はかせとぼく   作:Tena

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人は誰かを助けることもできる



6. はかせとぼく3

 はかせはさいきんつかれぎみです。

 あまり外に出たがりませんし、ねむる時間も少し前より長くなったようです。

 

「おぅい、クレセント。こっちに来い」

「はい、はかせ」

 

 ぼくの名前はクレセントです。

 名前をよばれたので、てててっとはかせのところへ近づきます。

 

「うぅ寒い寒い。こう寒いと疲れもすぐ溜まるし、夜は湯たんぽ(クレセント)がいないと眠れんな」

「お役に立ててこうえいです」

「難しい言葉を知っているじゃないか。騎士から学んだのか、偉いな」

 

 はかせはぼくをあしの間において、ぎゅうとだきしめます。こうされると、温かくてねむくなります。

 ほめられて頭もなでられると、体の内がわも温かくなります。こうされると、ねむくはなりませんが、もっとはかせの役に立ちたいと思います。

 寒いのは、はかせはつかれてしまいますが、たくさんだきしめてくれるのでぼくはすきです。

 

 人は足りないものをおぎないあうことで生きていけます。

 ぼくは、はかせの温かさをおぎなっています。ですが、他のことは全部はかせがおぎなっているように思います。

 ぼくは足りないものばかりですが、はかせは何でも持っているのです。

 

「クレセント。どうして世界には、私とお前以外の人間がいるか分かるか」

「どういうことでしょうか?」

「神が、番以外の存在を人に与え給うた理由だ」

 

 はかせはむずかしい話がすきです。

 ぼくも話したいのですが、ぼくはむずかしい話が分からないので、もっとかしこくなりたいです。

 

「ぼくは、はかせも、パン屋さんも、ボスもきしもすきです」

「そうだ。それで十分なんだ。それを奴らは、その先にはロクな結末がないというのに、全く度し難い」

「やつら、とはどなたでしょう」

「たとえば、……あー、そうだな。世の中には欲張りが多いということだ」

 

 やっぱり、はかせの話はぼくには少しむずかしすぎるようです。

 いつか、はかせと語らうことはできるのでしょうか。

 

「はかせ。もっとはかせの役に立ちたいと思うのは、よくばりでしょうか?」

「ああ、欲張りだな。お前は十分私の役に立っている」

「いけないことですか?」

「……いや、嬉しいよ。そうだな、ではもっと役に立ってもらえるよう、新しい文字をいくつか教えよう」

 

 そう言って、はかせはまっ白な紙にいくつかの文字を書きつけます。

 はかせの書く文字はなめらかで、しなやかで、とてもきれいで、はかせが生み出すそれらを、ずっとながめていることができました。

 

 

 

 


 

経過報告70

・寒いからパス。

 

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