心理学部のサイコパス 作:心理学部のサイコパス
どうもサイコです。
某大学の心理学部2回生をしています。
心理学部について話忘れていたことがありました。いけませんね。
心理学部はどの大学にもあるという訳ではありません。
では心理学は大学では学べないのか?
そんなことはありません。心理学部はなくともたいていの大学には心理学科があります。
臨床心理学科とか、社会心理学科、人間行動学科、人間科学科など、名称に違いはあれどある程度どこにでも存在するのです。
学科、ということはそれを統べる学部があるはずで。
では心理学科はどこに属するかと言いますと、まぁなんの面白みもないのですけれど、文学部か社会学部にあります。
そうです。心理学はゴリゴリの文系です。
まぁ、それもあって素朴心理学と勘違いする人もいるのでしょうけれど。
そうです。私は文系だったはずなのです。
「サイコぉ……」
「む、どうしたネガティブサイコパス、略してネガコ。いつも以上に死にそうな顔をしているじゃないか。」
「ご、ごめん……」
「謝ることかね?もっと自分に自信持ちなよ。」
「そう……だね……」
「それで、今回は何?t検定?χ²検定?」
「うん……t検定……あ、あと……因子分析が……分からない……」
なのになんで、計算ゴリゴリの
補足しておくと、t検定もχ²検定も分散分析も、全部統計を取ってそれが平時と比べて有意に高いかそうでないかを調べるための計算式です。t検定の式は省きます。分母に√がつく計算式とか誰が書くか。
「むぅ、必須科目じゃないか。」
「そう……だね……」
「落ち込むなー。一個ずつ片付けよう。まずは分散分析ね。どこが分からないの?式そのもの?」
「ううん……代入値が……分からない……」
ただ公式に当てはめるだけなら、まぁできないことは無い。
けれども、代入値もまた別の方法で出さないといけないのが検定の厳しいところ。
某理系が恋に落ちる漫画で理系科目として人間科学が紹介されたけど、実を言うと人間科学は理系じゃない心理学に分類されます。
が、同漫画で紹介されているように、心理学はゴリゴリの理系科目と言っていいわけです。
文系の皮を被った理系、それが心理学。
「具体的には?」
「dfの出し方とA・Bの代入数値……」
「あぁ……なるほど……」
「初歩の初歩……?聞いちゃダメだった……?」
「そんなわけないでしょうが。小学一年生に掛け算やれって言わないでしょ?」
「???」
「あー……知らないことができるわけないからそんな事言わないよってこと。」
とはいえdf─自由度の出し方が分からないって相当だぞこれ……
「観測値の数-1がdfの出し方だよ。水準数で増えたりはするけど。」
「???すい、じゅん……?」
「マジか、そこからか。」
出し方は簡単だけど意外に知らない人がいるっていうのが危うい。理系やるつもりさらさらなかった人の集まりだからそれも仕方ないか。
「実験で調べたいことに何か影響するであろうもののことを要因って言うよね。心理学は要因同士の比較をするわけだけど、比較のために要因1つに2つ以上の種類がある。この種類のことを水準って言うよ。おっけー?」
「……ダメ」
「手強いな。」
うーむ……なら仕方ない。ネガコの相談内容の模擬データとはいったんおさらばして、もっと簡単なt検定の実験デザインで自由度説明するか。単純化すればいいんだよ。だいたいそれで解決出来る。
……df分からなかったらどんだけ簡単にしてもt検定の理解出来なくない?
まぁ、気にしたらにっちもさっちもいかなくなるから考えない方がいいか。
「例えば食パンの厚みによる売れ行きが西日本と東日本で変わることを調べたいとするね。この時の独立変数は?」
独立変数とは、調べたいことに影響するであろうもののことです。いくつでも設定できます。いくつも設定すると大変なことになるけど。
「……地域?」
「そうだね。この時の水準数、この場合は比較してる地域の数はいくつ?」
「…………西日本と東日本があるから……2水準……かな?」
「そうそう。ここまでが独立変数─要因の数と水準の数の話だよ。」
「分かった……気がする……?」
こういう、積み立てていく理解は最初で躓くと後が全部おじゃんになります。この数学的な検定が分からなくてやめていく人、単位が取れずに留年する人もいるんじゃないでしょうか?
「わかったところで説明に戻ろう。dfは観測値-1だよ。課題で取ってきたデータでは、第一要因のデータ数は10人分あるから?」
「観測値-1だから……9?」
「そうそう。」
ネガコが例題のプリントを出して示してくれた。書き込んだ感じを見ると分かってそうかな。
「……それじゃあ、これを、dfに代入……だね?」
「違うよ。」
「…………!?」
ここもまた、難しいところなんだけど。
「びっくりしないの。ネガコが今示したのは第一自由度、水準の一つ目の自由度だね。では水準は?」
「……!もう一つ、ある……!」
「正解。だから自由度は2つ。よろし?」
「うん……!あっ……でも、どっちがどっち……?」
ネガコが私に聞いてきました。でも、それはいったん置いておきます。
「後でね。先にA・Bの代入値について説明するよ。結論から言うと、A・Bは要因の観測値の不偏分散だよ。不偏分散の出し方分かる?」
「…………」
ネガコ、なぜ急に黙る。
「……ネガコ?不偏分散はどうやって出したらいい?」
「が……頑張って……?」
嫌な予感が的中した。そこからか。
「頑張っても出ないよ?観測値を全部平均してから観測値-平均値を観測値の数だけ計算。それを二乗して全部足してから観測値の数-1で割る。これで不偏分散。√つけたら不偏分散から求めた標準偏差出るけど、今回はいらないよね?」
「…………うん。課題には……出てない、よ?」
「なるほど、じゃあその通りに。どう?A・Bの出し方分かった?」
「なんとか……」
一回は教官殿の講義でやったから口説明だけでもいけるかと思ったけど、的中してくれて良かった。
さすがにここから詳しく説明したくはない。
「そのA・Bのそれぞれの自由度にさっきのdfを代入すればおっけー。AとBでdfは変わってくるから、どっちがどっちか間違えないようにね。」
「分かった……!」
それは何より。
「それで……因子分析は……?」
「知らない。」
「…………え?」
「因子分析は人間がやるものじゃない。パソコンに適当に入れてスクリープロット出してそれ見てやるしかない。昔の人は手計算でやってたらしいけど、アイツら人間じゃない。サイコパスだ。ちなみに分散分析も同じだからそっちも聞いてくれるな。」
いくら専門性の高い講義を受けていたとて、分からないことも沢山あります。
適度に理系の能力を持ちつつも、分からないところは理論だけは押さえてなんとか使えるようにはしておく。そんな諦めを持っていないと心理学部はオススメ出来ません。
それを全部全部やろうとすると、途端に自分に自信が無くなってしまいかねません。
式を作る、もしくは完全に理解して手計算で全てやる、なんてことはたった2年だけしか心理学をやっていない、ましてや文系だった私たちのレベルでは、到底不可能です。
そもそもそんなことはテスト作ったり計算方法を見直す人達に任せておけばいいのです。
それを求めてしまったから彼女はネガティブサイコパスになってしまったのかもしれません。