ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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32.猛者

 

 ルインは、オッタルへ剣を振るうが全く通用することなく、全てが空振りとなる。息が荒く、大量の汗をかいている。しかし、相手しているオッタルは始めた時と変わりなかった。もう、いくつ振ったかもわからない。千や二千は軽く超えているだろう。剣を握る手も次第に力が込めにくくなっていた。

 

「……お前の覚悟はそれだけか?」

 

 重々しく尋ねるオッタルに、ルインは疑問を問うように目線を向ける。

 

「お前の覚悟がそれまでなら、やはり噂通り主神の品格はたかが知れている」

 

「……っ、取り消せ!」

 

 オッタルの言葉に反応してルインに力が戻る。今までよりも鋭い一撃を繰り出すが、大剣により防がれてしまう。初めて避け以外の行動を移していたが、それに気付く様子もなくルインは剣を振るう。オッタルは冷静に力量を確認するように剣撃を受ける。

 

「所詮、この程度か。やはり、主神の程度は知れているようだな」

 

 オッタルの一言をルインは許せなかった。自分のせいでヘスティアの面目を潰すことがあってはいけない。剣を握る力は強くなるが、訂正させるために必要な要素を見つけられない。弱者でしかない己を恨むことしか出来なかった。だからといって、何もしないことは選べない。しかし、剣は全く通用しない。

 

 今までの訓練もレベル差の前では意味がないのか。

 

 自分自身で今までの努力を否定したくなる想いが、否定できなくなる。ルインの視界が黒く染まっていく。だけど、それはヘスティアへの裏切りだ。それこそが許してはいけないことだ。

 

 身に覚えのない既視感が手に力を取り戻してくれた。刃に嘆きを込める。目の前の強者にヘスティアを認めさせることが出来なければ一生役に立つことも許されない。赤く瞬く刃を改めて構える。

 

 命を燃やせ。

 

 相手がオラリオ最強など関係ない。あの暖かい女神を蔑む目を許してはいけない。ルインは再び剣を振るっていた。

 

 変わりなくオッタルはルインの剣に対応していたが、剣を受ける度に、少しずつ鋭さを増すルインの剣に驚く。それは僅かな誤差が続く程度だ。しかし、いつかは己に届きうると、確かに感じでしまった。オッタルは、女神が指示を出してきた時を思い出していた。

 

『あの子の力量を測って貰えないかしら?』

 

『あの者は興味を無くしたのでは?』

 

『ふふ、あの時は私も気付けてなかったのよ。でも、あれは地上の子の可能性の一つ。それが、本物かどうかは、私が見届けなければならないわ』

 

『それが、女神の願いなら』

 

『ええ、それを確認できるのは私の子にしかできないもの。ああ、ヴィーナスやアプロディーテにも見せてあげたかったわ』

 

 あの時は深く理解できていなかった。しかし、今なら理解できた。確かにこれは自分達にしか理解できない。オッタルは、久しぶりに自分が斬られていることを把握しながら笑みを浮かべる。目の前の弱者は確かに強者になりうる。ならば、最強を名乗ることを女神に許される自分が、泥を塗ることは出来ないと、オッタルも少しずつギアを上げていった。

 

 ルインとオッタルの戦いは数日間にわたった。どちらかが血が足りなくなる度に休憩を入れたが、それ以外は剣を振るっていた。終盤になると、決して格下に向けてはならない力を振るうオッタルに通路を封鎖していたフレイヤファミリアの面々が止めようとしてしまう程に。しかし、それに応えるルインを見て足を止めていた。

 

 二人の戦いに思わず見惚れてしまっていた。

 

 強者と弱者の戦いはあまりに美しかった。血に塗れ、汗や土埃により汚れているが、その様子を美しい以外の言葉で表せなかった。しかし、終わりは唐突に迎えた。お互いの剣が砕け散り、呆気なく終了することになる。

 

「先に述べたお前が敬愛する女神を蔑む言葉を撤回する。我が女神に近いと認めよう。だが、俺がいる限り我が女神の方が上だが」

 

 オッタルは、ルインに向けて言葉を送った。ルインも汚名返上でき、安心する。オッタルが去る姿を見た後に、どれくらいの時間が経ったかを、まだ残っていた人に尋ねる。

 戦争遊戯に間に合うことがわかり安心するが、フレイヤファミリアの団員にダンジョンの外に連れてもらうことを頼み、ベルとの合流を行うことにした。

 

「それで、貴方から見たあの子はどうだった?」

 

「女神の御慧眼の通りでした。若干、使い慣れていないスキルに頼りすぎているように感じますが、あの歳では妥当かと」

 

「貴方がそういうならそうなのでしょう。ねえ、久しぶりにステータス更新をさせてもらえる?」

 

「しかし、私のステータスは……」

 

「何故か、しなければならない気がするの。女神の勘と言えばいいのかしら」

 

 上品に笑うフレイヤを見て、オッタルも従う。Lv.7になりもう七年も経つ。殆どの基礎アビリティも上限に達して以来、更新を長らく行なっていなかった。少し懐かしさを覚えつつ、作業に取り掛かる。

 

「ふふふ。やっぱり更新して良かったわ」

 

 嬉しそうにフレイヤは笑い、ステータスを写した紙をオッタルに手渡す。その内容に驚き、珍しく目を丸くする。

 

「ステータスが全て0に?」

 

「でも、全く違和感はない、でしょ?」

 

「はっ、その通りです」

 

「そうね、あの子のスキルがどういうものかは実際に見ないと分からないけど。そうね、擬似レベルアップと呼べばいいのかしら」

 

 楽しそうに説明していくフレイヤを見て、あの少年に感謝をする。初めは女神の指示により動いてはいた。しかし、剣を交えてから少年の武に対する想いも知ることができた。敬愛する女神こそ違うが、信じる道を進んで欲しく思える。

 

 どうか、神々の気まぐれに巻き込まれないように。

 

 オッタルは、自分らしくない言葉に少し笑ってしまうが、女神を楽しませるためにも自身の強化をどうするか考えにふけることにする。




あまり触れてはいませんでしたが、実力変わらずステータスが下がることは、レベルアップ時に似ているということですね。ロキが気付かないのはファミリアのこと以外にも闇派閥や新種、ヘルメス、ルインなど考えなければいけないことが多いため。フレイヤが気付けたのは魂の色を見れることなどが、挙げられます。
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