【悲報】400年以上の暇が確定してる吸血鬼に憑依した件【暇すぎ】   作:音佳霰里

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あけましておめでとうございます。音佳霰里です。
新年一発目の投稿は、本編…ではなく、番外編になっております。
番外編ということで、今回は掲示板形式ではなく、小説形式で話が進んでいきます。
一応他の作品等で表現の練習は行っているのですが、どうしても自分の文章が受け入れられない、という方は容赦なくブラウザバックしちゃってください。

それはそうとFGOで千子村正実装ですね、引きませんが。
一応、村正って衛宮士郎が依り代となっているので、引きたい気持ちはあるのですが、弊カルデアにはアサシンのサーヴァントがいない関係で、セミラミスに二万円を突っ走ました。宝具一にはなったので良かった。

…いつからここはFateの話をする場所になったんだ?

さて、それでは第9話、どうぞ!



【番外編・その1】フランドール・スカーレット(憑依)の潜入ミッション

 俺……いや、今は掲示板ではないから、一人称は『私』としておこうか。

 

 とにかく、『私』こと『フランドールスカーレット』は、今、とても大変な状況に陥っていた。

 なぜこんな事をしなければいけないのか……などと思いながら自身の体を見下ろしてみる。

 

 そこには、黒色のドレスのようなふわふわとした服があり、腰の辺りで、端にレースの付いた前掛けのようなものが縛って固定してある。

 頭の方を目だけで見上げてみれば、そこには少しの重みが。頭の上に鎮座している異物を手で持ってみれば、それは『ZUN帽』などと呼ばれている、丸みを帯びた独特な帽子であることが分かる。

 この描写だけで、もう私が何を着ているのか分かった方もいるであろう。

 

 ―――そう、メイド服である。

 

 それも、未来の紅魔館のメイド長である『十六夜咲夜』が着ている様な、人間向きの物ではない。

 生憎、私にそのサイズは全くと言って良いほど合いそうに無いからな。ここまで読めば、必然的に今私の着ている服が分かって来るだろう。

 

 ―――そう、妖精メイド用のメイド服である。

 

 何故私がこんな妖精メイド向けのメイド服なんかを着ているのかというと、それは、私の立てたスレッドである『フランさん総魔改造計画』の安価に原因があった……

 

 


 

 

 それは、昨日の朝、いつもの様に、転生者のみが扱うことができる脳内掲示板内で、魔術の訓練の報告や、雑談に興じていた時の事だった―――

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

770:悪魔の妹(擬き)

 暇だなー(MUR)

 

771:名無しの転生者

 暇っすねー(TDKR)

 

772:なよ竹の憑依姫

 >>770>>771

 あんたらそんなBB劇場みたいなことやってる暇があったら何するかぐらい考えときなさいよ……

 

773:名無しの転生者

 >>772

 淫夢知ってるのか……(困惑)

 

774:名無しの転生者

 >>773

 あたりまえだよなぁ? 

 

775:悪魔の妹(擬き)

 あっそうだ(知将)

 じゃけん安価やりましょうね^~

 

776:名無しの転生者

 >>775

 良いゾ^~これ

 

777:クールなわんこアイドル

 や っ た ぜ

 ……これで>>1にあんなことやそんなことを……! 

 

778:名無しの転生者

 >>777

 草

 

779:なよ竹の憑依姫

 どうしてこのスレこんなに汚いの……(涙目)

 

780:悪魔の妹(擬き)

 >>777

 おじさんやめちくり^~

 

781:名無しの転生者

 >>779

 KGY様逃げてはだめですよ

 

782:なよ竹の憑依姫

 >>781

(´・ω・`)

 

783:クールなわんこアイドル

 >>780

 おじ↑さん↓だとふざけんじゃねぇよお前! お姉さんだろォ!? 

 

784:名無しの転生者

 >>783

 KBTITやめーや

 

785:悪魔の妹(擬き)

 ……いい加減に安価イクゾー! 1! 2! 3! 4! (新曲!)ダイナモ感覚ダイナモ感覚YO! YO! YO! Yeah! 

 なんかやること

 >>818

 

786:名無しの転生者

 >>785

 DJDJやめーやwww

 

787:名無しの転生者

 >>785

 申し訳ないがノーナを汚すのはNG

 

788:名無しの転生者

 なんか今回安価遠いですねー(詠唱開始)

 スレの中に荒らしもいないし、その辺のスレとはえらい違いだ

 

789:悪魔の妹(擬き)

 ああ。スレの荒らし厨は軒並み向こうに行ってんのかもな

 

790:名無しの転生者

 まっ、そんなの関係ないですけどねー

 

791:悪魔の妹(擬き)

 上機嫌だな

 

792:名無しの転生者

 そりゃそうですよ! みんな助かるし、タカキも頑張ってたし、俺達も頑張らないと! 

 

793:悪魔の妹(擬き)

 ああ……

(そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺が立ち止まらないかぎりスレは続く)

 

794:なよ竹の憑依姫

 >>788->>793

 なんで鉄オルの例のシーンのコピペ改変してるのかしらこいつら……

 てかこのままだと>>1が死なない? これ……

 

795:クールなわんこアイドル

 ぐっ! (キキィーッ! ダダダダダダダダ……

 

796:名無しの転生者

 >>1? 何やってるんだよ? >>1! 

 

797:悪魔の妹(擬き)

 ぐぅっ! うおぉーー! (バァン! バァン! バァン! ガン! ガン! ザシュッ! 

 

798:グランドクソ野郎

 う、あっ! 

 

799:なよ竹の憑依姫

 >>1とマーリンが撃たれた!? 

 

800:悪魔の妹(擬き)

 はぁはぁはぁ……なんだよ……結構(安価)当たんじゃねぇか。……ふっ……

 

801:クールなわんこアイドル

 い、>>1……あ……あぁ……

 

802:悪魔の妹(擬き)

 なんて声……出してやがる・・・>>801ォ……

 

803:名無しの転生者

 >>802

 にじみ出るライドの『ォ』www

 

804:名無しの転生者

 だって……だって……

 

805:悪魔の妹(擬き)

 俺はここのスレ主、フランドール・スカーレットだぞ! こんくれぇなんてこたぁねぇ……

 

806:グランドクソ野郎

 そんな……私なんかのために……

 

807:なよ竹の憑依姫

 >>806

 お前生きてたのかよ……

 

808:悪魔の妹(擬き)

 スレ民を守んのは運営の仕事だ

 

809:名無しの転生者

 でも! 

 

810:悪魔の妹(擬き)

 いいから行くぞ。スレ民が待ってんだ。それに……」

(レミねぇ、やっと分かったんだ。俺たちにはたどりつく場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい。(レスが)止まんねぇかぎり、スレは続く)

 

811:悪魔の妹(擬き)

 ~以下回想~

 

812:なよ竹の憑依姫

 >>811

 回想って何!? 

 

813:クールなわんこアイドル

 ミスったら許さない

 

814:悪魔の妹(擬き)

 あぁ……分かってる

 ~回想終わり~

 

815:悪魔の妹(擬き)

 俺は止まんねぇからよ……

 

816:悪魔の妹(擬き)

 お前らが止まらねぇかぎり……その先に俺はいるぞ! 

 

817:悪魔の妹(擬き)

 ……だからよ……

 

818:提案ニキ

>>1 が 周 り に ど う 思 わ れ て い る の か を 自 分 で 聞 い て 来 よ う ( 提 案 )

 

819:悪魔の妹(擬き)

 止まるんじゃねぇぞ……

 

820:名無しの転生者

 >>819

 キーボーウノハナー

 

821:名無しの転生者

 >>818

 草

 

822:

 >>818

 草

 よりにもよって>>1にそれをやらせるのかwww

 

823:名無しの転生者

 第 二 の マ ー リ ン

 

824:悪魔の妹(擬き)

 >>818

 見ていてくれたかい、レミねぇ。今度もまた(安価が)当たったよ。前と同じように当たったよ。

 君の時みたいなヘマ(アヴァロン埋め忘れ)はしなかったよ。俺は大勢のスレ民に従ったよ。

 俺が安価に失敗してしまったら、どれだけの(パチュリーの胃への)被害が出るか……分からない。俺一人の犠牲でそれは防げるんだ。

 

 だから―――だから、レミねぇ、俺はさ……

 

 うわあああああ! ふざけるな! ふざけるな! >>818ォー! 

 

825:なよ竹の憑依姫

 >>1が死んだ! 

 

826:グランドクソ野郎

 >>823>>825

 この人でなし! 

 

827:悪魔の妹(擬き)

 やりたくねぇ……! やりたくねぇよぉ……! 

 

828:名無しの転生者

 >>827

 安価は―? 

 

829:悪魔の妹(擬き)

 >>828

 っ……絶対……っ! 

 

830:グランドクソ野郎

 うん、それじゃあ頑張ってきたまえ(暗黒微笑)

 

831:悪魔の妹(擬き)

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!! 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 ―――こうして、私は『自分のことがどう思われているのかを紅魔館メンバーに自分で直接聞いてくる』という、超絶無理難題を課せられることになった。

 

 


 

 

「クソ……いったいどうすればいいんだ……? 四百年近く引きこもってしまっているこのコミュ障吸血鬼ボディに、そんなことができるわけないだろう……」

 

 そんなこんなで次の日の朝になったが、私はいまだに悩み続けていた。

 

 すると、そんな私に声を掛ける、小さい影が一つ。

 

「あの……妹様、お食事をお持ちいたしました……」

「……ん? あ、あぁ……ありがとう」

 

 扉を開けて、来訪者の姿を確認すると、そこにいたのは、小さいメイド服に身を包んだ、金髪の妖精メイドだった。

 ……金髪……メイド……侵入……? 

 

 ―――この時、八木フランドール・スカーレットに電流が走った。

 

「そうか、分かったぞ!」

「?????」

 

 私が何を言っているのかわからず、首を傾げる妖精メイド。可愛い。

 

 私はその妖精メイド―――名前を『リーオ』というらしい―――から食事を受け取ると、さっそく彼女に話しかけた。

 

「君、確か……リーオといったか」

「は、はい……何か御用でしょうか?」

「あぁ。君に少し頼みたいことがあるのだが……構わないかね?」

「はい、内容にもよりますが、恐らく大丈夫だと思います」

 

 そういうと、私の近くに寄ってくるリーオ。可愛い。

 

「それで、御用とは一体……?」

「あぁ、何も聞かずに、君たち妖精メイド用のメイド服の予備を貸してほしいのだが……」

「……? はい、大丈夫だと思いますけど……何に使うんですか?」

「ちょっとな……それより報酬は何がいい? 何でも言ってみてくれ。できる範囲で行わせてもらおう」

「本当ですか!? やったぁ!」

 

 そういって、喜びの余りぴょんぴょんと跳ねだすリーオ。

 可 愛 い 。こんな可愛い妖精メイドが(他の娘のこと知らないけど)、どうして幻想郷に行くとあんなポンコツになってしまうんだ……。

 おっと、いかんいかん。エミヤのRPが崩れてしまうところだった……これからは気を付けるようにしないとな……。

 

「ウフフ……あっ……。ご、ごめんなさい……つい嬉しくなっちゃって……」

「いや、構わないさ。君のような子には、元気な笑顔が一番似合う」

「あ、ありがとうございます……」

「フッ……それで、報酬の件だが……」

「あっ、そ、そうですよね……えっと、もしよろしければ、私にクッキーを作ってくださいますか? 妹様は、料理もお菓子作りもお得意だと以前伺った事がございまして……」

「む……クッキーか……構わないが、どこでそれを……?」

 

 確かに私は、衛宮士郎のロールプレイをしていたころから、常に料理や弓の練習等を欠かさず行ってきたから、そういったことは得意だ。

 だが、私の手料理なぞ、レミねぇや母さん以外に食べさせたことなどなかったはずだが……? 

 

「えっと、レミリア様から直接……妹様は私とよく似ていた……とおっしゃられていましたので……」

「……そうか」

「ですので、いつか機会があったら、妹様の手料理を食べてみたいなー……なんて思っておりましたので」

 

 不意に、目頭が熱くなる。

 そうか……レミねぇはまだ、『私』が『俺』だった頃の事も、覚えていてくれたのか……。

 

「あの……妹様……?」

 

 リーオが私の顔を覗き込むようにして聞いてくる。

 だが、この顔を見られるわけにはいかない。

 私は少しの間上を向き、零れ落ちてきそうなナニカ(思い出)をこらえる。

 

「……あぁ、もう、大丈夫だ」

「そうですか、良かったです」

「それで、報酬はクッキーだったな? 分かった。私の用事が終わり次第、焼くこととしよう」

「……! ありがとうございます!」

「どういたしまして、だ。そうだ、追加で君に割り振られている仕事と、紅魔館の地図も頼めるか?」

「それは構いませんが……地図……ですか?」

「あぁ。何分、私はこの部屋に閉じこもってから四百年経つが、閉じこもってからは一歩も外に出たことが無いからな。ここの地理なんてさっぱり忘れてしまったよ」

「……妹様……」

「何、君がそこまで気負う必要もないさ。それと、このことはくれぐれも内密に頼むよ。クッキーの事も、だ。二人だけの秘密、良い響きだろう?」

「二人だけの……秘密……! はい、畏まりました! いつ頃お持ちすればよろしいでしょうか?」

「そうだね、明日、君が食事を持ってくるタイミングで頼む。それと同時に、仕事内容の書いてあるメモと、ここの地図もだ。持ってきてくれたら、私はメイド服を着てこの部屋を出て、用事を行う。その間、君にはこの部屋で、私の代わりとして待っていてもらいたい。見ての通りここは殺風景だ。何か一冊ほど本を持ってくることをお勧めするよ。……以上で説明は終わりになるが、大丈夫かね?」

 

 リーオの方を見ると、いつの間にかメモを取り出していて、私の話した内容を、効率よく、きちんと要点をまとめて書いてある。

 これなら問題は無さそうだ。

 

「はい! 大丈夫です!」

「そうか、なら良かった。では明日、よろしく頼むよ?」

「は、はい! 畏まりました! 失礼します!」

 

 そういって、リーオは私の部屋から出ていく。

 

「ふうっ……」

 

 私は安堵からか、一つ大きな溜息を吐く。

 これで安価の準備は終了した。後は明日を待って、頑張って安価を達成し、リーオのためにクッキーを焼くだけだ。

 

 ……大丈夫、どこにも負ける要素なんてない! 勝った! 番外編、完ッ! 

 

 ―――そんな風に気を緩めていたからだろうか。

 

「あ……首輪……忘れてた……」

 

 私に課せられている首輪の事を忘れていたのは。

 

 


 

 

 そんなこんなで時間も過ぎて行き、あっという間に決行の時刻が近づいてきてしまった。

 

「……これが例の物です、妹様」

「ありがとう。それと……」

「はい、こちらが紅魔館の見取り図と、私の午後からのスケジュール表になります」

 

 私はリーオから地図とスケジュール表、そしてメイド服を受け取り、手早く着替えてから、渡された二枚の紙を見る。

 地図に書いてある部屋と、割り振られている仕事を照らし合わせながら、どう動きながらインタビューを行っていくかといったプランを頭の中で組み立てる。

 私が地図とにらめっこを続けながら唸っていると、リーオから話しかけられる。

 

「あ、あの妹様」

「ん、どうした?」

「いえ……その髪の色とかはどのように誤魔化すのかと思いまして……」

「あぁ、なんだそんなことか」

「え……?」

 

 リーオは首を傾げながら、頭の中で、私がどのように髪の色を変えるのかを必死になって考えているみたいだ。可愛い。

 その様子が可笑しくて、たまらず笑ってしまう。

 

「もう! 何がおかしいんですか!?」

 

 彼女はそんな私の様子にご立腹のご様子だ。

 

「ハハハ……いや何、君がそんなに考え込んでいる様子が可笑し―――可愛らしくて笑ってしまってね……気分を害したようなら謝罪しよう」

「か、かわ……って! 今はっきり『可笑しかった』って言いかけましたよね!? 誤魔化されませんからね!」

「いやー……すまないすまない」

 

 笑いながら彼女に謝罪の言葉を贈ると、彼女は逆にジト目を送り返してくる。むう、手強い。

 

「さて、答え合わせをするとしよう。どうやって髪の色を変えるのか……で、良かったかね?」

「はい、その髪色だと、いくら顔が似ていたからって誤魔化し様がないですし……」

「その答えは実に簡単なものさ。私は実は魔術師でね、特に幻術―――認識阻害の類の魔術との相性がいいんだ」

 

 まあ一番使うのは投影魔術なのだがね、という言葉は飲み込んでおく。

 私の言葉を聞いたリーオは、好奇心を隠せていない瞳をこちらへと向けながら聞いてくる。

 

「えっ!? 本当ですか!? 凄い……もしよろしかったら見せていただけますか!?」

「あぁ、構わないとも」

 

 そういうと同時に私は幻術を使用し、自分自身の姿を白い髪色から眩いばかりの金色へと変える。

 これは、いつも掲示板にへばり付いている、コテハン『グランドクソ野郎』こと、グランドキャスターである『マーリン』から教えられた、魔法に限りなく近い魔術だ。

 私自身とてもこの魔術を重宝していて、投影魔術の次に当たる位の使用頻度を誇っている。

 

「凄い……! まるで私がもう一人いるみたいです……」

「もともと、私と君は目の色が同じ赤色だろう? そして顔立ちも物凄く似ている。君の家族ならまだしも、少なくとも他の妖精メイドたちにはわからないだろう」

「はい……私でも気を抜くとどっちがどっちなのか分からなくなりそうです……」

 

 そんな不思議な光景を目の当たりにした貴方は、1D5/1D10のSANチェックです。

 

 そんなおふざけは置いておいて、私はいまだに放心状態のリーオに声を掛ける。

 

「さてリーオ、私はこれから一時的に君の代わりに、君の分の業務を行いながら、私用の用事も片付けてくる手筈になっている。何か言っておきたいことがあったら今の内に言ってくれ」

「……ハッ! だ、大丈夫です! 妹様の代わりに、ここにきっちりと幽閉されておきます!」

「……君は私をなんだと思っているんだね……」

「!? も、申し訳ありません!」

「いや、大丈夫だ……まあ、何も無いのなら無いのだろう。あまり誰かが来ることはないとは思うが……もしも誰かが来ても開けられないように、内側から鍵でもかけておいてくれ。ただし、私が戻ったらちゃんと開けてくれよ?」

「はい! 分かりました!」

「なら良し。……では行ってくる」

「はい、行ってらっしゃいませ!」

 

 およそ四百年ぶりに誰かと『行ってきます』『行ってらっしゃい』のやり取りができたことに感謝しつつ、私は初めて部屋の外に出る。

 後ろからきっちりと鍵の閉まる音がしたのを確認してから歩き出す。

 

 紙で確認したところによると、リーオの次の業務は、地下倉庫へ向かい、足りなくなっている備品が無いかの確認をする事らしい。

 事前にチェックシートはもらっているので、地下倉庫へ向かいながら、今度は私の安価の件について考える。

 

 内容こそ『自分のことがどう思われているのかを紅魔館メンバーに自分で直接聞いてくる』という一見したら簡単そうに見える安価だが、そのくせして結構難しいものとなっている。

 まず、今現在で紅魔館にいると思われている、原作のネームドキャラが、

 

 ・『レミリア・スカーレット』

 

 ・『紅美鈴』

 

 ・『パチュリー・ノーレッジ』

 

 そして私、『フランドール・スカーレット』の四人となっている。

 また、小悪魔に関しては居てもいなくてもどうでもいいので、今回は除外するという形になっている。

 

 ……小悪魔召喚したとかしてないとか教えられてないからね、是非もないよネ! 

 

 という訳で地下倉庫に到着。ここまでで大体三分ぐらいだ。

 まだ咲夜さんがいなくて空間の拡張とかされてないのに、どうしてこんなにも広いのか、その謎を追い求めるため、我々はアマゾンの奥地へ向かった。(向かってない)

 

 私は大きく積まれた備品の山と向き合いながら、無心で四角の中にチェックマークを入れ続けている。

 ちり紙……良し、ナイフ……良し、皿……若干足りない、救急用具……絆創膏と軟膏が減ってきているな、書き込んでおこう。

 

 そうして確認を終えた私は、次に『レミリア様におやつをお出しする』という業務に取り掛かる。

 ……というかレミねぇ、まだ(午前)三時のおやつは欠かせないのか……

 

 ここ紅魔館には、一階と二階にそれぞれ大きさも広いキッチンがあり、従業員が自由に使うことができるのだが、今回は二階にある方を使おうと思う。

 リーオ曰く、レミリアお嬢様は普段は三階や二階にあるテラスや、私の部屋もある(地下も一階と二階とで別れてはいるが、一本道でつながっているので実質ワンフロアである)地下の大図書館にいるらしいのだが、おやつの時間だけは必ず三階の自身の部屋にいると言っていた。

 だから、なるべく近いほうのキッチンを使い、効率よく楽をしよう、ということである。これは現代人にも通じる考え方だろう? 

 

 こうしてキッチンへ向かおうと決めた私は、二階のキッチンに近いほうの階段を通るためにフロントを通ったのだが、ふとここで、安価を達成するために美鈴に話しかけようと思ったのである。

 そして、何か疑われないようにと、自身の装いをもう一度確認したのだった。

 

 


 

 

 こうして、最初の場面へとつながるのであった。

 

 どうして(元、と付くのだが)男なのにこういった格好をしなければならないのか……と考えながらも、美鈴に話しかけるために外へ出る。

 美鈴はよく二次創作等で描かれている様に、門の扉を支えている門柱を体の支えにして、それはもう大きな鼻ちょうちんを作り、誰がどこから見ても『爆睡してます』といった具合で眠っていた。

 

 ここでふと私は、美鈴の能力の事を思い出した。

 

 ―――『気を使う程度の能力』。

 

 その言葉通り、『気』―――恐らく、体内で練ることの出来る特殊なエネルギーだと思われる―――を扱うことができ、練り上げた気を相手に向かって弾幕にして飛ばしたり、練り上げた気を体内に循環させることで、身体能力の向上が行えるなど、様々な使い方ができる。

 また、いつだったか、前世で東方Projectの二次創作小説を読んだ際、相手の体に流れる気を読み取ることができる、といった描写があった気がする。

 もしもここの美鈴がそれを行うことができ、尚且つリーオが美鈴に会ったことがあるとしたら、私の体内の気を読み取られて一発でバレる。それだけは避けたい。

 

 私は念入りに認識阻害の術式を発動し、何もおかしいところがないかを確認し終えると、未だに眠り続けている美鈴の方へ向かって歩いて行った。

 

 私が美鈴のほうへ近づくと、私の気配でも感じ取ったのか、目を覚ましてこちらを向いていた。

 

「えっと……妖精メイドの方ですか? 私に何か用事でも?」

「はい……用事、と言いますか質問と言いますか……」

 

 よし、第一関門クリア。今の言葉から、紅美鈴とリーオの間に面識がないことが窺えた。

 つまり、私がフランドール・スカーレットであるとバレる確率が下がった、ということになる。

 

「質問、ですか?」

「はい、妹様の事なんですけど……」

 

 妹様、その単語を出すと、美鈴の顔が一気に曇った。

 この反応をする場合は、何か聞かれたくない事でもあるのか、よっぽど嫌われているかの二択しか無い。

 そして今回の場合は、恐らく後者だろうと思われる。

 

「妹様、ですか……妹様のことで何か?」

「はい……私、妹様の給仕として仕えているのですが、以前、妹様に言われたんです。『私は本当に紅魔館の一員として受け入れられているのだろうか』って。それで、深く話を聞いてみたんですけど、その……妹様が幽閉されるきっかけとなったお話をお聞きして、私も思ったんです。妹様はどう思われているんだろう、って。だから、まずは美鈴さんに聞こうと思って……」

 

 言ってしまった。聞かれてしまった。何もしていないのに、目から涙が零れ落ちてきそうになる。

 逸る気持ちを、どうにかして理性で押さえつけながら、私は架空のストーリーを話す。

 でも、『私は本当に紅魔館の一員として受け入れられているのか』。その疑問だけは、私の本心だ。

 それまで静かに私の話を聞いていた美鈴が、私の質問に返すために口を開くその一瞬が、とても遅く見えた。速く、速く。そう思うほど、私の体は強張っていく。

 そうして、やっと美鈴が話し出す。

 

「……私は、妹様のことは、紅魔館の一員、いえ、家族だって考えています。多分、妹様は不安なんだと思います」

「ふあ、ん……?」

「ええ。確かに妹様は、ご自身の能力の暴走を恐れて、自ら地下の部屋にお入りになられました。でも、それは紛れもなく、紅魔館の皆、ひいては『家族』の事を想っての行動です。妹様はこの紅魔館にいるものを『家族』だと思われています。なら、それは妹様が紅魔館の一員―――『家族』である、ということだと、私は思いますよ」

 

 ―――そう語る美鈴の目はとても優しくて、温かい目をしていた。

 

「……ありがとうございました。妹様も、きっとお喜びになられるでしょう」

「そうですか! それは良かった。是非、妹様によろしくお伝えください」

「分かりました。妹様に伝えておきますね。……それでは失礼しました。お仕事、頑張ってくださいね!」

「はい! そちらこそ、頑張ってください!」

 

 そういって、私は館の方へと戻っていく。

 

 ……ああ、良かった。私という存在は、ちゃんと受け入れられていたのか。

 

 私の目からこぼれる感情を、しっかりとハンカチで拭ったら、もう気分はすっきりとメイドさんモードにチェンジだ。

 

 確か次の仕事は、『レミリアお嬢様におやつをお出しする』だったか。

 階段を上りながら、次の仕事と並行して、私がどう思われているかの聞き込みのルートも考えていく。

 

 残すところはレミねぇとパチュリーの二人。どちらも一瞬で私の事を見抜いてきそうな強者だ。

 レミねぇの方は『家族の絆よ!』なんて言って見抜いてきそうだし、パチュリーの方も『術式が甘いわよ、フラン』なんて言って、あっさりとこちらの術を解いてきそうだ。

 そうすると必然的に、レミねぇ→パチュリーの順番で回らなくてはいけなくなる。

 幸い残る仕事も、レミねぇへのおやつと客室の掃除だけなので、ちょうどいい。

 

 レミねぇの方はおやつを出してから聞けばいいし、パチュリーの方も帰りがけに聞けばいい。

 我ながら完璧なプランではなかろうか? 

 

 そんなシュミレーションを行っている間に、二階のキッチンについたみたいだ。

 ここは食堂とつながっていて、一階のキッチンと比べると広く、また調理器具も豊富だ。

 

 壁の方を見てみると、『レミリアお嬢様へのおやつ 献立表』なんてメモが貼ってあったので、今日のおやつはこれをもとに作っていこうと思う。

 

 今日は確か一月十三日か……今日の分のおやつはっと……ほう、『ガトーショコラ』か……。

 今まで地下室でこそこそと料理はしてたけど、他人に食べさせるなんて久しぶりだからな、腕が鳴るな。

 

 ―――という訳で用意したのはこちらの材料。

 

 ・ミルクチョコレート―――150g

 

 ・無塩バター―――100g

 

 ・純ココア―――大さじ2

 

 ・薄力粉―――30g

 

 ・砂糖―――70g

 

 ・塩―――少々

 

 ・卵―――3個

 

 ・粉砂糖―――適量

 

 これらは全部、直径15cmの丸型の1台分を作るための材料となっている。もしも皆さんが作る場合は、食べる人数や量に合わせて適宜調整をするといいだろう。

 

 さて、では作りながら、作り方を説明していこう。

 その前に、手はきっちりと洗っておくこと。自分で食べるならまだしも、他人のために作るものなんだから、衛生面はきっちりとしよう。

 

 では気を取り直しまして今度こそ。

 

 ⒈

 まずは卵を割り、割った卵の殻を使って、卵白と卵黄を分けて、それぞれを別のボウルに入れる。

 それが終わったら、まな板の上でチョコレートを細かく刻む。普通に野菜を着るような感覚だと切り辛いから、包丁を持っていない方の手で、峰(包丁の刃の反対側の事)を押すようにして、力強く砕いていく。そして、これらの作業を行っている間に、オーブンの温度を170℃に予熱しておくと、調理がスムーズに進むぞ。

 

 ⒉

 次に、また別のボウルを用意し、その上にふるいを置く。ふるいの中に薄力粉と純ココアを全て入れ、スプーンで押し付ける様にしてふるいにかけ、二つの粉を混ぜ合わせる。

 

 ⒊

 次に、また新しくボウルを用意し、その中にお湯を張る。その上にまた別の新しいボウルを、浮かべるように置き、その中に、先程砕いたチョコレートとバターを加え、混ぜながら溶かしていく。

 この時、バターを有塩で使うか無塩で使うかで、風味や仕上がりが変わって来るから、色々なパターンを試してみるのもいいかもしれないな。

 

 ⒋

 次に、また新しく用意したボウルの中に、卵黄と砂糖を入れ、ハンドミキサー(私の場合は投影品だが)を使って、二分程度、白っぽくなってくるまで混ぜ続けよう。

 

 ⒌

 そして、先程卵黄と砂糖を混ぜ合わせたボウルの中に、3で少しずつ溶かしたチョコレートを加えいれながら、今度は手動で混ぜていく。

 全てのチョコレートを入れ終わったら、2の時に混ぜ合わせた薄力粉と純ココアを、再びふるいにかけながら入れていく。

 今度はスプーンではなく、手でふるいの横を軽くたたく程度で大丈夫だぞ。

 これで、ガトーショコラの味の土台となる、チョコレート生地の完成だ。

 

 ⒍

 そして、今度は別のボウルに卵白全部と、塩を二、三つまみ入れ、再びハンドミキサー(投影品)で混ぜ合わせ、メレンゲを作っていく。

 混ぜ合わせるのをやめる目安としては、ハンドミキサーをメレンゲの中から持ち上げてみて、ハンドミキサーに引っ張られて残った部分の先端が、ピンと立つくらいまでとなっている。

 混ぜ終わったら、完成したメレンゲを5のチョコレート生地に、全体の三分の一の量ずつ入れ、その度に縦に切るようにして混ぜていく。

 メレンゲをすべて入れ、しっかりと混ぜ終わったら、ガトーショコラの生地の完成だ。

 

 ⒎

 最後に、クッキングシートを敷いた、直径15cmの丸い型に出来た生地を流し込み、170℃のオーブンで30~35分焼く。

 焼き終わったらオーブンから出して、しっかりと粗熱を取る。

 冷蔵庫に入れて冷やしたら、お好みで上から粉砂糖を振りかけて、ガトーショコラの完成だ。

 余談だが、冷蔵庫で冷やす時は長くしっかり冷やすと、ずっしりとした濃厚なガトーショコラになるので、出来立てよりもしっかり冷やして食べることをおすすめするぞ! 

 

 

 出来上がったガトーショコラを冷蔵庫で冷やしているうちに、使用した調理器具の後片付けを行う。

 慣れない調理場のため少し苦戦してしまったが、何とか(午前)三時までには間に合いそうだ。

 

 最後の皿を仕舞ってから時間を確認すると、現在時刻は(午前)二時五十分。ここから皿を出して切り分け、そしてレミねぇの部屋まで運ぶことを考えると、結構ギリギリの時間になってしまう。

 

 急いでケーキをナイフで切り分け、1切れ分を皿に載せる。

 それと同時に、温めておいたお湯を、コンロにかけてあるケトルからティーポットに移す。

 

 そして、レミねぇの分と、一応パチュリーの分のティーカップに、数切れのガトーショコラ、そして2人分のフォークや数枚のナプキンを、キャスターの付いたキッチンワゴンに乗せ、急いで三階への移動を始める。

 

 急ぎすぎてワゴンを倒してしまう、なんてドジをやらかすことも無く、無事にレミねぇの部屋に着くことが出来た。

 

 レミねぇの部屋に入る前に、一応身嗜みを確認してから、ノックをきっちり4回してから、声を掛けられるまで待つ。

 

『入っていいわよ』

「し、失礼します……!」

 

 扉を両手でゆっくりと開け、ワゴンを入れてから自分も入り、しっかりとドアを閉めたことを確認してから、レミねぇに報告をする。

 

「レミリアお嬢様、おやつをお持ち致しました」

「そう、ありがとう……あら?」

「……? 何か……?」

 

 そう言うと、レミねぇは私の引くワゴンの上にあるカップを見て、こう言った。

 

「いえ、何でもないわ……それよりあなた、一緒に食べない? カップもしっかりと人数分あるようだし」

「!? 宜しいのですか?」

「えぇ、いいわよ」

「そうですか……それでは、失礼します」

 

 レミねぇが机と椅子を用意してくれたので、俺はレミねぇが座るのを待ってから、椅子に座る。

 

 レミねぇは優雅にフォークでガトーショコラを切り分けると、口に入れ、味わう。

 

「……! 美味しいわね……」

「恐悦至極にございます」

「このガトーショコラ、あなたが?」

「えぇ、畏れ多いですが」

「いいえ、これだけ美味しいんだもの、あなたは誇るべきよ」

「……ありがとうございます……」

「……まるでフランが作ったみたいな味ね」

 

 ギクリ。

 バレて無いだろうな? そう願いながら、私は視線だけでレミねぇを見る。

 

 その顔は何かを懐かしむように目を閉じていて、少なくともこちらのことは見ていないみたいだ。

 ホッと一息ついていると、不意にレミねぇがこちらを向いてくる。

 

「そうね……あなた、何か悩み事でもあるのかしら?」

「ッ!? 何故、それを……!?」

「フフ、勘よ。乙女の勘は良く当たるの」

 

 レミねぇも私ももう乙女なんて言う歳じゃないだろ、そんなツッコミを飲み込んで、本題について話し始める。

 

「そうですね……妹様の事なのですが……」

「フランが、どうかしたの?」

「はい、私は妹様への給仕も担当しているのですが、この間妹様と話す機会がありまして……妹様、悩んでおられました」

「……何に、ついて?」

「妹様は、『私は紅魔館に居ていいのか、本当に紅魔館の一員として認められているのか』と、泣きながら仰っておりました。……その、妹様の幽閉された理由も聞きました。それで……私も少し気になってしまって……」

「―――家族よ」

「へ?」

 

 私の言葉は唐突に遮られ、力強い言葉とカリスマ性で、レミねぇの方を向くことになる。

 

「あの子は私のたった一人の妹で、紅魔館にいるたった一人の『フランドール・スカーレット』よ。それ以外の理由なんているかしら? それに―――」

「?」

「あなただって、優しいもの」

 

 優しい? 私が? 

 意味が分からず、レミねぇの顔をじっと見つめる。

 レミねぇは私に向かって、諭す様に、親が子を寝かしつけるかのように、語りかけてくる。

 

「私が……優しい、ですか……?」

「えぇ、あなたは優しいわ。だってあなた―――」

 

 ―――泣いてるもの。

 

 その事を言われ、初めて私は、自分がないているという事実を知った。

 

 そして私は、レミねぇにあやされながら、400年分の時間を取り戻すかのように、泣き続けたのであった。

 

 

 

「あはは……お恥ずかしいところをお見せしました……」

「うふふ、良いのよ。従業員のガス抜きをするのも、紅魔館の当主たる私の役目だもの」

「それとお嬢様のお言葉、妹様にお伝えしておきますね」

「えぇ、よろしくね」

「はい! 任されました! ……それでは失礼します!」

「えぇ、またね」

 

 そう言って手を振るレミねぇに見送られ、俺はワゴンを引きながら退出する。

 

 廊下に出て一人になったからか、再び涙腺が緩む。

 それを気合で引き締め、私はワゴンを押しながら、再び二階にあるキッチンに向かう。

 

 キッチンに着いた私は、使った食器たちを片付け、次の業務に取り掛かる。

 

 次の業務は……客室の掃除か。

 これなら直ぐに終わりそうだ。

 安価の内容と一緒に、一気に片付けてしまおう。

 

 私は二階から一階へと移動し、館の北東にある客室へと向かう。

 客室は七部屋あり、その隣には二階に上がる階段や、清掃用具置き場があったりする。

 

 私はそこの掃除を七部屋分を一時間ほどで終わらせると、リーオの待つ地下へと向かった。

 

 しかし私はリーオの待つ、普段私の生活している部屋のある地下二階には向かわず、先に大図書館へと向かう。

 

 そこは開けた空間ながらも、天井まで届きそうな本棚がずらりと並んでいて、室内には本特有のインクの匂いが充満している。

 

 普段あまり本来の目的で利用することの無いこの大図書館だが、今日は珍しく館内に入ることとなった。

 

「……? あら、妖精メイドかしら? 珍しいわね、妖精メイドがここに来ることなんてなかなか無いのよ」

 

 本を読みながら机に向かっているこの図書館の主、『動かない大図書館』こと『パチュリー・ノーレッジ』が、こちらに目線もくれずに話しかけてきた。

 

「あっ……そ、その、妹様の所へ食器を回収に……」

「そう。……」

「……」

 

 会話が途切れ、空白が生まれる。

 ……いや、どんだけコミュ障なんだね君は!? 私ですらもう少し話せるぞ!? 

 

 ……仕方ない、ここは私から話しかけるしかないか……

 

「その、パチュリー様。少し……よろしいでしょうか?」

「? 構わないわよ。何か用かしら?」

「はい、その……妹様の事なのですが……」

「……フランがどうかしたのかしら?」

 

 そういうと同時に、顔を上の方に向けて少しプルプルと震えているパチュリー。

 ……バレた! バレたよな今!? 

 

「……パチュリー様?」

「www……ッ、ふぅ……それで? フランが何ですって?」

「……は、はい。それがですね……」

 

 そして、私は美鈴やレミねぇにしたような説明を、パチュリーに行った。

 

「ふうん……それで?」

 

 パチュリーはそう聞いてくる。

 ……それで? それでって、いったいどういうことなんだ? 

 

「それで……とは?」

「そうね、ここで私が考えを述べたら、それはただ単に私の意見を聞いただけ。でも、今あなたの話を聞くと、どうも他者の意見にばっかり頼っていて、あなた自身の意見を全く聞いていないのよ」

「……!」

 

 そう言われて、私はハッとした。

 そうだ。今まで『スレ民に言われたからやっているだけ』という言い訳に甘え続けて、他人の―――レミねぇや美鈴の意見を聞くことだけに徹し続けていて、自分の意見を考えるということを一切してこなかったのだ。

 

 どうしてこんな簡単な考えにも気が付けなかったのか。もう私の答えなんて、決まり切っているようなものじゃないか。

 

「―――あぁ、そうか。答えは得た。……大丈夫だよパチュリー。『()』もこれから、頑張っていくからさ」

「―――――――――」

 

 そういって、私は大図書館から出る。目指す場所は自分の部屋。

 

 

 大丈夫、もう寂しくなんてない。だってもう、自分自身の答え(未来)は得たんだから―――

 

 


 

 

「―――あぁ、そうか。答えは得た。……大丈夫だよパチュリー。『()』もこれから、頑張っていくからさ」

「―――――――――」

 

 そういって、彼女―――妖精メイド用の服を着たフランが大図書館から出ていく。

 その時の彼女の顔はとても晴れ晴れとしていて、吹っ切れたように見えた。

 

 私は紅茶を飲みながら、なぜ自ら閉じこもっていたフランが、わざわざ外へと出てきたのかを考える。

 ある程度まで考えて、そんなものは必要ないと言わんばかりに首を横に振り、頭に浮かんできた考えの数々を消し去る。

 

 最後にカップに残った紅茶を一気に飲み干し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『―――あぁ、そうか。答えは得た。……大丈夫だよパチュリー。『()』もこれから、頑張っていくからさ』

「フフッ……」

 

 確認も兼ねて、先程撮った映像を見返していると、ついつい頬が緩んでしまう。

 何しろわざわざ変装までして聞きに来てくれたのだ。微笑ましいこと限りないでしょう? 

 

「―――ねぇ、そうでしょう? ()()()

 

 私が本棚のある方へと呼びかけると、本棚の裏―――もちろん先程フランが立っていた場所からは見えない所―――から、この紅魔館の小さな当主様が、その小さな両目からいっぱいの涙を流しながら現れた。

 

「……レミィったら、いつまで泣いているのよ……」

「~~~! た゛っ゛て゛ぇ゛! た゛っ゛て゛フ゛ラ゛ン゛か゛ぁ゛!」

「ハァ……」

 

 全くこの友人は。

 下に敷いている絨毯が汚れるのも厭わずに号泣しているあたり、レミィもまだまだ妹離れできていないようだ。……これ本当にレミィが上でフランが下なのよね? 心配になってきたわ……。

 

「それで、レミィ。一応さっきの映像は魔晶石に焼いておいたけど……」

「い゛る゛ぅ゛!」

 

 普段は部下に対してはカリスマ性がたっぷりのはずのこの友人も、妹の事となると形無しのようだ。

 そんな彼女の手元に、カーペットがぐしゃぐしゃになって下の木材までダメになる前に、『魔晶石』と呼ばれる、魔力によってさまざまな扱い方ができる記録媒体を、放るように置いてやる。

 

 ―――フラン、結局私は言うことができなかったけれど、私だってちゃんと、貴方のことを家族だって思っているのよ? 

 

 そう思いながら紅茶を飲もうとカップを傾けるが、カップの中どころか、ポットにすら何も入っていなかったので、未だに涙だか鼻水だかわからないものを垂れ流し続けている友人(フランの姉)を引きずりながら、一階にある給湯室へと向かうのであった。

 

 


 

 

「あれ?妹様、もうよろしいのですか?」

「あぁ。もう答えは得たからね。それで…」

「はい!クッキーをお願いしますっ!」

「分かっているさ。それでは用意させてもらおう。少し待っていてくれるかね?」

「はい!もう、待ちます!いくらでも待ちます!」

 

私は大図書館を出てからすぐに、リーオの待つ自分の部屋に戻った。

 

「でも、良かったです!」

 

私が投影したオーブンを使用してクッキーを焼いていると、私の事を眺めていたリーオが、唐突にそう言ってきた。

 

「良かった?一体どういう事だ?」

 

私は調理の手を止めて、そう聞き返す。

するとリーオは、微笑ましいという様な表情を携えてこう言った。

 

「だって妹様、とっても嬉しそうな顔をしているんですもの!これが良い事じゃなかったら、いったい何になるんですか?」

 

 

 

 

 

 

―――たまにはこういう一日があっても良いんじゃないだろうか。

 

 

ロールプレイだとかそんな物も関係無しに、久しぶりにそう思うことの出来た一日だった。

 

 

 

 

 

―――ただしスレ民どもは許さん。

 

 

少しの復讐心も芽生えたが。

 

 




…いかがでしたでしょうか?
個人的には、あの謎の料理開設パートが気に入っております。

さて、本編の方の話についてになるのですが、これから話は『吸血鬼異変』の話になっていきます。
それで、今度も番外編のアンケートを取ろうと考えているのですが、今回は、アンケートで選ばれた話の上位2話を、番外編として書こうと考えております。
ということで、これからもこの小説をよろしくお願いします!(次回の話の最後の所にあるアンケートだけ見ていくのでも大丈夫です)

それでは以上、作者でした~。バイバーイ。

それとせめて今回の小説パートの感想だけでm(断末魔)
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