ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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26.火蜂亭

 

 ルインはいつも通り早朝に目を覚ました。変わらず痛む体に、ポーションを飲んで癒しを与える。本当は寝る前に飲むべきだったが、昨日はそんな余裕もなかった。

 ヘスティア達に心配を掛けないように普段通りの行動を心掛ける。あらかた終わりかけた頃に、珍しくヘスティアが起きてきた。

 

「ルイン君、昨日は早く寝ていたみたいだけど何かあったのかい?」

 

「いえ、病み上がりで歩き疲れてしまったみたいで……」

 

「それならいいんだけど……。何かあるなら相談してくれよ」

 

 笑顔で答えるルインを見て、嘘は言っていないみたいなので安心する。何故か、ヘスティアはどこか嫌な予感がしてしまい、今日はホームで安静にする様に伝える。ヘファイストスに理由を話せば、多少の無茶でも休みにしてくれるだろう。

 しかし、ルインに夕方に予定があると断られてしまい、バイト時間の変更を伝える為にヘファイストスの所へ走っていった。

 

 少ししてからベルが起きてきた。ヘスティアが少し出かけていることを伝えて、先に朝食を済ますことにする。

 

「ルイン、今日装備を補充しに行くんだけど一緒に行かない?」

 

「ごめん、病み上がりなのに昨日無理しすぎたみたいで、ヘスティア様から夕方までホームで安静にする様に言われてて」

 

「だから、早く寝てたんだ。それなのに、いつも通り家事を任せてごめん。無理しないで寝てていいんだよ。ルイン程じゃないけど僕だって家事は出来るから」

 

「しっかり寝たから大丈夫だよ。本当に無理そうだったらお願いするね」

 

 心配そうなベルに、ルインは安心させるように答える。今日はリリ達との予定があるので、明日以降は相談してルインの負担を減らすようにしなければ。ベルは、普段通りに笑っているルインを見て一人決心する。予定の時間が迫っていたので、ギリギリまで待って戻ってきたヘスティアと交代するようにホームを後にした。

 

 その後は、ホームでゆっくりと過ごす。何かしようとする度に、ヘスティアが代わりに動くので、少し落ち着かない様子でルインはソファーに座っていた。

 

「いいかい、ルイン君。今日は、出かけるまではボクに任せてくれていいんだ!こう見えてボクだってやる時はやるんだぜ」

 

 胸を大きく張るヘスティアに、ルインは申し訳なさそうにお願いすることになった。自信満々に家事に取り組むヘスティアを見ていると心休まる時は無かったが、不思議と胸が暖かく感じられる。

 ルインがする時の数倍の時間をかけて、見事家事を終わらせたヘスティアは、いつも気にしていなかったルインへの負担に気付き、ベルと相談して分担しなければと、改めて考えることになった。

 

「そうだ!今度ベル君も含めて三人でご飯でも食べに行こう」

 

 ヘスティアファミリアの財政状況は豊かとは言えないが、貧乏では無くなっていた。この前のギルドからのペナルティは、ヘルメスがヘスティアの分も支払うことを提案し、冒険者依頼の報酬も全員が辞退した為貯蓄を削ることがなかった。ベルとルインの頑張りや、ヘスティアのバイト代で少しずつだが、貯蓄も増えたので、たまに贅沢する分の余裕はある。

 

「そうだ!最近ベル君の行きつけの店とかどうだい?ボクも行ったことないけど凄く美味しいみたいだしね。値段も結構するみたいだけど、たまにする贅沢には丁度いいさ」

 

 ヘスティアは、あまり飲食店のことに詳しくなかった為、たまに話題にあがる豊饒の女主人を、あまり考えずに提案した。目を瞑り三人で楽しく食事している光景を想像して、ついニヤニヤしてしまう。中々、返事が返ってこないので目を開けると辛そうな表情のルインがいた。

 

 その姿を見てしまったヘスティアは、無意識にルインを抱きしめる。自分の言葉の何が傷つけてしまったのかはわからないが、今ルインを離したら取り返しがつかなくなる気がしてしまった。

 

 暫くすると、ルインも落ち着いた。ヘスティアは恐る恐る尋ねてみると、ヘルメスに無理矢理連れて行かれトラブルを起こしてしまったらしい。警戒していたヘルメスが退院直後のルインに出会わせてしまったことに怒りを覚えながら、それを悟られないように店選びは先送りにして話題を変える。

 

 このことはバイトの時にヘファイストスに相談することにして、ルインの笑顔を取り戻す為に楽しい会話をすることにした。

 

 夕方になり、ルインはベートとの約束の為にロキファミリアへ向かった。黄昏の館に到着した時にはベートは門で待っていた。待たせたことを謝罪するが、ベートは気にした様子も見せず酒場へと進んでいく。慌ててルインも追いかけるが、分かりづらい優しさに思わず笑ってしまい、軽く小突かれてしまうが。

 

 ベートに案内されて着いたのは火蜂亭という酒場だった。ベートは慣れた様子で奥の席を陣取り、ルインもそこに座った。本来はファミリアの行きつけでもある別の店に行くつもりだったが、ルインを見た時に、何故か店を変えることにした。

 適当につまみを頼み、安めの酒を二人で飲みながら特に会話もなく飲み進めていた。

 

「……で、何があった?」

 

「えっと、何のことでしょうか?」

 

 先に沈黙を破ったのは、ベートだった。一昨日ファミリアで会った時よりも嫌な目をしているルインへ乱暴に質問する。ルインも身に覚えがないのか、話したくないのか、首を傾げ質問に答えなかった。

 

「……何もないならいい」

 

 それだけ呟くと、酒を飲み会話をやめる。

 

「僕からも一つ聞いていいですか?もし、ベートさんが、ベートさんが原因でファミリアに迷惑をかけることになったらどうしますか?」

 

「あっ?俺ならテメェのケツぐらいテメェで拭ける。だがなぁ、雑魚のお前はそれすら出来ねぇ。強者にゴマすって媚びてろ」

 

 面倒くさそうにベートは言い放ち酒を飲み続ける。ルインもそんな様子に苦笑いを浮かべながらも飲みに付き合うことにした。

 

「おいおい!どこぞの兎が一丁前に有名になったとか聞こえてくるぞ!」

 

 別の席から男の嘲笑うような声が聞こえる。そちらの方に目を向けるとベル達が見えた。どうやら他派閥の冒険者に絡まれているようだ。本当は訂正してベル達の味方に向かいたかったがベートに迷惑かけるわけにはいかず、必死に耐えるしかなかった。その後も、ベルへの暴言からルインの暴言に変わるもベル達も耐えているから、ルインは聞こえる言葉を無視し続けた。

 

「はん!威厳も尊厳もない女神のファミリアなんてたかが知れているよな!ズルするような落ちこぼれの女神だから眷族も腰抜けだな!」

 

 無視してはいけない言葉が聞こえた。ルインの視界が赤く染まるような感覚に蝕まれる。誰にも気付かせないような速さで剣に手をかけ言葉を発したモノへ飛びかかろうとする。

 しかし、ルインは押さえられてしまい動くことが出来なかった。

 

「……おい。お前が摘み出されたら誰がコレを払うんだ?」

 

 ルインを止めていたベートが面倒臭そうに話しかける。ルインは聞く耳も持たず拘束を抜け出そうともがくが、それは叶わない。その後、ベル達も耐えられなかったのか酒場が騒がしくなっていく。喧騒を聞きながらルインは自分の無力さが悔しくなり、足掻く力も弱くなっていく。抵抗しなくなったルインを見て、ベートは拘束を解き、乱闘をしている集団に向かって空になったジョッキを投げつける。それをくらったのは件の発言をしていた小人族だった。

 突然の横槍で両者とも動きを止めて目を向ける。

 

「おい、雑魚共が調子に乗って何を騒いでやがる。折角の酒が不味くなったんだが、どうしてくれる」

 

 突然の第一級冒険者の言葉に、絡まれたらバツが悪いのか片方のグループは足早に店を出て行った。

 柄にもないことをしたと、一つ溜息を吐きルインの方へ目を向けると、悔しく震えている姿が目に入った。

 

「これで飲みはしまいだな。……おい、ルイン。飲みたりねぇから付き合え」

 

 ルインの返答も聞かずに強めの酒を二つ頼む。無理矢理にでも飲ませて二人の飲み会は再開した。しっかり酔っ払って忘れさせるぐらいしか、ベートにはルインにしてやれることが思い付けなかった。

 




原作でもヘルメスは目的のためなら手段は選びませんが、罪悪感は持ち合わせていると思いますので、ペナルティ被るぐらいはしそうかと。本人の知らぬところでやるので意味なさそうですが。

ベートの乱入は原作より早くベルがヒュアキントスにやられる前に解散しています。

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