日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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今回少し彼のキャラが変わっていますが、こうした方が良いというところがあればご指摘よろしくお願いします


覚悟

「………」

一夏は今、蝶屋敷から少し離れた裏山で一人、二振りの刀を前に置いて、瞑想をしている。この時、一夏は縁壱の言葉を思い出していた。

 

 

——今はまだその時ではない。近いうち、いずれはまたこの場で会うだろう

 

「(縁壱さん、今がその時じゃないんですか?)」

一夏は、意識を自身の内面に集中するが、なかなかその場に意識を持って行く事ができなかった。

 

「(……俺には、まだ、何かが足りないのか?)」

一夏は内面の世界へ入り込めない事に焦り始めた。一夏は柱稽古には遅れて参加する事になっている。一夏の柱稽古は義勇と同じで最後の方になっており、どちらに参加するかは各柱稽古を終了させた隊士の自由となっている。

 

 

「(鬼との決戦が迫ってきてるのに……このままじゃ……!)」  

 

「何をそんなに焦っているんだ…一夏」

 

豪胆な声が聞こえ、目を開けると…目の前には杏寿郎と似た男性が木刀を携え、佇んでいた。

 

「し、槇寿郎さん……」

槇寿郎は無言で一夏の隣に座り込む。

 

「こうやって二人で話すのも久しいな」

 

「そう、ですね。槇寿郎さんはどうしてこちらに?」

 

「君に用があってな、胡蝶からここにいると言われ足を運んできたわけだ」

 

「そうですか…わざわざすみません」

「気にするな…」

 

一夏はわざわざ裏山まで足を運んできた事に申し訳なさそうに謝る。

 

「槇寿郎さん、用件はなんでしょうか?」

 

「そうだな。君も知っての通り……鬼と人…… どちらかが滅ぶ程の壮絶な戦いが迫っている。俺も、杏寿郎と共に柱稽古に参加するつもりだ」

 

「そうですか……千寿郎は?」

 

「千寿郎には補助に回ってもらうつもりだ……千寿郎もそこらの隊士には勝てる実力を備えているからな」

 

「そうなると、煉獄家総出で稽古をするみたいですね」

 

「実質そうなるな…」

 

一夏は煉獄家が隊士に稽古をつけている姿を想像すると、かなり精神的に鍛えられる姿が想像できた。

 

「一夏、先週打ち合った時の話だが……君は、何処か迷いを抱いていないか?」

 

「!それは……」

 

「打ち合っていればそれくらいはわかる」

 

「…流石、元炎柱、ですね。杏寿郎達には気づかれなかったのですが……」

 

「年の功というやつだ。その悩み、君が今しようとしていることに関係があるのか?」

「それもあるかもしれませんが、おそらく…別の事だと思います」

 

「ふむ……悩む時ほど、複雑な時ほど、力を持つものとして成すべきことは単純だ。己が技を振るい、己が大事なものを守る。その為の武であろう」

 

「槇寿郎さん………」

槇寿郎は言い終わると立ち上がり、一夏に一振りの木刀を投げ渡す。

 

「構えろ一夏、今から技を放つ。君はそれを木刀で受け止めろ」

 

「……わかりました」

一夏は何も問わず木刀を構える。何か考えがあるのだと察したからだ。すると、槇寿郎から炎の闘気が溢れ出る。

 

「(……来る)」

一夏はいつでも受けられるように木刀を構え、神経を研ぎ澄ませる。

 

 

「炎の呼吸 壱ノ型」

槇寿郎はその場から凄まじい勢いで真正面に一夏に突っ込む。

 

「不知火!」

一筋の炎の一撃を放ち、一夏は槇寿郎の技を受け止めるが、あることに気づく

 

「(…!なんだこの一撃…たった一太刀の技なのに、今まで打ち合った中で比べ物にならないくらい……重い!そうか、俺は……)」

槇寿郎はゆっくりと構えを解き、木刀を下ろす。

「今の一撃、君にはどう見えた?」

 

「……今ままでと比べ物にならないくらいに、重い一撃でした」

 

「そうだ、その様子だと…わかっているようだな?」

 

「はい……」

一夏は重い一撃に、大切なものを思い出した。

 

「剣は形あるものに非ず、自らの内に宿るものだ。己が形を掴めば……剣の形なり」

 

「己の……形」

 

一夏は右手を自身の胸元に置いて、目を瞑り、しばらくしてゆっくりと目を開ける。

 

 

 

「ありがとうございます… 槇寿郎さん。俺は…危うく一番大事な事を忘れる所でした」

 

「礼は不要だ。今の君ならば……大丈夫だろう」

 

槇寿郎は一夏に背を向け、その場から去っていった。

 

「……よし!」

 

一夏は再び目を瞑り意識を縁壱のいる内面世界に集中する。すると鳥の鳴き声や風により揺れる木の音が聞こえなくなり、一夏は目を見開く。

 

 

 

 

「………」

あたりを見渡すと、そこはどこまでも果て無く続く澄んだ水面──そして空は、初めてこの空間に来た時と同じ夕焼け空が広がっていた。そして一本の藤の木があった。そして目の前には……

 

「来たか……一夏」

 

「…縁壱さん」

 

藤の木に背を預けていた人物がいた。陽炎の痣が刻まれた額、結われた長い髪の先は赤みを帯びており、耳には耳飾り……一夏の内にいる継国縁壱だった。

 

「お久しぶりです、縁壱さん。事情は言わずとも、この場所で見ていたのなら……わかりますよね」

 

「ああ、あの鬼の少女が陽の光を克服した今、無惨も確実に動き出すだろう……未だかつてない大きな戦いが迫っていることも」

 

「約束通り……今がその時じゃないんですか?」

 

「ああ、だが……やる前に。まずは私の質問に答えてもらう」

何故ここで?──縁壱の返答に一夏は疑問符を浮かべるが、縁壱が真剣な表情をしていた為、黙って聞くことにした。

 

「なぜ、鬼と戦う?」

 

「鬼舞辻無惨を倒す為──鬼殺隊全員の悲願です」

 

「私の望む答えとは少し違うな。鬼殺隊としてではなく、お主自身……織斑一夏として戦う理由を教えてほしい」

 

「俺自身が……戦う理由」

 

「それがなければ、兄上を止める事も、無惨を倒すこともできない。五百数年前の私は……ただ、無惨を倒す為に生まれた存在としかいえなかった」

 

一夏は、今の縁壱からは悲しい気配しか感じ取れなかった。何も言えずただ黙って聞くことしかできなかった。しかし縁壱は呟き続ける。

 

「私はそれだけの理由で無惨と戦い、取り逃してしまった……一夏、君自身に強い思いがなければ、無惨を倒すことはできないだろう」

 

「俺自身の、思い……」

 

「あるならば、それを答えよ。ないのならば———」

 

すると縁壱は腰に差してあった刀を抜き、一夏に剣先を向ける。突然の事に一夏は一瞬動揺した。

 

「よ、縁壱さん?」

 

「その身体を…明け渡してもらう」

 

「………⁉︎」

 

「身体を明け渡せ」──それを聞いた途端、理解ができた。縁壱と一夏は見た目は違うが、生まれ変わりであり、魂を二つ、一つの肉体に宿している。内に宿していたからこそ一夏はその意味を理解していた。

 

 

「今の私、いや……俺には個人として戦う理由がある。無惨を逃がし、兄上が鬼に堕ちることも止められなかった。俺のせいで……罪のない大勢の命が喪われた。珠世は数百年もの間、孤独を味わった。俺は……犠牲になった者達の無念を晴らす為にも……無惨を斬る!斬らなければならないのだ、この手で……!」

 

縁壱の決意に、一夏は目を瞑り、胸に手を当て口を開く。

 

「……俺にも、戦う理由はあります。全てが始まる前、何も知らない子供で、何もかもがどうでもいい……そう思っていました。だけど、束さんや箒達、この時代で、しのぶやカナ姉、胡蝶夫妻に出会い、煉獄家と出会い、仲間達と出会った……守りたいものが沢山できました」

 

一夏の言葉に縁壱は向けていた刀を下げる。縁壱は一夏から内に秘める何かが溢れ出でいるのを感じ取れた。

 

「それを守る為なら、なんだってやってみせる!」

 

「(あの瞳は、覚悟を決めた者の、その瞳……一夏、お主は、“守る”と言うその意味がわかっているのだな)」

一夏は内に秘めた想いを口に出し、そして縁壱に視線を合わせる。縁壱はその言葉が本物の覚悟の証と感じ取っていた。

 

「縁壱さん……俺は、あなたにも感謝しているんです」

 

「感謝……?」

 

今度は縁壱が疑問符を浮かべる中、一夏は言葉を続ける。

 

「たとえ俺があなたの生まれ変わりじゃなくても、俺は誰かの為に剣を取るはずだ。縁壱さんのおかげで、今の俺には、大切なものを守れる力がある」

 

「一夏……」

一夏は少し間を置き再び口を開く。

 

「俺は……俺は守るべき者のために、自分の意思で剣を取り戦う!!茨の道でも、仲間と共に乗り越えて見せる!!俺は、一人じゃないから……!!!」

 

一夏は自身の決意を縁壱に全てぶつける。一夏が示した覚悟を聞いた縁壱は少し笑みを浮かべていた。

 

「……いい答えだ。その強さが、昔の俺にもあったらな」

 

「満足しましたか、縁壱さん?」

 

「ああ、お前の覚悟、確かに響いた。だが一夏、ここからが本題だ。今から戦うのは俺であって俺ではない。お前には、お前自身の剣と力を、この場で完成させてもらうぞ……!」

 

縁壱は日輪刀を再び構えると、もう片方の手に光が集まり、もう一振りの刀が現れる。

 

「……分かりました」

 

一夏は二振りの日輪刀を構えた縁壱の言っていることを理解し、自身も二振りの日輪刀を抜剣し構える。

 

「その意気や良し……織斑一夏」

 

すると、揺れていたはずの藤の木が静かになる。二人は剣を構える。静かなはずの水面は激しく波紋が広がっていく。二人の神経が異常にまで研ぎ澄まされていく。

 

「汝の名は?」

 

「織斑一夏」

 

「汝の求める日の型は?」

 

「……終ノ型・《暁》……闇を切り裂き、光をもたらす」

 

「彼は我、我は彼」

 

「我は彼、彼は我」

 

「汝、剣の至境に至らんがため、自らを“無”とせしめんか?」

 

「否——我は彼と存り彼等とあり、梵と共にある。それが我が求めたる剣、“理”に通じたる始まりの剣」

 

すると縁壱の周りには炎が渦巻き始める。

 

「示してみせよ……己が行き着く先の閃を、我と、汝自身を乗り越える事によりて……!」

 

縁壱は炎に包まれる。暫くして炎が晴れると、そこにはもう一人の一夏が立ちはだかっていた。違いがあるとするなら、髪は長く、瞳の色が以前の一夏の元のえんじ色の瞳という点だった。

 

 

「「おおおっ!!!」」

 

二人は同時に駆け出し、剣を、日を纏った剣を振るう!

 

 

──日の呼吸 壱ノ型・円舞

 

 

互いに二振りの剣が衝突し、鍔迫り合いとなり、火花が飛び散る。互いに距離を取り、技を繰り出していく。

 

 

戦国の日輪と未来の日輪……二人の日が

 

 

 

 

火蓋を斬る──

 

 

産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか

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