──プロローグ 紫雲統夜──
ワーワーワー!!
大歓声がスタジアム内に響いている。
あまりの音量に、地面が揺れていると錯覚しそうになるほどだ。
裏の催し事だというのに、よくこんなに人が集まるものだ。
なんて俺は、場違いのことを思ってしまった。
甲児「どうした、ボーっとして」
統夜「ん? ああ、ちょっと場の空気に飲まれたみたいだ」
甲児「おいおい。乗らないお前がそこまで緊張してどうするんだよ」
宗介「安心しろ。俺達なら問題ない」
隣にいた兜甲児(マジンカイザー/人物)と相良宗介(フルメタルパニック/人物)の二人がくすりと笑う。
統夜「むしろ応援しているだけの方が気が気じゃないんだぞ。こっちの気持ちも考えてくれ」
甲児「そんな心配はいらねえって。それに、整備はお前も手伝ってくれている。一緒に戦っているも同然だ」
統夜「ああ。整備の方は完璧にできたと思ってる。まあ、ボロットはホントにこれでいいのか正直自信が持てないけど」
ボス「大丈夫。完璧だわさ!」
ヌケ「その通りでしゅ!」
ムチャ「僕達のボロットに整備なんて必要ないので!」
ボス「だから、安心していってこい、兜!」
甲児「ああ!」
統夜(なんかおかしい気がするけど、おかしくない気もする……)
宗介「行ってくる」
統夜「優勝までもう少しだ。二人ならやれる!」
甲児「任せろ!」
そうして、ボス達と俺は、二人を機体に乗せ、スタジアムへ送り出した。
俺(紫雲統夜)、甲児、相良軍曹、ボス、ヌケ、ムチャの六人は今、東南アジアのある都市で行われているアームスレイブ(フルメタルパニック/機体の総称)による闇バトルトーナメントの格闘大会に出場している。
闇。というだけあって、そこでは非合法な賭けが行われ、優勝賞品も表では出せないような代物が掲げられている。
俺達の目的は、その優勝賞品。
それは、世界を危機に落としかねない強大なエネルギーを秘めた、謎の物体。
少し前に突然発見された『それ』の回収だった。
『Qパーツ』
そう名づけられた物体の危険性を重視したGGG(ガッツィー・ギャラクシー・ガード/ガオガイガー用語/組織)はそれの回収を決定。
この地で賞品として掲げられたそれの回収のため、GGGから要請を受けたミスリル(フルメタルパニック用語/組織)より歴戦のアームスレイブ乗りだが顔の売れていない相良軍曹に白羽の矢があたり、ついでにボロットならアームスレイブと十分言い張れると言い出した甲児とボス。そしてある理由をもとに、素人同然の俺とがこの優勝賞品の回収を任されたのである。
甲児はボスから強引に借りたボロット。相良軍曹は型落ちのサベージを補修しただけの機体(いわゆるアル二世)だというのに、トーナメントを順調に勝ち進んでいる。
流石、じかに彼なら大丈夫とテスタロッサ大佐に太鼓判を押されるだけある。
今回は準決勝。
あと2回勝てば、任務完了というところまできた。
あの二人ならばきっとどちらも勝ってくれるだろう。
俺はそう確信していた……!
──ちなみに、このチーム戦でのトーナメント準決勝はボスボロットとアル二世の2機対敵3機との戦いとなる。
ゲーム中で言えばここはプロローグ。いわゆるチュートリアル戦闘なので、相手がどれだけ多かろうとこの二人が負けるわけがないのである!
──第1話 宿敵再び──
甲児「よし。あとは優勝するだけだな!」
宗介「ああ」
準決勝も危なげもなく勝利し、拠点に戻った甲児達は、明日の決勝のため機体を整備していた。
日も落ちはじめ、統夜とボスは必要な物品と夕飯の買い出しに出ている。
甲児「にしても、買い出しにいつまでかかってんだあいつら……」ぐー(腹の音)
腹を鳴らした甲児が、時計を見上げる。
そこへ……
ボス「たっ、たたたっ、大変だわさー!」
ヌケ「でしゅー!」
慌てたボス達が転がりこんできた。
甲児「どうした!?」
ボス「と、統夜が、統夜がさらわれた!」
甲児「なんだって!?」
ボス「買い物を終えて帰ろうとしたんだが、その途中、襲われて、あいつは俺達を逃がすために!」
この事態を甲児達に知らせるために、統夜は囮となり、ボス達を行かせたのだ!
宗介「……囲まれている。皆、機体に乗れ」
甲児「ああ。どうやら、ボスを逃がしてなりふりかまわなくなったみたいだな!」
ボスの様子を見てあたりを警戒した宗介にうながされ、甲児とボス達はボロットへ飛び乗った。
直後、拠点の壁を破壊して現れたのは、M9と呼ばれるアームスレイブ。宗介の所属するミスリルでも使われ、最近軍でも採用の決まったくらいの最新鋭機である!
それをふくめた一団が宗介と甲児に襲い掛かる!
次から次へと襲い来るアームスレイブを返り討ちにし、甲児達は明日決勝の会場となるはずだった闘技場へと走る。
殴り倒した襲撃者から、そこへ連れ去ったと情報を得たからだ。
アリーナの入り口を破壊し、アル二世とボスボロットが闘技場へ突入する。
日は沈み、すでに夜のとばりもおりていた。
甲児「統夜、どこだ!!」
天井の開けたスタジアムに、甲児の声がこだまする。
???「慌てなさんな。囚われのオヒメサマなら無事ここにいるさ。カブトコウジ君」
パッパッパッと客席にスポットライトが集まり、人影が現れた。
甲児「お前っ!」
宗介「お前は!」
ガウルン「そうさ。俺だよカシムゥ!」
宗介「ガウルン!」
後ろ手に縛られた統夜に銃を突きつけつつ現れたのは、かつて自爆して消えたはずのガウルン(フルメタルパニック/人物)だった。
ガウルン「いやー、嬉しいものだな。こうして祭りを企画すれば、お前は釣れると思っていた。そうしたらお前だけじゃなく、カブトコウジ君。さらにもう一人と、あの時の二人までついてきた。因縁てのはまわるものだな!」
ガウルンが楽しそうに笑う。
因縁。
幼少のころガウルンと戦場でやりあってから縁のある宗介。
さらに統夜と甲児もかつてガウルンがあしゅら男爵(マジンカイザー/人物)と組んで引き起こしたかなめ誘拐事件(第1部発生)にまきこまれたことで、ガウルンと対峙した過去がある。
彼等やかなめの活躍により、その誘拐事件は失敗。そして敗北したという、三人はガウルンにとって因縁の相手であるのだ。
この催しは、ガウルンが宗介をここに呼び出すための餌だったのである……!
宗介「因縁? むしろお前が俺を誘き出すためこれをしかけたのだろう?」
ガウルン「ああ。その通りさカシム。せっかくあの自爆から生き残ったってのに、この前の祭りはリハビリに忙しくて参加できなかったからな。こうして動けるようになった今、自分で開催しないと損だろう!」
甲児「相変わらずしぶとい奴だ」
ガウルン「そうはいっても、今だってまだまだ本調子じゃない。だから、人質ってヤツをとらせてもらった。優しいお前達は見捨てることはできない。お前達の欲しいブツだってどこにあるかもわからん。どうしようもなくつんでいるなぁ!」
統夜に銃を突きつけ、ガウルンは笑う。
甲児「……」
ガウルン「素人同然の奴を連れてきたあげく、単独で行動させるたぁ、えらく平和ボケしたみたいだな。今回こそ、俺の勝ちだな。カシムゥ」
宗介「いや、そうでもない」
ガウルン「なに?」
宗介「そこにいる紫雲統夜を素人の足手まとい。人質にできるなどと考えているのなら、間違いだ」
ガウルン「ほう? つまり、戦士だから、覚悟はできているってことか」
宗介「違う。紫雲を捕まえたということ自体が思い違いということだ。紫雲統夜は、捕まってなどいない」
甲児「釣れた。っていうなら、それはむしろお前の方ってことだ。ガウルン!」
ガウルン「な、に?」
それは、一瞬のことだった。
宗介と甲児と会話するため、ガウルンは統夜から視線を外していた。
ほんの一瞬。
それが、致命的な隙となった!
ガウルン「っ!」
視線を統夜へむける。
銃を向けられた紫雲統夜は笑っていた。
それは死の恐怖に怯えたわけでも、自棄になったわけでもない。むしろ恐怖すらねじ伏せ、勇気と自信をもって自分を見ている。
それは、勝利を呼びこむこのタイミングを待っていた瞳だった!
それが、ガウルンにははっきりと感じられた。
統夜からガウルンの意識がそれていたその瞬間。
統夜は心の中で念じていた。
勝利の鍵となる存在を。
その、名を!
統夜(こい。グランティード!)
カッ!!
ガウルン「やべえ!」
次の瞬間、ガウルンは統夜から手をはなし、その場から飛びのいていた。
これまでを生き抜いてきた長年の勘だろう。
それを信じ、とっさに逃げ出したガウルンの動きは流石としか言いようがなかった。
ここで下手に引き金を引こうとしたり、統夜を力ずくでどうにかしようと動いていたなら、次の刹那に光と共に現れる鋼の巨体に圧し潰され、客席を彩る赤いシミとなっていたのだから。
ガウルンは、見る。
統夜の意思に応え、なにもないところから光と共に現れた、グランティードの姿を。
グランティードが現れるのと同時に、統夜は光の帯に包まれ、コックピットへと吸いこまれてゆく。
周囲に銃を持った伏兵も配置されていたが、これでは無意味。
鋼の巨人相手に生身の兵では勝ち目はない。
統夜「Qパーツはもらっていく!」
動き出したグランティードが、さらわれる最中聞きだしていたQパーツのありかへ手をつっこみ、回収する。
ちなみに、コックピットにはサブパイロットである五人娘全員(紹介はラストに)が乗っている。
これはグランティードが今、この場に呼ばれることを知っていたからである。
なぜ、素人当然の統夜がこの地についてきたのか。
それは、こうして狙われた際、あえて捕まり、逆転の一手を放つためであった!
足手まといであることを逆手にとるため、危険を承知で統夜はあえてついてきていたのだ!
こうして、いざという時を対処するために!!
ガウルン「こんなラムダ・ドライバにも匹敵する隠し玉を持っていやがったか……!」
甲児「それだけじゃないぜ!」
ボスボロットが空を指さす。
きらりっ。
闇夜を切り裂き、闘技場に二つの流星が降り注いだ。
激しい轟音と共に、巨大な土煙が闘技場内に舞い上がる。
ボス「さあ、いってこい兜!」
甲児「ああ!」
流星の落下に合わせ、ボスボロットの腹の中から兜甲児の乗ったカイザーパイルダーが飛び出す。
ガウルン「あのオンボロロボットの腹の中からだと!? いつの間に仕込んだ!」
甲児「そりゃ最初からだ!」
ガウルン「あんなところにずっとだぁ!? 一体それは、どうやって動いているんだ!」
流石のガウルンも驚きを隠せない。
腹の中が空っぽだったということは、どこに動力源がある!
宗介(わかる)
統夜(わかる)
その驚きに二人も同意したが、それは表に出さなかった。
ある意味、ボロットこそが一番謎なロボットかもしれない……
甲児「いくぜカイザー! パイルダーオーン!!」
闘技場に落下した鋼の巨人にカイザーパイルダーがドッキングし、魂を得たマジンカイザー(カイザースクランダーなし)が土煙の中から立ち上がる。
同時に……
アル「時間。場所ともに狂いはありません。いつでもいけます」
宗介「ならば、十分だ。いくぞ、アル」
サベージから、闘技場に降り立ったレーバテインに乗りかえた相良宗介も愛機を起動させる。
ちなみにだが、宗介のレーバテインは海上で待機していたトゥアハー・デ・ダナンより射出されここに。マジンカイザーは宇宙からの自由落下でここに到着したことを伝えておく。
立ち上がった二体のところに、Qパーツを回収した統夜のグランティードも降り立った。
統夜「よし。『パートナー選択』、行くぞ!」※パートナー選択は前作、第2次のセーブデータがある場合で、初めての場合は伝統でテニアがサブパイロットとなる。
カティア「任せて!」(カティアを選択した場合)
テニア「任せて!」(セーブデータがない場合、もしくはフェステニアを選択した場合)
メルア「はい!」(メルアを選択した場合)
ロゼ=リア「お任せですわ!」(ロゼ=リアを選択した場合)
クド=ラ「うん!」(クド=ラを選択した場合)
ボスの乗るボスボロットをふくめた4機のスーパーロボットが、闘技場にて戦いのかまえをとる。
ガウルン「……まんまと誘き出されたのは俺の方だったってわけか。素人のガキと侮った。一年前のガキとは違うんだな!」
宗介「その通りだ。そして、大佐の方がさらに上手だったということだ」
ガウルン「ちっ。前は船も奪えた甘ちゃんだったってのに、今回は見事にやり返されたってわけか」
大佐。というのはトゥアハー・デ・ダナン艦長、テレサ・テスタロッサのことである。
彼女もかつて、ガウルンに手玉にとられ、その艦を奪われ、かなめと共に奪還したことがある。
今回のこの一件、彼女は相良宗介を誘き出す罠であると読み、そこにあえて乗り、逆に罠を仕掛けるという方法をとったのだ。
それが、統夜というジョーカーの参加であり、ガウルンという大物を釣り上げる釣果につながったのである。
宗介「観念しろガウルン。お前との因縁もこれまでだ!」
ガウルン「そうはいかねえさ。まだ本調子じゃないんでね。今回は逃げさせてもらうぜ」
ガウルンがさがるのと同時に、闘技場へアームスレイブがなだれこんできた。
元々は統夜を人質にし、この伏兵アームスレイブで宗介達をなぶり殺しにする予定であったのだが、形勢逆転された今、この戦力がガウルンを逃す最後の砦となった。
マジンカイザー、レーバテイン。グランティードと戦力の整った統夜達を相手にするには役不足(誤用の方)な相手であったが、ガウルンとて歴戦の猛者。それだけでも逃げるには十分な戦力だった。
バッタバッタとなぎ倒される味方を尻目に、ガウルンは宗介達の追跡をかわし、この場からの逃走に成功する。
ガウルン「あばよカシム。決着はまたつけようぜ」
そう言い残し、ガウルンはその場から逃げ出した。
甲児「ちっ。逃がしたか」
統夜「どうやら、安心して暮らせるようになるのはもう少し時間がかかるみたいだな」
甲児「ったくしぶとい野郎だぜ」
宗介「それでも、当初の目的通り、目標は確保した。作戦は成功だ」
甲児「ああ」
宗介「だが、ガウルンはどうにかしなければならない。あとは、俺の役目だ」
甲児「なに言ってんだよ。乗りかかった船だ」
統夜「ここまできて放っておけるわけないさ。それに、俺達にだって因縁の相手だ。最後までつきあうよ」
宗介「……助かる」
こうして、地球を揺るがす可能性はあるが、大きくはない戦いの幕が上がった。
しかし、誰もが予感している。
これが、新たな争乱の幕開けであることを……
第3次スパーロボット大戦Jが、はじまる。
第1話 終わり
──登場人物紹介──
主にオリジナルの紹介をしておきます。主人公からヒロイン、その他、機体を五十音順で。
『紫雲統夜』
グランティードのメインパイロットにしてこの物語の主人公。
『カティア・グリニャール』
ヒロイン。統夜と同じくフューリーと地球人のハーフ※
※フューリーとは40億年ほど前星間戦争に敗れて生まれたての地球にたどりついた異星人のこと。
黒髪でしっかり者。みんなのまとめ役。
統夜の呼び方は「統夜君」
『クド=ラ・ダルービ』
ヒロイン。純フューリー。かつて統夜に兄のジュア=ムを殺されたと思い強い憎しみを持ち、復讐しようとしていた少女。
今はそのわだかまりもとけ、統夜達の後輩として同じ高校に通っている。
統夜の呼び方は「シウン・トウヤ」
『シャナ=ミア・エルテナ』
ヒロイン。純フューリー。元フューリーの皇女で統夜の幼馴染。
統夜の呼び方は「トウヤ」
『フェステニア・ミューズ』
ヒロイン。フューリーと地球人のハーフ。愛称はテニア。
赤髪のムードメーカー。いっぱい食べるけど背はそんなにおっきくない。
統夜の呼び方は「統夜」
『メルア・メルナ・メイア』
ヒロイン。フューリーと地球人のハーフ。
金髪で少しおっとりしているが、芯は強い。甘いものが好き。
統夜の呼び方は「統夜さん」
『ロゼ=リア・エルテナ・フューラ』
ヒロイン。かつて星間戦争を勝利した側のフューリーの姫。
シャナ=ミアの気を強くして赤髪にしたような感じ。
統夜の呼び方は「トーヤ」
『アル=ヴァン・ランクス』と『カルヴィナ・クーランジュ』
第1次地球圏争乱時のライバル枠とそのお嫁さん。
現在地球圏のどこかで幸せな新婚生活を満喫中のため、今回登場の予定はありません。
下手に幸せの邪魔をすると、大変なことになるので……
『ジュア=ム・ダルービ』
クド=ラの兄。
だれもゆくえをしらないらしい。だいじょぶ。イキテル。
『グランティード』
統夜の乗る機体。複座型であり、ヒロインからサブパイロットを一人選んで操縦する。
『バシレウス』
ヒロイン達の乗る機体。同じく複座であり、ヒロインの中からメインパイロットとサブパイロットを選んで操縦する。
一応メインパイロットはロゼ=リアだが、ヒロインなら誰がメインに乗っても問題はない。
二体が合体することで『グランティード・ドラコデウス』となる。
バシレウスは第2話から出撃が可能で、統夜の気力が120を超えるとグランティード・ドラコデウスへの合体が可能となる。
※補足
エンディングについて。
今回追加ヒロインはありません。
個別エンディングへのポイントはグランティードのサブシートに何回乗ったかのみになります。
条件を満たしたヒロインが複数いる場合、選択が可能。
前作の個別エンドデータがあれば、ポイントに関係なく条件達成となる。
お話は第2次ノーマルエンドからの続きだよ!