ルインは、ロキファミリアを出た後、タケミカヅチファミリアに向かった。
「ルイン殿!ご無事でなりよりです」
命を筆頭に、みんなルインの退院を祝ってくれる。そんな中、桜花だけは思い詰めた表情で、少し離れたところから様子を見ている。ルインはそれを見て桜花に近づいていく。
「ルイン、すまなかった」
「何がですか?桜花さんは間違ったことしてないですよ」
「いや、それでも他にも方法があったはずだ。お前でなく俺が殿になるべきだった」
「そうかもしれませんが、結果的にみんな無事だったから、それでいいじゃないですか。たらればを話したらキリがないでしょう?」
「だが、しかし……」
「もうこの話は終わりです。そうだ!体の調子を確かめたいので軽く手合わせお願いします!」
なかなか納得しない桜花に、ルインは思いついたまま提案する。それに、桜花もルインらしいと思わず笑みを溢し、稽古場へと向かった。
互いに木刀で打ち合い、ルインの調子を確かめる為に、徐々に激しさを増していく。ルインも感覚のズレを確かめて修正する。ある程度理解できてたところで、桜花の木刀を弾き飛ばし、そのまま木刀を首元で止めて打ち合いは終わった。
「ありがとうございました。お陰で感覚のズレも修正出来そうです」
「そうか。レベルアップしたんだな。もう、俺では相手にならんぞ」
ルインも以前より、体を動かすことが速くなっていることが体感できて嬉しかった。笑顔でお礼を言うと他の面々も触発されたのか、次々と相手を希望されるが、命や千草に無理をさせるなと怒られて大人しくなっていた。
「それにしても、レベルアップまでするなんて流石ですね、ルイン殿!同じファミリア内で最短記録があっさり更新されたのは未だに信じられませんが」
「更新といっても数日ぐらいですけどね。タケミカヅチ様に稽古をお願いして良かったです。それがなかったら絶対無理でしたから」
ルインの努力を知る命達は、ルインのレベルアップを改めて祝福した。そこから、話は盛り上がっていき、全員で楽しく騒いでいるとバイトからタケミカヅチが戻って来た。
「そうか、ルインもレベルアップしたか。よし、みんな異論がなければ、これから簡単な宴をしよう!命や桜花の時もやったからな。他派閥でもルインなら問題あるまい」
喜んでいる眷族達を見てタケミカヅチは提案すると、満場一致で行うことになった。主役のルインはそのまま待つように言われ、他の面々が買い出しに向かっていく。タケミカヅチも、ヘスティアやベルに声を掛けに出かけていく。
「いやあ〜、悪いね。ボク達まで誘ってもらって」
「僕まで読んでもらって良かったんですか?」
「ベル君!ボクの神友がそんなケチ臭いこと言うわけないだろ!今日はタケに甘えさせてもらおうじゃないか」
「それは、神様が言っちゃダメなんじゃ……」
しばらく待っていると何もしないことに慣れていないのかソワソワしていたルインの耳に聞き馴染みのある声が聞こえた。タケミカヅチに案内されて、ヘスティアとベルが到着した。
ベルがヘスティアに代わりタケミカヅチに改めてお礼を言って、ホームにあった食材を調理場まで運ぶ。
その後、完成された料理が次々と運ばれ、簡単ながらもルインのレベルアップ祝いが催された。ルインの主神ということで、ヘスティアが乾杯の音頭を取ることになったが、ルインについての話が長くなり、タケミカヅチが途中割り込んで音頭を取って開始され、初めから笑いが絶えなかった。
「ルインとホーム以外で一緒にいるのってあまりなかったね」
「そういえばそうだね。同じファミリアなのに不思議だね」
少し経ってから、一人で食べているベルを見つけてルインが隣に座る。少しお酒が入っている為か、普段話さないようなことを会話していく。
「……実を言うとね、ルインがパーティを組んだって話を聞いた時悔しかったんだ。僕が何度も誘っても組んでくれなかったのにって」
「それは……」
「ううん。ここに来てやっと分かったんだ。今みたいな当たり前なことが出来てなかったのかなって」
「そうだね。今度はファミリアで開きたいかな。ベルのレベルアップ祝いもしてなかったし、遅くなったけど近いうちにヘスティア様と僕達でやろっか!その時はベルのパーティを呼んで」
お互い冒険以外で接していなかったと気付き、たまにはゆっくりと話すことが悪くないと感じていた。そのまま、ベルと談笑していると、タケミカヅチがルインを見つけ自分ところに連れていった。
「すまない。隣いいか?」
再び一人になったベルに桜花が酒を持って訪れた。ベルは了承し隣に座るとベルのコップに酒を注ぐ。
「十八階層ではあまり話せなかったからな。俺達の助けを聞いて崩落に巻き込まれていたと聞いて、遅くなったがすまなかった」
「そんな、頭を上げてください。同じファミリアの仲間の名前を聞いたら誰でもそうしますよ。それに結局何も出来ませんでしたし」
「いや、無力に逃げることしか出来なかったら俺からしたら、向かっていってくれたことが嬉しかったんだ。何かあったら言ってくれ。できる限り協力できたらと思っている」
握手を求められてベルは応じる。ファミリア同士での交流もそういえば初めてだったと思い、探索以外での冒険者としての活動ができ嬉しく感じる。
タケミカヅチやヘスティアに無茶苦茶されているルインを眺めながら、桜花からファミリアの仲間を紹介される。
ようやく宴に参加できたと思え、口に含んだ酒の味は美味しかった。
翌朝、ルインはいつもより少し遅めに目が覚めた。昨日飲み過ぎてしまったせいか少し怠く感じる。ベルとヘスティアもまだ起きそうになかったので少しゆっくりしてから朝食の準備を始めた。とは言っても昨日の余った料理を持ち帰っていたのでそこまで時間もかからないが。
手早く終えて、掃除や洗濯も済まし、ホームの前をホウキで掃いていると近所の人達が声を掛けてくれる。心配してくれてたみたいで、退院祝いに色々とお裾分けしてくれた。
「そんな、悪いですよ」
「なぁに言ってんだ!いつも手伝ってくれるルインの退院だ。これくらいはさせてくれねぇと。なぁみんな!」
集まった人達は、その言葉に賛同してどんどん物を渡してくる。手が塞がり受け取れないのを見ると教会へ置いていく。運びおえるとルインが礼を言う前に解散され、一人佇んでいた。
起きてきたベルやヘスティアに驚かれるが、説明すると二人揃って笑い出しルインが余計に混乱していた。
アミッドから数日間は安静にする様に言われていたので、ルインはあてもなくオラリオの街を散歩していた。初めは、よく行く出店通りを歩いていたが、ルインを発見した店主達から今朝と同じような目に合い、物を渡される前に避難することで断ることは出来た。
おかげで、あまり行かないようなところを歩く羽目になってはいるが。
「やあ、君がルイン君かな?」
「そうですけど、貴方は?」
「いやぁ、はじめましてだね。俺はヘルメス。ヘスティアの神友さ」
ルインは、不意に声かけられ振り向くが、見覚えのない男神の姿があった。そのわざとらしい笑顔を見ると頭がズキリと痛んだ。
黒いゴライアス戦でベル達と桜花達は共闘してはいますが、ルインを未発見のこともあり、ピリついているので会話はあまりない為、まともな会話はここが初めてです。