日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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日輪の太刀

緊急柱合会議から数日が経過した。刀鍛冶の里で上弦と戦った炭治郎と玄弥は、病室にて療養生活を送っていた。炭治郎は技の反動による足の骨折で済んだが、玄弥は様子見で一週間は入院する事になっていた。真菰は既に三日前には退院している。現在、見舞いにやって来た隠の後藤が、炭治郎に刀鍛冶の里の現状を話していた。

 

「そうなんですね。もう拠点を移して……」

 

「“空里”って言うのをいくつか作ってんのよ。何かあったらすぐ移れるようにな」

 

「へぇー」

 

「つーか、お前、七日も意識なかったんだろ、そんな食って大丈夫か?カナヲちゃんも心配してたぞ?」

その話をしてる間にも、炭治郎はおにぎりをどんどん口に頬張っていく。

 

「はい!甘露寺さんもいっぱい食べるって言ってたんで!」

 

「口の中の物(もん)、飲み込んでからしゃべれよ……あの人はちょっと原理の外側にいる感じだけどな。後、恋さんと霞さんは二日眠って三日でほぼ全快だったって?」

 

「はい!尊敬します!」

 

「(こいつ、自覚はないんだろうが……一夏の継子だけあって同じ域にいるのに気付いてねぇんだよな)」

炭治郎とは裏腹に後藤は彼がますます人間離れしていく姿に少し引いていた。

 

「……まぁ、元気になるならいいけどよ」

 

「はい?」

 

「なんでもない、みんな生きてて良かったなっ、って、そうだ!これが一番聞きたかったんだわ!妹がなんかえらい事になってるらしいが大丈夫なのか?」

後藤は禰豆子の変化について気になっていた。何せ鬼が陽の光を克服したなどという異常事態を聞くと、いくら隠でも気になるのだ。

 

 

「はい!太陽の下をトコトコ歩いてますね」

 

「今後どうなるんだよ。鬼の被害がなくなったし、妹さん、どう言う状態なんだよ?」

後藤も隠故に鬼の動向については知っている。言わずとも、途轍もない何かが迫っていることもわかっていた。

 

「今、調べてもらっているんですけどわからなくて……人間に戻りかけているのか鬼として進化しているのか……」

 

「胡蝶様が調べてくれてんの?」

 

「いや、珠世さんが「たまよさんて誰だ?」ゲホッ⁉︎」

 

「うわあ⁉︎きったねぇな!!やっぱ食いすぎだろうが!病み上がりなんだから控えろよ!!」

秘密にしていた珠世の名前をうっかり口に出してしまった炭治郎が咳き込むと、慌てて後藤が背中を摩る。

 

「それで、チビ三人組と妹はどこにいんだよ?カナエ様とアオイちゃんもいねぇしよ」

 

「今は重い怪我の隊士もいないらしいのでずっと禰豆子と遊んでくれてるんですよ。そのおかげで少しずつ喋れるようになってきて」

 

 

「ああそうなのか、平和だなぁ……ただあの黄色い頭のハナタレが来たらえらい事になるんじゃねぇの?」

 

「えっ?」

 

後藤の予言は一分もせずに当たる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギィィヤァァァァァァァァァ!!!!」

 

「うるさい!」

 

「あらあら、元気がいいわね〜」

 

「お、おかえり!」

 

「えらいわ、禰豆子ちゃん!ちゃんと言えたわね。えらいえらい!」

 

「え、えらいね」

 

庭でカナエとアオイ、三人娘が禰豆子の相手をしている最中、蝶屋敷に戻ってきた善逸の奇声は音波兵器並みの破壊力を持っていた。アオイと三人娘が耳を塞ぐ中、カナエは禰豆子がしっかり「おかえり」と言えた事に喜び、頭を撫でる。禰豆子は気持ちよさそうに笑顔を浮かべていた。

 

 

「可愛すぎて死にそう!!!!どうしたの⁉︎禰豆子ちゃん喋っってるじゃん!!俺のため?俺のためかな?俺のために頑張ったんだね!とても嬉しいよ!俺達ついに結婚かな⁉︎」

 

「あっち行ってください!!カナエ様も見ていないで止めてください!」

 

「若いわねぇ〜♪」

 

「今それは関係ないでしょ!」

 

側から見ると、今の善逸は、息を荒立てた変態のおっさんのソレだった。アオイはカナエのあまりにもズレた発言に突っ込む。しかし善逸の奇声奇行が止まる気配はなかった。

 

 

「月明かりの下の禰豆子ちゃんも素敵だったけど太陽の下の禰豆子ちゃんもたまらなく素敵だよ!!素晴らしいよ!!結婚したら毎日寿司とうなぎ食べさせてあげるから安心して嫁いでおいで!!」

 

 

「おかえり、オリムー!」

 

禰豆子が発した人の名前らしき単語を聞いた善逸は驚くほど静かになった。

 

「「「「ふふっ!」」」」

 

「あらあら……」

 

カナエとアオイ、そして三人娘は、禰豆子の言う「オリムー」と言う人物を知っている為、笑みが溢れる。一方、知らない善逸は……。

 

そいつどこにいる?探し出して殺してくるわ……

 

 

「物騒なこと言わないで!!…と言うか返り討ちにあうのが目に見えてますからね!」

 

実は、上弦の参討伐後、禰豆子にはまず名前を覚えさせたのだが、一夏の場合、「オリムー」とあだ名っぽくなってしまったのだ。一夏本人は満更でもない感じだった事をつけ加えておく。ちなみに、蝶屋敷の少女達と伊之助はひたすら躍起になって自身の名前を禰豆子に覚えさせた結果、ちゃんと言えるようになったことも付け加えておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(庭が騒がしいな、こんな声を出すのは…いや、あんな声を出すのは彼くらいか)」

 

一夏は蝶屋敷に戻っていた。柱合会議で柱稽古が決定したので、鎹烏を使って参加可能な者から随時参加していく流れとなった為である。

 

一夏は義勇の柱稽古参加説得のために、あまねから手紙を渡された。手紙の宛て主はお館様で、炭治郎に渡すよう依頼をされた。

  

 

「(しのぶは大変だろうな……)」

 

しのぶは稽古には参加しない。とある人と共同作業をする事になったからだ。内容は俺としのぶしか知らされていない。

現在収容されている患者については、症状は安定しているためカナエやアオイ達だけで十分対応できると判断したのが一番の理由であろう。

 

「(時が来たら……か、縁壱さん、あなたはこうなる事がわかっていたのですか?)」

 

一夏は内にいる縁壱の言葉を思い出す。

 

そして、一夏は、炭治郎と玄弥に柱稽古のことを伝えるために病室を訪れた。

 

「炭治郎、玄弥、入るぞ……って、鋼鐵塚さん!?どうして此方に?と言うか大丈夫ですか⁉︎」

 

「い、一夏さん!?」

 

鋼鐵塚の姿を見て、一夏は驚く。鋼鐵塚は鬼による攻撃で片目を喪い体中傷だらけの重症と聞いていたからだ。

一夏は透き通る世界で鋼鐵塚を見ると、今の状態でこの場に来ている事が奇跡としか言いようがないくらいの状態だった。相当痛みがあったであろう。

 

「全然大丈夫じゃねぇ!やっと来やがったか!お前を待っていたんだ!これを渡すためになぁ!」

 

鋼鐵塚は寄ってきた一夏に木箱を渡す。一夏は突然の事で戸惑うが木箱を受け取る。

 

「っ!鋼鐵塚さん、これってもしかして……」

 

「お前が依頼した太刀だ。見た目もこだわっていたみたいだが、手紙と一緒にあった正確な作図のお陰でやりやすかったぜ。ほら、開けてみな」

 

一夏は空いているベットに腰をかけ、木箱の蓋を開けると、中には太刀が入っていた。見た目は紫色と白を基調とし、柄,鵐目の部分には赤い紐があり、鎺は変わった造形をしていた。

 

「凄い、俺が頼んでいた見た目とそのまま…」

 

「刃!刃を!!刃を見ろ!!!」

 

「は、はい、わかりましたから、無理はしないでくださいよ!?」

鋼鐵塚は痛みに耐える様子で太刀を抜くように促したので、それを嗜めた後、一夏は太刀を抜く。そこは銀色に輝く刃があった。すると色は染まり始め、刀身全体の色が深い漆黒色に変わる。

 

「凄い、一夏さんの太刀、今俺が持ってる日輪刀以上の漆黒の深さ……」

 

「断言してやる。俺が打った刀の中じゃ生涯最高の出来だ!文句あるか!あるって言うのならしばき倒す!」

 

「鋼鐵塚さんが最高と……なら、文句なんてあるわけないじゃないですか!」

 

鋼鐵塚は今まで担当した剣士に担当刀鍛冶から外される事が何度もあった。そんな中、一夏は四年もの間、鋼鐵塚の刀を使いこなしてくれたのだ。鋼鐵塚は一夏の言葉に仮面越しだが嬉しさに満ち溢れる。

 

一夏は太刀を納刀すると息を荒だてている鋼鐵塚に駆け寄る。

 

「話を戻しますけど、鋼鐵塚さん、やはり、体の方は……」

 

深い傷を負っており動けているのが不思議で仕方なかった一夏は鋼鐵塚の容体を再確認する。

  

「今もまだ痛くて痛くてたまらないんだよ!!」

 

「わかりました。これを打つので、大人しくしててください」

 

「おい!何をするつもりだテメェ!」

 

「痛みは一瞬です。大人しくしてください、ね?」

 

「……はい」

 

一夏が少しどすの利いた声で言うと、鋼鐵塚は静かになって従う。一夏は懐から注射をだし、袖をまくりアルコールで拭き、しのぶ特製即効性の鎮痛剤を打ち込んだ。

 

「はい、終わりです」

 

「お前、すげぇな……」

 

「まぁ、慣れているので…」

 

「スゲェ!痛みが引いてきやがった!!」

 

「しのぶ製の薬は即効性があるのですぐに効きます。痛み止めの薬も処方しますから、痛みが出たら飲むように」

 

一夏は炭治郎達に見えないように懐に手を入れスマホの拡張領域から薬を取り出し、鋼鐵塚に手渡す。薬を受け取った鋼鐵塚は徐に立ち上がると炭治郎に顔近づけ、髪の毛を掴み、面の口の先っちょを炭治郎の頬に食い込ませた。

 

「いいか炭治郎、お前は今後死ぬまで俺にみたらし団子を持ってくるんだ?いいなわかったな?」

 

「は……はい、持っていきます!後、口が刺さって痛いです!」

 

「よし!それでいい!俺は帰るからな!!」

 

「あ、ありがとうございました!お大事に」

 

鋼鐵塚はそのまま病室から退室し、一夏は顔を炭治郎に向ける。

 

 

「炭治郎、体調はどうだ?」

 

「はい!この通り大丈夫です!」

 

「そうか、刀鍛冶の里が襲撃を受けたと聞いた時は驚いたが、無事でよかった。お前が目覚めるまで毎日カナヲが看病していたんだぞ?」

 

「はい、後藤さんからも言われました。カナヲが来たらちゃんとお礼を言わないと」

刀鍛冶の里から意識を失った炭治郎を毎日カナヲが看病していたのだ。カナヲが家族以外の人物をこれほど心配をする事はなかったのだから蝶屋敷の面々も驚いたものだ……。

 

カナヲが炭治郎と話している際、カナヲは何処か嬉しそうに会話に花を咲かせていた。カナヲはまだ自分から他人に話すのは得意ではないが、少しずつ自ら話すようになってきていた。

 

「(……炭治郎と一緒にいる時は俺やしのぶ達と一緒にいる時と同じかそれ以上に笑う事が多いからな……まぁ、自分の気持ちに気付くのはまだ先の事になりそうだが…)」

炭治郎は正式に一夏の継子になった事で、蝶屋敷に滞在する機会が多くなった。それは蝶屋敷の少女達と話す機会が必然的に多くなるという事だ。カナヲと炭治郎の会話を見た際には、胡蝶姉妹も一夏達も優しく見守っていた。

 

 

 

「炭治郎……その刀は」

 

「あ、はい!俺の新しい日輪刀です」

炭治郎が見せた新たな日輪刀はカナエが現役に使っていた鍔が使用されており、刀身には滅の一文字が刻まれていた。

 

「カナ姉…いや、カナエ様の鍔をつけて戦うんだ。情けないところ見せたらしのぶも俺も承知しないからな?」

 

「は、はい、肝に銘じます!」

 

「よろしい。それにしても、その刀、鋼鐵塚さんが打った訳じゃなさそうだな?」

 

「凄い、見ただけでわかるんですか?一夏さんの言う通り、この刀は戦国時代の業物です。見つけた時は錆びていたんですけど、鋼鐵塚さんが研磨をして今の状態になりました。鋼鐵塚さん曰く、この刀の持ち主は、相当強い剣士だったと…」

 

「戦国時代の刀……道理で異様な雰囲気を放つ刀なわけだ」

一夏の時代でも刀鍛冶はいるが、大昔の技術を再現するのは現代でも難しいと言われるほどだ。そんな代物が纏う気だけで、一夏は凄い刀だと一眼でわかった。

 

「あの……すみません」

 

炭治郎のベットの隣で玄弥が気まずそうに声を出す。

 

「ああ、すまない玄弥君、煩かったかな?っと、そうだった。炭治郎、それから君にも言う事があるんだった」

 

「え、俺もですか?」

 

「ああ、明日から……」

 

本来の目的を伝えようとしたその時、

 

バリーン!

 

「うおおおお!!?」

 

窓ガラスをぶち破って乱入してきた伊之助に邪魔をされた。

 

「ああ————!!伊之助…!!何してるんだ窓割って…!!」

 

「お前バカかよ⁉︎胡蝶様達に殺されるぞ!!」

 

「ウリィィィィィ!!」

 

「黙れっ!」

 

「(部屋を別にして欲しっ…⁉︎な、なんだ…この圧は…)」

 

後藤は伊之助の頭を叩くが、彼の興奮は収まる気配がなかった。また、玄弥は背後に感じる何かを感じ取り、振り向く事ができなかった

 

「強化強化強化!!合同強化訓練が始まるぞ!!強い奴らが集まって稽古をつけて…何たらかんたら言ってたぜ!」

 

「?何なんだ、それ?」

 

「分からん!」

 

「わ、わからないって、っ⁉︎い、伊之助……」

 

炭治郎の疑問に、何も分からずどこかで聞きかじったことを言いに来たようだ。しかし炭治郎は顔を真っ青にさせ指を伊之助の背後に指す。

 

「ああ?後ろがどうしたんだよ檀治ろ……!?」 

  

ガラスの破片を踏み、ジャリッという音と共に伊之助の頭をガシッ!とかぶり物ごと掴んだ人物がいた。その手によって強引に振り向かされた頭からは鳴ってはならない音が鳴り、伊之助は被り物越しから涙が出た。

 

「伊之助、何故こんなことをした?普通に入ってきなさい……もし後藤さん達が怪我をしたらどうするつもりだった?」

 

一夏は怒っていた。その姿に炭治郎と玄弥,後藤は戦慄しており、何も言う事ができなかった。

 

「イギャアアアアアアッ!!!!ゴ、ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!」

 

「ごめんで済むなら警察も鬼殺隊も必要ない。お前の事だから興奮するのはわかっていたが、ここまでする必要はなかったはずだ…」

 

「い、一番強い奴と戦えんなら良い!このよくわからん気持ちが抑えられなかった!」

 

伊之助の頭から手を離し、一夏はサクッと釘を刺す。

 

「やる気を出してくれるのは大いに結構!その前に、カナエ様としのぶからの“御小言”は覚悟しておけ。逃げたら、虎の尾を踏むようなもんだぞ?今からでも良いからお叱りを受けてきなさい」

 

「自首してこいや」と促すと、伊之助はプルプルと震えだして一夏の羽織の裾を握ってきた。

 

 

「(ああ、怖いのか。普段温厚な二人を怒らせることほど怖いものはない。正直言うと怒らせた二人はある意味鬼よりも怖いからな…)」

 

一夏は二人が怒っている姿を思い出した。特に一夏は過去にしのぶからは怒られた事が何度もある。

 

「後藤さん、悪いんですけどガラスの破片を片付けていただけますか? 俺は伊之助を連れてカナエ様としのぶにこの事を報告してきます」

 

「あ、ああ……」

 

「お手数をおかけします……炭治郎、玄弥君、すまないが伊之助が言った事は後で説明する。それで構わないか?」

 

「う、うす」

 

「わ、わかりました」

 

「っと、そうだ。炭治郎にこれを…」

 

一夏は手紙を炭治郎に手渡す。

 

「?これは、誰宛ですか?」

 

「お館様からの手紙だ。内容は俺も知らないが、後で読んでおいてくれ」

 

一夏は炭治郎に手紙を渡した後、伊之助が逃げないように縛り上げてカナエとしのぶの所に向かい、「最後のガラスをぶち破った」と報告をした。

 

案の定、胡蝶姉妹は笑みを浮かべた状態で怒るものだから、伊之助はずっと震えていた。

 

伊之助は夜まで怒られ、二度と蝶屋敷では問題を起こさないよう心に誓った。

 

 

 

 

そして、翌々日、伊之助、ついでに善逸は準備が整った宇髄のところへ向かい柱稽古を開始した。

 

 




一夏の太刀の見た目は英雄伝説のリィンと同じ見た目の太刀です

産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか

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