【悲報】400年以上の暇が確定してる吸血鬼に憑依した件【暇すぎ】 作:音佳霰里
元のプロットから位相ズレが起きるくらいはズレてるのは秘密。
では最終話、どうぞ!
「──―フフ、懐かしいわね……」
私、レミリア・スカーレットは、手に持っている、一冊の分厚い本を手でなぞりながら、柔らかく微笑んだ。
少し日に焼けた本の表紙をなぞってみる。
──―吸血鬼の持ち物が、陽の光に焼けてしまうなんて。
そんな下らない洒落が思い浮かび、今度妹の前で披露してみよう、そんなことも考えたりしてみる。
──―と、思考の合間を縫って、小さくノックの音が耳へと届いた。
「入りなさい」
「失礼致します。お疲れ様です、お嬢様。軽食をお持ちしました」
キイ、と少しきしみながら空いたドアの隙間から、私の住む館である紅魔館、そこの住み込みメイドたる『
「──―? お嬢様、その御本は一体……?」
と、近くまで来て私の手の中にあるものが見えたのか、質問をしてくる。
「あぁ、これ? これはアルバムよ」
「アルバム……ですか?」
「そう。私と、フランの思い出が詰まった、ね」
そう言いながら、私は手の中のアルバムを、咲夜にも見えるように机へと置く。
フラン──―フランドール・スカーレットは、私の5歳下の妹だった。
昔は『レミねぇ、レミねぇ』と、まるで金魚のフンか何かかと思う程に私の後ろをついで歩いたものだが。
最近はもうそれもできなくなってしまったと思うと、少し悲しい。
「なるほど、フランドール様との思い出ですか」
「えぇ、そうよ。……そう言えば咲夜あなた、フランの事はどこまで話したのかしら?」
ふと気になって、咲夜に聞いてみる。
この子には少し前から、フランの昔話を聞かせてあげていたものだった。確か、咲夜が私の部屋を掃除している時に、このアルバムに挟まっていた家族写真──―お父様とお母様、そしてフランの揃った写真だ──―を見つけ、姉妹にしては羽の形が随分違う、なんて感想を抱いたのがきっかけだったか。
「えぇと、私を拾われる、少し前のお話だったかと。幻想郷に移住する時のお話でした」
……思い出した。
確かに最後に咲夜にしたのは、あのいけ好かない紫のスキマ妖怪と、フラン&私の連合軍(?)で戦いを挑んだところだったか。
最後にあんな話の切り方をしてしまったので、咲夜も大層話の結末が気になることだろう。
それもそうか、と私は思う。
フランがいってしまったのとすれ違うかのようにしてこの屋敷に転がり込んできたのが、今目の前にいるこのメイドなのだから。
「それじゃあ、今日はフランと私が、あのスキマ妖怪と闘った後の話からするとしましょうか」
──―エンディングの話をしよう、なんてね。
と言っても、語るようなことなんてこれといってないのが事実でもあるのだが。
「そうね、まず初めに言っておきましょうか」
「……?」
「咲夜、貴方はもうここにやって来てから、もう何年くらい経つのかしら?」
咲夜は頭の中でカレンダーでもめくっているのか、ひい、ふう、みぃ、と、数を数えている。
「そうですね、もう10年近く経ちますね」
そうか、もうそんなに経ってしまっていたのか。
咲夜のことを拾った日の光景を昨日の事のように覚えている私からすると、いつの間にそれほど時間が経っていたのかを思い知らされ、驚いてしまう。
光陰矢の如し、そんな言葉を門番の美鈴から聞いた事があったが、今その言葉の意味を実感させられた、そんな気がした。
「そうね、もう10年になるわ。でも咲夜?」
「はい」
「──―私もね。もう10年くらいになるかしら。フランとは、全く会えていないわ」
「……その、それって……」
何か見てはいけないものを見てしまった、そんな表情をした咲夜は、言葉尻を濁しながらも、何かを話す。離そうとする。
しかし、その決意は直ぐに消える。
「お嬢様。いつから、妹様とは……?」
「そうね、さっき言ったように、もう10年になるわね。あのスキマ妖怪──―八雲紫との戦いの日。あの子は何とかヤツに勝利したの。でもその2年後、あの子は急に居なくなった」
その日の事は、今でも胸の奥に巣食っている。深い絶望と共に──―。
それは、何の変哲もない日だった。
いつもと同じように目覚めを迎え、フランの所に顔を出しに行こうと考えた時のこと。
その日は何故か、慌ただしく響く、ドアの開閉音によって目が覚めた。
時計を見やれば、普段よりも3時間近く早く起きていた。
なるほど、道理で眠い訳だ。寝ぼけ眼を擦りながら、二度寝の魔力と必死に戦っていたその時。
私の部屋に、1人の人影が飛び込んできた。
『レミィ、起きてる!?』
パチュリー・ノーレッジだ。
彼女の本来の種族は魔法使いなのだが、紅魔館内の施設のひとつ、大図書館の司書も任せている。私の頼れる親友の1人だ。
『……なによパチェ、わたしがあさよわいのしってるでしょ?』
不機嫌になりながらも、私は返す。
が、次の彼女の一言で、眠気なんて吹っ飛んだ。
『──―フランが、フランが行方不明になったの、何か知らない!?』
今思えば。
あの子の性格がだんだん昔と同じ様に戻って行ったのも、ストレスによる症状のひとつで。
今思えば。
今思えば。
今思えば。
──―様々な『たられば』が、私の脳内を駆け巡る。
未だに混乱をしている指揮系統とは違って、手足はスムーズに、フランの部屋へと向かっていった。
兎にも角にも、まずはフランの部屋を見よう。
そう考えたのは、私だけではなくパチュリーも同じだったようだ。
それなのに。
それなのにどうして、不安感は拭っても拭っても、落としきれない血糊のように、私の心にへばりついているのだろうか──―?
そんな私の懸念を肯定するかのように、運命は私に
開け放たれた、妹の部屋の扉。
1箇所しかない、その入口で、涙を流しながら膝を着く私と、呆然と突っ立って、部屋の中を見つめている魔法使い。
私たちの目の前には、破壊され尽くした、妹の部屋だった物だけが、ただその身が朽ち果てるのを待っていたのだった──―。
私が語るのを終えると、部屋は重苦しい空気に満ちていた。
「……」
咲夜は、今の話の重さが受けきれていないのか、目の焦点がここに在らず、というような感じだ。
「その、だから私は、今あの子がどこにいるのか分からなくって……」
私はここで耐えきれなくなって、目線を下に落とした。
「その、お嬢様……?」
「? 何よ、咲夜」
咲夜はいつの間にか、その手にフランの映る写真を持っていた。
「えと、その、ひじょー……に申し上げにくいのですが……」
いつの間にか、その目線は私の背後に。
何を見てるのだろうか。私の後ろには窓しかないのだが。
咲夜の目線に注視すると、どうやら手元と向こうを行ったり来たり。
「……お嬢様につきましては、是非とも背後をお目に入れて頂きたいと言いますかなんと言いますか……」
「???」
これは珍しい。
あの完全で瀟洒なメイドである咲夜にしては、煮え切らない態度を見せている。
一体私の後ろに何があるのか、そう思いながら後ろを向く。
「っ」
目と鼻の先、窓枠に腰掛けるフランがいた。
「ぇ、っ」
1度顔を背けてから、目をゴシゴシとこする。
あまり衛生的では無い行為なのだが、そんな注意も、目の前の非現実的な光景には劣るのだろう。
もう一度ちゃんと後ろを向く。
「──―」
幻じゃなかった。
「久しぶりだな、レミねぇ」
なんか喋った。
──―なるほど、どうやら剥いていたのは後ろではなく私の目の方みたいだ。
「ちょっ!? 現実を認めたくないのは分かるけど、なんか吸血鬼に有るまじき逃避の仕方は止めて!? 羽から灰になってるから灰に!」
パシパシと、フランに軽く頬を叩かれる。
「──―夢じゃ、ないんだ」
「あぁ、夢じゃないさ。夢なんかじゃ、ない」
もう、もう限界だ。
「──―フランっ!!」
私は、渾身の力でフランの体へと飛び込む。
軽く背中に腕が添えられるのを感じれば、私の求め続けていた物が、ようやく帰ってきた感覚が。
フランの腕の中に。
顔を上げれば、私と似た顔立ちの、でも性格は真反対の、そんな唯一無二の妹がそこにいて。
「──―ただいま、レミねぇ」
なんて、笑顔で言ってくるから。
「──―お帰り! フラン!!」
──―願わくば、こんな平穏が続きますように。
―――こんなことも、あったのかもしれないね。
補足
・どこにいたの?
レミリア
「フラン、あなた今までどこにいたのよ。どこ探しても見つからなかったのよ?」
オリ主フラン
「ちょっと外の世界にね(しぶりんとかに会うため)」
レミリア
「…なんでよ?」
・あの部屋で、一体何が…?
レミリア
「それじゃあ、あの部屋の惨状はなんだったのよ…」
オリ主フラン
「レミねぇ、あそこで八雲紫と戦った事忘れたのか?」
割と張り切った自覚のあるレミリア
「…あっ」
・どうやって外の世界に?
レミリア
「でも、どうやって外の世界に行けたのよ? 幻想郷は、周囲に結構強めの結界があったはずだけど…」
オリ主フラン
「禁則事項です☆」
レミリア
「えっ」
直死の魔眼の設定を忘れられかけていたオリ主フラン
「禁則事項です☆」