「炎の呼吸 参ノ型・気炎万象!」
炎を纏い、上から下へと弧を描くように刀を振るう。
「日の呼吸 壱ノ型・円舞」
今現在、一夏は柱である槇寿郎との稽古をしている。木刀を打ち合いながら、互いに火と炎の剣撃がぶつかり合う。
「(一撃一撃が重く鋭い!そして一切無駄のない動きに、この美麗の剣撃!十二で出来るような技ではない!なにより、こちらの動きが全て読まれている!)」
「(これが鬼殺隊の“柱”、動きが洗練されている。流石修羅場を潜っているだけはあって気迫も違う。油断するとすぐにやられる)」
一夏は透き通る世界で相手の動きを察知しながら動く。そして二人は互いに距離を取ると、
「炎の呼吸 壱ノ型・不知火!」
槇寿郎はすぐさま力強い踏み込みにより炎を発するような勢いでの間合いにつめ一夏に木刀を振るうが、
「日の呼吸 拾壱ノ型・幻日虹」
槇寿郎の攻撃はすり抜ける。流石の槇寿郎も驚くしかなかった。
「(なっ!すり抜けた⁉︎こんな事があり得るのか)」
「日の呼吸 伍ノ型・陽華突」
「グッ!」
一夏の突きをなんとか木刀で受け止めるが、威力が強く槇寿郎は後に押し出されてしまう。
「炎の呼吸 伍ノ型・炎虎!」
「日の呼吸 肆ノ型・灼骨炎陽」
烈火の猛虎を生み出すが如く刀を大きく振るい、咬みつくかのように迫る炎を一夏は火の渦を描くように無力化する。
「っ!いない…どこに」
「日の呼吸 弐ノ型・碧羅の天」
一夏は一瞬にして飛び上がり、落下と同時に、腰を回す要領で空に円を描くように振るい、槇寿郎の木刀を弾く。着地すると、一夏は即座に槇寿郎の首先に木刀を突きつける。
「勝負有り…ですね」
「はは、見事だ。完敗だ」
槇寿郎は両手を上げ降参の構えを取り、一夏は木刀を下げ、一礼をする。
「凄いな一夏!あの父上に勝つなんて!」
「いや、俺なんて槇寿郎さんに比べたらまだまださ、杏寿郎」
近くで打ち合っているのを見守っていた杏寿郎は興奮しながら一夏に駆け寄る。
「俺はまだ全集中の呼吸を身につけたばかりだと言うのに、一夏の剣技は……とにかく凄い!二人の動きが全く見えんかったぞ!」
「……顔が近い」
ぐいぐいくる杏寿郎に一夏は後退りするが、彼はそれを気にせず目を輝かせながら接近していく。
「落ち着かんか、杏寿郎、気持ちは分からんでもないが。かなり長いこと打ち合っていたようだ。二人とも休憩に入ろう」
「わかりました/はい!」
一夏達は道場から退室し、休憩をするため井戸で汗を流した。その後、一夏は縁側に腰をかける。
「ふぅ、打ち合いでこんなに汗を流すのは初めてだな」
一夏が未来にいた頃……篠ノ之道場で剣道をしていた際、当時はまだ全集中の呼吸は身につけてはいなかった。そのうち、縁壱に関する記憶を夢で見るようになり、記憶を頼りにして独自に全集中を会得した。しかし、一夏はその剣技で先生に怪我を負わせてしまった為、それ以来、篠ノ之道場に行くことはなくなった。その後は、ただ我流で鍛えていたのだ。
「(カナ姉としのぶ、元気にしているだろうか)」
あれから一年も経っており、一夏はスマホを取り出し、一夏としのぶ、カナエの三人が写っている画面を見つめる。
「(最終選別にいくには、指導者から課せられた課題を全てクリアしてなければいけない。槇寿郎さんは…俺はいつでも最終選別にはいけるとは言ってはいたが、俺もまだまだ不安要素と課題が残っている。槇寿郎さんとの打ち合いで、実戦に近い打ち合いが出来る。この先、生き残るためには、日の呼吸を極めないと話にはならない)」
槇寿郎は、時間がある時は一夏と手合わせをすることになっている。基本稽古では、杏寿郎に正しい呼吸法を教え、全集中の呼吸を会得させた。杏寿郎の弟の千寿郎には剣の基礎を教えている。
更に、一夏は独自で型の調整や黒式の技の創造もしている。
「(杏寿郎は飲み込みが早い。後は剣技を身につければ大丈夫の筈だ)」
「こんなところにいたのですね。一夏」
「ちふ…、瑠火さん」
声のした方へ向くとお盆を持った瑠火が立っていた。瑠火は一夏が持っていた束製の薬ですっかり病気は治り、外を出歩いたり、家事が出来るようになるくらいに回復した。
「ふふ、また間違えられましたね」
瑠火は座り、一夏に湯呑みを渡す。
「す、すみません。分かってはいるのですが」
「そんなに似ているかしら?あなたのお姉さんと」
「はい、凛とした姿や雰囲気も似ていて、けど、髪は瑠火さんの方が綺麗です。しかし、声が…全く同じで」
あの一件で、煉獄家には一夏が未来人である旨を話している。最初は疑われたが、スマホの機能を見せた事でなんとか信じてもらえたのだ。それはそれとして、一夏はたまに瑠火の事を実姉の千冬と間違える事がよくある。
「そうですか、是非とも会ってみたいものですね」
「会うとしても、今から百数年は長生きしないといけませんが」
「ふふ、そうですね。流石に百年余り生きるのは難しいですね」
「俺みたいに、時を超える事があったら可能性はあると思いますが」
一夏は煉獄家で鍛錬をしながら家の手伝いに明け暮れていた。
「一夏がこの前見せてくれた舞、とても綺麗でしたよ。私や夫、杏寿郎、幼い千寿郎でさえも、見惚れていました」
「そんな大層なものでは……」
一夏は気恥ずかしそうに頬をかいていた。
「一夏、自分を謙遜してはいけません。あなたのその力は、人を救う事ができる力です。あなたは何処か、その力を恐れていますね?」
「……ッ、瑠火さんには…お見通しみたいですね。まだ俺が未来にいた時、全集中を身につけてまもない頃、道場の先生を怪我をさせました。俺は剣道をやめて、それから独自で鍛えていました」
「自身が持つ力を怖く感じるのは、力を持つ者としてよくある事です。ようは、一夏自身、その力をどうしたいのか、よく考えなさい」
「………俺はこの力で、全てを守れるなんて思っていません。救える命も…救えない命も、この先沢山ある。俺はこの力を、手が届く人々を守りたい。今は…こんなことしか言えませんが、俺が言える答えです」
「そうですか。ですが忘れないでください。力を持つ者として、弱き人を助けることは、強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」
「はい!」
瑠火からの言葉に、一夏は力強く返事をした。
そしてその影では槇寿郎が気配を消し、優しい眼差しで様子を見守っていた。
中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?
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神気合一
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冥我神気合一