ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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15.特訓

 翌日から、ルインはタケミカヅチファミリアとパーティーを組み、ダンジョン探索を開始した。ヘスティア達に話した時に、ヘスティアはとても喜んでくれ、ベルは対照的に寂しそうな顔をしていたのが印象的だった。

 始めは、普段ルインの探索している階層で立ち回りを見てもらい、色々とアドバイスを貰う。次はそれよりも深く潜り、似たような状況での桜花や命の立ち回りも見せてもらい、自分の時との違いを目に焼き付けた。それにより、ゆっくりだが、モンスターへの立ち回り方を身につけている実感を掴むことが出来ていた。

 ダンジョンに潜る際にサポーター用の大きいバックパックを持つことにして、ルインが戦う際には代わりに持ってもらい、それ以外はサポーターに回ることで、人数割しても普段より収入を増やすことができ、改めて感謝する。

 

 帰宅している道すがら、ルインは、今着ているフィンから借りていた服を眺め借りた日の会話を思い出す。

 

「すみません。服まで借りてしまって。すぐに洗って返しますので」

 

「いや、その服はそのまま貰ってくれて構わないよ。返しに来てくれても僕の元に来ない気がするんだ」

 

 あの時の達観したフィンの目を思い出し、少し笑ってしまう。フィンの服は普段着とはいえ、下手な装備より耐久力があった。その服の上から支給品の革鎧を身につけて、防御面で助けてもらっている。

 

 この服が擦り切れる頃には、冒険者として活躍してみせる。

 

 ある種の願掛けを、同族の英雄からの頂き物に乗せて、明日の自分へ希望を見ていた。

 

 その日からはルインは着実に到達階層を更新していた。Lv.2が二人いるパーティーだから問題にもならなかったが、それでも少しベルに近付けていることが嬉しかった。戦闘も日に日に安定していき、確かな手応えを感じていく。

 ある日、ベルから弁当がアイズに気に入って貰ったとヘスティアのいないところで教えてもらった。いつも、朝食はファミリアで食べると断られていたが、その日だけはかなり食いついてくれたそうだ。

 

 確か、ヘスティアの賄いのジャガ丸君と野菜を組み合わせたサンドウィッチだったが、よっぽどお腹が空いていたのだろうか?

 

 ベルはその日からは決まってジャガ丸サンドを注文してきたので、ルインは味付けを変えて飽きが来ないように気をつけることになった。

 

 数日後、ロキファミリアの遠征出発の日になった。ベルは早くからダンジョンに向かって行ったが、ルインは出発の様子を見に行っていた。ダンジョンの前で隊列を組み幹部陣が集まっていた。

 

「フィンさん、リヴェリアさん、ガレスさん、ティオネさん、ティオナさん、ベートさん!頑張ってください!」

 

 朝早くから並んで一番前を確保していたルインは、大声で声援を送る。気付いてくれたのか、フィンを筆頭に名前を呼ばれた各々が手を挙げて応える。ベートがそれを弄られている様子や、呼ばれなかったアイズが頬を膨らましていたのが微笑ましかったのか、集まっていた人々に笑いが生まれ、同様に声援を送る。ロキファミリアはその声援を受けながら、まだ見ぬ深層へ到達する為に足を進めた。

 

 ルインは見送りを終えると急いで桜花達との集合場所へ向かっていた。普段通らない路地裏へ向かい、人の気配が無いことを確認して足を止めた。

 

「あの、何か用ですか?」

 

「いつから気付いていた?」

 

「今日、ホームを出たところからですけど」

 

「初めからか。なら、話が早い。今日はダンジョンに行くな」

 

 ルインの言葉で姿を現した猫人の男は、余裕を崩さず指示をする。その様子にルインは目線を逸らさずに、真意を探る。

 

「ダンジョンに行ったら何かあるんですか?」

 

「行くなら、ここで殺す。それだけだ」

 

 ルインの質問にも淡々と答える。その姿に油断もなく、答えを間違えれば宣言通り行われるだろう。

 

「わかりました。その代わり、僕と模擬戦をしてください。それがダメでも、ダンジョンには行きません。どちらにしますか?」

 

 猫人の男は意味がわからなかった。どちらを選んでも行かないので有れば、デメリットの無い後者を選ぶのは当たり前だ。

 

「そんなの考えるまでも無いだろ。なんのメリットがある?」

 

「いえ、ただの駆け出し冒険者が【女神の戦車】に出会えたのでお願いしてみただけですので。でも、残念です。貴方のファミリアの方はとても真摯に対応してくれたので感動していたのですが、貴方は違うみたいですね」

 

 猫人の男、アレン・フローメルはバイザーによって隠されているが、苛立ちの目線をルインへと向ける。お前の女神への敬愛はその程度かと、言葉遣いとは裏腹に脅しをかけている。別にアレンにとって他派閥の者にどう思われようが関係ないが、ファミリアの者に聞かれた場合を考えるとそうではない。しかし、短略的に行動した場合にも、女神のお願いに背く行動になってしまう。

 アレンが、調査していた時のルインは純粋な少年だったはずだ。目の前にある一面までも調べきれなかった自分に内心悪態をつく。

 

「ちっ、面倒くせぇが思惑に乗ってやるよ。だが、一度だけだ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「……ここは目立つ。場所を変えるぞ」

 

 アレンは、人目の付きにくい場所へと案内する様に歩き出し、ルインはそれについて行った。

 

 途中、桜花達との約束を思い出し、断りを入れに寄り道をしたが、アレンは何も言わずに離れたところから待っていてくれた。

 目当ての場所に到着し、お互いが構える。アレンは、適当に相手をして満足させるか、一撃で終わらせるか考えていた。実力を測るには前者が向いているが、後者を選んだとしてもそれで終わるなら脅威にならない。早く終わらせたいこともあり、後者を選択した。

 アレンは、自他共に認めるオラリオ最速の動きでルインへ接近する。真正面に向かうと見せかけて横側から一撃を放つ。本気ではないが、単純なフェイントを加えた一撃は、並の冒険者では反応出来ない。

 しかし、ルインは見えるはずの無い一撃を受け流した。アレン自身も想像すらしていなかった為、驚きのあまり一瞬動きが止まる。受け流しの型から、そのまま斬りかかるが、アレンは槍の柄で防ぎ一度距離を取る。そこから、数度同じことを繰り返しまぐれでないことを確認する。次に、連撃に変え試し、フェイントを複雑に変えていく。それをルインは紙一重で捌いていく。一瞬でも遅れたらその瞬間に意識がなくなると理解し、目で追えない相手になんとかしがみつく。

 しかし、ルインの剣はついていけなかった。何度も続いた攻防についに折れてしまう。

 

「丁度良い、ここで終わりだ」

 

 アレンは、折れた瞬間に槍の動きを止め、構えも解く。

 

「あ、ありがとうございました」

 

 汗を大量に流し、肩で息をするルインと比べ、アレンは汗一つかいていない。おもむろにルインにヴァリスの入った小袋を投げ渡す。

 

「剣の代金だ。折ったまま帰られるのも目覚めが悪いからな」

 

 ルインが受け取るの確認するとアレンはそのまま去って行った。息が整い立ち上がると、受け取った小袋の中身を確認する。二万ヴァリス。折れた支給品の剣より数倍の金額が入っている。慌ててアレンの姿を探すが、当然見つからない。ファミリアに行って返すのも善意を踏みにじるような気がするので、黙って使わせてもらうことにした。




ルインのおかげで屋台でヘスティアとの遭遇がなくなるため、アイズへのヘイトは原作よりは低めになるのかな。

本来はミノタウロス戦参加のつもりだったのに、美の女神がそれを許す姿が想像出来なかったです。
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