鉄のこすれる音とは軍人特有の装備であるワイヤーカッターや手榴弾が擦れる音であった
やつは鬼にめり込んだスコップをさっとなぎ払い、炭治郎達を見つめる
もうあたりに鬼はいない、他にも鬼の”匂い”はあったはずなのに、あの鬼特有の腐った死の匂いは消え去り、代わりに硝煙の匂いが炭治郎を囲っていた。
「よお、アジアの黄猿ども、それにしてもその箱、なんだか親しみのある匂いだな、俺とおんなじ半端野郎の匂いがするぜ。」
「えっ」
そいつは突然禰豆子が入っているだろう箱について喋り出した、言葉はうまいがなんだかぎこちない、生まれた時から親もなく野生児であった伊之助とはちがったどこか不自由そうな喋り方、炭次郎はそもそも外国人という言葉を今まで意識したことすらなかったため彼が渡来人であることに気づくのに時間がかかった。
「きみっ!!名前は?!」
「お前こんな奴の名前聞いてどうすんだ!!とにかくぶっ殺せぇえええ!!!」
やはりどうしても敵を殺したい気持ちを抑えることのできない伊之助は他の多数の鬼の気配の消失がこいつのせいだとも知らずにのこぎりのような日輪刀を両手に抱えて突っ込んだ。
「くっせえ害獣風情が」
「待て伊之助!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん?!ごちゃごちゃ言うんじゃねええ黙ってろ!!!このクソみそがあああ!!!」
そいつはスコップを手放し丸腰で伊之助の日輪等をふわっと避けた。本来首元にあたり、食道をぶった切り骨を切断するはずだったノコギリ刀は空振りし、そのすきに男は伊之助の頭を掴んで鈍く不安な音が出るほどの強い衝撃を膝で与えた。まだ祖国ですらいまだに開発段階の軍隊格闘術であり、それはこの国の柔道や空手とは一線を画す”殺しの技”だ
「あがああ」
ああ、まただ。また頭だ
なんらかのデジャブを走馬灯のように感じた伊之助はその場で倒れた。
「いのすけえええ!!!!」
「ガタガタうるせーぞ、脳震盪だ。安心しろ殺しはしねえ」
「た、た、たんじろううううこいつやばいよ!鬼だよ!!悪魔だよおおおお!!!」
「そこの金髪野郎うるせえぞ!!白人でもねえくせに髪の色だけいっちょまえに金色になりやがって!!」
「こっれっは!!地毛ですうううう!!ハクジンとか訳わかんないこと言わないでくださああああい!!!!」
「わかったからもうしゃべんじゃねえ!!ピーチクパーチク女みたいに騒ぎやがって耳障りだバーカ!!」
「ま、まあ落ち着いて...」
「まあ、いいわ」
そう言いながら、倒れてる伊之助を若干気遣う仕草を見せつつも歩み寄るその男、奴はガスマスクを外しとうとう顔をあらわにした。
「わっ、やっぱり外国人だ」
「外国人、外国人言うんじゃねえよ一応お前らのコトバ、鬼以上に面倒なのに覚えたつもりなんだからさ。」
やはりイントネーションは消え去ることはできない
「ヘルマン・マイヤーだ、ペンツベルグ生まれのえっとなんだっけ、あ、そうそう、炭鉱一家の次男坊さ。」
だが、気になるのはその風貌であった、外国人だからと言う理由だけでは説明できないほどの青白い肌はあの蜘蛛鬼を思い出させる
炭治郎が自分のことを憐憫や恐れの表情で見つめていることを悟ったマイヤーは少しばかりため息をついてから口を開いた
「あ、なんだ知ってたんだ。そうだよ」
「俺もちょいとばかりいわゆる”鬼”が入っててね、お前らの言葉で言う舶来品の種ってわけさ、白だけにな
ぎゃはははは!!!」
面白くない、気絶している伊之助は別として、炭次郎も善逸も微妙な顔つきだ。
(うあーこいつも伊之助とは違うけど、頭がおかしいんだ...)
善逸の哀れみと困惑の表情がマイヤーの顔に刺さる、
「あ?俺の冗談が面白くねえのかてめえは」
「あったりまえだろ!!!オヤジギャグじゃねえか!!」
「すごいーい!外国人なのに冗談まで言えるなんて、えらいなあ、すごいなあ本当に努力したんだね!!」
(あ、そういえば炭治郎もおかしかったんだ)
「だろ?俺っち頭いいからなー!」
鬼の血が少しばかり混じっていながらも、真夜中の森で言葉を交わす一行はすぐさま仲良くなり、話し合いの結果なんと一緒に下山することになった