「日の呼吸 肆ノ型・灼骨炎陽!」
刀を両腕で握り、太陽を描くようにぐるりと振るい木の龍を薙ぎ払う。
──日の呼吸黒式 弐ノ型・炎陽紅焔
迫り来る木の龍を超高速連撃で、斬り裂く。血鬼術で生まれた木龍は炭治郎の赫刀で再生する気配はなかった。
「(あの童、先刻よりも動きが速くなっている⁉︎それに付けられた傷の再生が出来ん!何故だ…奴の姿が…耳飾りの柱と、姿が重なる!)」
「日の呼吸黒式 参ノ型・白日波濤!」
居合斬りで下から上へ斬り上げ、ダメージを与える。炭治郎は憎珀天に攻撃を当てながら血鬼術で作られた木の龍を分析する。時には憎珀天に接近し斬りつけるが、音波による攻撃で退避を余儀なくされた。
「(木の龍の頭は五本!伸びる範囲はおよそ66尺だ!!まずは一つ分かったぞ!!)」
──日の呼吸 弐ノ型・碧羅の天
技で木の龍を斬り、地面に着地する。
「(っ!不味い!突風の攻撃がくる!)」
龍の咆哮と共に、突風が巻き起こる。その突風は地面の形を変える。
炭治郎は、咄嗟に前方へ飛び、攻撃を回避する。
「くっ!!(やっぱりそうだ!喜怒哀楽の鬼の力を使える上に威力が上がっている。呼吸を落ち着かせろ!高鳴る心拍を落ち着かせるんだ……!)」
激しく波打つ心拍を落ち着かせ、一旦距離を取る。
「(66尺以上離れれば何とか、ここなら!)」
しかし、龍の口から龍が次々と伸び、66尺(約20m)以上の長さとなる。
「(なっ⁉︎伸び…)」
為す術もなく呑み込まれようとしたその時、
「水の呼吸 肆ノ型・打ち潮」
その瞬間、龍が水の斬撃により一瞬で裂かれ、炭治郎は何者かに抱き上げられる形で救出された。憎珀天は何が起こったか、何者の仕業かをしっかり把握していた。
「……柱か」
「キャー!すごいお化け!一夏君から借りた本で見た“木龍”ね!」
「ふぅ……何とか間に合いましたね」
「!?」
「大丈夫!?ごめんね遅れちゃって、ギリギリだったね!」
「無事、炭治郎?」
「真菰さん⁉︎甘露寺さん!」
「休んでていいよ!頑張ったぞ、偉いね!」
蜜璃は炭治郎を下ろすとすぐに憎珀天に向かっていく。
「あっ!甘露寺さん、待って下さい!」
「炭治郎、あの鬼が蜜璃さんに気が向いているうちに状況を……」
「は、はい!」
蜜璃は炭治郎の元を離れ、真菰は炭治郎から戦況を聞いた後、憎珀天と対峙する。
「ちょっと君!おいたがすぎるわよ!!禰豆子ちゃんと玄弥君を返してもらうからね!」
「……黙れあばずれが。儂に命令して良いのはこの世で御一方のみぞ」
「(あばっ⁉︎あばずれ!?私!?私の事!?)」
「初対面の女性に失礼じゃないかな…悪鬼?(蜜璃さんに鬼の事を伝えたいけど、どうやら悠長に話している暇はなさそうだね)」
蜜璃は自らの弟とそう変わらない背格好の鬼に罵倒され、動揺を隠せない中、真菰は冷静に状況を分析をする。
──血鬼術・狂鳴雷殺
雷と超音波が同時に蜜璃へと襲い掛かる。
「真菰さん!!甘露寺さん!!」
すぐさま意識を切り替え、攻撃へ対処する為、二人は高く跳び上がった。
──恋の呼吸 参ノ型・恋猫しぐれ
──水の呼吸 陸ノ型・ねじれ渦
真菰は全方位の攻撃を受け流し、蜜璃は雷の攻撃を斬り裂く。
「私達、怒ってるから!たとえ見た目が子供でも許さないわよ!」
「あなたは容赦する必要はないみたいだね。お前は弟弟子を傷つけ、多くの人を殺めた。私達は……お前を斬る!!」
「(この小娘共、攻撃自体を斬りおった)」
次々と攻撃を仕掛ける憎珀天に対し、蜜璃と真菰はそれを一つ残らず対処し、木龍をも斬り裂く。
「(ちっ!この速さでもついてくるか、ならば術で埋め尽くす)」
──血鬼術・無間業樹
「(キャ───!!広範囲の術!!だけど!)」
「(私と蜜璃さんにかかれば)」
──恋の呼吸 伍ノ型・揺らめく恋情・乱れ爪
──水の呼吸 拾壱ノ型・凪
「「(どうってことない!!)」」
辺り一帯を木の龍で埋め尽くされるも、蜜璃は後方に宙返りしながらそれらを斬り尽くし、真菰はその場にとどまったまま斬り裂いてゆく。
そのまま甘露寺の刀が憎珀天の首を巻き付くように捉えた。
「(しまった!)蜜璃さん!そいつは本体じゃない!本体は別にいます!!」
「(えっやだほんとに!?真菰ちゃん、そう言う事は早く言ってよぉ!)」
──血鬼術・狂圧鳴波
憎珀天の口から放たれる超音波が蜜璃を襲う。本来ならば身体の形は保っていられないはずの威力であるが、蜜璃は直前で全身の筋肉を硬直させることで耐えてみせた。
反射神経も、一夏、そして彼より鍛えられた杏寿郎の師事で上がっている為、意識を飛ばされる事もなかった。
蜜璃は特殊な肉体を持つ女性である。筋肉の密度が常人の八倍なのだ。見た目は女性のか細い腕だが、実際は筋肉モリモリマッチョマンの変態と同じくらい筋力がある。
それはさておき、硬直した瞬間を狙って、憎珀天が拳を振るってきた。
「(ま、まずい…身体が動かない…)」
「させない!」
拳を振るう憎珀天と蜜璃の間に真菰が入り込み、鬼の腕を斬り落とす。憎珀天は後ろに退かざるを得なかった。
「(凄い!あの距離を一瞬で!)」
真菰の速さにに炭治郎は驚いたのも無理はない。一夏との鍛練の末、真菰は水の呼吸を極め、柱と同格の実力を持っているのだ。
蜜璃を介抱するため、炭治郎,玄弥,禰豆子は駆け寄る。
「(あの小娘、至近距離で食らってもなお意識を保つとは……あの狐面の女も速い……まずはあの女共からだ)」
背中の太鼓を叩き、雷を放つ。
「甘露寺さんを守るんだ!!甘露寺さんと真菰さんが希望の光だ!!二人がいれば絶対に勝てる!!」
三人が身を呈して蜜璃を庇おうとする。蜜璃はすぐさま持ち直し、真菰と一緒に迫る攻撃に対処する。
「みんなありがとう!もう大丈夫!ヘマしちゃってごめんね!鬼殺隊は大切な居場所だから!みんな、私が守るから!!」
蜜璃は一夏と初めて会った日を思い出す。
◇
『会わせたい人、ですか?』
『うむ!俺なんかよりも凄い奴だ!一夏ならば甘露寺の悩みに良い助言を出してくれる筈だ!』
蜜璃が杏寿郎の継子だった頃の話だ。ある日、煉獄邸に一夏が来る事になり、二人は一夏の到着を待っていた。
『兄上!一兄さんが来られました!』
『来たか!こちらにいると伝えてはくれぬか』
千寿郎は嬉しそうに一夏の到着を杏寿郎に伝えた後、一夏のところに向かう。
『一兄さん?千寿郎君に煉獄さん以外のお兄さんが?』
蜜璃は疑問符を浮かべる。彼女の記憶だと、煉獄家は四人家族であり、長男の杏寿郎と次男の千寿郎以外にもう一人兄弟がいるはずがないと知っていたからだ。
『修行時代、一夏はこの屋敷に滞在していたからな!幼かった千寿郎にとっては、もう一人の兄のような存在だ!』
そしてしばらくすると千寿郎が一夏を連れて縁側にやってきた。
『来たか!久しいな一夏!』
『ああ、半年振りくらいか?そっちも元気そうでよかった』
『…………』
当初、蜜璃は、織斑一夏という男を「怖い人」だと思っていた。元炎柱であった杏寿郎の父…槇寿郎を凌ぐ実力の持ち主で、最強の鬼の一角を担う十二鬼月の上弦を無傷で倒すと言う快挙を成した隊士と聞いていたからだ。しかし実際の一夏は、蜜璃の想像とは裏腹に美青年だった。
黒髪に赫みを帯びた髪先、赫い瞳、額には綺麗な形をした陽炎の痣、スラッとした体型だった。
『杏寿郎、その人は?』
『(はっ!いけない!ここは私から挨拶をしなくちゃ!)はじめまして。甘露寺蜜璃です』
『あっ、はじめまして。織斑一夏です。こう見えて年は十六歳です』
『えっ⁉︎私より年下⁉︎』
大人びた見た目とは裏腹に、まさか自分より年下だったとは……。
『はは、よく言われます……』
『あっ、ご、ごめんなさい!』
『大丈夫です、慣れているので…えっと、甘露寺さん、でしたね?気にしなくても大丈夫ですから』
『やはり甘露寺も思ったか!父上も初めて会った時には甘露寺と同じ事を言っていたぞ!甘露寺、此処からは二人で話すといい!一夏、甘露寺の相手は任せたぞ!』
『え?杏寿郎、今日は稽古をするんじゃ……』
その後、杏寿郎は千寿郎を連れて縁側から去っていった。
『あ、あのぉ……』
『えっと……状況が飲み込めないですけど、とりあえずお話は聞きます』
無茶振りにも程がある。しかし、一夏は、とりあえずお互いの自己紹介を済ませたので、話を進めることにした。
蜜璃と話した一夏は、「とても天真爛漫な女性」と感じた、「カナ姉と同じで一緒にいると楽しいタイプの女性」だとも。
『甘露寺さんの髪は…染めているんですか?』
『この髪は地毛なの、桜餅を食べ過ぎてこうなっちゃって……変だよね、こんな色の髪』
『いえ、全く変じゃありませんよ。そんな事を言えば俺のこの額の痣が異様ですよ』
『え⁉︎そんな綺麗な形をしてるのに?』
『………この痣は周りから見れば気味が悪いみたいで、周りからは汚物のような視線を当たり前のように向けられていました』
痣が綺麗な形といわれ少し驚いていたが、そこから一夏はなるべく未来の事を伏せながら蜜璃に話した。蜜璃は口に手を当てていた。
『そっか、一夏君は…私と少し似てるね』
『似てる?』
『うん、私ね……』
蜜璃はそう言うと、ぽつりぽつりと本当の事を話し始めた。
蜜璃は一般家庭の出であるが、特異体質により筋力が常人の八倍はある。普通に生活しているだけでも常人の八倍のエネルギーを使う彼女の体は、それを補うだけの食事が必要だったのだ。
どのくらいかと言えば、力士3人分である。
そんな異常性故に、蜜璃の今までの見合いは全て破談に終わった。
『破談って、甘露寺さんみたいな優しい女性がどうして……』
『お見合いした男性の中に、こんな事を言った人がいたの……』
──君の様な女性と結婚できるヤツなんて熊か猪くらいでしょう。それにそのおかしな髪の色も子供に遺伝したらと考えるとぞっとしますよ。
蜜璃が身の上話を終えた時、それを聞いていた一夏の表情は珍しく怒りの色で染まっていた。
『なんだよ……それ』
『一夏君?』
『甘露寺さん、俺から言わせればその男性がどうかしてますよ。こんな綺麗な人で初対面で俺の痣を綺麗な形だって言ってくれた優しい女性なのに、むしろこう言い返せばよかったんですよ。『お前みたいなヤツ、こっちから願い下げだ!』って!周りの目を窺って、甘露寺さんが我慢する……そんなのおかしいですよ。俺の知人にだって派手な髪の人はいます、槇寿郎さんに杏寿郎や千寿郎……世界にはもっと色んな人がいますよ。それに、甘露寺さんのその力は、大切なものを沢山守れる力です。もっと自信を持ってください。甘露寺さんも充分素敵な女性です。それに、甘露寺さんの髪と体質が、運命の人を連れてくるかもしれないですよ』
『私の髪と体質が…運命の人を?』
『はい、俺自身を受け入れて……織斑一夏を好きになってくれた女性がいます。今は…その人と二年間付き合っています』
『えっ!一夏君、付き合っている子がいるの⁉︎』
『はい……』
一夏は急に恥ずかしくなったのか、頬を赤くし…穏やかな表情をしながら返事をする。その姿に蜜璃は……
『(か、可愛い!)』
胸をキュンとさせた。その後、一夏は杏寿郎との稽古が終わると、二人は蜜璃に指導を始める。後に蜜璃が柱に上り詰めると、一夏は確信したからだ。
この時、蜜璃は、本当に運命の人が現れるのをまだ、知らなかった。
◇
「(お父さん、お母さん、私を丈夫に産んでくれてありがとう。鬼殺隊ではみんなが私を認めてくれたの。鬼から守った人たちはね……涙を流してお礼を言ってくれた。伊黒さんは、私に縞々の長い靴下をくれたの)」
雷を薙ぎ払う。再び迫る木の龍から炭治郎達を守るために駆ける。
「(女の子なのにこんなに強くなっていいのかなって、また人間じゃないみたいにいわれるんじゃないのかって……だけど、一夏君は……強い女性は悪い事じゃないって。未来じゃ私のような強い女の子はいるって、“その力は大切な物を掴める力だ”って言ってくれた……!)」
「炭治郎!ここは私たちが!!」
「炭治郎君達は本体を!!こっちは私達がなんとかするから!」
蜜璃と真菰が憎珀天と対峙する。その隙に炭治郎達は本体を仕留めにいく。
「(赫い刀、一夏君しか至れていない日輪刀の状態。一夏君は柄に力を入れているだけって言っていたけど、普通の力じゃ赫くならない、だったら、私が持つ全ての力を…柄にこめる!!)」
蜜璃は自身の持つ力で、日輪刀の柄を強く握りしめる
「(もっと速く、強くもっと!!血の巡りを早く……)」
「(童共が……)」
憎珀天の術は強大だ。蜜璃と真菰の相手しつつ炭治郎達にも襲いかかることは容易である。
しかし蜜璃と真菰が素早くそれに反応することで、炭治郎達にそれが届くことは無い。
「(この二人、先程よりも速っ⁉︎な、何故だ、石竜子が再生しない⁉︎一体何を……)」
蜜璃と真菰に目をやると、あることに気づく。蜜璃の日輪刀は赫く変化し、真菰は頬に先程までは無かった痣が発現していたのである。
「(狐面の女に痣⁉︎それにあのアバズレの女の刀の色…無惨様を追い詰めた刀⁉︎しかし、狐面の女の痣、鬼の紋様と似ている)」
「(体が熱い!!心音がうるさい!落ち着かせろ、状態を維持したまま…心拍を落ち着かせるんだ!!)」
「(絶対に炭治郎君達の邪魔はさせない!ここで長く足止めをするんだ!!)」
蜜璃と真菰は憎珀天の攻撃をもろともせず果敢に攻める。
──水の呼吸 玖ノ型改・水流飛沫・朧
水流飛沫・朧は、日の呼吸の幻日虹における高速の捻りと回転を取り入れた事で重心の移動がよりスムーズとなり、高速化した上に軌道もより複雑化した玖ノ型の改良型である。
一歩踏み出す毎に細かい飛沫が飛び散る。次第に真菰の姿が霞んだ様に見えてくる。目が良い相手には攪乱効果も加わる事から接近しながら相手の隙を作る事も可能だ。
「(此奴、無間業樹を…だが儂には無意味)」
──血鬼術・狂圧鳴波
憎珀天の口から放たれる超音波が真菰を襲うが、直撃した途端、真菰が霞んでしまった
「(何⁉︎消えただと!一体どこへ……)」
──水の呼吸 拾弐ノ型・浪裏
真菰は憎珀天の腕を斬り裂いた。
「(っ!いつの間に背後に⁉︎)」
浪裏は斜陽転身を原型とするカウンター技である。正面から接近する事で敵の攻撃を誘い、その攻撃を敵ごと飛び越えて回避すると共に逆さに宙返りした状態から一回転捻った後に遠心力の乗った横薙ぎを放つのだ。
「(真菰ちゃん、凄い!私も負けてられない!)」
水と恋の反撃がここから始まる。
産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか
-
させる
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原作通り
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作者に任せる