ヘスティアファミリアで頑張ります!   作:プラス九

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39.専属争い

 

 翌日、ベル達は疲労困憊でホームに戻ってきた。眠りにつく前に無事に新薬開発に成功したと聞け、一安心する。

 

 昼過ぎまで、ベルは死んだように寝ていたが、起きてから軽くダンジョンに探索に行くことにした。ダンジョン方向に向かいながら、命とヴェルフにも声をかけてリリとも合流する。

 時間としては短いが、新生ファミリアとして初めての探索に向かうことになった。

 

 探索は、何事もなく無事に終えた。機動力のあるベルには自由に動いてもらい、ヴェルフを盾役で動いてもらう。命とルインで、遊撃手と盾役の両方の役割を連携で補いながら、Lv.3になったベルを主戦力とし、後方にいるリリに戦況確認を任せる。今できる最善の方向に誰も相談することなく自然に決まっていた。

 

 ベルの調整も問題なく、最低限の資金集めができ、その日の探索は終えた。

 

 探索の翌日、待ちに待ったホームが完成した。ルインは、ゴブニュファミリアから簡単な説明をヘスティアと共に受けて、軽く確認してから、お礼の品を渡すためにゴブニュファミリアへと向かっていった。

 

「あん?お前は【剣聖】じゃねぇか。ホームの出来に何か問題でもあったか?」

 

 ルインが、ゴブニュファミリアに顔を出すと受付の団員は不思議そうに尋ねる。ルインはそれに首を横に振ることで答える。

 

「いえ、無理して早くしてもらえたので、お礼をと思いまして」

 

 ルインの言葉に続くように次々と、酒樽が運ばれてくる。

 

「おいおい。礼とは言ってたが、これは多すぎだろ?」

 

 入り口近くの邪魔にならないところに積み上げられた四樽もの酒に団員も驚きながら確認する。

 

「かなり、安くしてもらったので。予算から浮いた分ですから問題ないです」

 

「こらぁ、嬉しいこと言ってくれるねぇ。……ゴブニュ様!今日は【剣聖】の奢りで宴会ですぜぇ!ヘスティアファミリアに乾杯でさぁ!」

 

 受付の男の声を聞きつけた職人達が集まり、目の前の酒に喜び声を上げる。ゴブニュもゆっくりと近づいて、ルインをましまじと見つめる。

 

「気に入った!坊主、儂のファミリアがお前の専属になってやろう」

 

「ゴ、ゴブニュ様?【剣聖】はヘファイストスファミリアの椿が専属予定で」

 

「たかが予定だろ!こいつのことは戦争遊戯で把握できている。なら、先に契約結んだもん勝ちだろう?」

 

 ゴブニュの一声で職人達の目つきが明らかに変わった。主神の宣言により、たとえヘファイストスファミリアと戦争になったとしても問題ないとお墨付きがついたのだ。血走った目の職人に詰め寄られルインは冷や汗を流す。

 

「ほう?随分と面白い話をしているようだが、手前も混ぜてくれないか?」

 

「椿さん!?なんでゴブニュファミリアに?」

 

「何、お前のホームの完成祝いに駆けつけたらこっちに来ているとヘスティア様から聞いてな。嫌な予感がしたから行くことにしたが、正解だったようだ」

 

 殺気に包まれた雰囲気に、ルインは逃げようと動こうとするが、椿とゴブニュファミリアの面々に睨まれ失敗する。物々しい雰囲気だが、本人がここにいるので手荒な真似は起こりそうにもないが、ルインの胃には確実にダメージが蓄積されていた。

 

「あの、僕としては一流ファミリアのどちらにも払えるほどお金もないので……」

 

「おい、聞いたか!?ヘファイストスのところは大金を払わせるつもりだそうだ!坊主、安心しな。ウチならお前の予算に合わせて無理のない金額でやってやる。勿論、最高品質は保証する」

 

「ルイン、悲しこと言うな。手前は二度もお前に剣を打ったが、一度も金を求めてないだろう?」

 

 ルインとしては一度しか記憶にないが、一緒に潜った時の剣も換算されているのだろうか。ゴブニュと椿の牽制に、ルインは救いを求めて周りを見るが、誰もいなかった。酒屋の店員が椿と入れ違いで逃げていたことにようやく気づくことになったが、咎めることはできそうにない。

 

「ええい、先に唾を付けたのは手前だ!ルイン、まさか手前の専属契約は嫌とは言わんよな?」

 

「坊主、先に見つけてすぐに契約しないボンクラよりも儂のところの方がいいよな?仕事の良さと早さは十分理解しているであろう?」

 

 ジリジリと詰め寄る椿とゴブニュに合わせるように後退して行くが、すぐに壁にぶつかる。もうダメかと、諦め虚空を見つめようとする。

 

 結局のところ、ルインは無事に逃げることができた。先に逃げていた酒屋の店員が店主に状況を話し、そこから募られた有志達がゴブニュファミリアへ駆けつけた。その中には、ゴブニュファミリアとヘファイストスファミリア両方の得意先の面々も含まれていたので、ゴブニュファミリアの団長と少し冷静になった椿の判断により解散することになった。帰り際に椿からヴェルフ宛の伝言を受けるが、ルインは虚な目で了承した。

 

「ルイン、ヴェル吉に伝えろ。ルインのモノも打つことを許すが必ず手前に見せるように、と」

 

 オラリオの住人の活躍によりオラリオが誇る二大鍛治ファミリアの戦争は落ち着くことができた。ルインも、無事に保護されて新しいホームへと戻ることになった。

 

 ルインが辿り着いた時に、門から大量の人が出て行っていた。何故か、可哀想な目線で見られたような気がしたので、確認の為ために足を進める。

 

 ルインが目にしたのは、気絶しているベルと、気まずそうにしているヴェルフ、顔を青ざめているヘスティア達だった。状況が読めないため、取り敢えずみんなを落ち着かせる。リリと命から、ヘスティアが持っていた借用書を渡される。状況を理解したルインは、ヘスティアにベルの介抱を任せてリリ達と別部屋に移動する。

 

「えっと、皆さんの顔色が悪いのは、これのせいですよね?」

 

 手に持った借用書をヒラヒラさせながら見渡す。リリ達全員が頷き、ルインは安心する。

 

「実は、これを探していたんですよ。良かった、見つかって」

 

「ル、ルイン様は、ヘスティア様の借金を知っていたのですか?」

 

「借金はもうないから大丈夫だよ。あ、でも、ヘスティア様には秘密で」

 

 明らかに絶望しているリリに安心させるように伝える。命もヴェルフも目を丸くしているが、ルインは気にせずに借用書を丁寧に折りたたむ。理解できていないようだったので、ヘファイストスとの話を聞かせる。

 

 ようやく納得してくれたのか、みんなの顔色が戻ってくる。その様子にルインは一安心して、ベルとヘスティアには内緒にする様に念押しする。

 

「ヘスティア様に秘密にすることはわかりました。ベル様に秘密にするのもバレてしまうからと言うのも納得できます。ですが!もっと早くリリ達に伝えるべきでしょう!」

 

 リリが突然、ルインの胸倉を掴みあげる。怒りに任せて揺さぶり、ルインは目を回しながら落ち着かせようとするが意味がなかった。命とヴェルフもどこか疲れてしまい、リリを落ち着かせるのはルインに任せて自室へと戻ることにした。

 




ルインが団員募集の場にいたら、返済を暴露して大量入団か、黙っててもヘスティアへの悪口に激怒しそうですね。
お陰で、リリ達に無駄な心労を与えていましたが……。
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