いち早く反応できたのは、またしてもフィンであった。
「すぐにエリクサーの準備を!アイズはディアンケヒトファミリアからアミッドを無理矢理でも連れて来てくれ!リヴェリアは、……ルインを優先して回復魔法を!総員急げ!」
フィンの指示を受け、全員が動き出した。ルインへの応急処置を最優先させ別室に移動させる。フィンは、リヴェリアへ同行するよう指示を出し、横たわるガレスに懐から取り出したエリクサーを少し乱暴にかける。
傷が粗方塞がったガレスは、重い体を無理矢理動かして立ち上がる。周りを見て、フィンと神々しか居ないことを確認した。
「すまんな。勝手なことをして」
「いや、半分は助かったよ。あのままだと話すら出来ずに終わっていたからね。まあ、まさか全力を出すとは思っていなかったけどね。彼はそれ程だったかい?」
「ちゃんと手加減しとるから安心せい。しかし、まぐれではあるが、受け流されて腹を切られるとは。腕に切り傷程度は覚悟しておったが、一級の武装ならまだしも支給品の剣とは末恐ろしい」
「それがスキルなのか、彼の技術なのか知りたいところではあるけど……。おっと、神ヘファイストス、この件はロキにも伝えていなかったんだ。騙すようになって申し訳ない」
ヘファイストスは、突然始まった戦闘に呆然としていたが、紹介したルインの実力を測る為に行われたように聞こえる会話に目を険しくさせる。
「本来はちゃんと話終えた後に、模擬戦を依頼しようと思っていたんだけど。最悪の予想の方になるとはね。彼に使うつもりで持っていたエリクサーを、ガレスに使うことになったのは流石に予想もしていなかったよ」
「……ヘスティアへの言い訳は貴方達でしなさい。私はルインの無事を確認したら帰るわ」
ヘファイストスは、怒りを飲み込み部屋を出る。元々知略の類は得意ではなく、フィンに抗議を行ったとしても、上手く丸め込まれる可能性がある。相手の土俵に立たず大きな貸しにしてしまった方が、後々役に立つと無理矢理割り切ることしか出来なかった。
「神ヘファイストスは策略の類は苦手と踏んでいたけど、これは借りを作ってしまったみたいだね」
フィンは一つ溜息をつき、ヘスティアファミリアへ向ける手紙を書く。アミッドの到着と治療開始の連絡に来たラウルへ、幹部達に待機の伝言を伝え、ヘスティアファミリアへ手紙を渡すように指示を出す。
「そんでフィン、ウチにもわかるよう説明してや」
「さっき言ってた通りだよ。話終えた後、模擬戦の機会をもらって力を見ようとしていたけど、最悪を想定して、話し合いに応じてもらえなかった場合、ガレスに頼んでいたんだ」
「ほんで、この件がファイたんに気付かれたら紹介がもらえんから、ウチにも黙ってたってことか。様子を見てたらリヴェリアも知らんかったみたいやけど?」
「ああ、リヴェリアは既に彼に会って、人となりを知っていたからね。模擬戦については話したけど、今回の件は反対したと思うね」
「ほんで、何が知りたかったんや?」
「いくら得物が違うといって、僕とガレスはゴブリン五体切りは達成出来なかった。ラウルすら最終日までかかるとは思っていなかった。違いを確認するためと言えばいいかな」
フィンは椿から剣を渡された時に、難易度をある程度想定していた。しかし、Lv.6の技術を持ってしても困難な剣技に興味を持っていた。全ての武器を状況に合わせて使い分けることの出来るラウルの器用さなら苦戦はしても、時間はかからないと想定していたが、外されてしまったからだ。
「ああ、アイズたんでも無理やったやつか。出来んで拗ねてたアイズたんは可愛いかったなぁ」
「ティオナは勿論だけど、アイズには不可能というのは予想通りだったよ。それは向き不向きだから仕方ないことだけどね。まさかベートが意地で一体切ったのには流石に驚いたかな」
雑魚に出来たことが出来ないわけがないと、隠れて誰よりも挑んでいた姿を思い出し、思わずフィンは微笑む。
「彼の技術、もしくはスキルは、剣の最善の使い方がわかるみたいだ。あくまで想像だけどね」
「なんやそれ、支給品でガレスを切れるんやったら一級品ならなんでも切れるっちゅうことやん」
「いや、おそらくそれは難しいと思う。仮に技術とした場合になるけど、剣が良ければ良いほど恩恵は少なくなると思うよ。それについてはガレスの方が理解してると思うけどね」
「スキルの可能性は低いと見ておる。初めの一撃で骨を断たんかったのは剣への配慮。それができる技術を持っとる証拠だ。仮にスキルも持っていたとしても、それを過信するだろう。あの歳ではそこまで達観出来まい」
「まあ、彼の考察はここまでにして、僕達が考えなければならないのは、神ヘスティアへの謝罪と、もうそろそろ来ると思うリヴェリアへの言い訳かな」
「待ってや、リヴェリアの件はウチ関係ないやん!?」
「ほう、何が関係ないのか?しっかり説明してもらおうか」
完全に無実なロキの訴えが通る前に、怒りを抑えきれないリヴェリアの声が聞こえる。日頃の行いのせいなのか、ロキの弁明には聞く耳を持って貰えず三人共々しっかり叱られることになった。
「まさか、この歳になってリヴェリアの説教を受けるとはね」
「なんでウチまで叱られないあかんねん」
説教に対しても飄々と躱していくフィンにリヴェリアも諦め説教をやめる。途中でロキの冤罪は晴れていたが、日頃の行いの悪さについて説教を誘導されていたと気付いた時に見たフィンのしたり顔にファミリア結成時の光景を思い出し、長引いてしまった。途中、ガレスの貧血による棄権を認めたが、相変わらず余裕そうに見える二人を見て、リヴェリアは再度怒りを覚える。
「失礼します。リヴェリアさんに面会希望の方がいますが、どういたしましょう?ギルド所属のエイナ・チュール氏とのことですが。都合がつけばロキにも同伴して欲しいとのことです」
再開させようと声を発する前に団員から声がかかる。リヴェリアも親友の娘が珍しく訪問したことからロキに有無を言わせず、面会許可を出した。