興味がありましたらアイディアよろしくお願いします!
俺が煉獄家のお世話になって一年半の月日が経った。あれからも槇寿郎さんから時間さえ有れば手合わせをしてもらっている。杏寿郎は全集中の呼吸を会得した後、槇寿郎さんから炎の呼吸を指南されるようになった。杏寿郎は半年で炎の呼吸を全て会得した。流石の槇寿郎さんも杏寿郎の成長の速さに驚いていた。
そして現在、一夏は煉獄家から近い山の中で目を瞑り、一人立っていた。
「…日の呼吸 壱ノ型・円舞」
一夏は目をゆっくり開けると、日の呼吸の技を繋げるように木刀を振るう。
碧羅の天
烈日紅鏡
灼骨炎陽
陽華突
日暈の龍・頭舞い
斜陽転身
飛輪陽炎
輝輝恩光
火車
幻日虹
炎舞
一夏は日の呼吸を行い、型を繋げていた。その太刀筋は無駄もなく美麗の剣捌きだった。
日の呼吸は円舞から炎舞まで繋げる事ができ、技を繋げ続けることにより、拾参ノ型が完成する。
「(日の呼吸 拾参ノ型……円環)」
円環……円舞から炎舞まで全ての型を繋げたその太刀筋は正に日輪を体現する型と言ってよい。
本来拾参ノ型には技の名前はないのだが、十二の型全てを連続して振るい、正に太陽の様に円環を成す事で完成する型である為、その円環の名を一夏は拝借したのだ。
一夏は、全ての型を長時間繋ぎ続け、円環を終えると、静かに木刀を下ろす。
「ふぅ……」
一夏は息を吐き、ゆっくり呼吸を行い、木刀を拡張領域にしまう。
「いるのは分かっていますよ。出てきて下さい、“ 伊黒さん”」
「気付いていたのか…」
「俺の気配察知、舐めないでください」
木の影からゆっくり出て来る少年の姿があった。一夏は舞っている際、彼の存在に気づいていたようで、伊黒に駆け寄る。
彼は伊黒小芭内ーーー槇寿郎さんが任務の際に保護した少年だ。日本人には珍しい、左目が青緑色で右目が黄色の虹彩異色症(オッドアイ)だった。一番目につくのは首に巻き付く白蛇、そして、口の周りに巻かれた包帯である。一夏が透き通る世界で見た際は、刃物で無理矢理裂いたような傷跡が両頬にくっきりと刻まれているのが確認できた。
「すごかったな、先程の剣舞」
「そっか、伊黒さんは見るのは初めてでしたね。おっと、どうした鏑丸?」
「シュー、シュー♪」
白蛇が突然一夏に飛びかかり甘え始める。一夏は手を伸ばして指で頭を軽くこすってやると気持ちよさそうに身震いする
「鏑丸が懐くのは、俺を除けば、織斑くらいなもんだ」
「はは、伊黒さんも知っているように、動物には昔から好かれますからね。ほら、伊黒さんの近くにも舞を見守っていた動物(かんきゃく)もいますし」
「好かれている以上の問題だろ」
何故一夏は、伊黒に敬語を使っているのか。伊黒は杏寿郎より一つ年上のためだ。
そして鏑丸は、一夏の体温が心地いいのか眠ってしまっていた。
「伊黒さん、鏑丸…寝てしまったのですが、どうしたら…」
「そんなに心地よく眠られたらどうしようもできん。起きるまで預けておく。もし鏑丸に何かあったら……容赦はせん」
「…肝に銘じておきます」
殺気のこもった声で言われ、一夏は返答する。その後、会話を交えながら伊黒と共に山を下る。
「一夏!小芭内も一緒だったか!」
「…ああ」
「今戻った、杏寿郎」
「帰ってきて早々悪いが、一夏…父上がお前に話があるそうだ!父上の部屋に来るよう伝言を預かっている!」
「槇寿郎さんが?わかった。すぐに行く、あっ…鏑丸、起きたか…すまない」
杏寿郎の声により目が覚めてしまった鏑丸は、しばらく一夏の首にいたが、一夏が鏑丸に触れ、伊黒の方に行くように促すと、彼の元に戻っていった。
その後、槇寿郎の部屋へと向かう。
「(この時代に来て、もう三年近くになるのか…………けど、悪いことばかりじゃない)」
一夏はタイムスリップして、この時代に溶け込んでいる自分に不安もあった。しかし、この時代で大切な者が出来た。いつかは元の時代に帰る日が、お別れの時が来るかもしれない不安も持ちながらも、一夏は毎日毎日を大切に過ごしている。
「槇寿郎さん、一夏です」
「来たか、入るといい」
「はい、失礼します」
一夏は入室の許可をもらい、襖を開け部屋へ入る。槇寿郎は何やら書物らしきものを読んでいた。
「突然すまない。どうしても言っておきたい事があってな」
「いえ、大丈夫です。槇寿郎さん、ご用件とは一体…」
「一夏も知っての通り、明日…杏寿郎が最終選別に挑むのはわかっているな?」
「…はい、存じております」
最終選別
鬼殺隊員になるための試験。藤襲山とい言う山で行われている。その山には人を二、三人喰った捕獲した鬼が閉じ込められており、そこで一週間生き残るというのが試験内容だ。鬼は藤の花の匂いを嫌うためそこから出れず、牢獄の役割を果たしている。
「君には感謝の言葉しかない。杏寿郎は、君が呼吸を教え、わずかな時間で炎の呼吸を全て会得し、俺の想像を遥かに超えた。今のあいつなら、滅多な事がない限り、最終選別は無事に帰って来られるだろう。あいつの今の実力は、歴代の炎柱を超えるかもしれん。そして瑠火を救ってくれた。ありがとう、一夏」
槇寿郎は一夏に頭を下げ、礼を言うと、一夏はその様子に動揺する。
「あ…頭を上げて下さい、槇寿郎さん!俺は、俺に出来る事をしただけです。そんな大層な事はしていません」
「自分を過小評価しすぎだ。君は瑠火の恩人で、返し切れないほどの恩がある。俺達煉獄家は出来るだけ君に恩を返すつもりだ」
「俺は、見返りを求めてやったわけではありません。それより槇寿郎さん、本題を聞いてもよろしいですか?」
「流石に気付くか……この話は瑠火や杏寿郎達には話している。俺は…今季をもって鬼殺隊を引退するつもりだ」
「引退、ですか」
「ああ、杏寿郎も鬼殺隊となれば、この屋敷にいるのは小芭内を含め三人だけだ。いずれ君と小芭内も鬼殺隊となり各自己の道を歩むだろう。まぁ、個人として、家族の時間を大切にしたいのもあるが、この辺りも鬼の襲撃がないとは限らんからな。家族を守っていくのも…俺の役目だ」
「…槇寿郎さん」
一夏は槇寿郎の瞳には消えない炎が宿っているように見えた。
「それから、君に渡したい物がある」
「渡したい物ですか?」
「うむ、これを」
槇寿郎さんが箱を一夏の前に差し出してくる。
「あの、槇寿郎さん…これは?」
「開けてみるといい、君の知っている物が入っている」
一夏は箱を開けると、一夏にとって見覚えのある物が入っていた。
「こ、これって、もしかして…」
「君が返しに来てくれた日輪刀だ」
箱の中身に入っていたのは、一夏が川で拾った抜き身のではなく、しっかり鞘に納まっていた槇寿郎の日輪刀だった。
「う、受け取れません。寧ろこれは杏寿郎に渡すべきでは……」
「杏寿郎達も君に渡すのは大賛成だった。この日輪刀は、我々煉獄家と君を巡り合わせてくれたようなものだ。もし君がこの日輪刀を見つけていなければ、瑠火は…病死していたかもしれない」
「あ……」
もしも一夏があの時、外を出歩いた時、川に行っていなかったら、槇寿郎の言う通り、病死していたかもしれない。
「受け取ってくれないだろうか…一夏」
「……わかりました。大切に使わせてもらいます。槇寿郎さん達の思いも、確かに受けとりました」
一夏は、槇寿郎から受け継いだ日輪刀を手に取り、柄を握り、鞘から抜く。
鍔は炎の形が特徴で、刀身は赫色、炎の名の通り、赫き炎刀に相応しい刀だった。
「その刀は一度、刀鍛冶に依頼して磨いてもらっている。状態は新品と遜色ないはずだ」
「赫き炎刀、炎柱の名に似合う日輪刀ですね。ありがとうございます、槇寿郎さん。」
「はは!気に入ってもらったようで何よりだ!」
「はい、とても」
一夏は日輪刀をまじまじ見つめながら、自然に柄に力を入れると、赫い刀が紅蓮に染まった。それを見た槇寿郎は驚愕する。
「……色が」
「なっ⁉︎日輪刀の色が…赫く染まって!」
赫色から更に燃え上がるように紅く色が変わった。紅蓮に染る刀身は、どこか太陽を連想させるようなものだった。
「…この色、確か」
「一夏、どうやってそのような状態に…」
「えっと、少し力を入れただけで勝手に」
「すまない、貸してはくれないだろうか?」
「はい、どうぞ」
一夏は日輪刀を槇寿郎に渡すが、手放した瞬間元の赫色に戻った。
「色が戻ったぞ。君はさっき少し力を入れたと言っていたな?」
「はい、そうです」
「うむ、やってみるか……」
槇寿郎は言われた通り力を入れ握るが、いくら握っても色は変わらず、さらに力を入れるも刀身に変化はなかった。
「ぬぐぐぐ!タハァーッ!はあっ、はぁっ!だめだ、全く変化する気配がない」
槇寿郎は一夏に日輪刀を返すと、一夏は再度日輪刀を力を入れ握ると色は紅蓮に染まった。
「この状態にするには、何か条件があるんでしょうか」
「むぅ、君が分からないとなると此方もわからんな。更なる謎が増えてしまったようだ。一先ずこの件は保留にしよう。それと、今夜は杏寿郎の英気を養ってもらうため、今日は豪華らしいぞ!」
「はは、それは楽しみですね。杏寿郎の好みを考えたら、さつまいもを使った料理が主役になりそうですね」
その後煉獄家の夕食は賑やかだった。杏寿郎は「うまい!わっしょい!」と唱えながらも家内は楽しいひと時を過ごした。
そして煉獄杏寿郎は翌日、鬼殺隊の最終選別へ向かった。
中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?
-
神気合一
-
冥我神気合一