意識せず震える足、力が抜けそうになる膝、暴れる心臓、荒くなる呼吸、体を伝う汗。当初は新鮮な気持ちで周りの景色を眺めていた顔も進むにつれて地面に吸い込まれている。日頃の運動不足の賜物であった。
手持ちの携帯端末をみれば山登りを始めてから2時間がたとうとしている。ある程度踏み固められた地面や木枠などからちゃんとした山道であるが今まで誰ともすれ違っていない。余裕などかけらほどもないがこんなにもあまりな姿を誰かに見られないでよかったなどと思った。
「ふぅ――」
息を深く、意識して吐き出す。この疲れも吐息に乗せて出て行けとばかりに。
「すぅ――」
息を深く、意識して吸い込む。周りの自然から活力を取り込めとばかりに。
二度三度繰り返して繰り返して、体を落ち着かせる。疲労はそれほど回復してないがなんとなく大丈夫。大丈夫まだ歩ける。事前に軽く立ててた計画だと山頂まであと1時間もかからないはずだと言い聞かせる。実際肉体的にはぼろぼろだが精神的にはまだまだ余裕があった。仕事に従事してるときはもっと辛かったとむしろ楽しいとさえ思っていた。
(山のというか自然の影響かな)
歩き続ける。
周りの木々が開けてくる。山頂へ続くらしい階段を上る。最後の関門。やっとたどり着いた。特に目的があったわけではない。限界がきて会社を辞めニート暮らしも早数か月、漠然とやってこなかったことをやりたいなという思いが募っていき、そのとき見ていたアニメの影響でとりあえずでこの登山計画を実行した。男は場の勢いで行動することが多々あったのだ。
使うことも久しかった筋肉が悲鳴をあげている。肉体はもう限界だと弱音を吐いているが道中とは違い顔は上を向いていた。見えてなかったものがみえてくる、空が近づいていた。足取りが軽くなり思わず階段を駆け上がる。
住んでいるところからも近場の山だ。軽く調べた時も初心者向けとか書いてたはずで実際、男でもたどり着けた。それでも展望できる街の風景は普段みることのできない光景で、なにより電柱やビルや煙や雲に遮られることのない空色が広がっている。春から夏に移ろう間の季節、そんな時節に実行したこの登山束の間そんな光景にひたり、体の奥からじわりじわりとなにかがこみあげてくる。
「っしぇぇい!!!!!!」
疲労もなんのその湧き上がってくるその活力のままに腕さえ振り上げながらの雄たけびが出る。なんとなくただなんとなく明日も生きてやろうなんてことを考えていた。
大体1時間ほど、そんな景色を眺めながらのんびりと持参した握り飯をほおばる。近場のスーパーで買った、ほぐした鮭と昆布に塩をまぶしただけのなんのてらいもない握り飯だというのに米の甘みが、鮭の塩気が、昆布の食感が驚くほど体に染み渡る。ちょっと多すぎたかななんて思いつつ5つもってきた握り飯をぺろりと完食して水筒から麦茶で口の中を潤して一息、見える街並みの向こうに霧のような雲が見えたことでそろそろ帰ろうかなんて思いで時間を確認する。だいぶ日が長くなってきたこともあり暗くなる前には車までは帰れそうだなと腰を上げた。
行きとは心持が変わったからなのか、単純に下ってることで視点が変わったのか山を彩る木々をなんとはなしに眺めて楽しんだり、人が行き来してる痕跡なんかに気づく余裕がある。山を楽しむそんな入口に立ったきがしていたとき唐突に足を踏み外した。急な段差があるとか同じ道を帰ってるので崖に行き当たったとかそんなものではなく、突然前触れもなく踏み出した先の地面に孔が開いた。
踏ん張りの効かない足、つんのめる体、ほどなくして感じる浮遊感、とっさに受け身を取ろうとして前にだす腕。瞬間気づく、距離感のつかめないほど離れた地面。
(あ、死んだ)
あまりにも前触れなく迫る現実に機能しなくなったのか浮かんだのは単純なそんな思考で。
(まも、頭、たかっ、受け身--っっっ)
数舜、取り戻した思考も纏まらない。近付く地面がゆっくりと見えた気がして。
(し、ぬ・・・・・・?)
思い浮かぶのは直近の生活、習慣からか早く起きてしまって軽くストレッチ、朝の支度を整えて出勤する必要がないことに気づいてうきうきでパソコンの前に陣取って気になっていたアニメを見始める。そんな生活が。仕事しているときの苦しい時間が、その中でも多少なりともあった嬉しい時間。遡る、就活、アルバイト、大学生、遡る、高校生、中学生、小学生、そのときあったこと付き合いのあった友人たち、それが浮かんでは消えていく。まだ両親が生きていたころ父親に連れられて城を見に行ったときのことを思い出した。忘れていた原風景。
『でっかいだろ!城塞、お前の名前だ!』
父親の言葉がする。何百年もの時を経てなお健在のその佇まい。日に照らされて白く輝くその威容に魅せられた。記憶にある一番最初に感動を味わったその情景がありありと浮かんでくる。心に熱が灯る。
それが過ぎて最後に浮かぶのはさっきみた青空。それはつまり、
「死んでたまるか!」
死を目前にしてなお足掻く心が湧き上がってくる。生きていたい、あきらめてたまるか。頭を抱えるようにして最大限まもる体勢をとる。思うのは先ほどの城。自分にとっての護りの象徴を強く強く心に。目までつぶった男はそのとき体が光りに包まれたことに気が付かなかった。
着弾、衝撃。傍からみたらトラウマもの確定の轟音を立てながら地面にたたきつけられた男はしかし生きていた。身構えていたほどの衝撃がなかったことに首を傾げつつなんてことはないように立ち上がった。痛むところもなく、見えるところにも骨が折れたり異常はないことを確認して感覚が麻痺していないことを確認して困惑。掌に城の文字、刺青のようなそれは当然落ちる前まではなかったもので、こすったりしても落ちない。とりあえず諦めて周りを確認しようとして、ようやく気付く体を動かすのに異常はないのにそれが億劫になるほどの不思議な倦怠感。
まだ現状も把握してないのに現実は待ってくれない。男が落下した音でやってきたのか背後から異音がする。人のものではない何匹かの獣が動く音。振り返れば
犬のようななにか。数は3。
(デカ過ぎんだろ・・・)
普段見る犬とは桁外れのでかさ上体を上げてない4足歩行の状態で男と目線が合う。口元には涎とうなり声。それはとても好意的な態度などではなくこちらを餌と見ているのは明らか。思わず一歩後ずさる。それが契機となったのか2匹がこちらへ駆けてくる。その初動だけで悟ってしまう逃げられる速度じゃないと。
例えば突然目の前にボールが飛んできた人はどのような反応をするだろうか。とっさに避けようとする、何も反応できなかったり目をつぶってしまう、身を守ろうとする、大別すればこの3つになる。男は悪くない反射神経の持ち主だったので受け止めようとするタイプだった。
飛びかかってきたソイツの大きく開いた口、見えていた、顔に飛びかかってくるやつと下から足に食いつこうと動いているやつと、見えていた。とっさに急所になる頭を守ろうと腕をあげた。倦怠感の残る体はしかしおもっていたよりも遅れて動き、結果頭を守るのではなくソイツの下顎を跳ね上げるような形になった。
ソイツが血をぶちまけながら吹き飛んだ。人間の体で何かを打ったとは思えない音をあげて。
「えぇ・・・」
もう何回目かもわからない困惑のままに声が漏れる。ふと足元に違和感、見ればもう一匹のソイツが足に食らいついている。服を貫通している牙はしかしその下の皮膚は貫通していない。
「・・・えー」
しばしソイツと目線が交錯する。おもむろに拳を振り上げてみるとビクッと体を震わせた末にゆっくりと離れていく。終始見ていた最後の一匹が一声鳴くと慌てて逃げて行った。追いかける気力はない。思わず体の力が抜けその場に座り込んだ。握りこんだ拳を開けてみれば“城”が消えて代わりに飴玉のようなものが一つ。
「なんなんだよ一体・・・」
答えてくれる者はいない。
・力尽きたので以下設定
主人公の名前・
縮めてジョジョよか呼ばれることはないこともないことない
舞台は日本。少し未来で。
突如出現した孔は同時に日本どころか世界各地にも出現しています。孔だったりちゃんと入口があったり既存の建物がダンジョン化してたり。
黒幕というか原因はカミサマでありコードギアスの阿頼耶識、人類の集合無意識を採用
人類の生きたい意思死にたい意思の揺れが死のほうに5割超えたことでダンジョンが発生
ダンジョンの正式名称は人類進化促進機構。一定期間誰かが中に入らねばモンスターあふれて人類間引く
人類が増えすぎた→死にたいと思う母数が増えた→どうすれば死にたくなくなるか→個として強くなればいいみたいなくそ雑思考
ダンジョン内で死に瀕するほどの危機を目前に覚醒すれば文殊的能力発現
主人公くんはまもるイメージで城一文字。防御耐久もろもろ増加。五体に建物の城としての重量を載せたキャッスルパンチで戦う。物理。
克明なイメージ次第でなんでもできる。人によって得手不得手がもろにでる。
城のイメージを深めて殿なり姫なりと認めた人物と一緒にいることで効果が強くなったり。
各ダンジョン最奥のボス倒せば文殊同時使用数が増えるようにするか、経験で勝手に増えるようにするか・・・
なんとかかんとかダンジョン攻略した主人公くんは非公式世界最速ダンジョン攻略者
相手の一撃をがっしり受け止めて返す一撃で木っ端みじんにするわかりやすい脳筋スタイルでダンジョン攻略配信とかでゆーちゅーばーデビューさせたりしたい。
誰が悪いとかがなくて物語的な目標設定しにくいのがあれですね
横島すき