種族としてハンデのある小人族って無限の可能性を感じてしまいます。
ある山の麓にある小人族だけが住む町があった。そこに住むルイン・マックルーは生まれた。
すくすくと成長し、誰にも優しい少年へと育つ。ある日、一冊の本に出会った。冒険譚の本だった。冒険者の活躍に憧れて、町の剣術道場に通い始めるのも、それ程時間はかからなかった。
いつか冒険者になる為に誰よりも鍛錬をし、数年後には町一番の剣士にもなれた。本にある冒険者は如何なる試練も力と知恵で解決していたので、勉強もしっかりと行う。町の誰もがルインの頑張りを応援し、オラリオの英雄【勇者】に続く小人族の希望になれると信じていた。
14歳になり、剣術に、知力を身につけ、持ち前の優しさを持つルインは、町のみんなから支援してもらってオラリオに行く資金を予定より多く集めることになった。
町長から鎧を、剣術の先生からは剣を、どちらも家宝としていたものだったが、ルインの門出と喜んで渡した。
道中は何事もなく進み、無事にオラリオに到着した。ルインはすぐにギルドへ向かう。
ギルドに入り、受付の女性に声をかけた。
「こんにちは。冒険者になりたいのですが、探索系のファミリアを教えて欲しいのですが」
声をかけられたハーフエルフの女性、エイナは視線を向ける。
「こんにちは。探索系のファミリアですね。今リストを作りますから少々お待ちください」
丁寧な対応を受け、貰ったメモをしまい、お礼を伝えて街に出た。
初めに行くところは決めていた。メモには無いが、都市最強が居るファミリアにと。更にそこには尊敬している同胞の【炎金の四戦士】がいるフレイヤファミリアだ。
「すまない。我がファミリアは女神の寵愛を受けたものしか入れないのだ。しかし、我らが同胞への尊敬の言葉は責任を持って伝える。無事に冒険者になることを願っているよ」
元々、記念のつもりでいたので真摯に対応してくれた門番に感謝を伝えて次を目指した。
「お前みたいなやつが、我がファミリアに入れるわけないだろ!しかも、小人族なんて冒険者なんて諦めろ」
次に訪れたロキファミリアでは、酷い扱いを受けた。同胞の英雄と言われた【勇者】が団長を務めているはずなのに。門番に言われた言葉は、まるで呪いのようにルインは感じた。
そこからは、どこに行っても断られた。ロキファミリアより酷い扱いは受けなかったが、種族だけで断られるのは悔しかった。
ルインは手元のメモを見る。残るのは極東出身だけで構成されるタケミカヅチファミリアと、最近出来たヘスティアファミリアの二つだけだった。
どちらに向かうか考えながらトボトボと道を歩いていく。
「へーい、そこの君!ジャガ丸くんを食べていかないかい?お腹が空いたら元気は出ないよ!」
声の方に顔を向けるとツインテールの神が笑顔でジャガ丸くんを勧めていた。
「それでは、一つください」
思えば小腹が減っていることに気づく。受け取り、かじり付くと暖かさを感じた。
「どうしたんだい?酷く落ち込んでるみたいだけど。ボクで良かったら話を聞くぜ?こう見えて、ファミリアを率いる神なんだからね」
ルインは女神の好意に甘えて、どのファミリアにも断られていることを伝えた。残っているタケミカヅチファミリアかヘスティアファミリアに向かうところだと。
「な、なんだって〜!これは運命に違いない!なんせボクがそのヘスティアだからね。眷族も一人しかいない、零細ファミリアで良ければ、歓迎するよ!」
ルインは本当に運命を感じた。目指していた女神から声をかけられ誘って貰えたのだから。思えば主神に出会えたのも初めてだった。
「入れて欲しいです!よろしくお願いします」
「よーし、こうしちゃいられない!おばちゃーん!遂にボクに二人目の眷族ができたから今日は帰らせておくれ!」
ヘスティアは店主の女性に交渉し、片付けを終えるとルインの手を取る。
「じゃあ、今からホームに案内するよ!」
手を引かれながら進むルインは、不思議と先ほどよりも足取りを軽く感じた。
「よし!これでルイン君もファミリアの一員だ!これからもよろしく頼むよ!」
ステータスを貰い、感慨深くなる。これで冒険者になれる。受け取った紙を見ると、思わず頬が緩んでいた。
「今日はまだ時間があるから、ギルドに行って登録して、明日からダンジョンに向かうといいよ!」
ヘスティアの提案に従い、ルインはギルドに向かうことにした。
「あの、冒険者登録をお願いしたいのですが」
初めて担当してくれた人は見当たらなかったので、手が空いている桃色の髪をした女性に声をかけられた。
「冒険者登録ですね。ではこちらの紙に記入を」
渡された紙に記入をしていく。
「あの、この担当の希望というのは?」
「ああ、それは女性がいいとか希望の種族とかあれば、記入してください。必ず希望にそえる訳ではありませんが」
「そうでしたか。ありがとうございます。それとハーフエルフの女性は手が空いてないですか?今朝、ファミリアの相談して、改めてお礼を言いたくて」
用紙を渡し、不在している職員について尋ねてみる。
「ああ、エイナね。うーん、しょうがない。弟君に手を差し伸ばしてあげるか。ごめんね、少し待ってて」
先程までの真面目な対応から、かなりフランクになり、席を外して個室の方へと、楽しそうに向かっていった。
「ごめんね。待たして」
数分してからエイナを連れて戻ってきた。ルインは、エイナへお礼を述べて、ヘスティアファミリアに入ったことを伝えた。
「おお、弟君のところに入ったかー。エイナが担当する?」
「ミィシャ、仕事をさぼりたいからって私に振らないで。私の担当の子は、かなり問題児だから手が回らないわ」
「ちっ、ばれたか。じゃあ、私がルイン君の担当してあげるよ!よろしくね」
「ありがとうございます。そういえば、ギルドはダンジョンについて講習をしてくれると聞いていますが、これからでも大丈夫ですか?」
「うん!大丈夫だよ。よし、早速やろう!」
二人は個室に向かい、講習を始める。ミィシャには珍しく、かなりの時間をかけて講習は行われていた。
後程、エイナが尋ねると、ルインの質問責めにより短時間で終わらなかったようだ。真剣に担当の交換を懇願されたが、同僚への良い薬になると思い丁寧にお断りすることにした。
講習を、無事に終えたルインはホームへと戻る。そこでもう一人と眷族のベル・クラネルと出会った。互いに自己紹介を行い、同じ年齢や冒険譚好きと意気投合し、すぐに打ち解けることができた。ヘスティアは放置され、少し不機嫌になっていたが。
「それにしてもルインは装備もしっかり揃えてるんだね。僕は神様から貰ったナイフ以外は試供品だから羨ましいよ」
「故郷のみんなから貰った宝物なんだ。ベルのナイフと一緒さ。少し古いけど、これで僕も英雄を目指すんだ」
ルインは、骨董品にみえる剣や鎧を丁寧に整備しながら、嬉しそうに応える。ほったらかしを食らったヘスティアの機嫌も、回復させて、三人で楽しく夕食を囲った。
「じゃあ、ベル君は、明日はダンジョンにもぐらないんだね?ルイン君、一人で潜ることになるけど大丈夫かい?」
各々の明日の予定を確認しているとヘスティアは心配そうにルインに尋ねる。
「ごめんね、ルイン。ちょっと明日は予定が入って」
「気にしないで、ベル。初めてのダンジョンは一人で潜りたかったんだ」
「よーし!明日はルイン君の初ダンジョン!今日は早く寝て明日に備えようー」
最後の締めをヘスティアは行い、ルインは明日から始まる冒険を楽しみにしながら眠りについた。
女神に敬愛しているフレイヤファミリアなら冒険者希望の少年を無碍にしないように思います。(一部幹部や他派閥に対しては除く)
自分の行いで女神に泥を塗るなんて絶対に出来ない!とか下っ端は考えてそうで……。