時折見かける飛行物体の目をかいくぐりながら、一日が終わるころにぼくらがやってきたのは教会でした。
沢山の生活用品を持ったどろぼうさんがため息をつきます。
「クレスは、何と言うか、男を使うのが上手いね」
「そんなことありませんよ。どろぼうさんこそ、とてもかいしょーがあるんですね」
「これは甲斐性というか……まあ、そうか。本当は、キミみたいな可愛い子には宝石だとかを送るんだけれど」
「いりませんよ、そんなもの。それよりも、どうして教会に来たんですか?」
罪の告白をするためさ、とどろぼうさんは言いました。
罪だと思っていて、どうしてどろぼうをするのでしょう。
「世間知らずの箱入りクレスに教えてあげよう。
少し難しい話であるけれど、どろぼうさんが言いたいことはなんとなく分かりました。
でも、ならばどうして罪は存在するのでしょう。
「炊き出しはこちらですよー……って、あなた、孤児じゃないわね? どうしたの、こんなところで」
「この子は俺の連れだよ、シスターさん」
「……あなたは」
そんな事を考えながらフラフラしていたら、シスターさんに声をかけられました。シスターさんというのは教会にいる女の人の呼び方です。
とまどうぼくをよそにどろぼうさんが答えると、シスターさんはハッとした顔になります。
「……いつも、ご支援ありがとうございます。助けられている身で恐縮ですが、あまりご自身に無理のない範囲になさって下さい」
「無理なんてなぁんも」
「……数日前、ギゾクが脱獄したようですね。なんでも、三月以上拘束されていたとか」
「らしいね。あぁ、怖い怖い」
どろぼうさんはおどけるようにかたをすくめます。
ギゾクとはどろぼうさんの呼ばれ方のひとつだと思うのですが、どうしてどろぼうさんは知らない人みたいに言うのでしょう。
「もしかすると、脱獄した泥棒さんが明日あたり、罪の重さに耐えきれなくなって告白しに来るかもしれない」
「……それでは、告解室に誰かがいないといけませんね」
「よろしく。それと、この子、博士のとこの子なんだ。俺が今行ったら爆発させられちゃうから、シスターさんこの子届けてくれないかな」
「爆、発……? え、えぇ、分かりました」
二人の会話はとてもたんたんとしています。
シスターさんはなやましげな顔をしていますが、お腹でも痛いのでしょうか。
「じゃあ、クレス。ここでお別れだ。博士に上手いこと言っておいてくれ」
「はい、分かりました」
「それと、これ」
そう言って、どろぼうさんはぼくの耳に何かつけました。
くすぐったくて少しおどろいた声が出てしまいました。
「アメジストのイヤリングだ。キミの瞳そっくりだから、思わず買ってしまってね。キミの心を盗むのにはもう少し時間がかかりそうだから、これを布石としておこう」
どろぼうさんは、どんな物でも盗めると言いました。
それはとても悪いことであるし、とてもすごいことであると思いました。
けれど、だからこそぼくの心を盗むことはできないと思います。
だって、心は物じゃありませんから。