ルイン達は、戦争遊戯の会場からオラリオに戻った時に住民達から盛大に祝福された。そのほとんどがルインに対してであり、見慣れているベルは笑顔でいるが、初めて見るヴェルフやリリは目を丸くして驚く。
リューは盛り上がりに乗じて姿を消しており、命は満足そうに様子を見ている。ようやくルインが戻ってきた時には髪が乱れて疲れ果てていた。ホームに向けて進んで行くが、同じことが何度か行われ、リリ達も慣れてしまい途中からは苦笑しながら待つ余裕も生まれていた。
ホームに辿り着くと、ヘスティアが満面の笑顔で待っていてくれた。他にも、ヘファイストスと椿、ミアハとナァーザ、タケミカヅチも駆けつけてくれていた。
タケミカヅチから、剣の腕が上がっていると褒められ、椿も剣を上手く扱ってくれたことを喜ばれる。ミアハ達も無事に戻って来たことに安心してくれていた。
「今日の夜はみんなで盛大に祝おう!代金はロキが持ってくれるから安心してくれ!」
ヘスティアは、直接祝うことができないとロキから貰ったヴァリスを自慢するように掲げる。ベルとルインはその姿を見て、必死に止めようとするが、楽しそうに逃げ回るヘスティアを止めることは出来なかった。
ようやく落ち着いたヘスティアが落ち着き、手分けして瓦礫を動かして地下室までの道を確保する。その後は、夜まで解散になったが、ヘスティアファミリアの面々はヘスティアの案内で新しいホームに向かっていた。
旧アポロンファミリアのホームに辿り着くと、部屋の探索を行なっていく。手に入れたヴァリスでリフォームも考えているので、各々の希望をまとめていく。途中で、ヘスティアがルインに紙を渡しているのをリリが目撃していた。
「ヘスティア様、先程ルイン様に渡していた紙はなんなのです?」
「ん?あれかい?今回手に入れたものをまとめたものさ。ルイン君に任せとけば間違いないからね!」
「そういえば先程、ルイン様は命様とキッチンの話もされていましたし、今までのヘスティアファミリアでの内情を確認させて欲しいのですが。これからはリリ達も加わるので、早いうちに把握したいですし」
「そうだね!ボクになんでも聞いてくれよ!」
主神らしく胸を張ってヘスティアは答える。
「では、ファミリアの運営方針は今まで誰が?」
「二人しかいないからね。ぞれぞれに任せていたよ」
ふむと、リリは零細ファミリアだったことを思い出し、それでも関係することだけを確認することにした。
「財務関係は誰が?」
「ルイン君だよ」
「買い出しなどの雑務は?」
「ルイン君だよ」
「えっと、炊事とかは?」
「ルイン君だよ」
「ファミリア外の方との交友は……」
「もちろん、ルイン君だよ」
その後も何かを聞けばルインの名前だけが挙がり、リリは呆気に取られる。
「こうしてみるとルイン君は働き者だね。ボクのバイトの時間もしっかり見てくれるし、本当に良い子を持ったよ」
自信満々なヘスティアの様子に、リリは怒りを抑えきれなくなる。
「リリが来たファミリアがこんな酷いところだったなんて……。ええい、ヘスティア様そこに正座してください。ベル様もです!そんなところに立ってないで早くこっちに来てください!」
リリの迫力にヘスティアはすぐに正座し、ベルも状況がわからないまま横に座った。
「ベル様!リリは悲しいです。頼りになると思っていたファミリアの団長と主神が何もしていないおマヌケさんだったなんて」
それに対してヘスティアが抗議をしようとするが、リリのひと睨みで大人しくなる。
「えっと、リリ?状況がまだ分かってないんだけど」
「ファミリアの運営をルイン様に全て任せておいて何を言ってるんですか!本当はルイン様が団長なんでしょう!?そう言ってもらえた方が、リリも納得できます!」
リリの剣幕にベルも状況をしっかり把握した。最近になって理解したルインの負担が多すぎていたことについてだ。
「団長はベルだよ?どうしたのリリルカさん。何か問題でもあったの?」
ヘスティア達の唯一の希望が現れてくれた。全面的に悪いことは認めているので、なんとかこの場を納めてくれることに期待する。
「今リリはルイン様に仕事を押し付けているお二人に説教をしているのです!ルイン様にからも言ってください!」
「えっと、押し付けられていないよ。ベルは、稼ぎ頭だからそっちに専念してもらっているだけで、ヘスティア様も、僕の収入が低いからバイトまでして頂いてるから、僕がやらないと」
借金のせいでバイトをしていると口が裂けても言えないヘスティアは良心を抉られてしまう。ベルも初めの頃はその通りだったが、ルインが命達と組み始めた頃から、それほど変わらないことを知っているため、思わず目を背ける。
二人の反応を見逃さなかったリリは、ルインに帳簿を見せてもらい再び怒りの炎が燃え上がっていた。
「……それで、ルイン様。一週間毎に貯蓄額との確認をするのは正しいのですが、日計の合計と週末の値があってないのですが」
「それはね、ヘスティア様がたまにお釣りを間違えるから週末に合わしてるんだよ。まだ現界されて日が経ってないからお金の計算が苦手みたいで」
「こんの、駄女神製造機が!」
今までは、ルインに対して同情していたが、今の言葉でリリも理解できた。ルインの善意が二人を狂わせてしまったのだと。あくまでリリの予想になるが、ルインがヘスティアファミリアに入ってなくても問題は起きてないはず。二人も悪いが、ルインにも非があるとわかり、そのまま説教をすることとなった。
ある程度、各々の希望するリフォーム案が集まり、翌日ゴブニュファミリアに依頼することとなった。落ち着いた頃合いで、ヘスティアはみんなを集める。人数の増えたファミリアのエンブレムを決めるようだ。
他の意見を求めないうちにヘスティアは紙に書き始める。満足な仕上がりだったのか、ヘスティアはみんなに書き上げたエンブレムを見せる。
燃える炎に寄り添う鐘と剣。ヘスティアの自信作を周りに見せていく。誰もが鐘と剣の意味を理解して納得する。
「ダメです」
唯一拒否したのはルインだった。ヘスティアもまさか否定されるとは思っていなかったのか目を丸くする。
「オラリオで剣と言えばアイズさんです」
ルインの発言にも、全員が納得できてしまい、ヘスティアとルインの対立は平行線になる。ルインの提案した炎と鐘のエンブレムは全員に否定されて、結論としてはヘスティアの案で決定された。
その後にルインの二つ名が発表され、先に言えば意味もなく揉めることがなかったと、リリと命から責められたヘスティアがルインに慰められていた。
夜になり、打ち上げ会場である豊饒の女主人に到着する。当初は別の店を考えていたが、ルインから助けてくれたリューを除け者にはしたくないと言われ店を決定した。
ベルがリューを借りたいと店に申し出て、ミアがそれを許可する。リューとしては負い目のあるルインに嫌な思いをさせたくなかったので拒否していたが、ミアの一声で無理矢理席に着くこととなった。
リューは少し居心地を悪く感じていた。顔見知りのベルも近くにいない状況で、周りは敵と思っているかもしれない。一人隅の方で目立たないように静かにしていた。
「隣いいですか?」
返事の前に、ルインはリューの横に座る。リューとしては一番気不味い相手のため、目を伏せる。
「今回は助けて頂いてありがとうございました」
柔らかい笑みを浮かべるルインに、リューは思わず驚いてしまう。
「貴方は、私を恨まないのですか?」
「助けてもらったのに、恨まないでしょう?」
「今回のことではありません。中層でのことです。思い出しているのでしょう?」
「実を言うと断面的にしか思い出せてなくて……。貴方が、あの場にいたのはわかりますが、それだけなんです」
リューは返事の意図が理解できず、ルインへ顔を向ける。変わらず笑顔のルインに、目を丸くする。
「ようやく、目を合わせてくれましたね。僕は貴方を恨んでませんし、ヘスティア様が許可したなら不服もありません。だから、今からが本当のはじめましてではいけませんか?」
手を汚してしまった自分には、眩しすぎるルインに、心が揺れてしまう。このまま、この言葉に甘えてしまっていいのだろうか。決心をつけないリューも、変わらず笑顔のルインに根負けしてしまう。リューが頷くのを確認したルインは満足そうに微笑む。
その様子に気付いていた神々は、ルインの決定を尊重することにする。
そこからは、リューも楽しそうに参加することができた。宴会の雰囲気も明るくなり、誰もが楽しんでいた。
ヘスティアファミリアの当たり前にメスを入れるリリの話でした。
ベル達が何もしてなかったというよりも、ルインがさせなかった方が正しいのですが、第三者から見れば関係ないですね。ただ、甘える方も甘やかす方も度が過ぎれば両方たちが悪かったので、ルインにも説教です。