第3次スーパーロボット大戦J   作:YSK

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第07話 超電磁大戦ビクトリーファイブ

 

──デュナンの子──

 

 

 地球を中心として生まれた、いくつもの星が平和を願う式典は、ネオジオン・ムゲ帝国同盟軍の地球侵攻という大事件により延期となった。

 日程を改めてもう一度とならなかったのは、地球が進行されただけでなく、この時地球に集まっていた他の親善大使の星も同時に襲われていたからだ。

 

 これでは式典をもう一度とは言っておれず、どの星の者も自星を守るため帰らざるを得ず、地球に力を貸せたのは関わりのある少数の者達だけであった。

 

 誰もがこの時、その襲撃はネオジオンと同盟を結ぶムゲ帝国の一斉侵攻だと考えていた。

 それは一部事実である。

 

 しかし、宇宙の敵はムゲ一つだけとは限らないというのを、彼等は知ることとなる……

 

 

 ゴラオンを仲間に加え、アムロを回収してテンカワ夫妻を救い日本に戻ってきた統夜達。

 次の作戦の合間に、ひと時の休息として東京観光をすることになった。

 

 これは、地上に飛ばされ緊張づくしだったバイストン・ウェルの女王達や、かつてはこの付近に住みながら、長い間帰ってこれなかった者達の。そして地球を知らぬ者達へ、この星の良さを知ってもらいたいという息抜き兼案内でもあった。

 

 ショウ達に連れられ、シーラとエレが。

 ボアザン親善大使となったラ・ゴールこと剛博士の護衛としてやってきていたその息子にして健一達の兄。ハイネルを健一達が。

 

 そして、ひさしぶりの帰郷となった剣人達が東京の街を歩く。

 

 ちなみに、元々東京付近にいたマジンガーチームなどは、艦に残って警戒態勢である。

 

 

剣人「やっと帰ってこれたぜ」

 

 

 ひさしぶりの東京に、剣人もうれしさをにじませた。

 前は東京方面に来たと思ったらバイストン・ウェルからの浮上騒ぎがあり、そのままロンド・ベル結成と、のんびり東京を見て回る暇もなかった。

 

 

プル「どうして今まで遠くにいたの?」

 

剣人「最初の争乱のころだったかな。日本も危なくなって、疎開することになったんだよ」

 

 

 それは、統夜達の通う高校も休校になり、多くの若者が危険とされた日本を離れた時期でもあった(戦争だけでなくドクターヘルの襲撃とかもあったから)

 

 

剣人「それで疎開したまではよかったんだが、結局そこで戦闘にまきこまれて散々さ。帰るに帰れず、みんなで力をあわせてジャンク屋稼業ってわけだ」

 

ジュドー「色々あったなあ」

 

ちづる「苦労したのね」

 

剣人「ちゃんと帰ってこれたし、おちゃめ達もまた学校へ行かせられてる。だから、もういいのさ」

 

 

 そう、剣人と弾児は、平和となった東京を見る。

 どこか懐かしいように。どこか遠くを見るように……

 

 

一矢「こうして街中を二人で歩くのもひさしぶりだな」

 

エリカ「ええ。そうね、一矢」

 

京四郎「おいおい。二人きりってわけじゃないだろ」

 

ナナ「その通りよ」

 

一矢「はは。悪い悪い」

 

 

 健一達はハイネルを寿司屋へ連れてゆき、ワサビのからさで悶絶させたり、シーラ達は普段の重圧のことなど考えず、のんびりウインドウショッピングを楽しんだりと、それぞれがひと時の休息を楽しんだ。

 

 

アール博士「……」

 

剣人「どうしたんだ、じいさん」

 

アール博士「これはこれは、剣人さま。はしたないところをお見せしてしまいましたな」

 

剣人「だから、その剣人さまってのはやめろって」

 

アール博士「そうはまいりません」

 

 

 そのままいつものエリオス王家の血を引くのだから、もっとしっかりしてくださいという話の流れになってしまい、アール博士がなにを見ていたかというのははぐらかされてしまった。

 

 その時アール博士が見ていたのは、角を持つボアザンの民と、羽をもつバームの民。そして地球人。それぞれが偏見も持たず自由に歩いている光景だった。

 この奇跡のような光景に、アール博士は羨望と希望を持ったのである。

 

 

 しかし、その奇跡のような星を許さぬ者がいた……

 

 

 突如として、空に暗雲のような影が広がる。

 

 

???「認めない……」

 

豹馬「……なんだ?」

 

???「このような世界、認められない……!」

 

 

 暗雲のように広がったその黒い影は、巨大な人型の影となり、そこから空間を引き裂き、巨大な鋼の怪物が姿を現した。

 

 

???「聞け、宇宙の民よ! 我が名はジュエリオン。デュナンの子。ジュエリオン(超電磁大戦ビクトリーファイブ/人物)だ!」

 

剛博士「デュナンの子!?」

 

アール博士「ジュエリオン?」

 

 

 その名を知る者は、地球の民で一人としていない。

 

 だが、一つだけわかることがある。

 また、東京が襲われようとしている。

 

 無辜の民が傷つこうとしている。

 

 それを許す、ロンド・ベルではなかった!

 

 万一のため待機していたマジンガーチームが東京へ飛び、自動操縦で発進したコン・バトラー、ボルテスが空を行く。

 

 

 突如として空を裂いて現れた集団は、地球を守るスーパーロボットに迎撃される。

 

 

ジュエリオン「なにっ? 馬鹿な。我が軍団がこうもたやすく!」

 

豹馬「どうだ驚いたか!」

 

健一「俺達はお前のような宇宙の無法者を倒すため再び集まったんだ!」

 

ジュエリオン「そうか。貴様等か。余計なことをして、平和などをもたらしたのは。くっくっく。面白い!」

 

 

 空に現れた黒い影が薄くなってゆく。

 

 

ジュエリオン「なにも知らず、身のほどもわきまえず平和を欲する罪深き者ども。貴様等に安寧などはない。すべての人類に生きる意味などない。すべて滅びるがいい。おとなしく、我が前にひざまずき、醜い争いを見せていればまだ生き永らえただろうに! いずれそのことを、後悔するがよい!」

 

豹馬「誰がそんなことするもんかよ!」

 

 

 こうして新たな敵。デュナンの子の宣戦布告は終わった。

 

 東京への被害は、ほぼないと言ってもよかった。

 例えあったとしても、GGGのカーペンターズが直してくれたが。

 

 そんな中、豹馬は一人の少女を保護する。

 記憶を失い、身元もわからぬ彼女は、豹馬にチリと名づけられ、ロンド・ベルで預かることとなった。

 

 

 そして、ロンド・ベル隊は一度、ボアザンの博士にして健一達の父、ラ・ゴールこと剛健太郎によって集められた。

 先ほどホログラムとして空に現れたジュエリオン。それが何者か、ボアザン星の者として心当たりがあるというのだ。

 

 

剛博士「あの名が確かなら、健一。お前達にはつらい話になるかもしれない」

 

健一「かまいません」

 

豹馬「そもそも聞かなきゃそれもわからないわけだしな」

 

剛博士「そうか。ならば、話そう。デュナン。ジュエリオン。その名は、3000年前の昔語りに登場する」

 

京四郎「3000年? えらい昔の話が出てきたな」

 

剛博士「うむ。そのころ、ボアザンとバームは星間戦争を行っていた」

 

エリカ「アール博士も言っていましたね。それほど昔から……」

 

剛博士「そうだ。このころは両星と共に銀河に自分の領土を広げようと躍起になっていた。そんな中、愛と平和を訴え、戦争をやめさせようとした者達もいた。それがデュナンとリオン。戦場でめぐり逢い、愛し合うようになったボアザン星とバーム星の夫婦……」

 

エリカ「……」

 

一矢「……」

 

健一「その人達は、どうなったんです?」

 

剛博士「殺された。いや、殺されたというより、惨殺されたのだ。双方の星の者が裏切り者として連れ帰り、見せしめのために処刑したのだという。それは、後世のボアザン星の学者さえ、あまりの残虐さに正史から抹消し、歴史の闇に消してしまったほどだ……」

 

カティア「そんな……」

 

剛博士「だから、王宮に残されていた古い記録からも、わかることは多くない。ただ、夫婦にはまだ幼い子供が二人おり、妹の名はべリオン。姉の名を、ジュエリオンといったというのだ」

 

健一「っ!」

 

京四郎「つまりそいつは、3000年前から甦り、今更復讐しに来たってわけか」

 

剛博士「子孫かもしれんし、サイボーグ、クローンという可能もある。だが、いずれにせよ、その関係者であると考えるのが妥当だろう」

 

剣人「そりゃ、なんの関係もないヤツがあそこまで憎しみにかられるわけないだろうからなあ……」

 

剛博士「健一。これを知り、お前はどうする? 戦えるのか?」

 

健一「……わからない。でも、戦う前に一つやることがある」

 

剛博士「それは……?」

 

健一「彼女と、一度話し合ってあってみようと思う。両親を殺され、人を憎む気持ちというのは、俺もわからなくはない……」

 

大次郎「……」

 

日吉「……」

 

 

 剛兄弟の母は、ボルテスVがはじめて戦場に出る時、その時間を稼ぐためボアザン軍の前に立ち、命を落とした。

 彼もまた、肉親を誰かに奪われる痛みを知っているのだ……

 

 

健一「ハーフである辛さも知っている。この部隊には、この気持ちを知る人が大勢いる。それでも今まで乗りこえてこれた。俺にどこまでできるかはわからない。でも、話し合いでとめられるなら、とめてあげたい」

 

剛博士「そうか。ならば私は、なにも言わぬよ。お前の好きにやるがよい」

 

豹馬「そういうことなら、俺も手伝うぜ!」

 

ハイネル「もちろん、私もだ」

 

 

 健一の考えに、一矢も、統夜も、部隊の皆が賛同する。

 憎しみによる闘争ほど、哀しいものはない。そう知っている者は多いから……

 

 

チリ「……」

 

 

 その会話を、豹馬に拾われた一人の少女は、じっと聞いていた……

 なにかを、思うように。

 

 なにかを、考えるように……

 

 

──おまけ──

 

 

 デュナンの子の補足。

 原作紹介。

 

 デュナンの子、ジュエリオン、べリオンの登場する『超電磁大戦ビクトリーファイブ』を知っている人はそう多くないと思うので、ちょっと紹介しておく。

 この作品は、コン・バトラーV、ボルテスV、ダイモスが同じ世界の出来事だったらというスパロボヨロシクなクロスオーバーをさせた作品である。

 

 あらすじは地球とキャンベル星、ボアザン星、バーム星は四惑星不可侵条約を締結。平和が約束されたその時、突如現れたジュエリオンと名乗る者が各惑星の指導者を拉致し、他惑星の住人千人を差し出さねば人質を殺すと脅し、惑星同士で殺し合いを強要する。

 だが、この危機にコン・バトラーV、ボルテスV、ダイモスら超電磁ロボチームが立ち上がり、そのさらわれた指導者を救出にむかう。というものだ。

 

 今回はのっけからその不可侵条約の締結に当たる平和式典が中止になり、要人誘拐、他の星の人間千人の首を用意しろという計画はご破算になっている。

 ゆえに、人質救出のため惑星デュナンのある場所へ旅立つという根本が違っているので注意してほしい。

 

 他にも色々クロスオーバーの都合上変化があるので、興味があったら君も『超電磁大戦ビクトリーファイブ』をチェックしてみよう!

 

 

────

 

 

 ジュエリオンと話をする機会はすぐにやってきた。

 

 再び空が暗雲に覆われ、翼と角を携えた女性のシルエットと化し、その影に生まれた空間の裂け目から次々とデュナンの子と称されるロボットが湧きだしたのだ。

 

 この出現は、GGGと敵対したゾンダー達の使ったESウィンドウと呼ばれるワープドアの手法と似ており、その出現が予測できたのが幸いした。

 

 出現にあわせ、迎撃に出るロンド・ベル隊。

 

 湧き出すように現れるロボを次々と撃破し、健一達ボルテスVは空に現れた影。ジュエリオンへと近づいてゆく。

 

 

健一「聞いてくれジュエリオン! 話がある!」

 

 

 ある程度近づいたボルテスは、ゆらゆらと揺れる影に話しかけた。

 すると、形が安定し、一人の女性の姿が映し出される。

 

 角と翼をもった女性。

 彼女こそが、このデュナンの子を統括する、ジュエリオンであろう。

 

 ボアザンとバーム、二つの星の特徴を持つ『その姿』は、『デュナンの子』、『ジュエリオン』の名乗りとあわせ、自身を3000年前に迫害された存在そのものであると主張していた。

 

 ゆえに健一も、そこに現れたのが父に聞かされたジュエリオン本人であると想定し口を開く。

 

 

健一「話を聞いてくれ。俺は、お前と立場を同じくするものだ。二つの星の血を持つ者同士、きっとわかりあえる。共に生きていけると信じている! 憎しみで戦い続けてなにも生まれはしない! だから、一度憎しみを捨て、話し合おう!」

 

ジュエリオン「くくく。憎しみではなにも生み出さない? 話し合おう? ならば、お前達がもたらした平和とは、なんだ?」

 

健一「なに?」

 

ジュエリオン「それは話し合いだったか? お前はボアザンの支配者を憎いと思ったことはないのか? 自分の母を殺し、父を幽閉し、多くの人々を苦しめたボアザン星人を!」

 

健一「っ!」

 

ジュエリオン「一度も憎いと感じずに、お前は戦ったというのか!?」

 

健一「それは……」

 

ジュエリオン「そうだろう! むしろ貴様ならば私の気持ちがわかるはずだ。石もて追われる者の苦悩が! お前は言えたのか? 地球の者達に自分達はボアザンと地球の血を引いていると! 自分から告白できたのか!?」

 

健一「くっ……」

 

ジュエリオン「その反応。言えなかったのだろう! 迫害を恐れ、秘密にした! それでよく言えたものだな!」

 

健一「だが、最終的には皆わかってくれた! 俺を、俺達を受け入れてくれた!」

 

ジュエリオン「受け入れた? 力で受け入れさせたの間違いだろう! お前達は力があった。それがあるからすべてを覆せた。違うか!」

 

豹馬「んなわけねえだろうが!」

 

ジュエリオン「なにっ!?」

 

豹馬「そんなの関係なく、健一達は俺達の仲間だ! 健一達だけじゃねえ。エリカさんだって、統夜達だって、バイストンウェルの人間だろうと関係ねえ! みんな、同じ人間で、仲間なんだよ!」

 

剣人「そうだぜ! よく言ったぜ豹馬さん!」

 

豹馬「力があればなんでもしていい。そんなわけあるか! その力で、同じ哀しい運命を背負った子供達を生み出して、それが本当に正しいと思っているのか!!」

 

チリ「……っ!」

 

ジュエリオン「正しいさ! 正義とはな、常に復讐する者の側にあるのだ! 同じ痛みを思い知れ! お前達が私達になにをしたのか。それをな!」

 

ハイネル「お前の憎しみに、地球の者達は関係ない! 憎むなら、我等ボアザンの者を憎め!」

 

ジュエリオン「うるさい! 同じだ。地球も、ボアザンも、バームもな!」

 

アムロ「なんて暗い心なんだ。憎しみの力が、ここまで感じられるなんて……!」

 

健一(ダメだ。今の彼女に、俺達の言葉は届かない……! なにか。なにかできることはないか……!?)

 

健一「……っ!」

 

 

 その瞬間、健一は思い出す。

 同じく復讐の心に突き動かされた少女を、その憎しみを否定せず、真正面からぶつかり、解決した仲間がいたことを!

 

 

健一「……確かに、そうだ。認めようジュエリオン。俺は、間違っていた」

 

豹馬「健一!?」

 

ジュエリオン「ハハハ。認めたか! ならばわかるだろう! 私の正しさが! お前達の過ちが!」

 

健一「ああ。間違いだった。お前と俺達が同じだと思ったことがな!」

 

ジュエリオン「なにっ!?」

 

健一「お前と俺達は全く違う! 確かに俺は、お前と同じく違う星の二人が愛し合い出来た子だ! だが、お前とは違い、恵まれている!」

 

ジュエリオン「っ!」

 

健一「気を許せる仲間がいる! 憎しみあったはずの者とは手をとりあえた! 許しあえた! お前と違い、幸せだ! こんな俺がお前と同じなど、考えるだけ無駄だった!」

 

ジュエリオン「貴様っ……!」

 

健一「そう。俺はお前ができなかったことをすべて体現した存在と言える。お前が得られなかった、得たかったはずの未来が俺だ!」

 

ジュエリオン「黙れ!」

 

健一「人を憎むべき存在とどれだけ罵ろうと、俺という存在がいる限り、お前の声は否定される! 見ろ! 俺が、お前の否定したい、憎くてたまらない人達の象徴だ! 俺がいる限り、お前の言葉に正統性はない!」

 

 

 そう健一は挑発し、ボルテスは無防備に両手を広げた。

 

 

健一「どうした! 人間が憎いんだろう? 憎くてたまらないんだろう!? その最たる俺は、特に! やれないのか!? それともやらずに他に手を出すのか!? それもいいだろう。目の前の問題から逃げる。目をそらす。中途半端なお前にはお似合いの選択だ!」

 

ジュエリオン「っ! きっ、きっさまぁ! いいいだろう! まずは貴様から殺してやる! 我が父と母の受けた仕打ちよりよりひどく、醜く、無残に殺してやる!」

 

健一「やれるものならやってみろ! 俺は、逃げも隠れもしない!」

 

豹馬「……ったく、そういうことかよ」

 

 

 大きく啖呵を切った健一に、豹馬があきれたような声をあげる。それは、他の仲間も同じく思ったことだった。

 豹馬が代表しただけで、他の者もなにがやりたいのかわかっていた。

 

 怒りに任せ、健一の乗るボルテスを滅ぼすべく命令されたデュナンの子達から、彼を守るため、ロンド・ベル隊は動き出す。

 

 

 もちろん真正面から戦うとなれば、歴戦の勇士がそろうロンド・ベル隊が負けるわけはなかった。

 

 場に現れたすべてのロボは破壊され、ジュエリオンのホログラムも揺らぐ。

 

 

ジュエリオン「おのれ。覚えていろ剛健一! 後悔させてやる。必ずだ。必ず!」

 

 

 ジュエリオンはそう、呪詛のように呟き、この場から姿を消した。

 空は晴天に戻り、戦いは終わった……

 

 

健一「ああ。いつでも来い。俺が。俺達がお前の憎しみを全て受け止めてやる。憎しみという牢獄から、解放されるように……!」

 

一平「いい啖呵を切ったじゃないか。真面目一辺倒のお前にしては上出来だ」

 

健一「前に統夜がやったことを真似ただけだ。あれで俺達だけを狙ってくるようになるなら、対処もしやすくなるだろう?」

 

一平「そいつは言えてるな」

 

豹馬「やっぱりかよ。これからが大変だぜ」

 

健一「覚悟はできている。それに、成功させた前例はあるんだ。勝算は十分にあるだろ」

 

豹馬「確かにな」

 

クド=ラ「……」

 

クド=ラ(彼女もきっと、胸の中の怒りを、憎しみをどこにむけていいのかわからないんだ。本当に憎むべき相手はもういなくて。それでも憎しみは消えなくて。だから、そんな自分にイライラして、また暴れる……)

 

 

 去ったジュエリオンを見て、かつて同じだった少女は思う。

 健一のとった方法は、かつて彼女を救った方法と同じだ。憎しみを否定するのでなく、受け入れるのでもなく、あえてぶつけさせることで、行き場の失った怒りや憎しみを発散させる。

 

 すでに仇もいなくなったこの世界で、くすぶり続ける憎しみの感情を、消すことのできない激情を受けとめ続ける、いつ終わるとも知れない、無謀と言える行為……

 

 

クド=ラ「だから、なんとしても止めてあげなきゃいけない。最悪のことをする前に……」

 

テニア「そうだね。手伝うよ」

 

カティア「ええ。私達も、力を貸すわ」

 

統夜「そうだな」

 

健一「みんな、すまない」

 

甲児「気にすんなよ。二回目だ」

 

 

 そうして、皆笑った。

 

 健一の目論見に一つは、すぐに効果が現れた。

 

 宇宙に広がり、各星を襲っていたデュナンの子の出現がパッタリとやんだのだ。

 それは、他の星を襲うのに力を使うでなく、健一を抹殺することに集中させるためだろう。

 

 デュナンの子が現れなくなった分、ムゲ帝国の方が動きやすくなってしまったが、無差別攻撃はなくなったので、被害そのものは大きく減ることになった。

 

 

豹馬「あとは、俺達がなんとかするだけだな」

 

健一「ああ!」

 

 

 決意を新たに、ロンド・ベル隊は動き出す。

 

 

チリ「……」

 

 

 一連のやり取りを見ていた少女は、一人思う。

 

 

 彼女の正体は、ジュエリオンの妹。べリオン。記憶を失ったとし、ここへもぐりこみ様々な工作をしようとして姉をサポートしようとしていた。

 だが、ロンド・ベルに拾われ、彼等と関わるうちにその憎しみは失われ、迷いさえ生まれてしまっていた。

 

 

チリ(……ダメです姉様。私達では勝てない。この人達には、勝てません……)

 

 

 彼等と共にいた時間は短い。

 それでも彼女は、そう確信してしまった。

 

 自分達のやろうとしていることの先には、破滅しかないと……

 

 

 第7話 終わり

 

 

※注釈

 ちなみにこの後、チリにはあまり出番がありません。

 なんの注釈もない場合は、コン・バトラーチームと一緒にいて彼等に絆を植えつけられてると思ってください。

 

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