ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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20.救出

 

 フィン達、ロキファミリアの面々の前に傷だらけのルインが立っていた。虚な目で、何かを呟き続けている。体から発している赤い光が炎のように瞬いている。

 明らかに様子がおかしいルインに、フィンはゆっくりと近づいていく。一歩進めることに、親指の疼きが強くなる。そのため、自然と持っている槍を強く握りしめてしまう。

 おそらく、ルインの間合いに入ったのか。フィンが声をかける前に、ルインは突然斬り掛かった。フィンは、反射的に弾くことは出来たが、親指の疼きがなければ油断してそのまま斬られていただろう。

 ルインの動きは、前回見たものよりも遥かに速く、鋭かった。ルインを正気に戻すため、剣劇を弾きながら何度も声をかけるが、その甲斐もなく攻撃は苛烈さを増していく。

 何度も試したが、説得を諦め気絶させる為に攻撃を加えることにする。しかし、槍の特性を把握しているのか、有効打を与えられない。それどころか、フィンの方がいくつか浅い傷を負ってしまう。その様子を見て団員達は武器を構えるが、フィンは手で制す。

 

「すまないが、ここは任せて欲しい」

 

 フィンは体の傷を気にすることなく槍を構える。ヘスティアへ甘い提案をしたからこそ、ルインを彼女の元へ返さないとならないから。

 以前戦った赤髪の怪人と同等の危険度と認識して、槍を振るう。しかし、槍を振るえば振るうほど、対処されればされるほど、ルインの精度は上がっているように感じる。

 

「……ケテ……、ミステ……ナイデ」

 

 フィンは敢えて聞かないようにしていたルインの呟きを耳にしてしまう。その一瞬で、迷いを生んでしまった。ヘスティア達へ淡い期待を持たせてしまったことや、友人として助けに行かなかったことへの償いの為、一人で立ち向かったことは、ただの自己満足だったのではないか。初めから複数で対応すれば、苦しませずに済んだのではないか。

 その一瞬の葛藤を見逃すはずがなく、ルインはフィンへ斬り込む。咄嗟に槍で防ごうとするが、ルインの剣は槍ごとフィンを切り裂いた。

 

 強烈な痛みを受け、反動で後ろに倒れていくフィンの目にはとどめの一撃を繰り出そうとするルインの姿が見える。他のロキファミリアの面々も、斬り伏せられるフィンを見て、思わず体が固まってしまう。

 誰もが、フィンの死を予見してしまった。しかし、フィンは追撃を受けることもなく、そのまま地面に倒れる。慌ててルインの姿を探すと、壁に打ちつけられていた。気絶をしているのか、先程まで纏っていた赤い光も消え、ピクリとも動かない。戦闘が終わり安心し、治療の為に固まっている体を動かそうとする。

 

「おい。フィン、お前はこんな雑魚相手にやられるようなやつだったか?随分と体が鈍っているみたいだな。それに、誰一人動けないなんて、ロキファミリアも随分と腑抜けの集まりだったか。五十九階層の時のお前らはどうした!……チッ、腑抜けは仲良くゆっくり戻りな。俺は先に戻る」

 

 唯一動けたのはベートだけだった。初めからベートの耳にはルインの呟きが聞こえていたが、フィンが対応するなら大丈夫だろうと踏んでいた。しかし、なかなか攻めきらず傷ついていくフィンや、苦しんでいるルインの様子を見て違和感を感じていた。

 その姿が、自身が嫌う弱者を虐げる姿に被り、怒りを覚える。さらに、フィンが斬り伏せられたことに我慢の限界がきた。反射的に体を動かし、ルインを蹴り飛ばす。怒りのあまり罵倒してしまうが、そのまま、出口へと一人足を進めた。

 

「あの野郎、団長に向かって適当なこと言いやがって」

 

「ティオネ、いいんだ。ベートの言ったことは間違っていない。到達階層を更新してどこか慢心していたのかもしれない」

 

「団長がそう言うのなら……」

 

 応急処置を終えたフィンは、怒りに燃えるティオネを落ち着かせながら、ルインの容態をリヴェリアに尋ねる。

 目立った大怪我はなく、エリクサーにより外傷も治療を終えた。目が覚めないのも疲労が原因だろう。

 

 ティオネがフィンを、ガレスがルインを背負い、治療をさせるために地上を目指すため、ロキファミリアは改めて進み始めた。

 

 十三階層への階段を上ると、複数の冒険者パーティに出迎えられる。

 

「おい、本当にロキファミリアが戻ってきたぞ!これで安心して中層を探索できる」

 

 一人の冒険者が周りに呼びかけると、それに応じて安堵の声が聞こえてくる。ロキファミリアはその様子を不思議に思い初めに声を上げた男に尋ねることにする。

 

「すまないが、状況がわからないから説明をしてもらえると助かるんだけど」

 

「げっ、【怒蛇】と【勇者】!?いや、十四階層でモンスターパレードと階層の崩壊があったって聞いて、イレギュラーが重なっているからロキファミリアが遠征から戻ってくる時に鎮圧してくれるからそれまで封鎖になっていると聞いただけだ」

 

「それは誰から聞いたのかな?」

 

「そこで数人組のパーティが数日前から降りようとしていた奴らに声かけしていて。そういえばそいつらの姿が見当たらねぇな」

 

 フィンはその男に礼を伝え、ティオネに指示して地上を目指すことにする。リヴェリアやガレスを見ても知らない様子で、ベートが解毒薬を運んできた際にも報告を受けていないので、ロキの判断でもないことはわかる。

 まるで、ルインの救出を拒むように感じる動きを知り、フィンはあの時にヘスティアへ伝えたことが間違っていたことを理解した。

 

 その後は、何事もなく無事に地上に戻ることができ、フィンとルインは、すぐにディアンケヒトファミリアへ運ばれ、即日入院することになった。フィンは、ホームへ戻るリヴェリアにロキを呼んで欲しいことを伝え、アミッドにルインの方を優先するように頼み、体を休めるようにする。




フィンの予想が外れたのは、何者かの策略によるもの。下層からは階層主により、上層からも妨害が。
冒険者が遭難しているルインを見つけたら、助けてファミリアへ費用請求して儲けようとすると思います。
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