【悲報】400年以上の暇が確定してる吸血鬼に憑依した件【暇すぎ】   作:音佳霰里

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…はじまるよ!(カーニバルファンタズム並感)


最終話・【攻略】幻想入りして吸血鬼異変に参加するスレ【開始】 後編

「――八雲、紫……――!」

 

 力無く私を見上げるフランを、私は優しく横たえる。

 そして、愛する妹を、すっかり姿かたちの変わってしまった妹を、こんなボロボロに仕立てあげた下手人――幻想郷の支配者たる八雲紫を、力強く睨みつける。

 

 八雲紫は、何故か面白そうなものを見つけたような表情でこちらを――正確にはフランの方なのだが――見ていた。

 

 その余裕そうな表情が、さらにこちらの怒りと焦りを加速させていく。

 

 そもそも、あの九尾の妖狐がこの幻想郷においてのトップであるかのような口振りをしていたのに、実際には更にその上の存在が居たでは無いか。

 まるでこちらを舐め腐っているように感じられるその振る舞いにより、こちらの怒りのボルテージは急上昇だ。ブーメランだとは言ってはいけない。

 

 私の怒りが頂点へと達せられようとしたその時、八雲紫に動きがあった。

 

 突如として空間が開け――否、裂け、中から無数の武器と思しきものたちが現れてきたのだ。

 それらの中には標識や電柱など様々な種類があり、恐らく外の世界から拾ってきたものなのだろうと推測することが出来る。

 

「……何か言い残すことはあるかしら?」

 

 まるで自分の勝利を確信しているかのような、そんな余裕ぶった八雲紫の声が、フランの自室と化していた地下牢に響き渡る。

 

 目だけを動かして辺りを見回してみると、もう既に私たちの周りは360度を包囲されているみたいだった。

 

 ――上等よ! 

 

 そうひとり心の中で意気込む私。

 

「――フッ、こんなので私に勝ったつもりなのかしら? もしそうなのだとすれば、勘違いも甚だしいわね、八雲紫」

 

「っ!?」

 

 私の言葉に驚愕している八雲紫に、私は勢いよく人差し指を突き付け、力強く言い放つ。

 

「私はね……私は! フランという妹がいる限り!」

 

 

「――最強なのよっ!」

 

 

「それは例え、あなたたち幻想郷が相手でも、変わることは無いのよっ!」

 

「……」

 

「――かかって来なさい、幻想郷の賢者さん? この私が……紅魔館の主、レミリア・スカーレットが相手になるわっ!!」

 

 

 そう言うが早いか私は、フランを抱えながら八雲紫の所まで飛翔する。

 

「来なさい! 『グングニール』!」

 

 右手を後ろへと向けながら、そう叫んで呼び出すのは、北欧神話の主神『オーディン』が持っていたとされる槍であるグングニルを、魔法の力を用いて再現し、理論となる物を定着させた、私だけの槍。その名も『グングニール』。

 

 何百年と使い続けた私の主武装であるグングニールは、慣れ親しんだ軌道を描きながら虚空から飛び出してきて、私の手の中へと収まってくる。

 

 私はその槍を、慣性の法則に従って前方向へと押し出してやる。

 

 するとグングニールは、飛来してきた際のスピードに加え、吸血鬼由来の馬鹿力をその身に宿しながら、目にも留まらぬスピードで八雲紫へと差し迫る。

 

 そしてこのグングニールは、その逸話を昇華し特性としている。

 故に、投槍の威力は唯一無二、必殺必中となる――! 

 

 しかし彼女は頸部に向かって放たれたそれを、首を僅かに傾けることで回避する。

 

 だが私にとっては、そんな行動も想定内。

 

 ワタシはそれに焦ることなく、冷静に相手の攻撃の対処に当たっていく。

 

 上下左右へ、フランを抱えながらの武具の嵐の回避。

 

 それは容易にできることではなく、段々と私の体には傷が溜まって行く。

 いくら吸血鬼の体だからといって、すぐに傷が治るという訳でもない。

 治るスピードにも限度というものがあるのだ。

 

 段々と私の体には赤い線が刻まれてゆく。

 線が一本増えるのと時を同じくして、私の感覚神経が痛みと熱を脳へと届ける。

 

 しかし、この腕の中にフランがいる限りは――私の最愛の妹がいるからには、絶対に弱音を吐く訳には行かないのだ……! 

 

「――ハァァァァァァァァァッ!!」

 

 そして、私の目の前から武具達が消える。

 私があの弾幕を抜けたのだと理解するのに、数瞬も要らなかった。

 

 故に、私の取る行動は単純かつ明快。

 

 私は右手を強く握り、大きく後ろに逸らす。

 

 八雲紫の眼前まで肉薄し、相手のその顔をしっかりとこの目に焼きつけるかの様に、これでもかと睨んでやる。

 

「なッ――!?」

 

 八雲紫の目が、驚きに支配され大きく見開かれる。

 当然だろう。彼女の調べたであろう『私』はこの様な行動を取る性格では無かったはずなのだから。

 

 しかし、彼女は一つ、大きな事を失念していた。

 

「私の――」

 

 ――それは、私が妹の為ならば火の中水の中の、お姉ちゃん(シスコン)だったという事だァァァッ!!! 

 

「――勝ちだぁッ!」

 

 今まで大きく後ろに逸らし、力を貯め続けていたその右腕を、エネルギーの向かう方向に従って解き放ってやる。

 

 妖怪を――否、生物という枠組みを超えたこの力が今、八雲紫の右頬へと向けて吸い込まれてゆく。

 

「ガぁっ……!」

 

 辺り一帯に響く、鈍い打撃音と八雲紫の短い呻き声。

 

 ――当たった、それも会心の出来だ。

 

 私は誰に聞くまでもなく、そう直感する。

 

 当たり前だ。

 私の拳は、今までにないほどの力とスピードを持って相手の顔にクリーンヒットした。

 

 これで勝ちを確信しない奴など、一体どこにいるのだろうか。

 

 私は、野生動物が誰に教えてもらうのでもなく歩き出す様に、人間の赤子が自然と言葉を喋り出すのと同じ様に、その位自然にこの戦いに勝ったことを確信していた。

 

 

 

 

 ――八雲紫が、何事も無かったかのように立ち上がってくるまでは。

 

「――、は……?」

 

 私の思考が一気にゼロに近しいものへと堕ちてゆく。

 

 おかしい。

 

 ――何が? 

 

 八雲紫が、普通に立っていることが。

 

 ――何故? 

 

 だって奴は、私が、この拳で倒したはずなのだから。

 

 ――どうして奴は、立っていられる? 

 

 ……それ、は……。

 

「――可哀想ね……」

 

 堂々巡りを始めてしまった私の耳に届いたのは、八雲紫の呆れた様な、それでいてどこか嘲りを含んだ、そんな声だった。

 

「……可哀想? 誰が?」

 

「フランドール・スカーレットよ、貴方の妹の」

 

 フランの名前が奴の口から出てきて、私の思考は一気に冷水を浴びたかのように冷静さを取り戻してゆく。

 

「……フランの何が可哀想なのかしら?」

 

 この質問は、誰だってする様な、そんなありふれた質問内容。

 家族が『可哀想』なんて言われたら、誰もがそう聞くような、そんな陳腐な内容だった。

 

 しかし、私の質問とは違って、彼女の回答は今度こそ私の思考を凍りつかせるのに充分なものだった。

 

 

 

 

「彼女の性格が変わった理由……それは、貴方の――レミリア・スカーレットの所為なのよ」

 

 

 

 

 

 …………………………時が止まる。

 

 いや、本当は時なんて止まっていないことを本能によって理解にこぎ着けていたのではないか……? 

 だって、ありえないから。

 

 もし本当に時が止まっているのならば、私の心臓の鼓動はとても静かな物で、私の頬を伝うこの汗は、動くことなんて無いはずだから。

 

 もしも、本当に時を操れる能力を持つ者がいたとするのならば、今さっきの八雲紫の言葉なんて、過去を改変して無かったものに出来るはずなのだから。

 

 そんな理性的な私の思考が、やけに正確に刻まれる時間の進みを把握させた。

 

 誰も身動ぎひとつせず、ただただ黙りこくっているだけの光景。

 そんな光景はつまらないと言わんばかりに、八雲紫は芝居がかった動作で話し始める。

 

「――レミリア・スカーレット。貴方は、優秀だった。それこそ、『スカーレット家の由緒正しい末裔』や『ドラキュラ伯爵の血を継ぎし者』なんて周りから呼ばれる位には」

 

 ……それは、私だって知っていた。

 私がスカーレット家の最高傑作であることも、そしてこの家が、かの有名なドラキュラ伯爵の血を引く家系であるということも。

 

 だが、それとフランの性格の急激な変化に一体どんな関係があるというのだろうか? 

 

「いいえ、ちゃんとあるわ。スカーレット家の中でも最高傑作とされたレミリア・スカーレットと、その能力と歪なその両翼の所為で周囲から忌み嫌われ続けてきたフランドール・スカーレット。

 子供が大人に憧れるのと同じように、フランドール・スカーレットも貴女に憧れ――そして現実を知った」

 

 正直な所、『まさか』と『やはり』というふたつの相反する感情が、今の私の脳内を駆け巡っていた。

 

 あの頃のフランは、今と比べるととても明るくて、それでいてよくできた子だった。

 

 私が目立つべき時には、一歩引いた位置から私のことをサポートし。

 私が疲れた時には、親身になって相談に乗ってくれたり、今は亡き両親に内緒で手料理なんかも振舞ってくれたりもした。

 

 当時の私は、フランのそんな献身を深く考えることなく受け入れていた、受け入れてしまっていた。

 

 今考えると、あの行動は全て私を輝かせる為に、自分のことを差し置いてでもしていた――つまり、あの子があの子なりに生きていくのを、諦めたということなのではないだろうか……? 

 

「そうよ。貴女はフランドール・スカーレットという存在の上位互換。ということは、彼女が『自己を殺し、姉を支える』という行動に走るのも当然の結果と言えるわね」

 

 私は、思わず腕の中で眠り続けるフランの事を見る。

 

 私の思い出の中に残るフランとは違った、いくらか成長したフランのあどけない寝顔が、私の方を向いている。

 

 しかし、先程の話に囚われ続けていた私は、フランの顔付きに違和感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 ――あれ? フランって……こんな顔だったっけ……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな疑問が頭の中に湧いた直後、目の前に写る、フランの顔だけが歪んで、そしてぼやけて見えなくなっていく。

 

 彼女の顔を見ようと、少しでも思い出そうと、近づけてみても目を擦ってみても、そのぼやけ方には少しの変化も見られない。

 

 ならば、と私は悪あがきで、記憶の中に残るフランの顔を思い出そうとする。

 

 幼い頃に、私のそばに居てくれたフラン。

 辛い時も、苦しい時も、嬉しい時も居てくれた。

 

 そんな私の、数少ない大切な思い出が歪んでゆく。

 

「――」

 

 私の口から、知らないうちに声にならない声が漏れてゆく。

 

 フランは……どんな顔をしていたっけ? 

 

 可愛かった? それとも格好良かった? もしかしたら、中性的な顔つきなんかもしていたかもしれない。

 

 それでも、私の記憶からは楽しかった頃の記憶が――フランとの、記憶が抜け落ちてゆく。

 

 私は忘れたくなくて、消し去りたくなんか無くって。

 

 彼女との思い出を何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も思い出そうとする。

 

 しかし、私の記憶からは段々と彼女の顔が、声が、その記憶自体が薄れてゆき――私という存在を、根本から作り替えられる。

 

「あ、あぁ」

 

 口から悲鳴が零れ落ちる。

 それにすらも彼女との記憶が混ざっているような気がして、零れた悲鳴をかき集めようとして――ふと、気付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あれ? 私は、()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――夢を、見ていた。

 

 何の変哲もない、昔からよく見る夢だった。

 

 ただ、私はこれをただの夢だとは思っていなかったし、夢に出てくる人物達もまた、私が夢を見ていることを誰一人として指摘してくることは無かった。

 

 もちろん私は昔から、この夢がそういうものだと理解していたから、子供の思い描く絵空事のように、ヒーローらしく暴れ回ることなんてしなかった。

 

 私の住む館である紅魔館に、様々な者たちが集まっている夢。

 

 紫色の魔法使いは、自身の使い魔と一緒に紅茶なんかを飲みながら私のことを眺めている。

 

 美しい紅を持った門番は、見るもの全てをほっこりとさせるような笑顔であれやこれやとこちらに話しかけている。

 

 まるで満月を後にした様な儚い銀色の光をその身に宿す従者は、主たる私の後ろに控え、ひっそりと佇んでいる。

 

 ……これが、私の見る夢。

 

 でも、何かが足りない。

 ……何かって、何? 

 

 そう思っていると、ほら、またいつもみたいに目覚めの時がやってきてしまった。

 

 夢に出てくる皆は、私が目覚めそうになるといつも決まってこう言うのだ。

 

『――が待っているよ』って。

 

 これが何を指す言葉なのか、私には分からない。

 私がその言葉の指す存在のことを忘れてしまったのか、それともそもそも知らないのか、それすらも私は分からない。

 

 私を待っているのって、一体誰? 

 

――ぃ、ねぇ……! 

 

 私の、私達の運命の輪の中には、これ以上は誰もいないはず。

 

――ぇみねぇ! 

 

 ……それなのに、この胸に感じる喪失感は何なの!? 

 

 私に足りなかったもの、私から消えてしまっていたもの。

 それって、それって――! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――レミねぇっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……初めは、ただのロールプレイのつもりだった。

 

 ただ、綺麗な顔立ちをしている姉のその顔を曇らせてみたいという理由も込められた、掲示板の安価によって決まったから、と言う理由が、『俺』が『私』へと変わる切っ掛けだった。

 

 それでも、長年――それこそ、前世からしたら気の遠くなるような年月を姉や同居人たちと一緒に重ね、いつしかその偽りの仮面は、本心へと移り変わっていった。

 

 劣等感を抱え、転生者と言う大きな秘密を隠している私。

 

 一族の期待を背負いながらも、何の重圧も感じることの無い強い姉。

 

 どちらが先に潰れてしまうのかなんて、それこそ火を見るよりも明らかな事だった。

 

 だから、掲示板の安価によって決められた『記憶を失うロールプレイ』と言うのは、とても都合が良かった。

 だって、それは今まで私の感じていた劣等感やプレッシャーの一切を、捨てる切っ掛けとなれたから。

 

 確かに、それが逃避の一種であることなんて、理解していた。

 

 でも、だからと言ってそれが『俺』から『私』へと変わるのを止める理由にはならなかった。

 

 そうして地下に籠っていた私を変えたのは、これもまた掲示板の安価だった。

 

『私が周りにどう思われているのか、自分で聞いてくる』

 

 それは引きこもりの社会復帰(?)のミッションとしては丁度いいもので――私にとっては、とてつもなく残酷な物だった。

 

 ……そう思い込んでいた。

 

 しかし、私はそこで紅魔館の人々の優しさを、暖かさを知ることが出来た。

 

 私という存在は、紅魔館の一員としてちゃんと受け入れられていた。

 姉は、こんな紛い物である私を『家族だ』と言い切ってくれた。

 

 ……嬉しかった。

 

 アイデンティティー――つまりは自己の存在意義、などと重い事を言うつもりはなかったが、少なくとも私は、いるだけで自己の存在を認めてくれる場所が、私自身の居場所があるということ自体が、嬉しかったのだ。

 

 今は機会があまりなくてなかなか言い出すことが出来ないが、この吸血鬼異変が終わったら皆と食事会でもして、感謝の手紙でも書いて渡してみようか……? そう思えるくらいには、心が軽くなった様な。そんな気がした。

 

 だから、今度は私が……いや、『俺』が、誰かを助けてあげる番なんだ。

 

 だから俺は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――レミねぇ!」

 

 

 

 

 ――気兼ねなく、手を差し伸べることが出来るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 俺は、茫然自失としているレミねぇのその手を、力強く掴む。

 

 ――もう何処にも行く事が無いように、消える事がないようにと。

 

「ぁ、フラン、なの……?」

 

「あぁ! レミリア・スカーレットの妹、フランドール・スカーレットだ!」

 

「あ、あぁ……あああああああああああぁぁぁ! フラン、フラン……っ!」

 

 俺は涙を流しながら抱き着いてくるレミねぇを、力強く抱き留める。

 

 俺は視界の端から流れ落ちる、自身の心の汗を努めて無視しながら、レミねぇの存在を確かめるように、彼女の背中を優しく撫でてやる。

 

「ごめんな、ごめんな……!」

 

「いいえ、こちらこそ謝らなくっちゃ……。

 ってフラン、貴女口調が……!? 思い、出したの?」

 

「あぁ、思い出せたよ。レミねぇのおかげでさ」

 

 口調を戻したせいで、目を丸くしている姉の姿に吹き出す。……そんなに驚かれることなのだろうか? 

 

 俺はレミねぇの背中を撫でる手を止め、どちらからともなく離れる。

 俺達の間に以前のようなよそよそしさは無く、本当の『家族』だからこそ流れるような空気が流れていた。

 

「あのね、フラン。私も、あなたに謝らなくちゃいけないことがあるの」

 

 決意を決めた顔で、こちらの瞳を真っ直ぐに見つめるレミねぇ。

 

「……私は、あなたの事を分かっていなかった。いいえ、分かろうとしなかった。

 あなたは私の妹だから、何があっても大丈夫。

 そんな脳天気な考えのせいで、フランの心が閉ざされてしまうのが分からなかったの。

 だから、ごめんなさい。あなたと向き合えなくて。

 ごめんなさい。あなたと話せなくって。

 ごめん、なさい……!」

 

 そう言っているレミねぇは、次第に顔が下を向き、再び涙を零している。

 

 だが、俺は今度はレミねぇを抱き締めるような事はしなかった。

 ここで俺が抱き締めたとしても、それはレミねぇの謝罪に対する返答にはならないし、その行動は全力で謝ってくれているレミねぇに対して失礼だと思ったからだ。

 

 だから俺は、頭を下げるレミねぇの両手をとった。

 

「頭を上げてくれ、レミねぇ」

 

「っ……」

 

「俺はさ、感謝してるんだよ」

 

「かん、しゃ……?」

 

 俺は力強く頷いた。

 

「あぁ、感謝だ。

 寄り添ってくれて、ありがとう。

 認めてくれて、ありがとう。

 ――家族だって言ってくれて、ありがとう。

 そういう感謝さ」

 

 俺がそう言うと、レミねぇはしばらくの間目を大きく見開いてボーっとしていたが、やがてどういたしまして、とだけ言うと、花が咲くような笑みを浮かべるのだった。

 

 そうして俺達は、それが使命であるかのように、立ち向かう為に前を向く。

 

「――」

 

 見据える先にいるのは八雲紫。

 彼女は呆れた様子で何事かを呟いたが、それも一瞬の事で直ぐに表情を真剣な物へと切り替えた。

 

 俺は、一歩前へと歩み出る。

 まるで、何か運命のような力によって、導かれるかの様に。

 

「――勘違いしてたんだ」

 

 俺は語り出した。

 

「俺の投影は、ただ紛い物を生み出す為の物なんかじゃなかったんだ。

 俺に出来る事はただ一つ――」

 

 俺の脳裏に、次々と流れてくる文字たち。

 

 そのどれもが俺の事を応援するようなコメントで……。

 少しだけ、胸が熱くなった。

 

「――皆の想いを、形にする事だったんだ!」

 

 俺は叫ぶ。

 掲示板の向こうにいる、皆の想いをこの背に背負って――! 

 

「私はね、正義の味方になりたかったの」

 

 次に、レミねぇが俺の隣へと並び立つ。

 

「でもね、正義の味方になることは諦めたの。何故かって?」

 

 ここでチラッと、レミねぇは俺の方を見る。

 

「――妹の1人も救えないで、何が正義の味方よ! 

 そんな物になるくらいだったら、私はフランの、フランだけの正義の味方になってやるわ!」

 

 そして同時に、俺とレミねぇは手を前へと突き出す。

 

「「行くぞ、幻想郷の賢者! 

 ――武器の貯蔵は充分か!?」」

 

 こうして、俺達の最後の戦いは始まった――! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――数時間後。

 

「はー、罪悪感マシマシの姉妹百合てぇてぇ……」

 

 どこかの世界の狭間にて、そう呟く存在が居たとか居なかったとか……。

 

 

 

 

 

 

【悲報】400年以上の暇が確定してる吸血鬼に憑依した件【暇すぎ】

 

 

 

 

[完]




無事本編完結しました!
これも一重に読んでくださる読者様がいて下さったお陰です、ありがとうございました!

とはいえこのあともチョロチョロ書く感じになります!
特に紅魔異変(東方紅魔郷の中の異変の名前)の話とかは書きたいですね。

ですので、次回をお楽しみに!
ばいばーい。

(アンケート締切にします)

番外編を書く時の内容(上位2つを採用)

  • 主人公以外のコテハン付きメンバーの日常
  • 主人公がイメチェンする話
  • 幻想郷メンバーから見た主人公
  • 主人公、はじめてのおつかい
  • 幻想郷から外に迷い込んだ主人公のお話

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