第3次スーパーロボット大戦J   作:YSK

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ヒロインズエピソード 02 感動と料理

 

──感動──

 

 

 これは、ダルタニアスの一行と共に日本へ戻ってきたあとの話である。

 

 

???「ブー」

 

???「ぶー」

 

統夜「?」

 

???「ブー」

 

???「ぶー」

 

 

 ビルドベースの裏。

 そこでなにやら声がすることに気づいた統夜は、そちらへ足をむけた。

 

 

トン助「ブー」

 

シャナ=ミア「ぶー。ふふっ」

 

 

 そこには、笑顔でトン助を撫でるシャナ=ミアの姿があった。

 ブーと鳴くトン助にあわせ同じく声をかけるその姿は、二重奏を奏でる歌のようであり、とても楽しそうである。

 

 ちなみに、トン助とはダルタニアスのパイロット、剣人と共に生活していた戦災孤児の次郎のペットである豚のことである。

 彼等が日本に帰ってきた時、一緒に連れ帰ってきた、ダルタニアスのマスコット要員だ。

 

 

シャナ=ミア「あ、トウヤ」

 

 

 誰かが近づいた気配を感じた彼女は顔をあげ、そこにいた統夜を見てまた笑顔を浮かべる。

 

 

トン助「ブー」

 

シャナ=ミア「ふふっ。見てくださいトウヤ。可愛いと思いませんか?」

 

 

 気持ちよさそうに頭を撫でられるトン助を見せる。

 

 

統夜「そうだな。俺も撫でさせてもらってもいいかな?」

 

シャナ=ミア「もちろんです。ですよね?」

 

トン助「ブー!」

 

シャナ=ミア「よいそうです!」

 

統夜「ありがと」

 

 

 許可を得た統夜も、トン助の頭を撫でる。

 

 

トン助「ブー」

 

シャナ=ミア「喜んでいますよ!」

 

 

 撫でられ、嬉しそうな声をあげたトン助に、シャナ=ミアも嬉しくなる。

 

 

シャナ=ミア「地球の生き物は、どの子もとても素晴らしいですね。多種多様な個性を持っていて、みんな生き生きしている」

 

統夜「そうだな」

 

 

 トン助を愛でながら、シャナ=ミアはしみじみと思う。

 

 シャナ=ミアは、元々フューリーが生活していた星系の生き物を知らない。

 情報としては知っているが、実際に見たことも触れたこともない。

 

 なぜなら彼女は、フューリーが大戦で敗北し、40億年前の地球に到着して地球に生命の種をまき時を待ち、40億年後新たに活動をはじめてから月の中で生まれた新しい世代だからだ。

 月の中で育ち、統夜に月から連れ出されるまで、月の外を伝聞以外知らずに生きてきた。

 

 ゆえに、彼女にとって地球とは、驚きの宝庫。生で見るものすべてが新鮮で、刺激に満ちたものばかりなのである。

 それは、今、この時も続いている。

 

 

シャナ=ミア「まだまだ、地球には私の知らないことばかりです」

 

統夜「確かにな。俺もまだまだ知らないことばかりだし。そうだ、今度動物園にでも行こうか? そこならさらに動物を見れるし」

 

シャナ=ミア「はい! ぜひ!」

 

統夜「せっかくだし、お前のご主人様も誘おうか。やっと日本に戻ってきたことだし、他の小学生とも一緒の方が楽しいだろうしな」

 

 

 お前のご主人様というのは、トン助の飼い主でもある次郎達のことである。

 他にもロンド・ベルに参加しているパイロットの関係者の中に子供は多い。

 

 それらの子のことを統夜は気にかけたのだが……

 

 

シャナ=ミア「むー」

 

統夜「ん?」

 

シャナ=ミア「トウヤは、意地悪です」

 

統夜「え、なんで!?」

 

 

 ぷくーっと頬を膨らませるシャナ=ミア。

 

 なぜか、彼女の受けは悪かった。

 不思議である。

 

 こういう時はなぜか全然サイトロンも働かず、察しが悪いのは仕方のないことである。

 

 

シャナ=ミア「でも、まあ、しかたありませんね。トウヤ、約束ですよ」

 

統夜「ああ。必ず行こうな」

 

シャナ=ミア「はいっ!」

 

トン助「ブー!」

 

 

──おまけ──

 

 

・裏話

 当初シャナ=ミアと戯れているのは猫の予定だったが、ちょうどトン助がいたのでそちらに変更となった。

 

 

──料理──

 

 

 これは、テンカワ夫妻がロンド・ベルに合流してからのエピソードである。

 

 

統夜「……」

 

 

 場所は、食堂。

 そこにいるのは、無言の統夜。

 

 彼の前には、一つの料理。

 

 小さく噴き出した脂汗もそのままに、統夜はハシを握る手に力をこめる。

 

 その姿をじっと見つめる人影が三つ。

 ミスマル改めテンカワ・ユリカと、ナデシコCの艦長であるホシノ・ルリ。

 

 この二人は、真剣な眼差しで統夜を見ている。

 

 そして三人目。この不思議な光景に首をひねるクド=ラがいた。

 

 

統夜「……!」

 

 

 二人の視線に耐え切れなくなったのか、統夜は意を決して目の前の料理にかぶりついた!

 

 

統夜「っ!」

 

 

 目を見張る。

 

 がたっ!

 

 二人の視線も強くなる。

 

 

統夜「……美味しい」

 

ユリカ「やったー!」

 

ルリ「ぐっ!」

 

 

 ユリカが飛び上がって喜び、感情をあまり表に出さないルリがこぶしを握って喜びの姿勢を見せる。

 

 そう。この料理を作ったのはユリカである。

 

 第一次地球圏争乱の時には食べた人を医務室送りにし、テンカワ・アキトと結婚した第二次地球争乱時には野菜を切るくらいは可能となった彼女が、ついに人をノックダウンさせず、舌をうならせる料理を作ることに成功したのだ!

 

 そして、この経緯をすべて目の前で見て知っている統夜だからこそ、ユリカ製の料理を口に運ぶのを躊躇するのも当然である!

 

 

統夜(気軽に頼まれごとを引き受けるんじゃなかったと後悔したけど、よかった!)

 

 

 時間外にたまたま食堂を訪れ、ユリカに頼まれごとをされ、安請け合いした結果が冒頭であった。

 

 

統夜「本当によかった……!」

 

クド=ラ「どうしてそんなに喜んでいるわけ?」

 

 

 そうした事情を全く知らないクド=ラは、一人この感動を理解できない。

 

 

統夜「そりゃ喜ぶさ……」

 

 

 統夜がさっき説明した経緯をクド=ラに話した。

 

 

クド=ラ「ふーん。別にそこまで必死にならなくてもよかったんじゃない? そのアキトって人は料理人なんでしょ?」

 

ユリカ「確かにそうだね。アキトの料理はおいしいもん! でも、それでもね、私が作った料理を食べてもらいたかったの!」

 

クド=ラ「よくわからないなあ……」

 

ユリカ「ちょっと考えてみて。美味しい料理を食べてもらって、美味しいと言ってもらえる姿を! アキトに美味しいって言ってもらえた姿を!」

 

ルリ「この場合は、自分がそう言ってもらいたい人のことですね。アキトさんを想像する必要はありません」

 

 

 ルリがフォローを入れる。

 

 

クド=ラ「料理を食べさせたい人ー?」

 

 

 ほわほわーっと想像してみた。

 ある奴がなぜか思い浮かんだ。

 

 

クド=ラ「い、いないわ!」

 

統夜「?」

 

ユリカ「そう。ならいいわ!」

 

ルリ「いいんですか?」

 

ユリカ「いいのいいの。ともかくルリちゃん。冷めないうちにこれをアキトに食べてもらわなくちゃ!」

 

ルリ「あ、そうですね」

 

ユリカ「じゃ、私達はもういくね! 味見、ありがとう」

 

ルリ「はい」

 

統夜「どういたしまして」

 

ユリカ「あと、がんばって、クド=ラちゃん!」

 

クド=ラ「意味がわからない!」

 

 

 そうして二人は、料理を持って勢いよく食堂から駆け出して行った。

 

 

ユリカ「アキトー!」

 

統夜「……あ」

 

 

 そして、気づく。

 そのノリでそのまま迫ったら、間違いなく警戒される。と。

 だってこの勢い。前に医務室送りにした時と同じノリだから。

 

 そう思い、フォローするため追いかける統夜であった。

 一応ルリがついているが、二人いた方が説得しやすいと思ったからである。

 

 食堂に一人取り残される、クド=ラ。

 

 

クド=ラ「もう。なんなのよあの人は……」

 

 

 実はわかっているのか、いないのか、本当にわからない女である。

 

 

クド=ラ「そんなこと、ないんだから」

 

 

 ただ、その時、クド=ラの脳裏にあることがひらめいた。

 料理、医務室送り。そういう理由がある。

 

 ピンときた!

 

 

クド=ラ「これだ!」

 

 

 なにかを思いついた彼女は、行動をはじめた。

 

 

 …………

 

 ……

 

 

クド=ラ「そいうわけでシウン・トウヤ、今からお前をノックダウンしてあげるわ!」

 

統夜「え? どういうこと?」

 

クド=ラ「ふふふっ。目の前にボクの作った料理があるでしょう?」

 

統夜「ああ。出来立てだな」

 

クド=ラ「それを食べてノックダウンされるがいいわ!」

 

統夜「だからどういうこと!?」

 

クド=ラ「ふふっ。ボクは気づいた。あの時テンカワ・ユリカがなぜがんばれと言ったのかを。すなわち、この料理でお前をノックダウンし、復讐をとげろということなの! あんたはボクの復讐につきあうと言ったわね!」

 

統夜「確かに言ったけど……」

 

クド=ラ「つまり、この料理から逃げられないということ! 我が復讐の時来たれり!」

 

統夜「言ったけどさ……」

 

 

 なので、拒絶するつもりはない。

 そもそもせっかく作ってくれた料理を食べないという理由もなかった。

 

 

統夜(そもそも断る理由もないしな)

 

クド=ラ「観念したようね。さあ、ノックダウンするがよい!」

 

統夜(見た目も悪くはない。でも、口ぶりからしてものすごくまずいのか?)

 

 

 席に座って、料理を眺める。

 

 立ち上る湯気と匂いに刺激的なところはない。

 この前にユリカの食べ物騒動があったゆえ、あれクラスの代物かと思い思わず警戒したが、そうではないようだ。

 

 あれよりひどいものはそうないだろう。

 そんな楽観的な考えを巡らせながら、統夜は料理を口に運んだ。

 

 ぱくっ。

 

 

統夜「……っ!」

 

 

 統夜に電撃走る。

 

 

統夜(普通に美味しいー!)

 

 

 料理は普通に美味しかった。

 むしろ普通より美味しかった。

 

 

統夜(え? でもこの場合、どうリアクションすればいいんだ? どういう意味のノックダウン?)

 

 

 思わず戸惑う。

 彼女の口ぶりから言って、初期ユリカのような惨状を想定したのだろう。

 だとすると、この味では到底望めない。

 

 それとも素直に美味しいと認めてしまっていいのだろうか?

 

 

統夜(俺はどう反応すればいいんだこれは。素直に美味しいと言えばいいのか? それとものたうち回るのが優しさか? わからない。教えてくれサイトロン。俺はどんな反応を返せばいい!)

 

 

 ワクワクと結果を待つ彼女を前に、統夜は祈る。

 だが、こんな時に限ってサイトロンはなにも教えてはくれなかった。

 

 統夜にできることはただ、時間を引き延ばすために食べ続けることだけだ。

 

 

統夜「……」ぱくぱく。

 

クド=ラ「ふふふっ。言葉もないようね! でも、全部食べるまで許さないから!」

 

 

 無言で食べる統夜に満足したのか、喜びの顔を浮かべる。

 

 

統夜(あ、これでもいいのか)

 

クド=ラ「えへへ」

 

 

 料理を食べる統夜を見て嬉しそうな彼女に、統夜は考えるのをやめ、食べることに集中するのだった。

 

 クド=ラの復讐は、まだまだ終わらない!

 

 

 エピソード その2 終わり

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