体の様子を確かめながら、ルインはダンジョンを探索する。普段より調子が良いような感じを受け自身の個人到達階層を更新するように五階層へと足を進めていた。
「ははっ!良い様だぜ。これであのアーデの野郎が溜め込んでいた分であれが手に入る。何人かいないみたいだが、分前が増えるから願ったり叶ったりだ!それにしても裏切られた白髪頭の最後が見られなかったのは惜しかったなぁ!」
ルインは、軽快に進めていた足を止める。アーデといえば、一回だけ出会ったベルの仲間の名前だったはず、そして白髪頭といえば。冒険者は物語のような存在だけでなく、弱者から奪っていく輩もいることは経験している。自業自得とは分かっていても、仲間が使われたのなら話は別だ。そう考える前には足が勝手に進めていた。
「すみません。今の話を詳しく教えて貰えないでしょうか?」
「ああっ!?なんだお前は?」
声をかけると一人が詰め寄って来る。ルインは経験上、相手に有利な状況を与えてはろくな事にならない事を知っていた。無慈悲に、来た人を斬り伏せ、相手の仲間へ攻撃する。突然のことで相手は反応に遅れ致命傷を与えていく。最後の一人に剣を向けて戦意を喪失させる。
「奪ったモノを渡せ、そうしたら見逃してやる」
ルインの剣裁きを見て、仲間がいないこともあり、リーダー格の男は鍵や金目のものを投げ渡した。ルインは、すぐに手に取らず男が逃げ去っていく様を見届けてから回収した。
ルインは、ベル達が心配になるが自分の実力では助けに入れないと判断してその場を後にする。ルインに襲われたソーマファミリア所属のカヌゥ達は泣く泣く下の階層に逃げ込む羽目となったが、奪った中で一番価値のありそうな魔剣だけは渡さずに済んでいた。いつか復讐をと考える。しかし、それよりも先に、手に入れなかった金の補填に走ることにした。
ルインは、換金所に向かい今日の収入を確認する。普段より少ないが返済分が無くなるのでかなり余裕が出来た。思えばオラリオに来て初めて自由に出来るお金を持った気がする。内緒の返済祝いとして何か美味しいものでも買ってみんなで食べようかとふと思い、街を散策する。
いくつか持ち帰り用の料理と食材を買い込みホームへと戻る。まだ誰も戻っていない様だったので買った食材から簡単にいくつか追加で作る事にした。初めにベルが帰宅した。少しボロボロだけど満足そうな表情から探索はうまくいったと思う。
「ねぇ、ベル。今日の探索で何かなかった?」
「え?何もなかったよ」
ベルは嘘をつくのが下手だ。ルインも、あまり人のことは言えないが、これ程分かりやすい人はいないだろう。だけど、間違ったことはしないと、信頼している。ベルが言わないなら何もなかった、それでいいと思った。
何気ない会話をしながら、今日回収したモノをベルに渡そうか悩んでいると、ヘスティアがバイトから帰ってきた。ベルとパーティを組んでいるなら機会はあるだろうと、ヘスティアに心配をかけない様に、晩ご飯の準備を始めた。
「ボクとベル君の為に買ってきてくれたのかい?」
料理を並べていくルインに、ヘスティアは感激する。少し冷めてしまったが、それでも大丈夫なものを選んでいるし、ルインの作ったスープなどは温かいので大丈夫だろう。ヘスティアのもらってくるジャガ丸君も美味しいが、ヘスティアばかりに負担を掛けるのも申し訳ない。たまに、一人で外食しているベルは少し心に刺さっていたが。
夕飯も終わりステータスの更新をしてもらうが余り上がっていなかった。ガレスの手合わせで多少はいつもより上がっていることを期待していたが、やはり手加減されていては意味がなかったのだろうか。反対にベルは、良く上がっている様子だったので、少し羨ましく感じてしまった。
ルインは、頭を振り雑念を払う。ベルの成長を妬んではいけない。普通は、レベルアップに何年もかけるものだから、同じファミリアに才能があるものがいることはとても嬉しい事なんだと。自身に納得させていく。ベルに負けないように、しっかりと努力していかないと、気合いを入れ直した。
ヘスティアは、ルインの更新を行う際に、緊張した面持ちで挑んだ。スキルの裏切りという項目に今回は当てはまる可能性を感じていたからだ。信頼している他派閥の神の紹介先が避けているファミリアへ連れて行く。それがどうなるのか。ルインにバレないように生唾を飲み込み、更新を行う。
意気込みとは裏腹に、いつも通り下がっているステータスだった。思わず息を吐いたが、安堵だったのか、溜息だったのかはヘスティア自身でもわからなかった。いつも通り、スキル発生前の上がり具合での数値を伝えて終える事にした。スキルについて未だ理解出来ていないが、どうかルインへ不幸なことが起こらないと願って。
翌日も、その翌日も、ルインは普段と変わらない生活をしていた。違いがあるなら、ロキファミリアの遠征に同行するヘファイストスファミリアに気を使い、遠慮して近寄らず、代わりではないが青の薬舗に向かったことが増えたぐらいだろう。初めのうち団員のナァーザから受けた殺気に苦手意識を覚えていたが、最近はそれもなくなり仲良くさせてもらっている。
ミアハに色々と学びながらも、ポーションだけではなく、増血剤や携帯食料など、冒険者に人気の無いモノをよく買ってくれる金ヅル……もとい理解者として接してくれるようになった。ミアハのお陰で、目利きが良くなってしまったのは悔しいが、それは別のカモを見つけたから気にしないが。
上層で集まるモノだけではあるが、無償で提供してくれるルインにナァーザも次第に親身に教えてくれるようになり、通常冒険者にとって必要のない知識を増やすことができた。
快進撃は出来ていないが、ギルドとして推奨している冒険者の在り方を実行しているルインに、担当アドバイザーのミィシャも安堵していた。探索の度に報告に来てくれて、まだ行くことのない階層の勉強を進めていき、怠惰な自分では思えない程のアドバイスが出来ていると思える程だった。想定外の質問を受けることが多く同僚のエイナの力添えがあってのことだが。
エイナの担当している同じファミリアの弟君と比べると現時点では見劣りするものの長い目で見れば成長してくれると信じられる為、ミィシャ自身でも信じられない程、真面目に仕事に取り組んでいたので、頼れる同僚から心配されてしまうことになるが。
原作にリリ裏切りイベントが何時頃かは書いてなかったと思うので昼過ぎあたりを想定してみると、ルインは間に合わないのでカヌゥ達と出会う羽目に。