まるでちらちらと降る雪のように白い肌。そう。雪のように、だ。
雪といえば、いずれは消えてしまうようなものだ。降り注いでから、地に落ちて、溶けていき、やがて消える。
そんな儚さを、目の前の角を生やした少女から感じた。
「……不審者、ですか?」
少女がこちらににじり寄りながら、そんなことを口にする。
ちょっとまずいな。このままその方向に誤解されると、厄介なことになる。
降伏するように俺は両手を挙げ、誤解を解こうと口を開く。
「違う。俺は決して不審者じゃないぞ」
「…………」
自分でも胡散臭いと思うほどの発言をしてしまい、額から冷や汗を流す。少女のほうは訝しむように、こちらをじっと見たのち、警戒の色に染められていた顔を少しだけ緩ませる。
「本当、ですか?」
表情は緩んだものの、確信できないのか少女は眉を顰め、再度訊ねる。
「……本当だ。なぜかここで倒れてたんだ」
俺は内心の焦りを隠しながら、事情を交えつつそう答える。といっても、かなり怪しい事情なのだが。
けれども察してくれたのか、少女はなるほどといったような顔で頷く。
「不審者でないことは分かったです。だけど怪しいので、基地まで着いてきてもらうのです」
「ああ、分かってる」
なんとか誤解を解くことができたようで、少女は『着いてこい』というふうに、俺に背を向け基地に歩いていく。
――その背はどこか儚げであり、同時に重責を背負っているように、俺には見えた。
そうして基地に入り、まず少女に招かれたのは、「執務室」という木札が提げられた扉の前だった。少女はコンコンコンと三度ノックし、呼びかける。
「指揮官、遭難者と思わしき人物が倒れてました。いちおう確認のため連れ込んでもいいですか?」
「俺に質問を――んん、いいぞ」
少女はドアノブに手をかけ、ガチャリ、という軽快な音と共に木製の扉を開いた。
「お前が遭難者とやらか?」
顔が合った瞬間、白い軍服を着こなした男性がそう問うた。少女は俺の後方で静かに待機しているようだ。
「そう……だな」
あまりに緊張してしまい、この言葉しか発せなかった。何に緊張しているかというと、無論、目の前の男性にだ。
切り揃えられた前髪。そして――炎を感じさせるような、情熱を宿した眼だった。――俺は知っている。こういう人は相当な堅物だと。
そんなことを考えているうちに、男性は怪しいものを見つけたように表情を強張らせ、再び問いを投げた。
「――して、そのベルトは?」
俺はベルトに眼をやり、「ああ」と呟き、答えようとした瞬間――
地面――否、建物が不自然に揺れた。
「何事だ!?」
男性は慌てるように声を荒らげ、俺の後方に待機していた少女に眼を向ける。
「――恐らくですが、《ユニオン》ではなく、《セイレーン》が攻めてきたのだと思うのですッ――」
「《セイレーン》……?」
少女が紡ぎ出した言葉に、俺は疑問符を浮かべる。
「お前――まあいい! 説明はあとだ! 綾波、お前は急いで配置につけ! 俺も艦船たちの指揮を執る!」
どうやら今の男性を見るに、当たり前に知っていることのようだった。
男性と少女は、慌ただしく執務室を駆け抜けていった。その光景を、俺は呆然と眺めていた。
「俺も行くか……?」
そのような考えが湧き出て、頭を大きく振るい、打ち消す。
今、この基地は《セイレーン》とやらに攻撃されている。そして彼らはそれを迎え撃ちに行った。――ならば、俺はどうするべきか。
確実に厳重注意を受けるが、なんだか嫌な予感がしやがる。だから――
そうして、俺も執務室から駆け出した。
海が赤く染まっていた。まるで血の池のように、赤いインクで塗り潰されたように。
そんな海上では様々な少女たちが、それぞれ戦っていた。
「俺も――」
そう言ってメモリを一瞥したのち、起動ボタンに親指を置く。
あの少女たちのように海上戦ができるか? それに関しては、問題ないと直感した。
『エターナル!』
「――変身!」
メモリをスロットに入れ、それを倒す。
『エターナル!』
メモリがそう告げた瞬間、俺は海のほうへと駆けるように飛ぶ。それと同時、蒼い炎が身体を包み込み、俺の姿を変える。
やがて炎が散り、黒い外套を翻しながら水面に足をつける。
そして――言い放つ。あの台詞を。
「さあ、お前たちの罪を数えろ!」
文脈がズタズタだぁ……。
〈以下、伏線バレ〉
主人公の名字の一部分を消すと、主人公の正体が分かっちゃうという……。