覚えている方がいれば幸いです。
不定期になると思いますが、更新出来ればと思います。
翌朝、ルインは庭で素振りを行なっていた。本来なら家事を行う時間だが、当番制に決まり時間を持て余していた。何故か、ルインが手伝うことをリリと命により禁じられ、ベルとヘスティアが行っていることが多くなっていた。しかし、二人とも納得していたので、反論すら許してもらえなかった。
素振りをしていると、見知った顔が門のところにいるのに気付く。タケミカヅチファミリアの千草が、中を覗いていた。
「千草さん、どうしたんですか?」
「はうっ、なんだ、ルイン君かぁ」
何か用事がありそうな様子だったので、声を掛ける。どうやら、命に用があったが、朝早かったため、様子を伺っていたようだ。
ルインは、命の部屋の場所を教えて、ホームへと通すことにした。コソコソと走っていく千草の後ろ姿を見送り、そのまま門を出る。ルインは、まっすぐ門から死角になる路地裏方向へ進んでいく。
「それで、何か用でしょうか?」
「お前が【剣聖】だな。ディオニュソス様がお呼びだ。ついて来い」
黒髪のエルフの女性は、ルインを見ることなく話し、そのまま足を進めようとする。
「すみません。それは例の件ですよね?装備を整えてくるので少し待っててください」
エルフの女性が、足を止めたのを確認して、ルインはホームの自室へと戻っていった。
ルインは、部屋に着くと手早く装備を身につけていく。知り合いの冒険者依頼に急遽行くことになったことを手紙に書き入り口に置いていく。そのまま、エルフと合流し、ディオニュソスの元へ足を進めた。
「急に呼び出してすまない。少し動きがあってね。フィルヴィスもありがとう」
出会った時と同じような笑顔を向けディオニュソスは、ルインへと目線を向ける。
「いえ、そろそろかと思っていたので」
それ以上の会話は必要ないと、その後は沈黙を貫く。ディオニュソスもそれを察して目的地へとルインとフィルヴィスを先導するよに歩みを進めた。
訪れたのはルインにとっては初めての店だった。個室に案内され、既にいた顔触れに目を開く。ロキとヘルメス。どちらも、ルインにとっては馴染みのある神だった。
「ディオニュソス。お前、ウチのこと舐めとんのか?そいつは、他のファミリアやろ」
「私のファミリアは戦力がないのでね。助っ人を頼んだ」
「そいつを入れるなら今回の件は無しや。こっちで勝手に動くことにする」
ロキは、ルインへと鋭く目線を向ける。後ろに控えるアイズの何か言いたげな雰囲気や、ヘルメスの楽しんでいる目線を全て無視して語気を強める。
「それと、ルイン。このことはドチビに言って無いんやろ?言えない程度の覚悟で首を突っ込むな!」
ルインには反論することが出来なかった。その様子を見たディオニュソスに退出を指示され、小声で謝れてながらも、協力出来ない申し訳なさを噛み締めながら店を出て行くことになった。
「おう!その様子じゃあ、協力出来なかったみてぇだな」
ルインが店から出ると路地裏の方から声をかけられる。その声に何故か足を進める。
「俺はヘルメスファミリアのものだ。中にうちの主神様がいただろう?念のため手紙を預かってたんだが、当たるもんだな」
面識のない男から1枚の紙を受け取る。渡すや否や男の気配はなくなり、中身を確認した。
内容は、仰々しい挨拶から始まり予見出来た自分の素晴らしさを語っている内容が殆どだったが、本文と思える数行だけが、目に止まった。
『イシュタルファミリアに不穏あり。近々、フレイヤファミリアが動くが、周辺に不安有り。以下、リスト通り』
手紙の最後には、今回の談合とは関係はないが、本題には関わっていると締められていた。ルインは、手紙を大切にしまうと、路地裏に消えるように足を進めた。
とはいえ、到着したのはダンジョンだった。置き手紙の言い訳分は稼がないと面目が立たないからと、少し情けない理由だが。
Lv.2になってから猛者やアポロンファミリアと強者との戦いはあったが、ダンジョンは改めてみると単身では初めてになる。あまり覚えてはいないが、14層で生き残ったことは周知の事実である。最低でもいつもの稼ぎよりは多く持ち帰ることが出来るはずと、油断だけはしないように気を引き締めた。
「……はぁ。……はぁ」
ルインは、周りの安全を確かめてから休憩を取ることにした。未だ、中層手前である。ソロでの自己最高額は稼げているが、剣を振るう感覚に違和感が付き纏う。しかし、深追いは危険だと、ミィシャとの勉強会で何度も確認していた。ルインは、素直に判断して帰還を第一目標へ切り替えた。
「ただいま戻りました!」
朝方になったが、心配をかけたかもしれないと元気にホームへと、声を出して扉を開けた。しかし、正座をして謝るベルと、それを冷ややかな目で見る女性陣を見てしまうと、静かに扉を閉めて自室へと向かうことにした。
一瞬、ベルの助けを求めるような目線を感じたが、おそらく気のせいだったに違いないと、ルインは新しいベッドの暖かさに身を任せることにした。