真剣で彼に恋しなさい!   作:だいすけ

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第2話「転入」

「ふもっふ! ふももっふ!!」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

 

 愛くるしい瞳をしているが、犬だかネズミだか何だかよくわからない頭。

 ずんぐりとした二頭身。

 某遊園地のキャラ―――――『ボン太くん』が多馬大橋に現れ、誰もが―――川神百代でさえも―――動きが止まっていた。

 そんな中、空気を読めない読まない代表各ともいえる存在―――――『HURYOU(不良)』の9人が動き出した。

 彼らは、百代に葬られた不良たちが呼んでいた応援部隊だった。

 

 

「ごらぁ!! 何様だてめぇわよ!?」

 

 

 ボン太くんにメンチをきってきた。

 

 

「ふも? ふももも」

 

 

 何やらしゃべった後、ボン太くんは不敵に両腕を組もうとしたが・・・・失敗した。

 何故なら、彼は残念なほどに腕が短い。

 ついでに言うなら足も絶望的に短足。

 

 

「ふもっふ!!!」

 

 

 何やら強い口調で言い、不良たちに一歩踏み出した。

 

 

「・・・・あん? 何がいいたいんだよ、てめえわよぉ!!」

「ふもっふ」

 

 

 不振顔の不良たちに、ボン太くんはぱたぱたと手招きした。

 あきらかなる挑発行動。

 ただでさえ沸点の低い不良たちは、瞬間湯沸し器となって襲いかかってきた。

 

 

「この着ぐるみヤロウがっ! なめやがって!! おい、やっちまえ!!!」

「「「「おおおおっ!!!!!」」」」

 

 

 全方位から不良たちがボン太くんに迫る。

 鉄パイプ、木材、釘バット、メリケン。

 数々の武器がボン太くんに迫り、周りの川神学園の生徒たちはあわてて顔色を変えた。

 これだけの凶器が当たれば、ボン太くんの中に入っているであろう者は無事では済まないだろう。

 直後に見るであろう流血の海。

 

 

「ふもっふ・・・・」

 

 

 彼らとは対照的に、ボン太くんは冷静だった。

 迫りくる鉄パイプを何の苦も無く短い手で掴みパンチをくらわす。

 その愛くるしい動作からは想像できないパワーで、鉄パイプを持った不良は冗談のようにまっすぐ吹き飛んだ。

 

 

「「がふっ!!」」

 

 

 仲間を巻き込んで。

 そのパワーにビビって動けない不良の一人をぽいっと多摩川に放り投げた。

 さらに頭突き、蹴りで不良をあっという間に倒したボン太。

 

 

「わあああっ!!!」

 

 

 最後の一人が勝てないと悟り、仲間を見捨てて逃げ出す。

 

 

「・・・・・・!?」

 

 

 直後、重い銃声と共に、悲鳴を上げることもできずに不良は倒れた。

 背中に対暴徒鎮圧用ゴム弾を食らったのだ。

 不良すべてを倒したことを確信したボン太くんは白煙の上がるショットガンを背中に背負うと、てくてくと歩き去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真剣で護衛に恋しなさい!

 

 第2話「転入」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川神学園学園長室。

 そこには学園長であり『武神』と称される初老の男―――――川神鉄心と、学生服の少年―――――相良宗吾がいた。

 ざんばらの黒髪できりりと引き締まった整った顔立ち。

 目つきは鋭く、纏う雰囲気も隙がなくどこか鋭利な刃物を連想させた。

 

 

「はじめまして、相良宗吾です。かねがね高名はうかがっていました。お会いできて光栄です」

 

 

 宗吾は完ぺきな所作をもって『敬礼』した。

 その姿はまさに軍人そのものだった。

 

 

「ほっほほほ。ここは学校じゃ。お前さんの『職場』ではないんじゃからそうかしこまれなくていい。ワシが言うのも変な話じゃが・・・・ここの生徒たちは少し変わっておるからそう気にはせんじゃろうが、『職場の雰囲気』でおるのはあまり関心せんな。自分が一般人ではないと言っておるようなもんじゃ。まっ、気配を抑えようとしているのは関心するがのう」

「了解です。善処します」

 

 

 わずかに宗吾は動揺を出した。

 が、それを察することができるのはごくわずかな者だけである。

 

 

「うむ。ここはお前さんにいい刺激を与えてくれるはずじゃ。せっかくあやつ(総理)の計らいじゃ、有意義な学園生活を送るんじゃぞ」

「はっ、全力で遂行します」

「ほっほほほ、固いのう。まあ、よいがこれからじゃからな。お前さんは2年F組に転入となる。皆と仲良くするんじゃぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川神学園2年F組の教室。

 ホームルーム前には喧騒となる。

 

 

「おい、聞いたかよ。うちのクラスに転入生が来るらしいぜ」

 

 

 友人には『ヨンパチ』と呼ばれ、カメラと女体に青春をかける『福本育郎』が言った。

 

 

「マジかよ!? 男か? 女か? 俺様は美少女希望するぜ!」

 

 

 いかにも筋力自慢といったがたいの『島津岳人』が育郎の言葉に過剰に反応した。

 

 

「だな。いい被写体だといいけど」

「けっ、三次元なんてどこがいいんだか。時代は二次元ということに早く気づけ」

 

 

 不健康そうな細すぎる長身でメガネをかけた、三次元を捨てている自他ともに認める二次元の住人である『大串スグル』は皮肉そうに鼻を鳴らす。

 

 

「おはよーーー!!」

 

 

 川神市にある武術の総本山である『川神院』の養女である『川神一子』が元気よく挨拶をして教室に入ってきた。

 常に前向きで努力家。  

 姉の百代の強さに憧れ、日々修行に励んでいる。

 その明るさと人懐っこい性格から『ワン子』と呼ばれ、皆に親しまれている。

 

 

「おはようみんな」

 

 

 一子より声量は少ないがよく通る声がした。

 金髪碧眼でドイツからの留学生『クリスティアーネ・フリードリヒ』―――――通称、クリス。

 真面目でプライドも高く負けず嫌いで一子とことあるごとに競いあっている。

 日本を勘違いした典型的な外国人であり、驚くほどに純粋で騙されやすくもある。

 

 

「・・・・・」

 

 

 無言で教室に入ってきたのは『椎名京』。

 無口で人付き合いも悪いが、大和たちのグループ『風間ファミリー(仲間)』を思う気持ちは誰よりも強い。

 昔、いじめを受けている時に大和に助けてもらい、それ以降ベタ惚れでことある事にあらゆるアプローチをかけている。

 

 

「おはよう」

 

 

 大和が京の後に続き、教室に入った。

 

 

「おはようございます!」

 

 

 小さいのが好きな方々には圧倒的な人気を誇る2年F組のクラス委員長『甘粕真与』が挨拶を返した。

 

 

「よう、モロ。今日もモモ先輩が派手にやったんだってな」

「ははは、毎度ながらね。それより当直ご苦労さん、ガクト」

 

 

 線が細い小柄な『師岡卓也』は岳人に苦笑した。

 いつも皆に気遣う優しさを持つ。

 普段は弱気で押しが弱いが少し前にあったクリスとのいざこざの際には、知らずとはいえ仲間たちの大切な場所を悪く言ったクリスの言動に激怒するなど、仲間への思い入れは強い。

 

 

「おはよう、ナオッち。朝見てたよー。今日もモモ先輩すごかったね」

 

 

 大人びた雰囲気のある『小笠原千花』が言った。

 

 

「・・・・弟分としてはやり過ぎないか心配だよ」

 

 

 ひととおり会話を終わらせると、大和は席についた。

 一子とクリスは何やら言い争っている。

 卓也は岳人や趣味で話の合うスグル、巨漢であり心優しい料理好き『熊谷満』と話していた。

 

 

「ゲンさん、たまにはいっしょに学校に行こうぜ」

 

 

 大和は自身の後ろの席に座る『源忠勝』に声をかけた。

 忠勝は岳人の母親が寮長を務める『島津寮』に大和たちと共に住んでいるのだ。

 大和はことある事に忠勝を誘うが―――――

 

 

「コミュニケーションに俺を入れる必要はねえ」

 

 

 あしらわれている。

 

 

「こういうのはクセだから」

 

 

 今の会話からもわかるように、見た目が不良っぽい忠勝であるが見た目や言動に反してかなり気が利いて優しい男である。

 故に、打算的なことは考えておらず本心から一緒に行動したいと考えていた。

 大和曰く―――――『ツンデレ』だそうだ。

 

 

「はっ、まめなヤローだ」

 

 

 忠勝が会話を切ると、チャイムが鳴った。

 

 

「みなさーん、チャイムが鳴りましたよ。小島先生が来ますよ席についてくださーい」

「まずい! それ僕のマンガだよ。隠して隠して!」

「自分は認めない! ワン子が悪い!!」

「いいや、クリが悪いわ!!」

「ワン子にクリス、小島先生が来るぞ。このままいい争いをしていると『ムチ』を食らうぞ」

「あわわわ、嫌よ! クリス、ここは休戦よ」

「わかった! 自分もぶたれたくないからな」

 

 

 カツカツ、と廊下から規則正しい厳しい音が聞こえてくる。

 

 

「! みなさん! 先生が!!」

 

 

 真与の合図と同時に、クラスメイトたちが姿勢を正した。

 

 

「朝のホームルームを始める」

 

 

 2年F組担任の凛とした美しい女性『小島梅子』が教室に入ると、鋭く言葉を発する。

 常にムチを携行しており、怒らせると容赦なくムチで打たれるが、厳しくも生徒思いなので慕う者は多い。

 

 

 

「起立! 礼!」

「「「「「おはようございます!!」」」」」

「おはよう。着席してよし。出欠を確認する。各自速やかに返事をするように」

 

 

 2年F組の面々は梅子の怖さを知るが故に、私語を挟むことなく、できる限りの元気をもって答える。

 テンポよく出欠が確認されていく。

 

 

「以上で出欠確認を終わる。最後に、お前たちの新たな仲間を紹介する」

「「「「「!!!!」」」」」」

「入れ」

「はっ!」

 

 

 梅子に負けず劣らない鋭い声がすると、教室のドアが開いた。

 黒髪の少年だ。

 彼は静かに、されど素早く教卓の前に移動し、胸を反らして『休め』の姿勢をとった。

 梅子がチョークで黒板に彼の名を書く。

 

 

「相良宗吾です。よろしくお願いします」

 

 

 

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