報告の為ロキの部屋に訪れると、既にリヴェリアとガレスが待機していた。心配そうに尋ねてくるリヴェリアを安心させる為に、様子を伝えてから本題を切り出す。
「彼との話し合いは無事に終わったよ。最後までリヴェリアをお姫様扱いしていたのは、流石に笑ってしまった。彼が言うには、リヴェリアが、もしハイエルフじゃなくても、同じように敬いたいらしいよ。少し話しただけで、君がとても素敵に見えたらしいね」
茶化す様に、ニヤニヤと目線を向けてくるフィンへ睨みを聞かせてつつ、リヴェリアは咳払いをし、本題を話すように促す。
「揶揄うのはこれぐらいにしようかな。……謝罪は受け入れてくれた。彼の希望した願いは、僕個人で対応出来るから、これは任せてくれ。ファミリアとしての償いについては、神ヘスティアが来た時に決めることになった」
一瞬、ロキが嫌そうな表情を浮かべたが、フィンの睨みにより納得した目線を向ける。ヘスティア次第ではあるが、フィンの思い浮かべる借りの返し方を聞き、ロキは了承する。
時は少し遡る、ヘスティアがバイトに励んでいるとヘファイストスが戻ってきた。朝のことで、もう少し問い詰めてもバチは当たらないだろうと思い、近づいていく。しかし、普段通りに装っている見えるが、様子がおかしい様に感じる。
「ヘファイストス、どうしたんだい?」
恐る恐る話しかけるヘスティアを見て、いつもなら微笑ましく思えるはずが、今回に限っては申し訳なさが勝ってしまう。
「ごめんなさい。あの子に良い出会いをと、思っていたんだけど」
後々わかることだと、詳細は教えられなかったが、ルインに何かあったことは理解した。ヘスティアは問い詰めてしまいたくなるが、ヘファイストスを見て思い留まる。
何も言わないのならルインは無事だ。それなら、自分は待つだけだ。
ヘスティアは頬を叩いて気合を入れ直し、残している仕事を片付ける為にその場を後にした。ヘファイストスは、いつも通りの神友の様子に、強張っていた表情が少し柔らかくなっていくの感じる。
ロキファミリアの使いが訪れたのは、ヘスティアの退勤時間まであと少しの頃合いだった。手紙を受け取り確認すると、ルインの無事と一日預かることを知らせる内容だった。
また、明日の朝に面会を希望する旨も書かれている。思わず力が入り手紙がぐしゃりと潰れる。ヘファイストスの苦々しい表情から、何か問題があったのは明白だ。しかし、内容から丁重にルインのことを扱ってくれていることは伝わる為、嫌々ながらも了承することを伝言として伝えた。
翌日、ルインはいつも通りの時間に目が覚めた。外の様子を確認しても薄暗さから間違いないだろう。二度寝をするのは好まないので、どうしたものかと考える。昨日、アミッドに暫く安静にする様にかなり念押しされたが、稽古も出来なかったので、少しだけ体を動かすように決めた。
勝手に部屋を出て良いか迷ったが、部屋を散らかすのも気が引け、庭に出る程度なら大丈夫と勝手に判断して扉を開けた。廊下を見渡しても人の気配はなく、起こしても悪いのでコソコソと庭に向けて足を進めた。
邪魔にならなそうな場所を見つけて訓練を開始する。しっかりと準備運動を行い、体を温める。それが終わると、剣を持ち素振りを始める。元々習っていた型や、新しく教わった型を確かめるように振るっていく。素振りが終わり、少し休憩を入れる。タケミカヅチから習った瞑想を行い、集中力を高めていく。
「おい、そんなところで何してやがる?」
不意に声をかけられ、驚いてしまったが、慌てて声の方向を向く。昨日集まっていたロキファミリアの幹部陣にもいたベート・ローガの姿を見つける。抜け出したことについて言われていると思い、すぐに謝罪する。
「抜け出したことなんて興味ねぇ。俺が言いたいのは、雑魚がどれだけ努力しても雑魚なんだよ。無駄なことなんかせずに、迎えが来るのを待ってろ」
「確かに僕は雑魚です。でも、何もせずに助けて貰うのは嫌なんです」
「はん、それでも雑魚は何も出来るわけない。そんなことも分からねぇとは救い様もないな」
「それでも、しない後悔だけはしたくないんです。それに、ベートさんに心配して貰っただけでも無駄じゃなかったです!一級冒険者と話してもらえるなんて」
「なっ、心配なんてしてねぇだろうが!チッ、面倒くせぇ。……そう言えばババァがお前のことを探していたな、ついて来い」
満面の笑顔を浮かべるルインに、顔をしかめながらも有無も聞かずにベートは歩き始めた。慌ててついてくるルインから色々と質問を受けるが、面倒臭そうに適当にあしらっていく。
「あーー!ベートが昨日の子と一緒にいる!」
「珍しいわね」
双子のアマゾネスが気付き近寄っていく。ベートの嫌そうな顔に拍車がかかる。
「ねぇねぇ。いつの間に仲良くなったの?」
「ちげぇよ。ババァが探していたのを見つけちまっただけだ。もしほっといて、後からバレた時の方が面倒くせぇだろうが」
「あら、そんなこと言って仲良く話してたじゃない」
「それは、こいつが勝手に話しかけてきただけだ。……あとはお前らに任せるわ。最後まで付き合う義理はねぇしな」
対応に疲れたのか、ベートはそのまま来た道を戻っていった。そのからは、先程とは逆でティオナが質問責めをしていく。他愛のない質問が殆どであったが、時折戦い方やステータスについて聞かれることがあり、それについてはティオネの方が注意して止めてくれた。
話が盛り上がっていたせいか、騒ぎを聞いたリヴェリアが駆けつけてきた。
「ルイン探したぞ。様子を見に行ったら部屋に誰もいないとは。客人に何かあったと思ってしまうだろ」
「すみません。いつも通り早く目が覚めてしまって、勝手に庭で鍛錬をしていました」
「全く病み上がりだから控えるようにアミッドも言っていたと思っていたが、服が汗で濡れる程までするとは。先に汗を流すべきだな。案内する」
リヴェリアに指摘され、かなり汗をかいていたことを思い出す。言われるがまま、ついていくことにする。リヴェリアは、ティオネにフィンの服を借りて来るように伝え、その場を後にした。
汗をしっかり流して、次に案内されたのは食堂だった。少し大きいが、フィンから借りた服のおかげてさっぱり出来た。持ってきてくれたティオネが、なかなか渡してくれず、目が怖かったのは内緒だが。
ルインの身長はリリより少し大きいぐらい、ファンよりは低いです。