ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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35.戦争遊戯

 

 まもなく、戦争遊戯が開始される。ヘスティア陣営も緊張感に包まれていた。先に敵陣に潜入しているリリを信じて開始の合図を待つ。

 

『今ここで、戦争遊戯の開幕を宣言する』

 

 力の行使が行われ、空から神の声が聞こえた。

 

 リューが先陣切って、魔剣による攻撃を放っていく。城壁が破壊され、そこを守るためにアポロンファミリアの団員達が現れる。リリのおかげだろう。通常なら向かわせることのない量がリューを取り囲む。ベル達は、リューにそれを任せ、隙をついて城内へと進んでいった。

 

 命の魔法による足止めは成功し、ベルとルイン、ヴェルフはヒュアキントスがいる塔へと向かう。

 突然、ルインは足を止めた。ベルは、周囲に人影もないこともあり、不思議に思いながら同じく止まる。

 

「ベル、先に行って。後ろに結構な数がいるみたい。このままだと追いつかれる」

 

「なら、全員で相手した方が」

 

「目的を間違えたらダメだよ。ヴェルフさん、ここからは任せたよ」

 

「……ああ。ベル、行くぞ」

 

 ルインの頼みに、ヴェルフはベルを連れ前に進んでいった。剣を抜き、ルインは構える。追いかけてきた団員達がルインを取り囲むように動く。

 

「ベルを追わなくて大丈夫ですか?」

 

「はん、ヒュアキントスが負けるわけないだろ?それよりも、お前らの誰かを潰せば金が貰えるんだよ。城外のエルフや【絶†影】は厳しいがお前は楽そうだからな」

 

 ルインは、嘲笑う男から目線を外し周りを見渡す。殆どのものが、同じように笑っているが違う者も見つける。

 

「そこの貴方は違うように見えますが?」

 

「私は金なんてどうでもいい。戦争遊戯に勝てば、ようやく解放してもらえる。アンタには悪いけど勝たせてもらうよ」

 

 違うと感じた者達は、その言葉に同意しているように見える。ルインは、その違いを把握すると、まだ油断して笑っている男の腕を切り落とした。

 

 突然の攻撃に油断していた雰囲気は無くなる。斬られた男は痛みのあまりのたうち回るが、誰も気にしていられなかった。

 一斉に攻撃をしていくが、誰もルインを捕捉できない。あらゆる方向から剣による斬撃、槍による刺突、メイスによる殴打がルインには擦りもしない。死角からの攻撃ですら、見えているかのように捌かれる。

 噂と違うルインの動きに団員達は、恐怖を覚える。また一人武器を持つ腕が切り飛ばされている。また一人、無傷のまま意識を刈り取られる。確実に減っているアポロンファミリアの陣営は少しずつ無意識に後退していく。

 

「くそっ、こんなの聞いてないぞ。俺は逃げるか……ぐはっ」

 

 不利を察して逃げようとした男に、ルインは落ちていたナイフを投げ、背中に刺さった。

 

「なぜ、ヘスティア様を蔑めた貴方達が逃げられると?ああ、解放目的の方は逃げてもらっていいですよ。それ以外の方には、ちょうど僕も用があったので」

 

 その場から無事に逃げきれていたものは、ルインの言った者達だった。それに含まれない者は、一方的に蹂躙されるのをただ待つしかなかった。

 

 ベルは、仲間たちが切り開いてくれたおかげでヒュアキントスと対峙することができた。初めのうちは相手の油断からか攻勢でいられたが、カサンドラに動きを止められ劣勢に陥る。

 

 その隙を、ヒュアキントスが見逃すはずもなく、魔法を放つ。リリのおかげで拘束から解放されるが、追尾してくる魔法を躱すことことしか出来なかった。

 

「右に跳んで」

 

 ベルの後ろから、いつも通りの優しい声が聞こえた。その通り跳んで魔法を躱すと、その後を気にせずヒュアキントスへ接近していく。

 爆発を背中で感じるが、起こった風に乗りさらに加速していく。

 

「くそっ、アポロン様のお望みなど知ったことか。死ねぇ!!」

 

 このまま二人を相手にする余裕はヒュアキントスにはなかった。予備の剣を抜き、ベルへとどめの一撃を放つ。その姿を見ながら、訓練でのアイズの言葉を思い出す。紙一重で剣を躱し、ナイフを持っていない左手で顔面を殴りつける。ヒュアキントスはその一撃を受け、そのまま起き上がることはなかった。

 

 ベルは、後ろを振り返り煤けてはいるが無事な様子のルインが手を振っているのが見える。リリも喜びのあまりベルに抱きつき、ようやく終わったことが実感できた。

 

 ヘスティアファミリアの勝利。集まっていた神々は、想像していなかった終結に盛り上がっていた。ほとんどの神は、戦争遊戯の理由になったベルに注目している。仲間の力を借りて敵を討つ姿が、まるで物語を見ているようで皆が感動すらしていた。ルインを注目していたのは一部の神だけではあったのは、ヘスティアにとって幸運だったのかはわからない。

 

 ヘスティアによりアポロンの処遇が決まる。それにより、神々も戦争遊戯が終わったと判断し、解散しようとしていた。

 

「そういえば、私から一ついいかしら?」

 

 熱気が冷めつつあった場に、フレイヤが問いかける。その珍しい行動に、神々は同行を伺う。

 

「ヘスティアの子の二つ名を決めてあげたいの」

 

「ルイン君のことかい?」

 

「ええ、そうよ。ヘスティアが休んでいた時に話題に挙がったから知らないでしょうけど、とても酷い候補ばかりだから。私が決めてあげようと思って」

 

 ヘスティアは、仮病で長引かせている間に、とんでもないことが起きていたことを知り、すぐにヘファイストスに確認する。ヘファイストスも、悪ふざけでしていたことは知っていたが、腹は立っていたので素直に教える。

 

「なっ、【臆病者】に【小判鮫】、それになんだい【貧乳の嫁】って!?」

 

「ちょっと待って。最後のウチも知らん。誰や、ふざけた名前付けようとした奴は!!」

 

 知らないところで蔑称が付けられそうになっていたことに青ざめるヘスティアと、怒りに狂うロキにより、かなり混沌としていく。

 

「ふふ、ヘスティアの子が可哀想でしょう?本当は【騎士】にしてあげようと思っていたのだけど、どうしても私の子が付けたい名前があるみたいだから、そっちにするわ」

 

「君の子が?ルイン君と知り合いだったりするのかい?」

 

「ええ、あの子を理解できるのは私の子達だけだそうよ。私も無理って言われたの。酷いでしょ?」

 

 嬉しそうに笑いながらフレイヤは言葉を続ける。

 

「ふふ、前置きはもういいかしら。ヘスティア、貴方の子、ルイン・マックルーの二つ名は【剣聖】。今はまだ、少し足りないそうだけど、時間の問題だそうだから、その名に恥じないように頑張りなさい、と伝えておいてね」

 

 フレイヤから聞かされた二つ名に、全員がどよめく。その名は、アイズのレベルアップ時にも挙がった名前だったからだ。オラリオでの剣士の代表とも言えるアイズを差し置くことに、不満の声が多くあがる。

 

「あら、オラリオ最強が認めた者に送ったのよ?何が不満なのかしら」

 

 抗議をものともしないフレイヤから告げられた言葉を聞いて誰もが静まり返る。その様子を見てからフレイヤは嬉しそうに退室していった。

 

 【猛者】が認めたオラリオ一の剣士。今までの勝手なイメージからルインはようやく解放され、知らないところで注目を浴びることになってしまった。




アポロン陣営には大きく分けて三つの派閥があると仮定しています。主神に従うもの、無理矢理入れられたもの、素行の悪いものです。アポロンファミリアの評判の悪さの一つはアポロンが理由ですが、素行の悪い集団の存在も一つあるとみなしています。主神に従う者たちをリューと命が抑えて、それ以外がルインが対応した状況ですね。

ダフネやカサンドラのように二つに当てはまる者もいますのできっちりは分けられませんが、大まかにそう思えてもらえたら。
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