国連特殊部隊―――――『ミスリル』。
対テロ戦を主眼にした様々なプロフェッショナルたちの集まり。
世にまだ出ていない様々な特殊機材を使いこなし、全高4m弱の機動兵器『
故に―――――『世界最強の軍隊』との呼び声も高い。
その戦闘部隊で最強の兵士たちは『
そして、世界に名が知られる大財閥―――――『九鬼』の『とある執事』がSRTに席を置いていたことは裏の世ではよく知られていることである。
真剣で護衛に恋しなさい!
第3話「決闘前」
「・・・・・・」
相良宗吾は柄にもなく困惑していた。
彼は、今までに数えきれないほどの戦場を渡り歩き、数多の不可能と言われた困難なミッションを成功させてきた。
生命の危機に陥ったのも一度や二度ではない。
そんな状態の中でも、焦らず冷静さを失わずに行動することにより死線を潜り抜けてきたのだ。
その彼が冷静さを失っていた。
たかだかクラスメイトたちに自己紹介をするだけのことで。
それはある意味仕方のないことであろう。
幼きころより『優秀な兵士』となるように教育され、学業のすべてが教育係から教えられた。
『学校』と名のつく教育機関に通ったことがないためにやり方がまったくわからないのだ。
そのことを失念していた同僚や上司たちは、宗吾に自己紹介のやり方を教えていない。
そのため、最初の一言以外しゃべっていない。
(どうすればいい? 下手に情報を与えて仲間を危険にさらすわけにはいかん。自己紹介・・・・謎だ。わざわざ自らの情報をさらすなど自ら危険に身をさらすなど・・・・理解できん。だが、ここで不審な行動は―――――)
思考に集中するあまり無意識に殺気を放ち、周りを威圧していた。
(すごい圧力!! お姉さまみたい・・・・!!)
(くっ!? マルさんの本気以上なのか!?)
一子やクリスを筆頭に戦いなれた者はある程度耐性があるが、それ以外の者は刃物が首筋に突き付けられているような恐怖感を味わい指一本動かすことができない。
教室の空気が凍っている。
誰もがそう感じた。
「・・・・・相良、殺気を放つのをやめろ。皆が困っている」
それを見かねた梅子が注意する。
「・・・・? ああ、申し訳ありません。小島教官」
言われた宗吾は殺気を収めた。
そうすると息をするだけで苦しかったのがウソのように楽になった。
クラス全体が安堵のため息をついた。
「教官ではない先生だ。それはそうと、何を言えばいいのかわからないのか?」
「はい。申し訳ありません」
「そうか、仕方ないことかもしれんな」
宗吾の『
「皆聞いてくれ。相良はご両親の仕事の関係で今まで海外生活が長かった。しかも、俗に言うところの紛争地帯だ。そんな国々ばかりを転々としていたために学業は通信制で行い、小学校・中学校・高校問わずに通ったことがない」
梅子の話を聞き、F組の生徒たちはそれぞれ様々な表情をしていた。
同情、疑問、興味、納得。
「日本での生活も赤子の頃だけで日本のことはほとんど知らないと言っていい。そのため困惑することも多いはずだ。その時は同じクラスメイトとして助けてやってくれ」
「「「「「はい!!」」」」」
「うむ、いい返事だ。よし、何か質問あれば挙手していけ」
「はい!」
「では川神」
「アタシは川神一子! 突然だけど、相良くんは何か武道をやってるの?」
「ぶどう? ・・・・ああ、アーツのことか。幼少のころからの知り合いからならった軍隊式格闘術を少々心得ている」
「へえー、だから軍人さんぽいんだ」
「・・・・そうだ。君たちを誤解させているようだから言っておくが俺は軍隊にいた経験はない」
一子の発言を否定せず、それを利用することを瞬時にひらめいた宗吾は話を合わせる。
「古くからの知り合いの影響だろう、よくそのように言われる」
クラスメイトは皆、なるほどといった顔をしている。
「わかったわ。それより―――――」
一子は元気よく立ち上がり、梅子を見ていった。
「梅先生提案があります! 転校生を『歓迎』したいと思いまーす!!」
「ずるいぞ、犬! 抜け駆けは卑怯だ!!」
クラスメイトたちが『歓迎』の意味を悟り騒然とする。
「ふふっ、血気盛んだな川神、クリス。だがそれは面白い」
「相良。そこのポニーテールと金髪がお前の腕前を見たいそうだ」
「演習ですか。―――――了解しました」
「川神学園には『決闘』っていう儀式があるの」
一子の説明は続く。
決闘システム。
競争心を大事にする川神学園独自のものでその方法は武と武、知と知であったりと、その方法は複数ある。
いずれの方法にしても、決闘の意思を伝えあい互いの持つ川神学園のワッペンを交換すれば成立する。
「―――――ということなの」
「自分はクリスティアーネ・フリードリヒだ! 自分も決闘を望む!!」
「了承した。受けよう、川神、フリードリヒ」
宗吾は机に置かれた一子とクリスのワッペンに、自らのワッペンを重ねた。
「おおっ、すげえ! 受理したぞ!」
「いいねぇ、二人相手に躊躇することなく即答とは男らしいぜ!!」
「マジ? 決闘久しぶりに見れるんだ! しかも二連戦!」
「待て、肉体を使用した決闘の場合は職員会での承認が必要だ」
「・・・・・!」
「ほっほっほ。小島先生話は聞かせてもらったぞい」
「学長! いつの間に・・・・」
気配を殺して近づいた鉄心。
接近に気づいたのはただ一人。
「いいよ。ワシの特権で了承する。今すぐやんなさい。見届け人もワシが責任を持ってやるから」
クラス中が再び喧騒に包まれる。
「ワン子ちゃんもクリスちゃんも強いですよ? 大丈夫ですか?」
「問題ない」
宗吾は一子とクリスの実力を正確に把握していた。
クリスがわずかに一子を上回る。
だが二人とも明らかに格下。
―――――戦場に100と0は存在しない。
それが宗吾の持論であり、師の教えでもあった。
100%の勝利と0%の敗北は存在しないのだ。
だからこそ宗吾は油断をしない。
そして、戦場に出てくる者は老若男女の誰であろうと容赦しない。
「ワン子、彼とてつもなく強いよ。実力が読めない。たぶん・・・・クリスよりもさらに強い」
「わかっているわよ。胸をかりるつもりでいくわ。よーし、じゃあ相良くん、クリ、グラウンドにいきましょう!」
「肯定した」
「承知だ!」
「武具はそこのものを使え」
黒板の上にはオブジェのように様々な武器が鎮座している。
いずれも刃びき処置等が加えられて致命傷を受けないようにされているが、構成物は本物と変わらないレプリカだ。
一子とクリスはそれぞれ得意な武器を手に取った。
「川神は薙刀、フリードリヒはレイピアか。ふむ・・・・フリードリヒはともかく、川神はジャパニーズブレイドの使い手ではなかったのだな」
「ジャパニーズブレイド??」
「たぶん日本刀のことだよ」
頭の上で?を浮かべる一子に、大和がすかさずフォローを入れる。
「日本刀? それならまゆっちが得意よ」
「まゆっち?」
「そう! 1年生の子で黛由紀江っていうの。礼儀正しくて料理も上手でとってもいい子。で、最近大和と付き合いはじめたのよ」
一子は大和を見つついった。
その際、フルネームが直江大和という補足も付け加えた。
「なるほど。俺はついているな」
「? どういうこと、相良くん?」
「いや、気にしないでくれ。『決闘』をやるんだろう?」
「うん! じゃあ、行こう!」
「待て! 自分を置いていくな!!」
三人が教室を出ると、梅子を先頭にF組の面々も移動を開始した。