ヘファイストスファミリアに到着し、低価格帯のコーナーに向かう。色々と試していき、一番手に馴染むものを選ぶ。予算の半分ほどの価格で済んだので残りは貯金することにした。
購入した剣の感覚を掴む為にダンジョンへ向かい、一階層で慣らしていく。ある程度慣れた頃合いで出口へ向かう。途中、遠征に向かったはずのアイズと出会った。何かトラブルがあったのか、急いでる様子だったので軽く会釈だけして通り過ぎようとする。
「ちょっと待って」
アイズの呼びかけに、足を止める。アイズの方を向き、言葉を待つ。
「……ベルが今、ギルドの治療室にいるから、……ごめんなさい」
「……アイズさんが怪我をさせたのですか?」
「違う。……だけど助けなかったから」
「ベルが助けを求めたのにそうしなかったのですか?」
「ううん。助けようとしたら……その、断られて」
「なら、大丈夫ですよ。アイズさんはベルを助けてくれた。だって、遠征中なのに運んでくれたんですから!僕と話すよりフィンさん達のところへ行ってください。ベルもそう思っているはずですよ」
「……ありがとう」
アイズは一言呟き、そのままダンジョンを下って行った。ルインから見て、走り去るアイズの顔色は少し明るくなっていたと感じた。何があったかはこれからわかることだ。ファミリアの規律を乱してまで、ベルを助けてくれたアイズに心から感謝して、出口へと急いで向かうことにした。
治療室にに着くと、ベルは静かに寝息をたてて無事だと理解した。傍にヘスティアが座って、慈愛の目線を向けている。ルインは、邪魔をしてはいけないと感じ、別室で治療を終えているリリの元へ足を運んだ。
「リリルカさんも無事なようで良かったです」
「ルイン様ですか。……リリは何も出来ませんでした」
ベルよりは傷は軽かったのか、治療は終えてはいるが、呆けているリリの姿が目に入った。
「リリルカさんは凄いですよ。何があったのか、僕は知りませんが、最後までベルを見てくれたんでしょう?」
ルインの言葉を聞き、リリは涙を流す。悔しい、ルインは言葉を聞いていないが、リリの思いを察する。同じ立場ならルインも感じるはずだから。
「僕は、リリルカさんが選んだなら、ベルにとって最善の行動だったと自信を持って言い切ります。貴方の覚悟も知っています。それに、ベルを一番見ているのが貴方だから」
リリにとってルインは苦手な存在だ。あの時に感じた違和感から、逃れることはないだろう。だけど、ルインから発された言葉にその感情は、抱かなかった。
このまま、落ち込んでいてはいけない。
リリは、ベルの為に決意を抱き、ルインへ感謝を想う。今はまだ、言葉に出来ないが、いつの日か笑顔で話せる時を願って。
ベルが目覚めたのは二日後だった。ルインはヘスティアに心配をかけないように日課をこなしていたが、どうしても元気付けることが出来ず、不甲斐なく思っていた。
やはり、ベルの存在がファミリアにとって必要なものだと感じてしまうが、先ずはベルの無事を祝うことにした。途中でリリも顔を出し無事を確認すると、ヘスティアと共に説教をし始め、病み上がりのベルの為に止めるように注力する羽目になったが。
翌日、改めてベルのステータス更新が行われ、Lv.2になったことを聞かされ、発展アビリティの相談を受けた。小さな頃から冒険譚を調べていたルインにとっても、聞いたことのなかった【幸運】を勧めたが最終判断はアドバイザーに聞いてからすることに決まる。
ヘスティアは何やら意気込んで神会へ足を運んでいたが、ルインにはその様子を理解出来なかった。
無事にベルの二つ名も決まった。ベルは不服そうだったが、特別悪くないものである。ベルはそれを聞いて、リリ達との祝勝会へ向かって行った。
「ルイン君、ベル君は成長期だからレベルアップが早かっただけで、焦ってはいけないよ」
「分かってますよ。あのアイズさんですら一年なのに、ベルはやっぱり天才ですね。僕も頑張らないと」
二人っきりになり、ヘスティアはもう一人の眷族を心配する。神友にすら相談できないレアスキルを持つベルと、神友に相談しても未だ分からないレアスキルを持つルイン。どちらも大切な眷族だからこそ、ヘスティアはルインの、幸せを願うしかなかった。
翌日から、ルインは桜花達との探索を再開させた。そろそろ中層への探索を視野に入れており、目標としてルインのサラマンダーウールの購入を目指すことになった。その日のうちに、目標額に達したが、未知の階層へ挑むのに物資が集まらないことを理由に、数日資金集めに励むことになった。
資金も貯め、中層に挑む日にヘスティアに伝えるとベル達も、中層に挑む日と合わさっていた。ベルより先に、桜花達との集合場所に集まり探索へと足を運ぶ。今回はサポーターとしてついて行っていたが、初めての十三階層でダンジョンの洗礼を受ける。怪物の宴に会い、大量のモンスターに囲まれてしまった。それにより、サポーターの千草が怪我を負ってしまい、パーティとして機能が働かなくなっていった。
「桜花さん、このままだと」
「わかっている。何か解決策を」
「桜花さん!同郷の、ファミリアの者と別の者を天秤にかけては駄目です。殿は任せてください」
ルインは押し寄せるモンスターの群れを前にして桜花へ叱咤する。パスパレードを行うことも考えられたが、ルインは桜花達にさせたくはなかった。その気持ちを察して、桜花は苦虫を噛みつぶす様に指示を出す。
「全員、撤退の準備を!予備のポーションや武器はルインのバックパックに一人ずつ入れていけ!それがすみ次第、ルインを囮に脱出する!」
「桜花殿!それは感服しかねる」
「うるさい!団長命令だ!ルインを生かす為にも俺達は生き延びて助けを求めなければならない」
桜花の悲痛の叫びに、誰もが反論することが出来ず、交代しながらルインのバックパックに必要物資を詰めていく。最後の詰め込みを確認して桜花は撤退の号令をかける。タケミカヅチファミリアの面々は直ぐ様行動に移し、上層へと駆け出す。すれ違う冒険者に助けを求めながら走るが、誰も対応してくれることはなかった。
「そこの冒険者!この先はモンスターパレードが待っている。速やかに避難しろ!もし、力に自信があるなら、俺達の仲間を、ルインを助けてくれ!」
その階層で出会った白髪頭の冒険者に声を掛けて桜花達は出口へと足を進めた。
初めて十三階層に挑んでいたベル達は突然掛けられた言葉に思わず足を止める。リリやヴェルフには関係ないが、同じファミリアのルインが窮地に立っていることがわかった。
「ベル様、リリはベル様が決めたことなら喜んで一緒に向かいます」
「ベル、無理言ってパーティを組んだんだ。どうしたいか、お前に任せる」
迷うベルに、仲間の二人が後押ししてくれる。だからこそ、ベルはルインを救うことを選んだ。駆けていくと一人大量のモンスターと、戦っているルインの姿が見えた。直ぐに手助けする為、駆け出そうとするが、ダンジョンが大きく揺れる。ルインを目前にして地面に穴が開き、ルインごとベル達は飲み込まれてしまった。
ベルが目覚めた時に目にしたのは、心配したリリとヴェルフの姿だった。リリの意見を元に十八階層を目指すことに決め、辛くも到達することが出来た。
ミノタウロス戦後、いくらサポーターと割り切っていても、リリをフォローしてあげる人がいてもいいかなと。
パスパレードは勧められた行動ではない為、ルインの中では悪側の行為と認識しています。ギルドの講習で、冒険者間の注意事項で習うものと仮定していますが……。
パスパレードが行われない為、ヴェルフやリリからのヘイトはなくなります。
ベル達の死闘は割愛で。