不義遊戯   作:永劫破壊

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お久しぶりです。僕です。
今回個性因子について独自解釈があります。
そして長いです、1万文字くらいあります。
すごく読みにくいと思いますが楽しんで頂けたら幸いです。


受難

「ここが…雄英……」

 

「あぁ…」

 

ここは雄英高校の敷地内の中。校門を潜り、左右に次々と並べられている石像が鎮座する道で足を止め、感慨深そうに校舎を見ている緑谷と東堂。

そんな彼らを、避けるようにして受験生達が校舎へと歩を進めている。

 

「どけデク!クソゴリラ!」

 

突然、彼らの後ろから飛び出てくる怒りを隠そうともしない怒号。

罵倒を投げかけてきた人物に心当たりがある二人は、後ろを振り向きその人物を目に収める。

 

「爆豪か、おはようさん」

 

「か、かっちゃん!お、おはよう!」

 

緑谷は顔を強ばらせ上擦った声質でかっちゃん、爆豪勝己の名前を呼ぶ。方や東堂はそんな緑谷とは違い、ごく普通に挨拶を交わす。

 

「俺の前に立つんじゃねぇ殺すぞ」

 

緑谷と東堂。二人の態度が気に入らないのか、忌々しそうに、鬱陶しそうに言葉を並べながら二人を追い越し校舎へ向かっていく。

赤の他人がこのやり取りを見ただけで、爆豪が2人をよく思っていないのを察せられる程に態度がすこぶる悪い。

 

因みに、東堂と爆豪の間には面識がある。

緑谷と出合いヒーローになるためのトレーニングで、 一緒にランニングをしていた時に、バッタリと鉢合わせたのが初顔合わせだった。

 

緑谷がヒーローになるために体を鍛えている事を知り、あの糞を下水で煮込んだような性格の爆豪が突っかかって来るのは火を見るよりも明らかだろう。

そして、手に小さい爆発を発生させながら緑谷に向かって腕を振りかぶっている爆豪を東堂が黙って見ている筈が無いのも明らかだ。

 

個性を使わず普通に追い払ったところ、目を付けられ顔を合わせれば常に襲い掛かってくるようになったのが経緯だったりする。

 

自閉休題

 

 

 

急に現れ、罵倒を吐き去って行った爆豪を見ながら緑谷は言葉を溢す。

 

「あはは…ビビっちゃうのコレもう癖だ…」

 

「いかんぞブラザー。お前はもう、以前とは違うんだ。

思い出せ、俺と駆け抜けたこの蜜月の5年間を」

 

東堂は、少し誇らしげに言葉を並べている。その横顔を見てふと、昔の日々を思い出す。

 

筋トレを張り切りすぎて、筋肉痛で動けなくなった日

 

組手で、容赦無しに殴られゲロを吐きまくった日

 

アイドルの握手会に無理やり連れていかれた日

 

なんか最後変な思い出が脳内に流れたがそれは置いといて。

共に鍛え、共に強くなった。そんな日々を思い出し自信に変え、前を見る。

 

「そうだね…そして踏み出そう」

 

「あぁ…共に……」

 

-----目標への第一歩を------

 

もう僕は、何もできない出来損ないのデクじゃない!

 

 

 

ガッ

 

「あ」

 

「あ」

 

気合を入れて、歩き出した瞬間。

足に足を引っ掛け倒れるように転んでいく。そんな自分に、緑谷はこれだよ…と呆れの感情抱きながらもすぐさま受け身を取る体制に入る。

 

しかし、いくら待とうが衝撃は来ない。なんなら前に倒れる事すらしない。

止まっている?

そんな自分の現状に首をかしげていると、東堂のいない反対の隣から声がかけられる。

 

「大丈夫?」

 

そこでようやく自分が浮いている事に気づく。と同時に足が地面に付き、助けてくれたであろう人物にお礼言おうと顔を向け、固まる。

 

「私の個性、ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね」

 

緊張するよねぇ、と言葉を続けるボブカットの女の子。

急に現れた女の子に対して緑谷は急に、へ…あ…えと……と同じ言葉を繰り返しているばかり。

そんなちょっと変な様子に気づいていないのか、お互いがんばろーと声をかけ校舎の方に去っていく女の子を緑谷は、ほげーっといつまでも見つめている。

そんな緑谷の状態に東堂は?を浮かべつつ、声をかける。

 

「おーいブラザー、大丈夫か?」

 

先程の女の子の個性によって怪我はしていないだろう。

頭を打ったわけでもないのに放心状態になるとは。女の子の個性の副作用か何かか?と東堂が考えていると。

 

「……僕……女子と喋っちゃった…」

 

「いや、喋ってはいないぞ」

 

いきなり素っ頓狂なことを口走る緑谷に喰い気味でにツッコミを入れる。

そんな東堂の声が届いていないのか、おっおっおっと発しながらいきなり歩き始める緑谷について行くため隣を歩く。

そんな二人が周りから変な目で見られているのは、当然といえば当然だろう。

 

 

 

 

-----

 

『Plus Ultra! それでは皆良い受難を』

 

プレゼントマイクの演説が終わり、着替えて模擬市街地演習を行う為に用意した更衣室へとブラザーと歩を進める。

 

「最後のプレゼントマイクの校訓、僕震えちゃったよ!」

 

「あぁ、流石はプロヒーロー。心に響く…ん?これは…」

 

興奮しているのか、目をキラキラ輝かせ鼻息を荒くし語るブラザーに言葉を返す。

て言うかホントに鼻息すごいな。フンスフンス言っとる。

 

この学校に他にはどんなプロヒーロー達が教師としているのかを話し合っていると、足元に何か紙が落ちているのが目に入る。

すぐさま拾い、ブラザーと共にその紙を確認してみる。

 

すると、どうやらこの紙は受験票のようだ。

となると誰かが落としたのだろう。

 

「それ、受験票だよね。誰かが落としちゃったのかな。」

 

「そのようだな。名前は……耳郎響香。」

 

ふむ、早くこれを係員に渡したほうがいいな。受験票の持ち主である女子も、さぞ困っていることだろう。

 

思い出すなぁ、(前世)、俺も受験票を失くして死ぬほど焦ったことがあったなぁ。ほんと生きた心地がしなかった。

そんなことを思い出しつつ、係員を見つけるためキョロキョロ周りを見渡していると、ブラザーが俺の袖を引っ張りながら指をさす。

 

「あれ、あの子。受験票の子じゃない?」

 

指された方向を見てみると、確かに受験票に写っている写真と同じ顔の人物が足元をキョロキョロ見ていた。その顔は、焦っているのか少し強張っている。

こりゃ早く渡してあげた方がよさそうだ。

 

ブラザーに行ってくると一言言い、すぐに彼女のもとに向かい、声をかける。

 

「探し物はこれか?お嬢さん」

 

すると彼女はパッとこちらに顔を向け、差し出した受験票を凝視している。

差し出されている受験票が自分のものだと確信したのか、張りつめた顔を綻ばせ笑顔になった。

 

「それ!ウチの受験票!失くしてたんだぁ、見つけてくれて助かるよ!」

 

そう言う彼女に受験票を渡す、と同時にブラザーが遅れて追い付いてきた。

 

受験票が手元に戻りほっとしている彼女が、そうだと口ずさみ空いている手をこちらに差し出しながら言葉を続ける。

 

「ウチ、耳郎響香。ホント焦ってたから助かったよ。」

 

「俺は東堂葵、隣にいるのがマイベストフレンド緑谷だ。」

 

差し出された手に手を重ね、握手をしながら自己紹介をしていく。

勿論、我が半身と言っても過言ではないブラザー緑谷の紹介も忘れない。

ブラザーも俺に続き緑谷出久です、よろしく。握手をする。しかし女子に免疫がないのか、声と手が少し震えていた。

 

「うん、ヨロシク!って言ってもお互い受かんなきゃ意味ないんだけどさ」

 

「それもそうだな、互いに落ちぬよう最善を尽くそう」

 

そう言う耳郎は、まぁウチ受験用失くして危なかったんだけどさ、と続けながら改めてお礼を言いうと、じゃあウチこっちだから実技試験頑張ってねと手を振りながら去っていく。

 

そんな彼女に手を振り返しつつ、横目でブラザーと目が合う。

そして同時にふっと笑い合うと、更衣室へと向かい歩き出した。

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

場所は変わり今俺は会場の門の前で試験が始まるのを待っていた。

筆記試験の手ごたえは結構あり、問題ないとは思う。

 

しかし、昔から鍛えているからとは言え、今から始まる実技試験に何とも言えぬ緊張感が張りつめてくる。

色々頑張って修行して来たとはいえ、不安になってしまう。

 

ゆっくりと天を仰ぎ、目を閉じ深呼吸を行う。

精神を落ち着かせようとしていると、ふとブラザーの顔が頭をよぎる。

 

今回、ブラザーとは違う会場になったため、この場に居らず分かれて試験を行うことになった。

まぁ今のブラザーなら実力的に問題はないはずだが、少し心配だ。

 

「あれ?東堂じゃん、何、あんたも此処の会場だったんだ」

 

そんな思考をしていると後ろから声をかけられる。

聞き覚えのある声の方に顔を向けると、やはり先ほど会った耳郎だった。

 

「奇遇だな、まさか同じ会場とは」

 

「ホント奇遇だね。さっき空見てたみたいだけど、アンタも緊張してんの?ウチなんかもう心臓バックバクで…」

 

手を胸に当て、パタパタしながら笑いかけてくる耳郎。

そんな彼女の手は、言葉の通り緊張しているのだろう。少し震えているのが解る。

 

自分のことでいっぱいいっぱいであるはずなのに、気を使って声をかけてくれるとは、耳郎はブラザーのように優しい心を持っているのだな。

 

耳郎の健気な姿にほっこりしたことによって、緊張がほぐれ、精神も落ち着いていく。

 

耳郎の気遣いに礼を言わねばな。

 

「あぁ、確かに緊張はしていたが、耳郎のおかげで解れたよ。

ありがt『ハイ!スタートーーー!』…ん?」

 

『どうしたあ!?実践じゃカウントダウンなんざ、ねぇんだよ!!走れ走れ!!』

 

会話の真っ最中だったこともあり、俺と耳郎はプレゼントマイクがいるであろう塔へ目線を向け固まっていた。

 

しかしすぐに我に返り、耳郎に行くぞと告げ走り出す。

耳郎はそんな俺の言葉にハッとし、すぐに走り出し付いてきた。

 

他の受験者たちも俺たちが走り出した事でようやく我に返ったようで、ちらほらと走り出している。

 

目の前に仮想ヴィランの姿を捉え、本格的に動く前に耳郎の横に並び顔を向けず口を開く。

 

「健闘を祈る、耳郎。また会おう」

 

「そっちこそ頑張って!またね!」

 

そう共に短く言い残し、仮想ヴィランを探しに離れ加速する。

さっさとポイントを稼いであれに備えなければな。そんなことを考えながら俺は更に加速して走り出した。

 

それから仮想ヴィランの数台壊しながら少し走ったところ、開けている場所へとたどり着く。

そこには1~3ポイントヴィランがパッと見でも数十体はいた。

 

俺を視認したのか、その全ての仮想敵が一斉にこちらに向き、目であろう部分を赤く光らせる。

その光景に、俺は思わず笑ってしまう。

 

試験が始まっていきなりで、こんなにも幸先がいいとは

 

「ツイてるな」

 

笑みを浮かべる俺を、歯牙にもかけず襲い掛かってくる。

まぁこいつらロボットだから当然ではあるが。

そんな思考を打ち切りすぐに構え、前に出る。

 

体を滑り込ませるように、態勢を下げ目の前に迫った1P仮想ヴィランの車輪を蹴り飛ばし転倒させる。

その蹴飛ばした車輪を、あえて横にいる3P仮想ヴィランの顔部分にぶち当てておくことで再起不能にする。

 

そして、素早く跳ね起き次の標的を定めていく。

 

 

 

拳を放ち吹っ飛ばす。

 

蹴りで上半身と下半身を離す。

 

後ろに回り頭部を捻り、潰す。

 

次々にロボットを破壊していくと、周りに動くものは無くなった。

 

少し上がった息を深く吸い込み吐くことで正していく。

だが俺は、息苦しい感覚など忘れてしまうほど気分が高揚していた。

良い。良いぞ、俺の肉体が試験に通用している!

 

自分の今までの努力が実っていく感覚にさらに笑みが深まっていくのが分かる。すると

 

『残り6分2秒!』

 

残り時間のカウントダウンを告げるアナウンスが聞こえ、ハッとする。

 

いかんいかん、己の成長の喜びで少し周りが見えていなかった。

東堂葵はこんなことで視野が狭まることはない、しっかりせねばな。

 

そう自分に言い聞かせ、意識を切り替え走り出す。

時間は半分ほどになった、他の場所にいる仮想敵を狩りに行かねば。

 

すると先程よりも、さらに開けた場所に出る。

そこには大勢の人と大勢のロボットが入り乱れていた。

 

もう余り仮想ヴィランは残っていないな、違う場所に行った方がよさそうだ。

 

そう見切りをつけ、踵を返し走り出そうとした瞬間。

背後からから黒いモンスターを出し、使役している鳥頭の少年が目に入る。

 

その少年は危なげ無く、仮想敵を対処している。

だが気づいていないのか、今にも後ろから仮想敵に殴られそうになっていた。

 

見つけた以上、そのままにしておく理由も無い。

すぐさま仮想敵にドロップキックをかまして吹っ飛ばす。

 

飛んでいく音に気付いたのか少年はこちらに振り向く、そして自分の状況を察したのか礼を言ってくる。

 

「すまない、後ろを取られていたことに気付かなかった。助かった。」

 

「あぁ、どうってことないさ」

 

礼の言葉に軽く返す、と同時に少し離れた所からデカめの仮想敵がこちらに突っ込んでくる。

姿を視認し体を弛ませ、一気に距離を詰め腕に力を籠める。

 

拳を放ち気づく。自分の横から黒い腕が放たれていることに。

 

俺と黒いモンスターの拳を受け、凄まじい勢いで吹っ飛んでいく。

ん?よくみると黒いモンスターに殴られた装甲すっごい凹んでる。今の俺のパワーよりちょい上ってところか。

 

だとすると後ろの鳥頭の横にいるモンスター、凄いパワーだな。と考え事をしていた時。

 

 

 

巨大な轟音がなりながら、ビルが倒壊していく姿を捉えた。

唐突に発生したその音に、周りの受験生達も視線を定める。

 

そこには、ビルを優に超えるほどの巨大な仮想敵。先ほど相手していたモノ達とは規模が違う。

 

まさに災害。

 

そんな光景に周りにいる受験生達の顔も強張っていく。

 

突如現れた巨大な仮想敵に立ち向う者などいる筈もなく、周りの受験者達は、次々に背を向け逃げている。

 

するとその受験生たちの波に逆らい、声を上げながらこちらに向かってくる人物がいる。

 

「東堂!」

 

「耳郎か」

 

「あんたら何突っ立ってんの!ウチらも早く逃げよ!危ないよ!」

 

耳郎はそう言いながら、俺と鳥頭の少年の腕を掴み引っ張ってくる。

巨大仮想敵を見ていて動かなかった俺たちのために、わざわざここまで来てくれたのだろう。

 

しかし、俺は逃げる訳には行かない。

 

「悪いな耳郎、俺はここから逃げることは出来ん」

 

そう言って、俺はその手を振りほどく。

 

「えぇえ?!!何言ってんの?!」

 

余程ビックリしているのか、デカい声を上げ耳のイヤホンジャックをこちらにピーンと向けながら、信じられないという顔をして叫んでいる。

 

「それは何故だ」

 

そんな耳郎とは反対に、鳥頭の少年は静かに問いを投げてくる。

その問いに答えるべく、俺は指を一つ立て説明を始める。

 

「1つ、俺の背に逃げ惑う者たちがおり、目の前にはとてつもない巨大な敵がいる。

ヒーローを志す者として、そんな状況で背を向け逃げるのは正しい行動とは言え無い」

 

「そうだとしても、あんなのウチら学生がどうこう出来るものじゃないでしょ!」

 

危険だよ!と続けて言う耳郎に、ピンっともう一本指を立て言葉を続ける。

 

「2つ、俺にはあいつを倒す秘策がある。そして…」

 

目をそっと閉じブラザーの顔を目に浮かべつつ、ゆっくり3本目の指を立てて言葉を続ける。

 

「そして3つ、俺達2人(・・)が目指すヒーローは、例えどんな(ヴィラン)にでも立ち向い、救い出す。そんな最高のヒーローだからだ」

 

 

なぁ、そうだろうブラザー。

俺達が目指す最高のヒーローになるためには、この程度の受難、乗り越えられなくてどうする。

 

すると、鳥頭の少年は目を閉じゆっくりと言葉を発した。

 

「先程、秘策があると言ったな。詳細、聞かせてくれないか」

 

鳥頭の少年の顔は数秒前までの強張らせた表情ではなく、覚悟を決めた表情だ。

 

「俺だってヒーロー志望だ。こうも言われては引き下がれん、俺にできることがあるなら手伝わせてくれ」

 

そう言って背に黒いモンスターを出しながらこちらを見ている。すると耳郎は俺の隣まで歩いて止まる。

 

「もう何言ったって無駄そうだし。」

 

耳郎は、はぁと溜め息を溢す。そして彼女も覚悟を決めた表情で此方を見ながら言葉を続ける。

 

「それに、ウチだってヒーローになる為にここにいる訳だし」

 

そんな彼女の答えにふっと笑みがこぼれる。

よし、残り時間も余りないだろう。

 

「そうか、ならば共に始めよう。耳郎、と…あー……」

 

そういえば俺、名前聞いてなかったな。

彼の名前を知らないことに気付き、改めて名乗ろうとするより早く口が開かれる。

 

「俺の名は常闇踏影。耳郎、東堂、二人ともよろしく頼む。

それで俺は今から何をすればいい」

 

自己紹介は必要無いと言わんばかりに、俺と耳郎の名前を呼び指示を待っている。

つい先ほど呼び合っていた時に覚えていたのだろう。

そんな二人と、顔を合わせて作戦について話し始める。

 

「あ、あぁ。耳郎と常闇にはまず------」

 

 

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

「なるほど、これはデカいな」

 

耳郎と常闇への作戦説明を終え、俺はビルの屋上で巨大仮想敵を見上げていた。

 

これはデカい、周りの建物より頭一個以上デカい。

試験ではなく、もし本当にこのデカさのヴィランが出たら町への被害はとんでもないことになるだろうな。

 

嫌になりそうな大きさの仮想敵に、ふぅっと息が出る。

これだけデカいと、秘策があると大見得切ったのはいいが少し不安になる。

 

だがしかし、仮想敵とは言えこれはロボット。であるならば、何処かにきっと核となる部品があるはずだ。

 

そして、俺のIQ53万の脳内CPUが核の場所は大体の目星はついているといっている。

 

それは、アイツの頭部だ。

 

というのも俺の数少ない原作知識で、緑谷は巨大仮想敵の顔面を殴り飛ばすことで再起不能にしていた。

 

もし、核が存在するとして胸や他の所にあったのなら、殴り飛ばされ転倒したとしても、また再び動き出すのではないかと考えている。

 

だが、だからと言って顔に核がある確証など何処にも無い。

他の場所にある可能性は十分にある。

 

しかし、今は長々と考えていても意味はない。

 

大丈夫大丈夫、アルティメットメカ丸だって頭部に操縦席と言う名の核があったのだ。

最悪、真人のように直接顔面を殴って乗り込み確認すればいい。

 

そうして、無理矢理思考を打ち切り走り出す。

 

目指すは仮想敵の頭の上。

 

しかし、ここから跳んでもたどり着くことは出来ないだろう。なので肩を経由してから行くのが正解。

 

すぐにトップスピードまにで到達し、手すりの前に迫る。

その手すりが、ひん曲がるほどの力で踏み抜くことで大きく跳躍することで、狙い通りに肩の装甲へと着地する。

 

そのまま何度か落ちそうになりながら、頭上へと登りきる。

 

おぉーすっげぇ高ーい!遠くにいる受験生が、すげぇ小っちゃい!

あ、駄目だ、なんか怖くなってきた。さっさと穴あけてしまおう!

 

最初は、突然の絶景で見入ったため何ともなかったが、冷静になって、だんだん怖くなっていく現象に苛まれつつ拳を上げる。

 

「ふんッ!」

 

全力で拳を真下へと放ち、ゴキャッ!っとデカい音が鳴り響く。しかし

 

「おいおい、自信なくしちゃうぜ」

 

結果としてほんの少しだけ、へこませるだけで終わる。

だが、まだだ。まだ終わりじゃないぞ。

 

叩く場所を一点に絞りつつ一撃、二撃と次々拳を叩き込む。

 

しかし、流石100%のワンフォーオールで殴られのに関わらず、消し飛ばずに保つほどの装甲。

軽く十発以上殴っているのに穴が開かない。

 

-----やはり、あれをするしかないか-----

 

そう考えていると、周りが暗くなっていることに気づく。

 

ハッとし、すぐにポケットに仕舞っていた小瓶を取り出しつつ、真横に飛び跳ねようとするが、遅かった。

 

仮想敵の手によって、俺の胸から下を包み込まれる形で捕縛される。

 

しかし、捕まってしまってはいるが、幸い両手と赤い液体の入った小瓶は無事だ。その事実に少しだけ安堵する。

 

さて、どうやって脱出しようか。

と考えていると少し遠くから声が聞こえてくる。

 

「「東堂ーーーーーー!!!」」

 

首を後ろに回し地上に向かって視線を送る。

そこには肩で息をし、汗を拭っている耳郎と常闇がいた。

俺と目が合った常闇が言葉を続けて叫ぶ。

 

 

「避難誘導っ!完了だぁっ!!」

 

 

告げられた言葉に俺は笑みを溢し、確信する。

 

ピースは揃った、この事により弾き出される結論……勝利(ヴィクトリー)を!!!

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

此処は、巨大仮想ヴィランから少し離れた大通り。

 

そこで体を屈ませ、イヤホンジャックを地面に刺している耳郎響香と、ビルの窓にダークシャドウで掴まりながら、周りを見渡す常闇踏影がいた。

 

東堂が先程、二人に話した作戦。これを敢行するためには、周りに人が居ない状況を作り出す必要があった。

 

しかし、東堂は索敵に特化している個性ではない。

そこで東堂は耳郎響香の個性と、常闇のダークシャドウについて聞いた上で周囲の受験生を遠くへ避難させるように頼んだのだ。

 

巨大仮想ヴィランを中心に、ぐるっと円を描く形で逃げ遅れた受験生を見つける為に、耳郎は音で、常闇は目視で、視覚と聴覚。

そのどちらも使い探していく。

 

居ないのであればそれでよし、居るのであればすぐに離れるように声をかけていく。

 

そうしながら、二人は東堂に任された避難誘導をこなしていく。

 

幸い、建物の中には人が基本入られないようになっていたため、小道や道路に意識を向けることができたので比較的早く終わっていく。

 

周りのチェックが終わり再び走り出し。

すると、すぐに見覚えのある開けた場所へと出た。

 

どうやら一周してきたようだなと、口を開く常闇に掴まり、東堂のいるであろう巨大仮想敵の元へと駆け走る。

 

「ねえ!あれ!」

 

目の前で起きている光景に、耳郎は思わずと言った声色で隣で走る常闇に話をかける。しかし、もともと常闇も見えていたのだろう、掴まっているな。と一言返しスピードを緩めその場に止まる。

 

そして、乱れる息を整えず共に息を吸い込む。

東堂に聞こえるように、作戦完了の報告を。

 

「「東堂ーーーーーー!!!」」

 

声が届いたのか、首を後ろに回しこちら見る東堂に常闇が続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「避難誘導っ!完了だぁっ!!」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、東堂は手に持っていた小瓶を巨大仮想敵に向け投げる。

小瓶が胸部に当たり割れ、一部が赤く染め上げられる。

 

東堂が瓶が当たったことを確認し、耳郎と常闇に声を張り上げ合図を送る。

 

「常闇!コイツの頭上にダークシャドウで、出来るだけ高く石を投げろ!」

 

「了解!」

 

ダークシャドウを伸ばせるだけ上へと伸ばし、今出せる全力の力で持っていた石を高く投げる。

 

東堂が話した作戦の内容はこうだ。

 

1つ、巨大仮想敵の周りいる受験者たちの避難誘導及び索敵。

 

2つ、東堂と合流し避難完了の合図

 

3つ、東堂が、常闇に渡した血の付いた石の投擲である。

 

東堂は巨大仮想敵の、遥か頭上に投げられた血の付いた石を見ながら、ゆっくりと両手を上げていく。

 

 

 

ここで一つ、考えなければならないことがある。

それは不義遊戯の個性発動対象についてだ。

 

呪術廻戦の東堂は術式範囲内に存在する一定の呪力を持ったモノに対して発動ができる。

 

では、この世界の東堂はどうだろうか。

生得術式の不義遊戯を、個性として使えているということは、確実に何かに反応して発動しているのは明らかだ。

 

さて、東堂が入れ替え可能なのは個性範囲内の生物か?

 

 

東堂の個性は峰田のモギモギにも有効だ。

 

 

-----つまり答えは"一定以上の個性因子を持ったモノ"-----

 

 

個性は人体に特別な仕組みを+‪α‬されたモノであり、

その+‪α‬を一括りに個性因子であると原作で明言されている。

 

では個性因子は人体の何処に含まれているのか。

そこで、オールマイトが緑谷に個性の譲渡を行った時を思い出して欲しい。

 

髪の毛、DNAの摂取によって個性の受け渡しがされていただろう。

即ち、個性因子はDNAに含まれている事が考えられる。

 

そして今、上空にある血塗られた石。小瓶に入れられた東堂の血液(・・・・・)によって体の一部を染めあげている巨大仮想敵。

 

 

 

「さらば、仮想敵。楽しい紐無しバンジーを」

 

 

パァンッ!

 

 

 

 

 

「き、消えた…?」

 

「0Pヴィランと東堂がいきなり消えた…いや、東堂はいるな。

無事に着地したようだが……ん?

お、おい…耳郎。上……」

 

常闇に促された耳郎は上を向き、はあぁあぁぁぁあああ!!!???と絶叫する。

 

それもそうだ、重力に逆らわず、ビルをも超えるデカさの物体が落下していく様を見れば誰だってそうなる。

 

「「うごぉッッ!!!」」

 

そんな光景に口をあんぐりと開けている2人の間を、東堂が両手を広げ腹にラリアットをする形で抱き上げこの場から逃走する。

 

もし、あれ程のデカい物体があの高さから落ちれば衝撃が発生し、周りにいるもの達に被害が出るだろう。

 

勿論、2人も危うい場所にいた。

 

『終了ーーー!!!! 』

 

そんな、人2人を抱えているのにもかかわらず、グングンとものすごいスピードで走る東堂の背中からとてつもない衝突音。

と共にプレゼント・マイクの声が響き渡る。

 

声を聞き、ゆっくりとスピードを緩め完全に停止する。

 

「ふぅ、耳郎、常闇。お前達のお陰で0Pヴィランを倒すことが出来た、礼を言う。

……ん?どうした…2人と…おい!大丈夫か!?おい!おい!!!」

 

しかし、降ろされた耳郎と常闇は、地面にグテーン横たわりながら動かない。

 

東堂が2人を回収する際の、腹へのラリアットがいい所に入ったのか、それとも張り詰めた糸が一気にほぐれた故か。

それともその両方か。

 

そんなの様子の2人に、キャラを忘れワタワタし始める東堂の姿は、なんとも締まらない様相であった。

 

 

 

 

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