翔陽じゃない翔陽   作:へたくそ

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2 襲来

日が完全に落ちた頃、翔陽と潔子は二人で校門前で並んでいた。

 

 

 

「さっきはありがとうね。おかげで落ち着いた」

 

「いえ、先輩が元気になったなら良かったです。それじゃ俺はこれで」

 

 

 

急がなければ翔陽の帰り道は危なくなる。この学校の行き帰りには、山を一つ越えなければいけない。

チャリに跨り、漕ぎ始めようとした時

 

 

 

「あ、ちょっと待って」

 

 

 

潔子から制止の声がかかった。

 

 

 

「どうしたんですか?」

 

「自己紹介まだだったから。私は3年B組の清水 潔子。君の名前は?」

 

「1年A組、日向 翔陽です。それじゃ清水先輩、気をつけて帰ってくださいね」

 

「うん、日向君も」

 

 

 

 

翔陽はライトをつけて、自転車を走らせた。その後ろ姿を、潔子は見えなくなるまで見ていた。

 

 

 

 

 

「1年A組・・・か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼休み

 

 

 

「おーい翔陽!飯食おうぜ!」

 

「おう、いいよ」

 

「今日はこの後練習はしないのか?」

 

「体育館使えないしな。今日はゆっくりしてるよ。それより廊下が騒がしいけど、喧嘩でもあったのか?」

 

「さぁ?またサッカー部と野球が言い争ってるんじゃ無いか?」

 

 

 

この学校のサッカー部と野球部は昔から仲が悪く、何か事ある事に問題を起こしているのだ。

翔陽達1年も、最近はそれにも慣れてきたので、気にせず昼食の準備をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この騒ぎの原因はサッカー部と野球部に揉め事では無く、全く違う原因にあった。

 

その正体は清水 潔子。本人は気付いてないが、この学校ではかなり有名人だ。

一年生の間ではまだ知られてはいないが、かなりの美人がいると言う事で注目の的になっている。

 

 

 

 

「(久々にこの階に来たけど、何か注目されてる?それよりも1年A組は・・・あ、あった)ねえ、ごめん。ちょっといいかな?」

 

「え・・・・?あっ、はっはい!な、なんですか!?」

 

「このクラスに日向君っている?」

 

「え?ひ、日向ですか?いますけど・・・、あ、おーい日向!お前にお客さんだぞー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ翔陽、昨日聞いてきた陸上部の清水先輩は見に行ったのか?」

 

「ん?あぁ、見に行ったよ。なんで?」

 

「どうだった?綺麗だったか?可愛かったか?」

 

「綺麗だし可愛かったよ。それにかっこよかった」

 

「まじか!それってもう最強じゃねえか!俺にも紹介しくれよ!」

 

「なんでそうなるんだよ。大体俺と先輩はなにも

 

「おーい日向!お前にお客さんだぞー」

 

 

 

日向は呼ばれた方に振り向く。すると、潔子が日向に向かって手を振っていた。

 

 

 

「おい翔陽、『清水先輩とは何も』の先はなんだ?何も無いと言いたかったのか?それにしては随分と仲がいい様に見えるが?」

 

「悪い、今日は一緒に食べれないわ」

 

「この裏切り者がああああ!」

 

 

 

クラスメイトは泣きながら教室を飛び出していった。

商用はクラスメイトが飛び出していった後、潔子の元に向かう。

 

 

 

「昨日ぶりですね、先輩。こんにちは」

 

「うん、こんにちは。いきなりごめんね?もしかして邪魔だったかな?」

 

「いえ、アイツの事は気にしないでください。それよりどうしたんですか?」

 

「もし良かったら、一緒にご飯を食べようと思って。他に約束が無いならだけど」

 

 

 

その一言に周りが一斉にザワついた。これだけの美人がいきなり翔陽を昼食に誘っているのだ。

しかも潔子は3年で、翔陽は1年。一体どんな接点があるのか、周りは気になって仕方なかった。

 

 

 

「全然大丈夫ですよ。一緒に食べましょう」

 

「うん、それじゃ中庭で食べようか。ここじゃ何故か目立っちゃってるみたいだし」

 

「何故かって、まさか分かってないんですか?」

 

「ん?日向君は分かるの?」

 

「えぇ、まぁ・・・。」

 

 

 

潔子がポカンとした顔でこっちを見ている。どうやら本当に分かっていないようだ。

これは教えた方が良いものか。とりあえずはここを離れた方が良さそうだな。

 

 

 

「まずが中庭に行きましょうか。少し待っててください」

 

 

 

翔陽は、出しかけていた弁当をしまい潔子と一緒に教室を出た。

中庭に向かうまでの間、周りからの視線は凄かった。男女問わずに注目されている。

特に男からの死線がやばい。本当に殺されそうな勢いだ。

 

 

今日の天気は快晴。中庭にあるベンチに座ると、涼しい風が優しき頬を撫でる。

外で昼食を食べるにはもってこいの天気だ。

 

 

 

 

「それじゃ、食べようか」

 

「はい。いただきます」

 

「いただきます」

 

 

 

二人は弁当の蓋を開けて食べ始める。二人は昨日会ったばかり。勿論会話なんてあるはずも無く、ただただ弁当を食べているだけ。

 

 

 

「(なんで俺の事を誘ったんだろう。何か話した方が良いよな。でも何の話をしたら良いんだ・・・)」

 

 

 

翔陽は焦っていた。女子と弁当を食べるのは翔陽にとっては初めての経験だ。それじゃ無くとも女子と関わる事なんて殆ど無かった。

そんな翔陽が先輩の、ましてやかなりの美人の先輩と一緒に昼食など、何を話して良いのか全く分からない。

 

 

 

「昨日は、ありがとう」

 

「え?あ、いえ。俺は何もして無いです」

 

「そんな事ない。どんなに練習してもタイムは伸びなくて、自分には無理なんだって思ってた。才能がないんだって」

 

 

 

話している内容は、今まで潔子が悩んでいた事だった。いくら練習しても成長できずに、周りに置いてかれている。

ここが限界なんだと、自分で知ってしまったからこその絶望だった。しかし潔子の顔はどこか晴れたような顔をしていた。

 

 

 

「でもそれでも良いなだなって思えた。私は楽しくて走っていた。確かに上手くなれないのは少し悲しい。でも、それ以上に楽しめなくなるのはもっと悲しい。それを日向君が教えてくれた。諦めない事はかっこ悪い事じゃないって言ってくれたから。だから」

 

 

 

 

『ありがとう』

 

 

 

日向に向けたれたその笑顔は、まるで天使のような笑顔だった。

 

 

 

「ん?日向君?どうしたの?」

 

「あ、いえ。なんでもないです・・・」

 

 

 

あまりにも綺麗な笑顔に見惚れてしまった。ずっと見ていたと思ってしまう程に。

だが自分が潔子を凝視している事に気づき、急いで顔を逸らし、再び弁当を食べる。

 

 

 

「そっか」

 

「・・・」

 

 

 

そこからの会話は無かった。昨日と同じように、二人が並んで座っているだけの時間。

しかしその時間は、二人にとってどこか心地よいものに感じたのは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔陽てめええええあの清水先輩と何があったんだあああああ!!!美人な先輩は俺に紹介しろって言ってんだろおおおお!!!!」

 

「うるさいし知らねえよ!てか揺らすな離せ!!!」

 

 

「そこ!翔陽!モブうるさい!!!授業中だぞ!」

 

「モブってひどくねえ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、潔子おかえり〜。なんか良いことあったの?」

 

「ただいま。うん、あったと言えばあったかな」

 

「えぇ〜!なになに!?気になる教えて!」

 

「う〜ん・・・ダメ」

 

 

 

 

 

 

 

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