「ところで、ここはどろぼうさんのおうちですか?」
「そうだよ。まあ、泥棒ってのは根無し草だがね。ここも仮住まいってところだ」
「この家もぬすんだんですか」
「イグザクトリィ。博士の子ってだけあって、中々利発だ。ま、空き家だよ。不法占拠であって、俺のせいで路頭に迷っている家族がいるわけじゃあない。何か困ったことがあったらここを訪ねな」
朝食を食べ終えたぼくらはどろぼうさんの家を出ます。
これから博士とぼくの家まで連れていってもらうのです。
どろぼうさんの空き家から少しはなれたところまで来ると、後ろでぼかんと大きな音。
とつぜんのことにぽかんとしたぼくらは、少し経ってどろぼうさんの家がバクハツしたのだと気付きました。
『アーアー、マイクテスマイクテス。泥棒は生きているかい。どこに隠れたか知らないが、私の番を返さないと次は貴様の体がこうなるぞ』
聞こえてきたスピーカー音は博士の声で、空飛ぶなぞの物体から発信されていました。
「……え、俺の家」
「博士はぼくがあの家にまだいたらどうするつもりだったのでしょう?」
ガクリとひざをついたどろぼうさんは、家がなくなってしまったことにかなりショックを受けているように見えます。
博士、かなりおこっているみたいです。でもこれじゃあ、謝ろうとしていたのにどろぼうさんがかわいそうです。
しょうがないから、今日はぼくと一緒にねますか、とさそおうとしたところで、どろぼうさんは決意したように言いました。
「……決めた。絶対に返してやらない」
「でもどろぼうさん、次はどろぼうさんの体がぼかんですよ?」
「泥棒ってのはな、天の邪鬼で嘘つきなんだ。返せと言われると返したくなくなるし、止まれと言われると止まらなくなる」
「どろぼうはあまのじゃくでうそつきです」
「そうだね」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ」
そうらしいです。博士はやると言ったらやる人なので、ぼくはどろぼうさんがどろぼかんにならないか心配です。
「泥棒に盗めない物はないのさ。今日一日、キミと街でデートといこう」
「はぁ、でーと」
でーととはなんぞや。
「デートっていうのは、仲良くなるための方法さ。キミの欲しい物、食べたい物、なんだって買ってあげよう」
「ぬすんじゃダメですよ」
「盗まないさ。これは、甲斐性の見せ所だからね」
かいしょーが何であれ、どろぼうさんが何でも買ってくれるそうです。
トイレットペーパーに、ミルク、調味料いくつか。
頭の中で家で足りなくなっていたものをいくつか思い浮かべながら、まずはタコなんていかがでしょう、と提案するのでした。