「(ここからだと蜜璃さんの屋敷が近いな……)」
あの後、一夏は天元達と昼食を済ませ、暫く稽古を見守ってから、一夏は次に訪れる目的地へ向かう。
向かう先は恋柱邸、そして近づいていく内に、蜜蜂が飛び回り、甘い匂いが漂い始める。
「(蜂蜜の匂い。そっか…確か蜜璃さん、養蜂していたんだったっけ…)」
甘露寺邸につくとパタパタと駆け寄る足音が聞こえてきた。
「あっ、一夏くーん!」
一夏の姿を見つけると、蜜璃は彼に駆け寄る
「蜜璃さん、お疲れ様です」
一夏の傍まで来ると、蜜璃は一夏の手を取った。
「いらっしゃい一夏くん!今日はどうしたのっ⁉︎い、一夏くん、その左眼……」
どうやら俺の変化には柱達も驚きを隠せない様だ。蜜璃さんはとても心配そうに俺を見つめていた。
「はは、大丈夫です。別に呪いとか鬼とかにやられたわけじゃありませんので」
「そっか、だけど一夏くんのその左眼…とても綺麗だわ!伊黒さんと似て親近感が湧いちゃ〜う!」
「それはどうも。ところで蜜璃さん、小芭内さんとはどうなんですか?何か進展は……ありましたか?」
「えっ⁉︎いや、あの〜それはその〜」
「(この様子だと進展無しか。こればかりは気持ちの問題かな。小芭内さん……まだ、過去の事を引きずってるか……)」
蜜璃と小芭内は互いに文通をしている仲だ。小芭内は蜜璃と一緒に出かけたり食事をすることが多い。側から見ると、恋人同士に見えるが、実は二人はまだ付き合ってはいない。蜜璃は小芭内といる時はいつも以上に笑顔で楽しそうにしていた。小芭内は蜜璃の事となると少し変わる。蜜璃が一部の他の男性と話しているところを見ると少し殺気立つし、一緒にいると雰囲気が穏やかになる。現在両片想い中というじれったい仲だ。しかし小芭内は過去が過去の為、自分の気持ちに素直になれないのであろう。
「そ、それよりも、もうすぐ三時になるわ!今は休憩の時間なの!一緒にお話しましょ!」
「良いですよ。俺も個人稽古で暇でしたので」
蜜璃は何かを思い付いたのか、目を輝かせながら傍まで来ると、一夏の手を取った。
「一夏くん、もし良かったら休憩の準備に行きましょう!」
「はい?」
一夏は訳もわからず、そのまま引っ張られる。そして、そのまま蜜璃に引き摺られるようにして、休憩室の隣にある台所へとたどり着いた。
「ようし!一夏くん、お手伝いよろしくね!」
蜜璃の言葉に、一夏は納得する様に笑顔を浮かべた。
「成る程、わかりました」
一夏は隊服の上着を脱ぎシャツだけになると、そこからは二人はパンケーキを作り始めた。蜜璃は、食に対する好奇心が強く、西洋の料理を沢山知っていた。過去にスマホにある写真付きのレシピ本を見せると、蜜璃は目を輝かせながら興味を示していた。食文化も未来ではかなり進化している為、蜜璃からすると羨ましかったのだ
「相変わらず手際がすごいわ一夏くん!」
「パンケーキは束さんによく食べさせてました。お菓子作りはあまりしない方なんですけど、束さんが美味しそうに食べてるのを見てると……こっちも嬉しくなって。それに、ある人が言っていたんです、『食べると言う字は人が良くなると書く』って」
「おー、なんだが説得力がある格言ね!」
「一時期、食堂関係でバイト…働いたことがあるんです。変わった店主だったんですけど、その人の作る料理がすごく美味しくて、特にサバの味噌煮は一番美味かったです」
「へぇー!あっ、もしかして一夏くんが料理上手なのって…」
「まぁ、手の凝った料理はその人から教えてもらいました。見込みがあるって言われて」
小麦粉や卵、牛乳、砂糖など幾つかの材料を混ぜた生地を、焼いていく。ひっくり返すといい焼き具合となっていた。二人の焼くパンケーキはどれも均一にそして売り物のような美しさがあった。
「(天道さん、元気かな。たまに店に来てた加賀美さんも…)」
一夏は過去を思い出しながら、買ってきた果物を拡張領域から出し、切り分けてから盛り付けていく。パンケーキの見た目は少し未来風に近づいてきた。
「凄い!もしかして一夏くんの未来風のパンケーキかしら?」
「はい、まぁ、あるものだけでなんとか出来たものですけど……うまく出来ました」
蜜璃は一夏の料理をする姿にキュンキュンしていた。そんな時、ふと、蜜璃の目には、一夏の首筋が目に留まった。
「一夏くん。その首筋の痣、どうしたの?虫刺されかしら…?」
「ッ!!?」
その指摘を聞いた途端、シュバっ!!と一夏は勢いよく上着を着込む。
「………」
一夏は顔を真っ赤にさせ、無言の状態が続き、蜜璃も察したかの様に赤面する。
「あの、えっと、ふ、二人は仲が良いのは知ってるわ!そ、それはとても素敵なことよ!うんうん!」
蜜璃はなんとかフォローするも、しばし沈黙が場を支配した。
「と、とりあえず出来たものを運びましょう」
「そ、そうね」
それから一夏は、せかせかとパンケーキを運び、蜜璃は紅茶を淹れた。
二人で焼いたパンケーキを頬張り、蜜璃の淹れてくれた紅茶を楽しんだ。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
「ふふっ、夕食も一緒に作りましょうか?」
「もちろん!!私ね、一夏くんにお料理のこと…もっと教えてほしいの!!」
身を乗り出すようにお願いする蜜璃に、一夏は笑顔で快諾した。
「はい、俺なんかで良ければ…」
「(笑った!やっぱり一夏くん、しのぶちゃんの様に笑顔が素敵だわ!)」
蜜璃は心の底からそう思った。そして、二人は紅茶を飲みながら、会話に花を咲かせたのであった。
休憩が終わった後、一夏は次の柱の元へと行こうとした時のことである。
「あ、一夏くん、少しお願いしても良いかしら?」
「はい、大丈夫です」
「伊黒さんに渡してもらいたいものがあるの!!」
そう言いながら、蜜璃は一夏に重箱を手渡した。
「これって、おにぎりですか?」
「伊黒さんはね、とろろ昆布が大好きなの!私の代わりに渡してもらえるかな!?」
ふふっと照れくさそうに笑う蜜璃を見て、一夏には断る理由は欠片も無かった。
「わかりました。小芭内さんにはしっかり渡しておきます」
そう言うと、一夏は重箱を受け取りスマホの拡張領域にしまう
◇
一夏が蛇柱邸に向かう最中、日は傾き始めていることに気づく。
「(もうすぐ夕方か……小芭内さんのところで最後にするか)」
小芭内の屋敷に着くと、玄関先で彼が立っていた。
「遅い」
「すみません小芭内さん……って、あれ?どうして小芭内さんは、俺が来るって分かったんですか??」
すると、一瞬間が空いたあと、小芭内さんは口を開いた。
「甘露寺から先ほど、文が届いた。お前が来るから、出迎えるようにって」
「蜜璃さんが?あ、小芭内さん、これを…」
そう言って、件の重箱を手渡した。
「なんだこれは?」
「蜜璃さんから小芭内さんに差し入れです。小芭内さんに渡すようにって」
「!」
蜜璃からの手作りの差し入れだと聞いた途端。小芭内の纏う気が嬉しい色へと変わった。
「(小芭内さん、嬉しそうだな……)蜜璃さんからは、小芭内さんによろしくと伝言をもらっています」
「……ああ」
小芭内は暫く手渡した重箱の入った風呂敷を見つめていたが……
「入れ、茶くらいは出す。それからお前には相手をしてもらいたい」
「あ、はい。構いません」
「…ついてこい」
それから一夏は屋敷内に入り、小芭内に道場へと案内される。
「小芭内さんの稽古内容は太刀筋矯正でしたね」
「お前にも、稽古をつけている隊士達とで同じ条件で相手をしてもらう。お前の方がより実戦に近い打ち合いができるからな。それよりも一夏、貴様…その左眼は…」
「色々ありまして、身体には問題はないので心配は無用です」
「……ふん、せいぜい体調管理には気をつける事だな…」
道場にたどり着くと、その光景に唖然とした。そこら中、ぐるぐる巻きにされた隊士達が、木の柱に巻き付けられ青い顔をしている。
「(処刑場?)」
「説明するからよく聞け。お前には、この“障害物”を避けつつ、太刀を振るってもらう」
「……内容は分かりましたけど、一つ聞いてもいいですか?隊士達は一体何をして、縛られてるんですか?何か悪いことでも……?」
すると、じっと見ながら、小芭内は口を開いた。
「ああ、こいつらはある意味罪人だな」
「え、一体どんな罪を?」
「そうだな。弱い罪、覚えない罪、手間を取らせる罪、イラつかせる罪……と言った所だ」
「は、ははは、そうですか(えらいこっちゃ…)」
一夏は乾いた笑いしか出なかった。
「早速始める。さっさと準備しろ」
「はい、わかりました。あっ、小芭内さん、俺が使う木刀なんですけど……」
そうして日柱、蛇柱の柱同士の訓練を開始した。
一夏は、隊士達の間をぶつからないよう進む。因みに一夏が使っているのは太刀型の木刀だ。
当たれば大怪我は必定。この可哀想な隊士達の間を縫って、小芭内の攻撃が来る。
その瞬間、一夏に小芭内の放った木刀が迫るが、一夏は蛇の様な一撃を受け流す。
「(異様な曲がり方する太刀筋……流石は蛇柱、以前よりも太刀筋が早い。さらに腕を上げたみたいですね、小芭内さん)」
一夏も負けじと反撃し、小芭内に向けて木刀を振るう。
「(っ⁉︎木刀が揺らいで…!こいつ、長物を使いながらここまで…!?)」
小芭内はなんとか一夏の反撃を回避するが、一夏は攻撃を緩めず連撃を加える。持ってるのは同じ木刀、狭い隙間でもぬるりと入ってくる攻撃!小芭内の太刀筋はまさに蛇だ。一夏は狭い中、太刀型の木刀を使っているのにも関わらず狭い隙間にどんどん木刀を振るい小芭内へ確実に当てていく。
「(㭭ノ型・飛輪陽炎を応用した剣技、これは良い訓練になるな)」
それに加えて、この隙間を狙おうとした時の、縛られている隊士達の声が聞こえるような気がする。
「(お願いします!! お願いします!! お願いします!! お願いします!!お願いしますうううう!!お願いします!当てないでください!!」
「(これは普通の隊士達だと精神をえぐるな…ほんとに声が聞こえてくる)」
正確な太刀筋で刀を振れないと、大惨事だ。ましてや柱の一撃となると大怪我では済まないだろう。
それから陽が沈むまで、ひたすら二人は木刀を振り続けた。何度も何度も、隙間から木刀を通して攻撃を繰り返し、この勝負は一夏の勝利に終わった。
産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか
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させる
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原作通り
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作者に任せる