──こたつ その1──
これは、ロゼ=リアが地球に現れる前、シャナ=ミアが地球にやってきて皆の高校に通いはじめたころの話である。
時は冬。
カティア、シャナ=ミア、テニア、メルアの四人は冬の寒さから逃れるため、日本の伝統敵暖房器具、こたつに入っていた。
テニア「はへー。これがこたつかー」
カティア「噂に聞いていたけど、こういうものなのね」
メルア「あったかいですねー」
シャナ=ミア「本当に。ぽかぽかします……」
四角いこたつの一辺に一人ずつ座り、四人はその温かさの恩恵を受ける。
元々日本に住んでいなかった彼女達は、この時がこたつ初体験であった。
テニア「甲児やボスが冬ならこれって言うのがわかるー」
メルア「ですねえ」
テニア「ふにゃー」
こたつの暖かさに、テニアがくてーっととろけたようにテーブルへつっぷす。
その時だった。
カティア「きゃっ」
カティアが驚きの声をあげた。
シャナ=ミア「どうしました?」
カティア「なにかが、私の足に……」
テニア「あー、ごめん。多分、アタシの足」
カティア「びっくりしたわ」
テニア「足の裏にちょっと当たっただけだと思うけど、カティアってば敏感だね」
あはは。とテニアが笑う。
カティア「誰だって不意をつかれればびっくりするわよ」
シャナ=ミア「……」
テニア「大丈夫。可愛かったから!」
カティア「全然大丈夫じゃないわ」
テニア「メルアはどう思う?」
メルア「わたしも可愛かったと思いますよ」
テニア「だよねー」
カティア「二人共なにバカなことを……ひゃんっ!」
テニア「!?」
また、カティアから声が上がる。
テニアもびっくり。
カティア「テニアー」
テニア「違う! これはアタシじゃないよ!」
シャナ=ミア「くすくす。ごめんなさい。私です。カティアさんの反応がもう一度見たくて」
カティア「シャナ=ミアー」
テニア「シャナー」
二人で非難をこめた視線をシャナ=ミアに送る。
シャナ=ミア「ごめんなさい。でも、私もこういうことやってみたくて」
カティア「まあ、しかたないわね。もうしちゃダメよ」
滅多にこういったおふざけをしないシャナ=ミアだったためか、カティアもすぐ矛を収めた。
テニア「気持ちはよくわかる」
シャナ=ミア「わかってくれますか」
カティア「わからないで」
えへへ。とカティアの声に、二人は笑った。
メルア「……」
テニア「そういえば、シャナはミカンの白いのは全部とる派? 気にしない派?」
シャナ=ミア「私は……」
謝罪も終わり、他愛のない話へ戻った。
シャナ=ミア「カティアさんは?」
カティア「私は……ひゃっ!」
またまたカティアの声があがる。
カティア「今度は誰!?」
テニア「ぶんぶん」首を横に振る。
シャナ=ミア「ふるふる」首を横に振った。
メルア「わたしです!」
なぜか自慢げにメルアが答えた。
カティア「一応聞いておくけど、理由は?」
メルア「わたしだけ仲間はずれはずるいと思うの! わたしもカティアちゃんのかわいい声聞きたい!」
カティア「そう。素直でよろしい」
メルア「えへへ」
カティア「だからって許さないけどね!」
メルア「ごめんなさーい」
カティア「もう」
テニア「……」
ぺこぺこと謝るメルアを尻目に、テニアはそっと、こたつの下で足を伸ばす。
再びその足が、カティアの足裏へ触れようとしたその時……
がしっ!
テニア「ひえっ!?」
カティア「これは、テニアね」
がっしとテニアの足をつかんだのは、カティアの手であった。
カティア「この流れなら自分がもう一度やっても笑って許されるとか思ったでしょう?」
テニア「な、なんでわかったの!? サイトロン!?」
カティア「使わなくたってわかるわよ。どれだけ一緒にいたと思っているのよ」
テニア「だ、だめかな?」
カティア「駄目に決まってるでしょ。二度目は許さないわ。覚悟なさい」
テニア「やーっ!」
つかまれた足を、そのままくすぐられた。
テニア「あはっ。あはははは! やめっ。やめてー! なんでアタシだけー!」
カティア「確かにテニアだけは不公平ね。わざとやった2人もあとでくすぐってあげるわ」
シャナ=ミア「ええー!」
メルア「テニアちゃーん!」
テニア「うぇへへ。死なばもろともよ、うぃひひひっ! 無理。もう無理ー!」
メルア「カティアちゃん許してー」
シャナ=ミア「ごめんなさーい」
カティア「いいえ許さないわ。たまには私にもやらせなさい!」
シャナ=ミア「これは……」
メルア「カティアちゃんもやりたかっただけだー」
テニア「あははははは。たすけてー!」
こうして、かしましい声が、部屋に響いたそうな。
──こたつ その2──
これは、オーラシップ・ゴラオンを救出するためシベリア方面へむかった時の話である。
シベリアは、寒かった。
統夜「うー、さむさむ。艦の中は暖かいといっても、寒い外から戻ると足りないな……」
出撃デッキから戻った統夜が、思わず体を震わせる。
戦艦アーガマの中は空調が効いているが、出入りする出撃デッキは外からの空気が入るため、外と変わりはない。
その空気の中を通ってくれば、空調の効いた艦内に入ってもすぐに体は暖まらなかった。
統夜(そういえば、ボスがこたつをもちこんだって話してたな……)
少しでも暖まろうと、統夜は設置されたというこたつの方へ足をむける。
ボスボロットの中にはちゃぶ台を置く畳があり、寒い場合はここがこたつになったりもするのである。
今回それを、艦内へ持ちこんだのである。
???「ほわあぁぁ! な、なんですのこれ!」
統夜「なんだ? この声は、ロゼ=リア……?」
こたつの置いてある部屋から響いた突然の奇声。
何事かと、統夜はその声のした方へとむかう。
ロゼ=リア「なんですの。なんなんですのこれはー!」
そこには、こたつにすっぽりとのみこまれ、カメのようにこたつから頭だけを出したロゼ=リアの姿があった。
ロゼ=リア「これは……極楽……ですの……?」
あまりの暖かさに、ロゼ=リアがとろけたような声をあげる。
統夜「ロゼ=リア?」
ロゼ=リア「ああ、トーヤ。トーヤではございませんか。わたくしは大変な発見をしてしまいました」
統夜「あ、ああ」
ロゼ=リア「寒さの中、すべてを優しく包みこんでくれるこの暖かな空間。こんな素敵なところ、はじめてですわー!」
統夜「それはよかった……」
ロゼ=リア「というわけで、わたくし今からここに住みます!」
統夜「ちょっ!?」
ロゼ=リア「むしろここを終の棲家としたい所存ですわ!」
統夜「さすがにそれはどうかと思うな。住むに適さない場所だし、それ人の物だし」
ロゼ=リア「なんの問題もありません! だってこんなにふにゃーっとするんですもの! ここはもう、わたくしの所領となりました! 極楽にございます!」
統夜「……」
統夜(今なにを言っても届かないな。まあ、冷静になれば明け渡すだろ)
統夜はこのテンションのロゼ=リアだと、冷めるまでなにを言っても聞く耳を持ってもらえないと判断した。
なので、落ち着くまでしばらくつきあってあげることにする。
統夜「わかったよ。確かにこたつはいいものだしな。ロゼ=リアが自分のものにしたくなっても仕方がない」
ロゼ=リア「ですわ!」
統夜「それで相談だけど、俺もその終の棲家に住まわせてもらってもいいか?」
ロゼ=リア「ほへっ!?」
統夜「一人で住むより、二人で住んだ方が暖かいだろ」(なにより、寒いから俺もこたつに入りたい)
ロゼ=リア「……」
統夜「駄目か?」
ロゼ=リア「し、しかたありませんわね。特別ですわよ!」
統夜「ありがとう」
礼を言うと、統夜は「うー、さむさむ」と口にしながら、こたつへ入った。
一方ロゼ=リアは、先ほどのテンションとはうって変わり、静かなものである。
座っている統夜からは、頭だけ出しているロゼ=リアの顔をうかがい知ることはできない。
ロゼ=リア「ねえ、トーヤ」
統夜「ん?」
ロゼ=リア「今度、改めてわたくし達の終の棲家を探しに行きましょうね」
統夜「そうだな」
ロゼ=リア「ふふっ、約束ですわよ」
統夜(こたつ、ホントに気に入ったんだな)
ロゼ=リアが冷静になってきたことを感じた統夜は、のんきにそんなことを思うのであった。
その後本当にこたつを買いに行ったのかは、エンディングのフラグが立っているかどうかで変わるんだってさ。
エピソード その1 終わり