はかせとぼく   作:Tena

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14. どろぼうとしすたー3

 時折見かける飛行物体の目をかいくぐりながら、一日が終わるころにぼくらがやってきたのは教会でした。

 沢山の生活用品を持ったどろぼうさんがため息をつきます。

 

「クレスは、何と言うか、男を使うのが上手いね」

「そんなことありませんよ。どろぼうさんこそ、とてもかいしょーがあるんですね」

「これは甲斐性というか……まあ、そうか。本当は、キミみたいな可愛い子には宝石だとかを送るんだけれど」

「いりませんよ、そんなもの。それよりも、どうして教会に来たんですか?」

 

 罪の告白をするためさ、とどろぼうさんは言いました。

 罪だと思っていて、どうしてどろぼうをするのでしょう。

 

「世間知らずの箱入りクレスに教えてあげよう。無罪(イノセンス)であることなんて、誰の腹も膨らまさないんだよ」

 

 少し難しい話であるけれど、どろぼうさんが言いたいことはなんとなく分かりました。

 でも、ならばどうして罪は存在するのでしょう。

 

「炊き出しはこちらですよー……って、あなた、孤児じゃないわね? どうしたの、こんなところで」

「この子は俺の連れだよ、シスターさん」

「……あなたは」

 

 そんな事を考えながらフラフラしていたら、シスターさんに声をかけられました。シスターさんというのは教会にいる女の人の呼び方です。

 とまどうぼくをよそにどろぼうさんが答えると、シスターさんはハッとした顔になります。

 

「……いつも、ご支援ありがとうございます。助けられている身で恐縮ですが、あまりご自身に無理のない範囲になさって下さい」

「無理なんてなぁんも」

「……数日前、ギゾクが脱獄したようですね。なんでも、三月以上拘束されていたとか」

「らしいね。あぁ、怖い怖い」

 

 どろぼうさんはおどけるようにかたをすくめます。

 ギゾクとはどろぼうさんの呼ばれ方のひとつだと思うのですが、どうしてどろぼうさんは知らない人みたいに言うのでしょう。

 

「もしかすると、脱獄した泥棒さんが明日あたり、罪の重さに耐えきれなくなって告白しに来るかもしれない」

「……それでは、告解室に誰かがいないといけませんね」

「よろしく。それと、この子、博士のとこの子なんだ。俺が今行ったら爆発させられちゃうから、シスターさんこの子届けてくれないかな」

「爆、発……? え、えぇ、分かりました」

 

 二人の会話はとてもたんたんとしています。

 シスターさんはなやましげな顔をしていますが、お腹でも痛いのでしょうか。

 

「じゃあ、クレス。ここでお別れだ。博士に上手いこと言っておいてくれ」

「はい、分かりました」

「それと、これ」

 

 そう言って、どろぼうさんはぼくの耳に何かつけました。

 くすぐったくて少しおどろいた声が出てしまいました。

 

「アメジストのイヤリングだ。キミの瞳そっくりだから、思わず買ってしまってね。キミの心を盗むのにはもう少し時間がかかりそうだから、これを布石としておこう」

 

 どろぼうさんは、どんな物でも盗めると言いました。

 それはとても悪いことであるし、とてもすごいことであると思いました。

 けれど、だからこそぼくの心を盗むことはできないと思います。

 

 だって、心は物じゃありませんから。

 

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