「リヴェリア様、申し訳ありません。突然お伺いしてしまって」
「なに、気にするな。珍しくお前から来てくれたのだ。断るわけないだろう。それで何があった?」
「なぁ〜、その子制服からしてギルドの人間やろ?中立言うとるのにうちに来て何が狙いや?」
「ロキ、エイナは私の親戚のような者だ。いくらお前でも不躾にするのは許さんぞ」
「いえ、突然伺ったのは私ですから。少しとあるファミリアについて聞きたいことがありまして……。これはそのファミリアに関わるものですが、手土産になるかなと」
ロキの目線が少し厳しくなり、リヴェリアはすかさず庇う。エイナも恐縮しながら、一つの酒瓶を差し出した。
「これは神酒やないか!ウチのオキニ持ってきてくれたんか?」
「ロキ、エイナはソーマファミリアについて聞きたいそうだ手を付ける前に説明してやれ」
「相変わらずママは厳しいなぁ。それでエイナ言うたか。なんでソーマんとこを知りたいんや?」
酒瓶にロキは手を伸ばすが、リヴェリアに手を叩かれて直ぐに引っ込める。しかし、目線だけはエイナから離すことはしなかった。ロキの見透かすような目線に、エイナは思わず息を飲むが、目線を決して逸さない。
「実は、担当している冒険者が最近ソーマファミリア所属のサポーターと契約しまして、それで聞きに来ました」
「ほう、ギルドのもんがえらく肩を持つんやな。越権行為と分かっとるんやな?」
「こ、今回のことはギルドとは関係なく、担当アドバイザーである私の力不足から、リヴェリア様に頼ることしか出来なかったからです。当然、越権行為なのは承知していますので、抗議の際は私個人にお願いいたします」
エイナは震える手を握りしめて、真摯に頭を下げる。ロキは静かにその様子を見つめる。途中、リヴェリアが声を発しようとするが、ロキが制す。重い沈黙が体を覆うがエイナは負けなかった。
「よし、気に入ったわ!ウチでわかることは教えたる。やけど、どこのファミリアぐらいかは教えてえや。名前まで聞くとおっかない親戚がちょっかいかけそうやから言わんでええで」
「神ロキ、ありがとうございます。その、所属はヘスティアファミリアです。最近出来たばかりのファミリアで、その子も駆け出しでして」
ロキもリヴェリアも言葉を詰まらす。まさか、ここに来てヘスティアファミリアの名前を聞くとは思わなかった。ロキは思わず、ドヤ顔で嘲笑うチンチクリンを幻想してしまい、沸々と怒りを感じる。
「エイナ、もしかしてその冒険者はルイン・マックルーという名前では?」
「ルイン君?いえ、マックルー氏ではありません。彼の担当は同僚ですので」
二人は思わず安堵の溜息を吐く。しかし、リヴェリアはあの時出会ったもう一人の少年を思い浮かべた。アイズの落ち込みようから、失敗に終えたと思われる膝枕を伝えた身からしたら、多少の配慮は許されるだろうと考えた。
エイナから神酒の代金を聞き出し、それを負担することにして、後ほど支払う約束を無理矢理取り決める。そして、ロキにソーマファミリアについて話すように促し、エイナの要件を迅速に解決する手伝いを行った。
リヴェリア達がエイナを見送るために門まで送る頃にルインは目を覚ました。大好きな冒険譚で読んだことのある知らない天井に、内心心を踊らせてしまったが、直ぐ様最後の記憶を、思い出し飛び起きる。すると、初ダンジョンの時に自分を治療してくれたオラリオ最高峰の治療師と目が合った。
「貴方は、ついこの間も同じように瀕死になっていたと記憶していましたが、それは私の勘違いでしたか?」
静かに、そして、無表情に、事実を述べるアミッドの背後に怒りの炎を思わず幻視してしまい、ルインは冷や汗が止まらなかった。直ぐ様、伝家の宝刀土下座を行う為、体を動かそうとすると、それについて叱られてしまう。奥義すら封じてしまう聖女に戦慄しながら、嵐が治るのを待つしかなかった。たまたま、見に来たロキファミリアの団員にアミッドを宥めてもらい、改めてフィンとの面会を行うことになった。
「改めて謝罪をさせて欲しい。今回の件も含めてね」
フィンの元へ向かおうとするルインを団員が押さえ込むことで、フィンが訪れることを無理矢理飲ますことができた。
「君も、アミッドにしっかり絞られたみたいだね。だけど、元気そうでなりよりだ」
フィンの訪問によりアミッド含め退出しており、一対一の対談となった。ベッドから飛び出しそうなルインを、言葉巧みに留まらせ、改めてロキファミリアとして言葉を伝える機会を作った。
「同胞よ。まずは謝罪を聞いて欲しい。君が入団出来たかは別にして、僕を含めて小人族を理由に拒否することは、ファミリアの総意ではない。君に起こってしまったことは僕の力不足だった。申し訳ない」
ロキファミリア団長が頭を下げる姿に、ルインは目を丸くする。なんとか言葉を発しようとするが、フィンに遮られる。改宗の誘いを受けたが、首を横に振り否定を示す。その様子に、フィンは微笑みを浮かべていたのが印象的であった。
「先程の提案は気にしなくていいよ。こちらのケジメと思ってくれて構わない。ただ、君はロキファミリアに入ることを許された、それを君の自信に繋げて貰えたら少しだけ報われるかな」
少し寂しげに語るフィンは、冒険者として掲げた理想を話し始める。ルインは、尊敬していた英雄の心内を聞き、時に喜び、時に寂しそうに相槌を打っていく。もし、この場に他のものが居たとすれば、久しぶりに会えた親子の団欒に思えただろう。フィンの話から、ルインのこれまでの話になるのは、あまりに自然だった。
ルインの中のロキファミリアへのイメージは改善されていき、対談はどちらにとっても有意義なものだった。
「しかし、今回の君の怪我については、全面的に僕達の過失だ。君が、決して同意しないことをわかっているけど、それについては認めない。神ヘスティアに頭が上がらないのは流石に困るからね。だから、何か願いはないかな?」
「そ、それでしたらお金を頂けないでしょうか?」
「ん?ヘスティアファミリアはそれ程貧困なのかな?」
「いえ。ぼ、僕が個人的にヘファイストス様に借金をしていまして……。その二億ヴァリスほど。勿論、少しだけで良いので……」
心配そうにフィンに見つめられ、ルインは恥ずかしそうに話しし始める。初ダンジョンでの治療費をヘファイストスに負担して貰ったことを。その後も武器や防具の整備方法を無償で教えて貰い、ヘファイストスや椿にどうやって恩を返せばいいのかと。
「わかった。全額支払うと誓おう。ただし、ファミリアとしてはなく、僕個人で支払うことにするけどね。それぐらいの蓄えはあるし、近々遠征に行くから目処はついてるから心配しなくていいよ。しかし、ファミリアとして出来ることは、明日神ヘスティアが来た時にでも決めることにしよう」
「ありがとうございます。もし良ければ、このことはヘスティア様には秘密にして貰えますか?心配かけたくなくて。ヘファイストス様の方は、僕の支払い分と言って貰えたら伝わると思うので」
フィンは、ルインのお願いを快く受けた後に、目蓋を重たそうにしている様子に気付く。体を休める様に促し、寝息が聞こえるのを確かめてから部屋を出た。
エイナとリヴェリアが偶然出会うことがなくなった為、自ら訪問する事に。少しエイナらしくない様な気もしますが、しっかりモノのルインと、夢見がちなベルとを比べて原作より少し過保護になっています。