日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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再会

煉獄邸の敷地内の縁側に、刀の手入れをしている少年、そして、その様子を隣で見守っている男の子がいた。

 

「……ここをこうしてっと」

持っている刀の刀身は赫色で、『悪鬼滅殺』の文字が彫られている。少年……一夏は丁寧に刀を磨いていた。

 

「(そう言えば記憶で見た縁壱さんもこの刀を握ったら赫くなっていたけど、本当にどう言う原理なんだ?縁壱さんすら知らないとなると、お手上げ状態だ)」

記憶で見た縁壱と一夏が刀を握る際、刀は赫く染まる様に変化する。何故色が変わるか槇寿郎と共に、煉獄家にある鬼殺隊の歴史の書物も読み漁ったが詳細は分からず仕舞いであった。

 

「(俺なりに探るしかなさそうだ。)」

 

一夏は刀をじっと見つめ、握っている柄に力を入れると、刀は赫色から更に燃え上がるように赫く変わる。  

 

「……綺麗な色ですね、一兄さん」

 

「ああ、俺もそう思うよ」

 

一夏の隣で手入れを見守っていた男の子は、煉獄家次男の千寿郎ーーーつまりは杏寿郎の弟である。

 

「何故、一兄さんの日輪刀は赫く変化するんでしょうか?」

 

「…こればかりは俺にもよくわからない。これから解明していくつもりさ。よし、こんなものか」

 

一夏は手を止めずに千寿郎の問に答えながら手入れを進めていく。手を止め、一夏は鞘と抜き身状態の日輪刀を持ったまま千寿郎から少し離れ庭に出ると、日輪刀を何度か振って状態を確かめる。そして、満足そうに頷くと、鞘を腰に差し、刀を構える。

 

 

「炎の呼吸 壱ノ型・不知火」

力強い踏み込みにより炎を発するような勢いで一直線に袈裟斬りをする様に振るい、納刀する。

 

「月の呼吸 壱ノ型・闇月・宵の宮」

居合の構えを取り、抜刀して横薙ぎに一閃する。

 

一夏は現時点で日の呼吸以外で炎と月の呼吸も使えるようになった。

 

炎の呼吸を壱から参までは使えるようになったのは、槇寿郎の指導の賜物である。

 

 

「(月の呼吸、これは記憶で見た縁壱さんの兄が使っていた呼吸……)」

月の呼吸は縁壱の記憶を頼りに壱ノ型のみ会得した。一夏は二人の関係を記憶で見ていたが、一夏から見て仲の悪い感じではなかった。しかし縁壱の兄は鬼となり、当時の鬼殺隊当主を惨殺し、対立した。そして老人となった後に兄と再会し、頸を刎ねるつもりで技を繰り出すも、縁壱は老衰により死亡し、その兄は縁壱を斬り捨てた。

 

「(なんだろうな…この感じ)」

一夏の中に複雑な感情が渦巻く。一夏は縁壱の魂を受け継いでいるが、一夏の内に亡霊としても存在している。縁壱の記憶を少しずつ思い出す度に、縁壱の兄の記憶も鮮明に流れてくる

 

「やっぱり一兄さんは凄いです!炎の呼吸を完璧に使いこなすなんて」

 

「日の呼吸の新たな技を生み出すきっかけになればと思ってな。壱から参までしか使えないけど、おかげで日と炎を織り交ぜた改の型を思いついたんだ」

 

一夏はその二つの呼吸で新たな改の技を編み出した。

 

既に編み出していたのが、日の呼吸 弐番目の技である《碧羅の天》に月の呼吸を織り交ぜたことで《碧羅の天・残月》となる。

 

あの時、胡蝶姉妹を守ろうと無我夢中に繰り出した技である。しばらくは使えずにいたが、縁壱の記憶が鮮明に浮かぶ様になり、月の呼吸を併用していたことに気づき再び使える様になったのだ。

 

「(しかし、この二つには妙な違和感がある。一体なんだろうな)」

 

一夏は日の呼吸と他の呼吸を併用した技の違和感が気になって仕方なかった。

 

「(……今、気にしても仕方ないか。)」

一夏は日輪刀を鞘に納刀すると、縁側に再び座り込む。

 

「一兄さん…どうかしましたか?」

 

「いや、技によっては合う合わないがあったなっと思ってな。千寿郎が気になる事はないさ」

一夏が千寿郎の頭を撫でると、千寿郎は気持ちよさそうに受け入れた。千寿郎は満足した後、一夏から離れ、部屋の奥へと入る。一夏は縁側に残り、瞑想を行おうと姿勢を変えると、

 

 

「一夏」

 

「瑠火さん」

瞑想を行う直後、瑠火から声がかかり、瞑想をやめる。

 

 

「何かありましたか?」

 

「あなた宛にお手紙が来ています」

 

「手紙?俺宛にですか?」

一夏は手紙の送り主に心当たりがなかった。杏寿郎だったら家族宛に書くし、伊黒は稀にしか書かない。一夏は瑠火から手紙を受け取り、手紙の送り主の名前を見ると、一夏は驚くと同時に笑みを浮かべた

 

 

手紙の送り主の名は

 

 

ーー“胡蝶カナエ”と書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏は手紙を読んだ後、後日訪れる旨の返事を送った翌日に、手紙に添えられた位置図を確認しながら“蝶屋敷”と呼ばれる場所に向かった。

 

「(あれから二年半近くになるのか。手紙のやり取りもすることもなかったから、直接二人には久しぶりに会うな。しかしまさかもう鬼殺隊に入隊していたなんて、しかも…カナ姉が“柱”とは)」

 

 

“柱”ーーー鬼殺隊最強の称号を得た隊員達のことである。基本的に、柱より下の階級の者たちは恐ろしい早さで殺されてゆくことが多い。それ故に、鬼殺隊を支えているのは柱たちと言っても過言ではない。

 

柱の異名は、その隊員の流派に合わせて命名される。

 

 

「(カナ姉…どれだけ強くなったんだろう。それに花の呼吸か、カナ姉にはぴったりだな)」

 

一夏は姉妹との再会に楽しみにしながら、手に持った文をちらりと見て、記された場所を確認する。周りを見渡して現在位置を確認しつつ、道を歩く。

 

 

「多分ここだな」

 

 暫く道を歩いていると、かつての胡蝶家よりも大きな建物が見えてきた。塀に近付いて中の様子を見る。そこには大きな建屋に広い庭。そして隣には建造中の建物が幾つか並んでいる。文に書かれた特徴と一致していた。

 

「……ここで間違いないか。ふぅ…緊張するな」

 

 一夏は深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせ、屋敷の玄関の方へと回っていく。そして入口の方へと近付いていくと、一人の人物が門前に今か今かと待ち構えていた。

 

 

 

 

「カナ姉!」

誰なのかは一目見れば分かった。門の前に立っていた少女は、一夏の声に気づき、しばらく呆然と見つめると、彼の元に駆け出し、そして近距離まで近付くとそのままこちらに飛び込んできた。

 

「一夏!」

 

「おっと!」

 

飛び込んできたのは、胡蝶カナエであった。急な出来事に少し驚きつつ、一夏は彼女の身体を受け止める。一夏に飛び込んだカナエは、目の前の彼を抱きしめたまま顔を上げる。そして一夏と目が合うと、満面の笑みを浮かべた。

 

 

「一夏、久しぶりだね!一瞬誰かわからなかったわ!」

 

「ああ、約二年半ぶりか?」

 

「だいたいそのくらいかしら?それにしても、一夏、また背が伸びたかしら、それに髪の毛も」

 

「カナ姉もだろ?」

一夏とカナエの身長はそこまで変わらないものだった。そしてカナエは一夏から離れ両手をしっかり握り、笑顔で一夏を見つめる。

 

 

「一夏……おかえりなさい!」

 

「ただいま…カナ姉」

 

最後に共にいたのは二年以上前のことだ。美少女は、更に魅力的になっていた。身長は大きく伸びて今の一夏とそれほど変わらない。そして少女のあどけなさを残した風貌は消え去り、美少女は美女へと開花していた。

 

 

「カナ姉、しのぶはどこに?」

 

「うふふ、実はね…しのぶには一夏が来る事は内緒にしてるの」

 

「え?」

 

「せっかくならしのぶの驚く顔が見たいと思ってね♪」

悪戯っぽい笑みを浮かべるカナエの姿を見て、容姿は変わっても中身は昔のままだと一夏は内心呟いた。

 

「はぁ……、で?しのぶは何処に?」

 

「道場にいるわ。案内するからついつきて」

 

「わかった」

一夏はカナエの案内のもと、道場に向かう。

 

「しのぶは鍛錬をしてるのか?」

 

「ええ、今年の最終選別で生き残ったのはいいんだけど、少し…問題があるのよ」

 

「問題?何かあったのか?」

 

「ごめんなさい、それは本人に聞いてくれると助かるわ」

 

「…わかった」

一夏は疑問を持ちながらも、追及をやめ屋敷内を歩く。

 

「以前よりも広いんだな、この屋敷」

 

「うん!一夏の部屋も用意してあるから、また一緒に暮らせるわ!」

 

「ははは、住ませる気満々だな」

一夏とカナエは道場に向かう際、これまでの事を話しながら、しのぶがいる道場へ向かう。

 

 

「ここよ、この中にしのぶがいるわ」

 

「…確かに、気配はあるな」

 

「ほら!早くしのぶにあなたの顔を見せてあげて!きっと驚くはずよ!」

 

「わかった。わかったから、押さないでくれ」

ぐいぐい背中を押すカナエに一夏は抵抗する。そして一息吐くと、一夏は扉に手を触れる。

 

「……入るか」

 

一夏は道場の扉を開けると、

 

 

 

 

 

「蟲の呼吸 蝶ノ舞・戯れ」

 

 

「………」

 

目の前の少女が、蝶のように舞う姿があった。一夏はその光景に魅了され、目を奪われてしまった。しばらく呆然と見つめていると少女と目があった。

 

 

「?誰よあなた?」

少女は一夏の存在に不機嫌そうに問いかける。一夏は少女の問いかけに我に返る。

 

「… “しのぶ”」

しのぶは一夏の声に、持っていた木刀を手放してしまい、驚いた様に目を見開き、一夏を見つめる。

 

「い、一夏……なの?」

 

「ああ、俺だよ…織斑一夏だ」

 

 

「……っ……!」

しのぶはしばらく一夏を見つめると、その場から駆け出し、一夏に思いっきり抱きしめた。

 

「……どうして、なんでここに?夢、じゃないわよね?」

「夢じゃないさ、カナ姉がしのぶに俺がくる事を言わなかったらしい」

 

「それは後で追及するとして、ああもうっ!再会した時の為に気の利いた事を考えてたのに…もう全部一瞬にして吹き飛んだって言うか……!!」

 

「そうか……」

そう言うと、一夏はしのぶの背中に手を回し抱きしめる。

 

「———久しぶりだね。綺麗になったな…しのぶ、正直、見違えたくらいだ」

 

「ふふっ、あんたの方こそ…、一瞬わからなかったけど…声を聞いただけでわかった。一夏が私の大切な人で、姉さんと私の大切な家族だって。」

胸に顔を埋めていたしのぶは、顔を上げ、笑顔を浮かべる。

 

「久しぶり———一夏!それから、おかえりなさい!」

 

「ああ……ただいま、しのぶ。」

二人はそのままお互いの顔を見つめ合う。しのぶの顔が徐々に一夏へ近付き、やがて目が閉じられる。一夏は何故か自然としのぶに顔を近づけて……

 

 

「あらあら、うふふ」

 

「「──ッ!!?」」

 

耳朶を打ったその声に、二人は一転して我に返る、そこには満面の笑みを浮かべているカナエの姿が。

 

「あ、私のことは気にしないでいいから、続けて続けて♪」

 

「出来るわけないでしょ!!」

しのぶは顔を真っ赤にしながら怒鳴り、一夏は少し赤くなった頬を指でかく。

 

「(二人といると…とても安心するな)」

 

 

三人は再会を喜びあった後…お茶菓子を食べながらこれまでの事を語り合った。

 

中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?

  • 神気合一
  • 冥我神気合一
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