──チュンチュン
朝日が昇り、スズメの囀りを目覚ましに、陽の光が優しく見守るように二人を照らす。
部屋には二人の男女がお互いを抱きしめながら眠っていた。
「う、うーん……」
朝の光でしのぶは目を覚まし、上半身だけを起こす。
「……一夏」
隣では愛する人がまだ眠っていた。その表情はとても穏やかであった。そして、しのぶは気付く。一夏の上半身が何一つ身にまとっていないことに、自分はボタンを止めていない一夏のシャツを着ていたことに……それから、昨夜での出来事を思い出し……
「……〜〜〜っ!!?」
サッとしのぶは肌を隠す。自身の頬が見る見るうちに赤く染まっていくのが分かる。一夏としのぶは昨夜忘れられない夜を過ごした。
「(わ、私……い、一夏と、一夏とシちゃったの?あの一夏と?)」
夜での出来事を徐々に思い出し、遂には頭から蒸気が出るほど顔を真っ赤にしていく。
「(と、とりあえず落ち着かないと……感情の抑制をできないのは未熟者!)」
しのぶは気持ちを落ち着かせようとするが脳裏に焼き付いてしまった光景が鮮明に見え始める。
『しのぶ……』
「(違うっ!!なにを思い出しているのよ私は⁉︎)」
耳元で名前を囁かれた時を思い出してしまい、頭をブンブン横に振って雑念を祓おうとするが簡単にはいかなかった。
「くっ、くふふふ……」
すると隣から笑い声がした。しのぶは寝ているはずの一夏を見やる。彼は寝ながらカタカタ震えていた。そう、彼は起きていたのだ。
「ふ……あっはっはっはっ!」
ふいに一夏は笑い出した。しのぶは顔を紅潮させたまま額に青筋を浮かばせ、一夏を指で突き始める。
「何が可笑しいのよ一夏!?まさかとは思うけど、あなた、私が起きる前から……!」
「あははっ、いてて!ごめんごめん……」
一夏は起き上がり謝るものの、しのぶは突きを止める気配はなかった。
「一夏のバカ!バカバカッバカーッ!」
少し涙目のしのぶは起きた一夏の胸板を高速で叩く。
「すまない、確かに…くふ、面白かったけど……違うんだ、しのぶ」
「笑ってるじゃない!何が違うって言うのよ!!」
突きをやめたしのぶは怒鳴るが、一夏も頬を赤くさせいたことに気づいた。
「それよりも凄く、しのぶの事が愛しいって思ったんだよ」
ハッキリ告げた一夏の言葉にしのぶは顔をさらに真っ赤にした。その顔は林檎の様に赤かった。
「一夏……」
一夏の表情と言葉にしのぶはドキッとする。
「それと……」
一夏はそんなしのぶに顔を近づける。しのぶは言葉を発せなかった。一夏がしのぶにキスをしたからだ。
「!?……」
しのぶは、一夏の行動に驚いたものの、目を瞑り、一夏の唇を受け入れた。数秒しかしていなかった接吻が何時間と感じた。
「おはよう、しのぶ……」
「……ふふ、おはよう…一夏」
しのぶから一切の怒気も雑念も消え、笑みだけが残った。そして、二人を照らした影は再び繋がったのである。
◇
一夏はあの後、事後処理と準備を済ませ…柱稽古が行なわれている屋敷を目指した。まず一夏が向かっているのは煉獄邸…炎柱が稽古を行なっている場所だ。
煉獄邸に入ると、洗濯物を干している瑠火の姿が確認できた。
「瑠火さん、お邪魔します」
「一夏……久しぶりですね。息災でっ!?あなた…その左眼は……」
瑠火は一夏の姿を見ると目を見開き驚く。一夏の左眼が金色に変化している事に動揺を隠せなかったのだ。
「ああ、この眼ですか?大丈夫です。身体には異常はありません」
「……わかりました。あえて追求はしませんが、何かあったらすぐに胡蝶さんに相談なさい。よろしいですね?」
「はい」
その後、煉獄邸の道場に着き、顔を覗かせると隊士は数人しかいなかった。他の柱稽古をなかなか通過してこられないのだろう。
炎柱の稽古内容は、千寿郎→杏寿郎→槇寿郎の順に試合をし、一撃ずつ入れるという勝ち上がり式の単純なものだった。繰り返しの説明になるが、千寿郎は、一夏や槇寿郎に鍛えられる事があった為、実力は稽古を受けている隊士達よりも上なのだ。
しかし、千寿郎、杏寿郎になんとか一撃を入れられても、休む間もなく疲労の溜まった身体で槇寿郎に立ち向かうと、たちまち打たれて振り出しに戻る……。
「一人倒したからと気を抜いていては、長期戦で生き残れまい!全力で向かえっ!」
「(気合いが入っているな、槇寿郎さん。流石元鬼殺隊年長者、衰えなんて全く感じない……)」
引退したとはいえ、槇寿郎は、動きにキレがある。それもそのはず、槇寿郎は、一夏と、時間がある時は月に数回は打ち合っている。その為、実力は劣るどころか現役以上なのだ。
「座っていないで早く立て!才能がない者は努力するしかないんだ!戦いの途中で座るなど言語道断!!あっという間に命はなくなるぞ!」
若くキレのある槇寿郎が、バッシバシと隊士を打ち倒していく。槇寿郎は零れていった命を想い、指導に熱が入っているので、杏寿郎よりも厳しかった。
「父上のあの姿は久しぶりに見る気がします」
「そうだな!父上が楽しそうで何よりだ!」
そんな様子を嬉しそうに見る杏寿郎と千寿郎……誰も槇寿郎の勢いを止める者はいない。
「(先代と当代…2人の炎柱を相手にするなんて、稽古とはいえ隊士たちに勝ち目はあるのだろうか…いや、そうそう無いな、これは。鬼殺隊ではないとは言え、千寿郎もそこらの隊士より強いからな)」
一夏は少しだけ、稽古に参加している隊士に同情しながらも道場内に入る。
「やっているようだな、杏寿郎、千寿郎…」
「あっ、一兄さん…!?」
「来たか!いちっ⁉︎い、一夏…お前、その左眼は……!?」
二人は俺を見て瑠火さん同様驚いていた。つい最近までは赫の瞳だったのに、左が金色になったら驚くのも仕方のない事か。
「はは、心配するな、別に異常があるわけじゃ無い。大丈夫だ」
「……うむ!承知した!一夏が問題ないと言うならば大丈夫だろう!」
「ほ、本当に大丈夫なんですか、一兄さん?」
「心配は無用だ。むしろ気分はいいほうだ」
「確かに!今思えば一夏、どこか吹っ切れた様にも見えるな!何かあったのか!」
「ああ、槇寿郎さんががきっかけをくれてな……本当にあの人には敵わないよ」
「そうか、流石は父上!俺が一夏の心情に気づけぬとは、親友として情けない!俺はまだまだ父上には程遠いみたいだ!」
杏寿郎は「ワハハハ!」と笑い、一夏もつられて笑みを浮かべる。一夏は武人としてのあり方を教えてくれた槇寿郎の事を尊敬している。
「グハッ!!」
「ゲボォッ!!」
「ガハッ!!」
稽古を受けていた隊士は吹っ飛んでいく。槇寿郎に挑んでいる隊士達は、それを見て、手を止めてしまうが、槇寿郎はその隙を逃さず、一瞬にして隊士達を戦闘不能にさせた。
「誰が手を止めろと言った!!お前達はこれで三度は死んでいるぞ!!」
「(邪魔はしない方がよさそうだ…)」
槇寿郎の容赦のない剣撃に隊士達は吹っ飛ばされたり、鳩尾に一撃を喰らったりとどんどん倒されていく。
「む、もう行くのか?」
「ああ、他の柱稽古の様子も見ておきたいからな…」
「そうか!では次に会うのは柱同士の稽古の時だな!」
「そうだな、千寿郎も、無理はしない様にな…」
「はい!一兄さんも、稽古、頑張ってください!」
そして、一夏は煉獄邸から離れ、別の柱の屋敷へと向かう。
場所は山中、この場所は音柱の天元が稽古を行なっている場所だ。すると遠目から隊士達が這いつくばっている姿が見えた。
「ハイハイハイ、何度も同じ光景見ましたよぉ、地面舐めなくていいから!まだ休憩じゃねぇんだよ、後もう二・三本走れ!」
「(天さんにしごかれてる隊士達、足腰の筋肉も未熟……体力が無さ過ぎるな…。天さんの稽古内容は今の隊士達にはうってつけの内容だ…)」
遠目ながら透き通る世界で地に這いつくばっている隊士達を見て一夏は分析する。
「お?イチじゃねぇか!」
「「「(ひ、日柱様!⁉︎)」」」
これには、地面へ這いつくばってた隊士達も目を見開いた。まさか鬼殺隊最強と呼び名の高い柱がこの場に来るとは思ってもいなかったからだ。
「お疲れ様です、天さん。稽古はどうですか?」
「遅すぎるわ、基礎体力が無さすぎるわ、走るとかいう単純なことがド派手に出来なさすぎだわ…」
「そうですね…隊士達を見てわかったんですけど、彼らは呼吸以前にも、基礎ができてなさすぎますからね。天さんの稽古が最適でしょう」
「だろ?」
須磨達も一夏がいる事に気づくと、笑顔で駆け寄ってきた。
「いっくーん!」
「須磨さん…って、うわぁ!?」
「久しぶり~!元気だった!」
「ちょっ⁉︎須磨さん…あの…」
「こーら、須磨!」
「元気そうね、イチ」
「まきをさん、雛鶴さん、ご無沙汰してます。後、須磨さん、離れてくれませんか?その……」
「いいじゃん!それに相変わらずいっくんはあったか〜い〜」
一夏はわちゃわちゃと、もみくちゃにされる。まきを,雛鶴,須磨にとって一夏は弟の様な存在だ。とは言え、大人の色気を纏ったボディランゲージは流石の一夏も恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。ちなみに須磨は一夏の事を束と同じいっくんと呼び出した。
そんな成り行きを、傍にいた隊士達は色んな感情の中、その様子を見ていた。
「(日柱様が……いっくん、イチ?なんかえらく音柱様達と仲がいいな……)」
「(てか、日柱様、初めて見たけど。めっちゃ美形だな!?ありゃ女も寄るよな)」
「(てか、音柱様の奥さん達と仲良すぎじゃね!?一人抱きついてるし!)」
色んな感情が入り交じる中。天元は、一夏から須磨を引き剥がした。
「離れろ須磨、イチのやつ恥ずかしそうにしてるじゃねぇか。これじゃイチと話が出来ねェだろーが!」
「いひゃい、天元しゃまぁ~」
そして、天元が一夏の瞳を見てニカっと笑いながら一夏に話しかけた。
「それにしてもよイチ、お前どうしたその左眼!えらくド派手な色してるじゃねぇか!?」
「わー!綺麗な眼!」
「確かに綺麗だけど…前見た時は赫だったろ?」
「大丈夫なの…イチ?」
天元と須磨は一夏の金色の左眼を褒め、まきをと雛鶴は少し心配そうに問うが、
「大丈夫です。むしろ逆に気分がいい方です」
「ま、派手なお前が言うくらいだ。問題はねぇ。ただ違和感あったらすぐに胡蝶妹に相談しろよな。怒らせたあいつはド派手に手におえねぇからなぁ……」
「わ、わかっていますよ…それより、何か手伝えることはありませんか?今俺の所には誰も来ていなくて、柱稽古の様子を見て回っていたんです」
「そうだな、だったら……」
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「何度か作る様子を見たことがあったけど、いっくんやっぱり凄い!」
「このくらい朝飯前ですよ」
一夏は須磨達と一緒に炊き出しを手伝っていた。一夏は包丁を手に持ち、目にも留まらぬ速さでどんどん野菜を切っていき、鍋に具材を入れていく。今作ろうとしているのは豚汁だ。
「須磨、口より手を動かして」
「えー、まきをさんも見てくださいよ~!いっくんの包丁さばき!!」
「いや、見れば分かるから!」
「まきをさん、味見お願いしてもいいですか?」
一夏はまきをに味見を依頼し、まきをは一夏から皿を受け取り、味を確認する。
「美味しい!相変わらずすごいわね、一夏。なんか女として負けた気分になるわ」
「はは、未来じゃ千冬姉が全く家事ができませんでしたから…まぁ、自然と…」
「以前にも千冬さんの事は聞いたけど、そこまで酷いの?いっくんのお姉さん?」
「ええ、もう何かの呪いでも掛けられているんじゃないかと思うほど酷いです。部屋は綺麗にしたと思ったら数日でゴミ屋敷になったり、料理に関しては簡単に作れるものや俺の手伝いを受けながらでも暗黒物質(ダークマター)とかゲル状の何かとかを生み出すんですから」
「そ、そう……だったんだ(ダークマター?ゲル?……なんだっけ?)」
「一夏…あんたも苦労したんだね」
一夏の話を聞いたまきをと須磨は顔を引きつらせた。そして、まきをは一夏の頭を優しく撫でる。
そんな中、雛鶴がおにぎりを握りながら、笑顔で口を開いた。
「こんなにいい人がしのぶ様の殿方だったら、きっと幸せね……」
その後、完成した料理を天元や隊士達に出すと、食欲があった隊士達からは「この飯美味い!」と、声に出す程好評価を受けていた。
産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか
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させる
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原作通り
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作者に任せる