おばあちゃんの家には、おばあちゃんの他にもう一人います。
そのお姉さんはぼくと同じ服を着ているので、おばあちゃんのメイドです。メイドさんが、ぼくに家事の手伝い方を教えてくれます。
「うん。クレセントさんは全体的にモノクロだから、メイド服がよく似合いますね。黒と白だけで纏まっていて素敵」
「ありがとうございます」
ほめられたのでうれしいです。メイドさんはやさしくていい人だと思います。
「よく見ると、瞳は少し紫がかっているのね。吸い込まれそう」
「そうなんですか?」
「ええ、黒紫って言うの。夜空みたいなのよ」
ぼくはそんなに自分の顔をながめたことがなかったので、メイドさんのおかげで新しく知ることができました。
メイドさんは物静かな人ですが、話しかけるとよく答えてくれます。
「おばあちゃんの家は、大きくてすごいです。博士の家の何倍もあります!」
「そうね。でも、だから私一人だと家事が大変なの。クレセントさんが手伝ってくれてとても助かっているわ」
「ぼくも、たくさん教えてもらって助けられています。これでもっと博士の役に立てます」
こんなふうに言うと、メイドさんはよく笑って頭をなでてくれます。
ただし、かみがゆかに落ちないよう、とてもていねいに。
「あなたの博士はね、とても凄い人なのよ。私も詳しくは知らないけれど。この国では、あの方を知らない人のほうが珍しいくらい」
「そうなんですか?」
「ええ。だから、沢山助けてあげてね」
「はい!」
博士がほめられて、ぼくはもっとうれしくなりました。
これからもっと、博士を助けて、すごい博士のすごいところをはっきしてほしいです。
三日がたち、博士がむかえに来る日になりました。
メイド服をぬぎ、最初に着ていた服を着ます。
「メイド服、ありがとうございました」
「あら、返さなくていいのよ、あげるわ。それよりも……もしかして、その服しか持っていないのかしら」
「え、ええ」
ぼくが着ている服は、ふとももまでかくれる大きなシャツです。ワンピース、というやつだと思います。
ぼくがうなずくと、おばあちゃんはおそろしい顔になりました。
「あの子……っ、本当に、そういうところが抜けてるんだから! 戻ってきたらまず説教ね!」
「え、ええと……」
「クーちゃん。あなたには娘の小さい頃の服がたくさん余ってるからあげるわ」
「え、うわうわ」
そう言って、おばあちゃんはメイドさんに言ってたくさんの服をぼくにわたします。
……服はくわしくありませんが、どれも高そうなものに見えます。いいのでしょうか。
「いいのよ。それより、今度おばあちゃんと一緒に服を買いに行きましょうね」
そうこうしているうちに、博士があらわれました。
「やあ、クレセント、久しぶり。寂しくて泣いてやいなかったかい?」
「な、ないてません!」
「夜中に少し泣いていらっしゃいましたよ」
「メイドさん!?」
とつぜんのメイドさんのうらぎりにぼくはおどろきます。
いい人だと思っていたのに……。
「先生も、ありがとうございました。……ところで、どうしてそんなに怒っていらっしゃるんですか?」
「……言わないと分からないんだろうね、この子は。良いよ、少し説教だ」
「!?」
そうして、博士はしょっぴかれていきました。
かわいそうですがこれもまたさだめです。
経過報告74
・良い機会があったのでしばらく接触期間を空けてみたが、Ⅶ-Ⅰに分類できる感情が観測できた。
・先生にキツく言われたので、もう少しクレセントの衣食住に気を遣うことにする。十分だと思っていたんだが。解せぬ。