はかせはとてもいそがしい人です。
ぼくははかせがねるのを見たことがありません。
なぜなら、ぼくがねた後にはかせはねて、ぼくがおきる前にはかせはおきるからです。
いそがしいはかせはこわいです。ぼくが話しても、知らんぷりをします。「電話」にむかってどなっていることもあります。
でも、ぼくははかせがやさしい人であることを知っているので、きらいだとは思いません。
ぼくがこわいゆめを見たときは、ねむるまでだきしめてくれます。
こぉひひをもっていくと、頭をなでてくれます。
ぼくははかせがすきです。
「人は足りないものを補い合うことで生きていける」
「人は足りないものをおぎないあうことで生きていけます」
「そうだ」
「そうなのですか?」
「そうなのだ」
はかせはもの知りです。ぼくにたくさんのことを教えてくれます。
話し方だって、はかせが教えてくれたのです。文字もそうです。おぼえるのはへんたいですが、とても楽しいのでがんばれます。
「お前は私のせいで話し方が少し固いな」
「はかせの
「なんであれ、今度客人が来たときはお前を紹介しよう。良い影響が得られるかもしれない」
「はい」
おきゃくさまに会うのは楽しみですが、少しこわいかもしれません。
つぎに来るのはだれでしょうか。王さまはめったに来ません。どろぼうさんはしばらくど
なにはともあれ、その時までにあいさつのしかたをおぼえなければいけません。
「そう心配するな。お前は可愛らしいから、誰でもすぐ気に入るさ」
「それは、
「……しまった。私の話す言葉を覚えさえしなければ完璧に可愛らしかったのだが、少々生意気に育ったやもしれん」
「もんだいありません」
「自分で言うな」
もしかすると、はかせをおこらせてしまったかもしれません。
きらわれてしまったらと思うとこわくてふあんでかなしくて、夜になって、ぼくはねむれずなきつづけました。
ぽろぽろとあふれるものでいっぱいになりました。
気がついたら、はかせがぼくのせなかをなでていました。
いつのまにか朝になっていました。はかせの手はあたたかかったです。
ぼくははかせがすきです。
経過報告43
・対象の情動の変化を観測。Ⅲ-ⅡとⅤ-Ⅲに分類。分類済みの感情としては11個目であり、順調な経過であると言える。実に喜ばしい。
・Ⅰ種やⅡ種の感情は頻繁に発現するようになっている。意思疎通能力も十分であると見込めるので、Ⅵ種以降を確認するため、他者との交流機会を与えることとする。