奴は一体何をした)」

 

 

「言ったはずたよ、次で斬るって。お終いだねさようなら、お前はもう二度と生まれて来なくていいからね」

 

 

 

「くそオオオ!!!あ、あってはならぬことだ!!!人間の分際で!!この玉壺様の頚をよくもォ!!悍ましい下等生物めが!!この蛆虫共めが!!この化け物があ!!」

 

「お前にだけは言われたくないよ」

 

「がっ」

 

 

頭のみとなって最後まで喚くことが出来なかった玉壺を斬り刻み、上弦の肆を撃破した。単騎での上弦の討伐は、織斑一夏が上弦の弐を討伐した四年前以来の快挙だ。

 

「ごちゃごちゃうるさい。早く地獄に行ってくれないかな」

 

その後、玉壺は消滅し、鉄穴森は無一郎に駆け寄る。

 

「時透殿!!大丈夫ですか⁉︎」

 

「大丈夫大丈夫、凄く今気分がいいんだ。それにすぐ炭治郎たちの所へ行かないと」

 

「顔色が悪いですが、本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だってば、僕のはなしきいてる?」

無一郎は身体が震えはじめ、顔色も悪くし始める。

 

「んっ?体震えていませんか⁉︎ちょっあなた…」

 

「いいからさ、かなもりさんは…こてつくんのところへ…」

 

無一郎は最後まで言えず地面へバタンと倒れ込んでしまった。

 

 

「うわあああ!!時透殿————っ!!!」

毒が回っていた為全然大丈夫ではなかった。命に関わるほどではないがそれでも身体を動かすことができなかった。

 

「やばいやばい!!何をすればいいんでしょう⁉︎ちょっ…誰か!!鋼鐵塚さん!!」

 

鋼鐵塚は刀を磨ぎ続けている。こんな状況で助けに来ない事に鉄穴森はついにキレた。

 

「くっそアイツ来なぇな!!私が殺されかけていた時もガン無視でしたからね!!」

 

「たた、かないで……いたい」

 

「うわああ!ごめんなさい!!どっどうしましょ「横向きにした方がいいですよ」うわ————!!小鉄少年の亡霊!!」

鉄穴森の背後に傷口を押さえている小鉄が立っていた。鉄穴森は顔を真っ青にし、小鉄に南無阿弥陀仏と唱える。

 

 

「いや、死んでないので、鳩尾の血は斬られた腕の方の血なんですよ。押さえたからついちゃって、後腹の方には」

小鉄はお腹の中に手を入れゴソゴソ探るとある物を取り出す。

 

「炭治郎さんから預かってた鍔を入れていたので助かりました。新しい刀につけてほしいって言われたんですよ」

 

小鉄が取り出した鍔は花びらを連想させる鍔だった。小鉄が持っていた鍔はカナエが現役の時に使っていた日輪刀の鍔だ。

 

鬼殺隊を引退した際、カナエは羽織をしのぶに託し、鍔は一夏に託そうとしたが、一夏曰く、「耳飾りをもらっているから充分」と言われ受け取らなかった。そして炭治郎が刀鍛冶の里に向かう前、カナエから託されたのだ。

 

自分と似た思想を持った炭治郎に、カナエは自分の夢を託したのだ。

 

 

 

「(カナエさん、小鉄君を、守ってくれたんだ)」

 

 

『ほら全部上手くいった。』

 

 

「(父さん…母さん)」

 

無一郎は家族の幻が見えていた。父に母、兄もいる。

 

 

『…頑張ったなあ、無一郎』

 

「(兄さん……)」

 

 

兄、有一郎に労いの言葉をかけられ、その優しさに無一郎は涙を流す。

 

 

 

そして、安心したように、無一郎は意識を手放す。

 

 

 

 

 

 

 

 

十二鬼月上弦の肆・玉壺、霞柱・時透無一郎の戦いは、無一郎の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 




原作の時透無一郎の違いその弐

実力は一夏との鍛錬により原作の無限城の無一郎より上。

完全に記憶を思い出し、痣を発現させた状態であれば日輪刀を赫刀化可能、透き通る世界にはまだ至れていない

上弦の肆となった玉壺を本気を出さず、ほぼ無傷に近い状態で倒す。

一夏ほどではないが、気配感知は一夏の次に鋭い

産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか

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