真剣で彼に恋しなさい!   作:だいすけ

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第5話「決闘 その弐」

「驚いたよ。まさか君に会えるとは・・・・ウルズ(セブン)。いや、相良宗吾くんと呼んだほうがいいかな?」

 

 

 フランクは鉄心とクリスの了承を得て、わずかな時間だけ宗吾と二人っきりで話す時間を作った。

 二人はグランドの端に来ていた。

 

 

「はい。今、『自分』は『相良宗吾』として一高校生として過ごすように言われています」

「そうか。ならば、私も元『ミスリル』の陸戦隊指揮官中佐ではなく、ただのドイツ軍『中将』として接するとするよ」

「了解しました。フリードリヒ『中将』」

 

 

 宗吾は敬礼で返した。

 それを見たフランクは、苦笑した。

 

 

「中将は止めておきたまえ。もう私は君の上官ではないのだからな。そうだな・・・・気軽に『フランクさん』とでも呼んでくれ。『高校生の相良宗吾くん』」

「了解しました。フランクさん」

「敬礼はいらんよ」

「了解です。それにしても・・・・ご息女がいるとは聞いていましたが、まさか同じ年とは思いもしませんでした」

「ふっ、昔の君は任務以外はまったくの無関心だったからな。覚えていないのも無理はない。しかし、君は変わったな・・・・むろん、いい方にだが」

「ありがとうございます。戦友(とも)たちのおかげです」

「そうか。―――――ところで一つ、これは個人的なお願いなのだがいいかな?」

「自分で可能であれば」

「君は娘のクリスをどう思うかね?」

「・・・・は?」

 

 

 宗吾は思いもよらない質問に思わず反応に困った。

 

 

「・・・・美しい女性だと思います」

 

 

 嘘はない。

 朴念仁とよく言われる宗吾であるが、クリスが周りの女子たちと一線を画した美しさを持つことはわかっていた。

 

 

「そうだ。我が愛しい娘のクリスは美しい。故に、『不埒な輩』に狙われることは目に見えている。そこで私が指揮する精鋭部隊で一番優秀な部下をこの学園に通わせているのだ」

「なるほど」

 

 

 ドイツ軍中将の一人娘のクリス。

 誘拐し、軍の機密情報や装備を手に入れたと思う組織はいくらでもいるだろう。

 平和ボケした日本では、部下を護衛のために学園に通わせるなど過保護の親バカととられるであろう行動も理解できる。

 

 

「あと、近寄る危険な『男共』を駆逐させる任務も与えている。むろん、君は別だよ。スペシャリストが娘に良からぬな考えを起こすことはありえん、そうだな宗吾くん」

 

 

 ―――――まあ、行き過ぎではない限りだが。

 

 

「・・・・もちろんです」

 

 

 さすがの宗吾も、究極ともいえる親バカのフランクの言い知れないプレッシャーに、内心では若干気おくれしていた。

 フランクは一度間を置くと、これまでで一番真剣な口調で話し出した。

 

 

「もし・・・・クリスを狙う組織からの襲撃があった際には、私の部下は2-Sに属しているためにどうしても後手に回ることがあるやもしれん、その時はどうかクリスを護ってほしい」

 

 

 そこには、真摯に娘を案じる本気の気持ちが込められていた。

 

 

「・・・・・」

 

 

 宗吾は無言で頷いた。

 言葉より行動で示す。

 それがスペシャリストである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真剣で私に恋しなさい!

 

 

 第5話「決闘 その弐」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、クリス、諸君待たせてすまなかったね」

 

 

 フランクは宗吾を連れてグランドの中央へと戻ってきた。

 

 

「父様、もうお話は終わりですか?」

「ああ。積もる話は次回にするよ。それより、クリスと宗吾くんの決闘を見てみたくてね。―――――二人とも決闘を続行してくれたまえ」

 

 

 宗吾は頷くと、鉄心へと告げた。

 

 

「学園長、俺に問題ありません。ミス・フリードリヒさえよければすぐさま戦闘可能です」

「自分も大丈夫です」

「そうか。ならば・・・・これより川神学園伝統、決闘の儀を執り行う!  両者、前に出て名乗りを上げよ!」

「2年F組、クリスティアーネ・フリードリヒ!!」

「同じく2年F組、相良宗吾」

「先ほどと同じで条件でワシの立会いの下、決闘を許可する。両者、良いな?」

「承知!」

「了解」

「両者の意思は確認した。―――――いざ尋常に、はじめいいいいっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ただいま」

「おっ、ワン子帰って来たか。クリスと相良の決闘が始まっちまったぞ」

 

 

 決闘後、念のために保健室へと一子は連れて行かれていた。

 わずかに数分で変わりなく帰ってきたために、岳人は身体については聞かなかった。

 しかし、風間ファミリーで一番心優しく気が利く卓也は、一子がやや意気消沈した様子であることを見抜いた。

 

 

「どうしたのワン子? ケガでもしたの?」

「ううん、してない。かすり傷さえ負ってないもの」

 

 

 そう言った一子はさらに気落ちしたようだ。

 

 

「じゃあ、負けたことが悔しいの?」

「・・・・うん」

「そっか。でも、今の負けでくよくよせず、次で勝てるように努力するのがワン子でしょ? 次で勝てばいいじゃん」

「・・・・うん」

 

 

 今日の様子は何かが違う。

 一子はしょっちゅう決闘を仕掛けている。

 勝つときもあれば、負けるときもある。

 いつも負けた後は悔しがるが、すぐに気持ちを切り替えて勝てるように修行に取り組む。

 なのに今回は負けを引きづり、見れないほどに落ち込んでいた。

 そんな一子を見かねて、風間ファミリーの面々は決闘の見学を止めて集まってきた。

 

 

「ワン子、らしくねえぜ。どうしたんだよ?」

 

 

 バンダナを頭部に巻き、思うがまま、感性のまま生きる風のように自由。

 幼いころ風間ファミリーを結成し、その頃よりリーダー(キャップ)を名乗る少年―――――『風間翔一』が駆け付けた。

 

 

「ワン子、背中が痛むの?」

 

 

 京が、

 

 

「保健室に行くか? 一人が嫌ならついていくぞ?」

 

 

 大和が心配する。

 

 

「「・・・・・」」

 

 

 百代と由紀江は無言だった。

 二人とも、一子の思うことに察しがついているのだろう。

 

 

「・・・・大丈夫。モロにも言ったけど、ケガはしてないよ。かすり傷の一つも・・・・」

「だったら、何を―――――」

「待て大和」

 

 

 大和のセリフを百代が遮った。

 

 

「―――――姉さん」

「それ以上は言うな」

「でも・・・・」

「ワン子のことが心配なのはわかる。だから教えてやる。ワン子が気にしてるのは負けたことじゃない・・・・『負け方』なんだ」

 

 

 大和はまだわからないという顔だ。

 

 

「傷一つ負わなかった・・・・それはワン子がうまく受け身をとったってことじゃない。取らされたんだ」

「取らされた?」

「ワン子は投げられたのはわかったはずだ。そして、受け身をとれたのは相手の投げ方が上手かったからだ。相手の身体能力を見切り、技量を見切り・・・・投げられたことを理解していても、反撃できないギリギリの力で投げる。おまけに攻撃を見切り、奥義も見切った」

「それって・・・・かなり難しいよね?」

 

 

 聞いた大和は、百代が言わんとすることが何となくわかった。

 

 

「ああ。それに、これ以上ないってぐらい屈辱的な負け方だな。あれは相手を『潰す』戦い方だな」

「はい。これまで培ってきたことを全否定するのと同じです」

「えげつないことをやりやがる!! 俺様はムカついたぜ!!」

「僕もだよ! 実力差があるならそんなことをしなくてもいいのに!! ワン子が可哀そうだ!!」

「うん。きっとネクラなんだよ、彼」

 

 

 岳人、卓也、京は口々に宗吾に批判的な言葉を向けた。

 だが、翔一は違った。

 

 

「う~ん・・・・そうか? 相良は意図的やってるように思えないけど。まっ、カンだけどな」

 

 

 翔一は神がかり的なカンの良さを誇る。

 それを一番よく知る風間ファミリーの面々であるために、翔一の意見を無下に否定できなかった。

 

 

「ほう。彼は素晴らしい直感を持っているな、大和くん」

「フランクさん」

「武人ばかりの環境にいる君たちには理解しづらいだろうが彼に悪意はない。そうだな、『本能』というところかな」

「本能?」

「そうだ。武人は戦いに意義や誇りを求め己を高め相手を高めようとする。されど、『彼』は戦いに誇りや意義を求めない、いかに効率的に敵を倒せるかと考えているのだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランクの言葉は正しい。

 宗吾はクリス相手でも変わらない。

 初手は防御と回避に専念。

 クリスの戦闘パターンを把握し、もっとも苦手な間合い、パターンでコンバットナイフでの攻撃を放つ。

 

 

「くっ!!」

 

 

 クリスは攻撃側からあっさり防御側に回された。

 自慢のレイピアによる攻撃も詰められた間合いでは満足に振るえない。

 相手が100%の力を出せず80%しかだせずとも、ケガを負い弱点を背負うならそこを容赦なく狙う。

 高めるためではない。

 勝つために、生きるために、任務を遂行するために無駄は行わない。

 それが宗吾の戦い方である。

 格闘術では宗吾に遠く及ばないクリスだが、焦った彼女はうかつにも蹴りを放った。

 

 

「―――――はっ!?」

 

 

 それが敗因となった。

 態勢が崩れたクリスの右手に宗吾の手刀が下され、クリスは痛みにより武器を落とした。

 次の瞬間には、宗吾はコンバットナイフをクリスののど元に当てていた。

 

 

「それまで!! 勝者、相良宗吾!!!」

 

 

 鉄心の言葉と同時に、興奮した生徒たちの歓声が響く。

 その中には宗吾を褒め称える声が多くあったが、宗吾は特に表情を変えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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