ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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 駆け出しの冒険者の初ダンジョンの話です。


2.初ダンジョン

 翌日、ヘスティアは、用事に出るベルと、ダンジョンに向かうルインを見送り、神友のヘファイストスのところへ向かっていた。借金返済の為のバイトをする為に。

 バイトを始める前にヘファイストスに二人目の眷族ができたことを自慢する。

 あのグータラ女神がこんなに早く二人目に出会えるとは。

 ヘファイストスは、嬉しそうに語るヘスティアに呆れながらも、頬を緩めながら話を聞いていた。

 

「それにルイン君は、夢見がちなベル君と違ってしっかりしてるし、故郷のみんなから貰った装備を大切にする良い子なんだ!昨日、整備しているところを見たけど、なかなか様になってたよ」

 

「はいはい、いつまでも貴方の話を聞いてたら仕事が始められないわ。貴方もいい加減働きなさい」

 

「ちぇー、まだ話し足りないから、ボクの仕事が終わった後は覚悟しとくといいよ!」

 

 ヘスティアは嬉しそうに、仕事場へ向かっていった。

 

 いくら新人とはいえ、神であるヘスティアをこき使う神友の眷族たちに憤りを覚えたり、途中でベルと担当アドバイザーのデートに遭遇したり、慌ただしく働いていた。

 

「神ヘスティアはこちらにいらっしゃいますか!?」

 

 突然のギルド職員の訪問があり、店員が対応していた。ヘスティアにもその声は聞こえていたので、そちらへと向かう。

 

「神ヘスティア、落ち着いて聞いてください。先程、貴方の眷族が瀕死の状態でダンジョンから出てきたところを保護しました」

 

 聞かされた時は、理解できなかった。ダンジョンに向かったのは昨日出来たばかりのルインだけだった。一人だから様子見のため一階層しか潜らないと言ったのはルイン自身だった。その言葉に嘘はなかったため、そう信じていた。

 

「ル、ル、ルイン君は、何か事件に?イレギュラーに?何があったんだ!?」

 

 思わず伝えに来てくれた職員に掴みかかっていた。

 

「ヘスティア、落ち着きなさい。そんなことよりも、まずは、その子に会いに行くべきでしょう?私もついていくから落ち着きなさい」

 

「そ、そうだ!ルイン君のところに案内してくれ!」

 

 全く落ち着けていないヘスティアをなんとか宥めながらも職員の案内で治療院に向かう。

 

 案内された部屋に入ると、傷だらけのルインがベッドで眠っていた。ヘスティアは泣きながら駆け寄るが、職員が申し訳なさそうに伝える。

 

「最低限の治療は終えています。これ以上となるとかなり高額な費用をいただけなければいけません。分割ではなく一括で。申し訳ありません」

 

 少しでも長く延命できるように最大限にできることをしてくれているのはわかる。ヘスティアも怒りをぶつけることはせずに、今なお泣きついている。

 ヘファイストスは、外され横に置かれている装備に目をやった。とても丁寧に整備されていた。鍛治士以外ができる最高の整備が。剣は中程で折れているが、丁寧に砥がれ、錆止めも何もかもが適切に行われている。鎧も、どれだけ愛情を込めて磨かれたのか、原型を留めていない姿を見ても知ることができる。

 

「費用はヘファイストスファミリアが全て持つわ。どれだけかかってもいいから、後遺症どころか、傷一つ残らないようにしなさい」

 

「へ、ヘファイストス。なんで?」

 

 酷い泣き顔のままヘスティアは、ヘファイストスの方へ顔を向ける。

 

「ええ、代わりにこの子には悪いけど、その剣と鎧は代金としていただくから」

 

「で、でも、それはルイン君の宝物で」

 

「ヘスティア、選びなさい。この子を生かしたいのか、その子の思いを守りたいのか」

 

「……わかったよ。ルイン君をお願いするよ」

 

 ヘファイストスは、それ以上なにも言わず、ルインから離れようとしないヘスティアを、無理矢理連れて自身のホームへと戻った。

 

 

「ヘファイストス、その剣と鎧は直せるかい?直せるなら、いくら借金してもいいからルイン君に返したいんだ」

 

「だからそれは無理と何回も言ってるでしょ」

 

「ヘファイストスがそこまで言うぐらいすごいものなんだろ?バイトも今まで以上に頑張るから」

 

 主神室に戻るや否や、ヘスティアは必殺の土下座を繰り出す。何度も頼み、断られる。いくら長期戦になったとしても、諦めるつもりはなかった。

 

「主神殿、ロキファミリアから合同遠征の依頼が来ているが……。なんだ?またヘスティア様の我儘に付き合ってるのか?」

 

「ええ、そうよ。今回ばかりはこっちも譲る気ないけど」

 

「それにしても、机の上にあるゴミはなんだ?壊れ具合から、ダンジョンにでも潜ったか。酔狂というより、よほどの死にたがりか」

 

「いくら君とは言え、その言葉は許さないぞ!剣も鎧も、壊れていても大切なものなんだ」

 

 書類を持って現れたヘファイストスファミリア団長、椿・コルブランドの言葉に、ヘスティアは烈火の如く怒る。

 

「これが剣と鎧?こんなものゴブリンすら切れまい。そこらで売ってる安い包丁の方がよっぽど切れる。鎧ですらないこれに関しては、ただ動きを悪くするだけのもの。子どもの遊戯にしか使えぬよ」

 

「椿君、それは本当なのかい?」

 

「持ち主を助けるどころか邪魔をするようなものは武具とは言えまい。……ただ、大切にされていたことはわかる。これが手前の作った武具だったとしたら鍛治士冥利に尽きる程だ」

 

 ヘファイストスも椿の言葉に同意する様に静かに頷く。すると、扉が開く。

 

「失礼致します!ルイン・マックルー氏が目を覚ましました。受け答えも問題無く、事情聴取も滞りなく終わりました。ただ、かなり落ち込んでいる様子ですので、迎えに来ていただけたら」

 

「こうしちゃいられない!ヘファイストス、ボクはルイン君のところへ向かうぜ!」

 

 ギルド職員の報告を聞き、ヘスティアはルインのところへ走り去っていった。

 

「はぁ、相変わらず落ち着きがないわね。それで、聴取の内容を教えてくれないかしら?他派閥のことだけど、治療費を出したのは私だから聞くぐらいはいいでしょ?」

 

「かしこまりました。ルイン氏によると、到達階層は1階層、ゴブリンを八体ほど討伐し、その次の戦闘で武器が折れてしまい、なんとか、折れた武器で倒せましたが、相手が三体だったこと、折れた時のショックもあり、重傷を負ったとのことです」

 

「本当にゴブリンを倒していたの?」

 

「最後の三体に関しては不明ですが、魔石を八個所持していたので、倒していたのは事実だと思われます」

 

「そう、わかったわ。ありがとう」

 

 職員は、報告を終え戻っていった。

 

「主神殿、あれでゴブリンを倒すなど手前でも難しいぞ。否、正確にはあれを折らずに八体を倒すのは」

 

「そうね、一体は倒せたとしてもそれで必ず折れるわ」

 

「ええい、手前も興味が湧いた。悪いが、手前も会いに行ってくる」

 

 椿は、ヘファイストスに仕事を全て押し付け、返事も聞かずに部屋を出ていった。




 初ダンジョンで命を落とすものも少なくないそうなので、ベル君と違い大変なことに……。
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