心理学部のサイコパス   作:心理学部のサイコパス

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ポジティブサイコパス

どうもサイコです。

私は今、大学の心理学部に在籍して研究をしています。ちなみに2回生です。

 

心理学部を志す人、特に女子に多いですよね。

けど、心理学部に入った学生は大学を辞める率が高いです。まぁ、私調べなんですけど。

 

ウチのゼミの話で申し訳ないですが、ウチのゼミには10人の1回生がいました。

それが今では7人です。

単純計算で30%の人が大学を辞めていますね。自分で書いていて驚きです。

 

残った人は逆説的に変人と言えるかもしれませんね。

ウチの先生方はみんな「私と君たちは【研究者】という立場で対等だから、先生とは呼ばないでね?そんなできた人間じゃないから」とか言ってるので、それもあながち間違いではないかもしれないところがなんとも恐ろしいです。

 

心理学生が心理学部を辞める理由ですか?

簡単に言うと「イメージと違った」からでしょうね。

 

心理学部で学ぶのは、まぁ当然ですけど【心理学】です。

けれど、その【心理学】は一般的に言われている心理テストなどの心理学とは少し異なります。

 

一般的に言われている心理学のことを、私たち心理学部では【素朴心理学】と言います。

 

素朴心理学と心理学の違いはと言いますと……まぁ、こいつの研究を例に出せば簡単だと思うのですけれど。

 

「サイコー!!」

 

「真後ろで叫ぶな、このポジティブサイコパス。略してポジコ」

 

「見てくれ!この俺の最高の研究計画を!」

 

──────────────────────

研究計画(わかりやすさ重視で端的に書いています)

目的:人の社会的望ましさを調べるために行う。

方法:ダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルドの中で最も望ましい物を選んでもらう。

ダイヤモンドを選んだ人は強い意志が望ましいと感じている。

ルビーを選んだ人はエネルギッシュさが望ましいと感じている。

サファイアを選んだ人は冷静さが望ましいと感じている。

エメラルドを選んだ人は発想力が望ましいと感じている。

当てはまっていたかを5段階で(←重要!byポジコ)聞き、その度合いで調査の妥当性を問う。

──────────────────────

 

はい、こういうやつです。こういうのを素朴心理学と言います。

こういうのを心理学だと思ってる人が多いかと思われます。

全然違います。

 

「どうだ?どうだサイコ!素晴らしい研究計画だろう?ん?」

 

「おいポジコ、お前コレ、老師に見せたか?」

 

老師とはウチのゼミの先生のことです。

 

「ん?いや、まだ見せていないぞ!この前老師に研究計画について手酷く叱られたからな!まずは誰かに見せてから持っていこうと思っていたところだ!」

 

どこが違うのか。簡単です。心理学は科学なのです。

 

「んじゃ、評価いくよ。とは言っても私は老師じゃないから多分甘めの評価になるけど。」

 

「ドンと来い!」

 

「てめぇマジで何聞いてやがったこのクソボケがぁぁぁぁ!!」

 

「ふぁっふあ!?」

 

こんなもの、科学と言えるわけがないでしょう?

 

「おいポジコ、耳の穴かっぽじってよぉく聞きやがれ!まずてめぇ、この1年間何してきやがった!?」

 

「何って普通に講義を……」

 

「聞いてたらこうはならねぇだろうが普通はァァァァ!!お前の研究計画は【素朴心理学】だって何回言ったら分かるんだ!」

 

「いや……でも知りたいのは……」

 

「いいか!?心理学は科学だ!客観性と再現性、それに妥当性!この3つは、この3つだけは確実に抑えとけって前も言ったよねぇ!?この研究の客観性は!?なんでダイヤモンドを選んだら社会的望ましさに強い意志を望ましいと考えるん!?」

 

「ダイヤモンドは世界で一番固いだろう?その事が強固な意志を連想させて……」

 

「そ・れ・は!!お前の主観だろポジコ!客観性を担保しろってこの前の講義で教官殿にも言われてたろうが!」

 

まず1つ目に客観性。誰から見てもそうだと分かるような実験結果じゃないと科学とは言えない。

人の心を扱う心理学という分野を学び始めたばかりの私には何が良くて何がダメかハッキリ分からないことが多いけど、さすがにこれは酷すぎる。

 

何が酷いって誰が見てもそうはならない、なるはずがない実験デザインなのだ。

 

項目は4つとも社会的に望ましいとされているものばかり。その中で1番を問うものでもないから、どれに当たったとしても当てはまっているように感じてしまうのだ。

アンケートを取る形で行う質問紙調査ならもっと好ましいと考えているものに移る可能性がある(それでも客観性はない)けど、インタビュー形式で行うならまずダメ。

バーナム効果が発生するから当てはまる度合いを5段階で取ったとしてもどうせ全部5か4。

 

バーナム効果がある以上は客観性もないし、こちらが答えを誘導するような形になるからさらに客観性が下がる。

 

「次!再現性!ダイヤモンドとかルビーとかどうやって提示するつもりだ!」

 

「それはネットで画像を拾ってきて──」

 

「はいダメー!ネットで適当に拾ってきた画像を使用して、誰かが追証しようとした時は?どうやったらいいんだ?超ざっくり言うと、宝石の角度とか誰かが宝石を身につけた姿か否かで印象変わるだろうが!」

 

こういう研究をしたら、誰が書いたものだろうと論文にして発表する。それが教育機関じゃない研究機関としての大学の意義だ。

誰かがその論文を読んで全く同じ実験を再びできるようにしておかないといけない。それが科学論文として最低限のルール。

 

雑誌をディスるわけじゃないけど、それが出来ないと論文はその辺のゴシップ雑誌やコスメ雑誌と変わらない、実験としてはゴミ以下のものに成り下がる。

 

「最後妥当性!お前この実験デザインと質問項目どうやって選びやがった!?」

 

「あぁ、全部自作だ!Jーstageで調べてみても同じことをやってる論文がなかったからな!何者の手も借りずに1から自分で作り上げた!」

 

「それがダメだってこの前老師とお師匠に説教されたばっかだろうが!!」

 

誰から見ても妥当だと言えるような実験デザインを作らないといけない。これはどの科学分野でも同じ、至極当然なことだ。

 

とは言っても、たかだか2年しか心理学を勉強してない私たちみたいなひよっこがそんなことをできるわけが無いし、学会で発表しようものなら一部ハロー効果も加わって私たちの実験の妥当性がある程度低く見積られる。

まぁ、そんなことなくても色々とツッコミどころはあるのですけれど。

 

だからこそ、先人たちの威光で私たちは論理武装するのです。

先行研究がこの尺度を使っているから

先行研究の方法がこれだから

先人たちの妥当性が担保された研究で行われたのだから、私の研究の妥当性は確かに担保されているはずだ、とね。

 

ここまでが、心理学が最低限担保するべき3つのこと。

逆に言ってしまえば素朴心理学はこの3つをどうしても担保できないから研究としてはゴミ以下。

 

勘違いして欲しくないのが、私は素朴心理学がゴミ以下だとは思ってないことだ。

素朴心理学はあくまで研究としてはゴミ以下だけど、エンターテインメントとしては悪くないと思っている。実際、楽しんでる人も多いですしね。

 

「分かった。俺にはまだまだ足りないところが沢山あるんだな!時にサイコ、お前はどうすればこの研究計画が改善されると思う?」

 

「まず素朴心理学を使って研究しようとするのやめろ。」

 

「はっはっはっ、つれないなぁ。」

 

だいたい、こういうふうに素朴心理学と心理学が違うことを目の当たりにした人は、思ってたのと違う、と言って挫折してしまう。ウチのゼミの30%はそれで辞めたから。

 

けどポジコはそれでも大学を辞めないし、素朴心理学も諦めない。

 

なんでも良いように捉えて、なんとか素朴心理学で研究できる方法が─自分は知らないだけで─あると考えて老師やお師匠、教官殿の教授3人組に凸るのだ。

 

これが彼がポジティブサイコパスと呼ばれる所以なのだ。

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